「国境なき記者団」のフランス代表を務めるジャーナリストのPierre Haski氏が10日、財団法人龍応台文化基金会の招きを受け、台湾北部・台北市で講演を行った。講演のテーマは「『非自由』民主的時代到了嗎?(Is This the Era of Illiberal Democracy?)」で、近年の世界的な自由主義の後退と「非自由主義的民主主義(リベラリズムなき民主主義)」の台頭について語った。
Pierre Haski氏は講演後の質疑応答で、台湾ではメディアが特定の財閥によって買収され、その影響を受けたり、中国大陸の資本が入り込み、世論に影響を与えたりすることを懸念する声があるとの指摘を受け、「台湾には多元的なメディア文化が育っている。特にオンラインメディアが活発に成長しており、自由で多元的な選択肢を提供している」と評価。台湾では、自分が信じるアプローチを自ら選択して世界を見たり、比較的批判的な立場のメディアが提供する報道内容を選択し、生活における重要事項を決定する際の参考にしたりすることができると述べた。
Pierre Haski氏は、特にロシアや中央ヨーロッパにおける近年の動向に関する自身の考察について語り、特に英国のEU(欧州連合)脱退と米トランプ大統領の当選後、「非自由主義的民主主義」台頭の傾向が強まっているとして警鐘を鳴らした。また、トルコやハンガリーでも極右勢力が権力を握り、移民の受け入れに反対し、報道や言論の自由を弾圧していると指摘した。
Pierre Haski氏は「国境なき記者団」のフランス代表を務めるほか、フランスの週刊誌『ル・ヌーベル・オプセルヴァトゥール(Le Nouvel Observateur)』国際版のコラムニストでもある。記者歴は40数年に及び、過去にはフランス日刊紙『リベラシオン』の中国大陸・北京特派員を務めたほか、南アフリカ、イスラエル、米ニューヨークなどでの駐在経験も持つ。