台湾と日本の「医師会」が友好協定、戦後80年における画期的進展
中華民国医師公会全国聯合会(周慶明理事長)と日本医師会(松本吉郎会長)は今月8日、東京都内で「台日両国医師会友好協定」に署名した。調印式には台北駐日経済文化代表処の蔡明耀副代表が証人として立ち会ったほか、国策顧問の林逸民氏、呉運東無任所大使、中華民国医師公会全国聯合会のメンバー、それに日本医師会の角田徹副会長、濵口欣也常任理事などが出席した。
2つの医師会を結び付けた国策顧問(総統府顧問に相当)の林逸民氏は、「台湾の日本の全国レベルの医師会が、戦後80年の歴史で初めて姉妹会となった。歴史的に見ても非常に意義のあることだ」と指摘。林国策顧問によると、これまでも台北市と東京都、台中市と日本のある都市、といった自治体レベルの医師会の友好協定はあったが、今回は国レベルの医師会による友好協定であり、しかも日本側が「台湾」の名称を使用することを望んだ点は「とりわけ意義深い」と指摘した。
この協定では、(1)医療交流の促進と公衆衛生の向上、(2)国際協力とグローバルヘルスの推進、(3)善意にもとづく協議と、未来の課題に向けた共同の取り組み、という3つの主要な方向性が定められた。
調印に臨んだ日本医師会の松本吉郎会長は、「今日は記念すべき日だ。日本医師会と台湾医師会(中華民国医師公会全国聯合会のこと)は歴史的に極めて良好な関係を築いてきた。双方の揺るぎない友情は、単なる2つの医師会の交流にとどまらない。アジア大洋州医師会連合(CMAAO)や世界医師会(WMA)などの国際会合においても互いに協調し、課題に取り組んでいる」と述べた。
中華民国医師公会全国聯合会の周慶明理事長によると、双方の医師会は、大規模な自然災害時の人道支援を契機に交流を重ねてきた。2011年の東日本大震災では、中華民国医師公会全国聯合会が直ちに募金活動を展開し、日本の復興を支援した。その後も2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震、2024年の能登半島地震と、迅速に義援金を送った。2024年4月3日に台湾東部・花蓮で発生した際には日本医師会が1500万円を台湾に寄付。その後、会員に対しても募金も呼びかけ、最終的に1,721万4,718台湾元相当(約8,486万円)が台湾に送金された。
周慶明理事長によると、日本医師会からの寄付が高額で、かつ花蓮地域の復旧が一段落したことから、残った寄付金を活用して「台日災害救助基金」を設立。台湾と日本で自然災害や重大な事故、緊急事態が発生した際の共通の救助資金として使用し、制度化により助け合いの精神を継承することを決めた。この基金の一部は早速、7月上旬に台風4号の上陸で被害を受けた台南、嘉義、雲林地域の復興に対しても活用されることになっている。
周慶明理事長は、2015年に新北市の八仙楽園で起きた粉塵爆発事故でも、日本医師会が即座に専門家チームを派遣し、火傷治療とリハビリのノウハウを台湾側と共有したことも紹介。加えて火傷治療用の特殊なマットレスや人工皮膚、医薬品などを無償供与してくれたことも、台湾と日本の医療協力の象徴的な事例となったと振り返った。
また、新型コロナウイルスのパンデミック期間中、国際間の移動が制限される中でも、双方の医師会はオンラインでの交流を継続。韓国やインドの医師会とともに国際フォーラムを開催して、新型コロナウイルスのワクチン政策やホリスティックヘルスケア制度、今後の公衆衛生の課題などについて議論した。
Taiwan Today:2025年8月11日
写真提供:中央社
中華民国医師公会全国聯合会の周慶明理事長(右)と日本医師会の松本吉郎会長(左)は今月8日、東京都内で「台日両国医師会友好協定」に署名した。写真中央は証人として立ち会った台北駐日経済文化代表処の蔡明耀副代表。
