外交部の林佳龍部長、海外メディアの取材で日中関係の緊張などについて語る
外交部の林佳龍部長(外相)は今月2日、ニューヨークを拠点にする国際経済メディア「ブルームバーグTV」のインタビューを受け、日中関係の緊張、トランプ政権下における台米関係、地域の安全保障情勢など、海外が注目する議題について台湾の立場と政策・方向等を説明した。その内容は同日放送され、「ブルームバーグ」公式サイトにも掲載された。林佳龍部長の発言の概要は以下のとおり。
緊張する日中関係について
日本の高市早苗首相は先月、中国が台湾に侵攻した場合、日本が介入しうる(集団的自衛権を行使できる『存立危機事態』になりうる)との認識を示し、これが中国との緊張関係を招いた。これは本質的に「台湾有事はすなわち日本有事であり、同時に日米安全保障問題でもある」と述べたものだ。台湾と日本には良好な意思疎通のパイプがあり、双方ともに情勢の制御・管理に努め、緊張の高まりを避けようとしている。
日中関係の緊張に対して、台湾の反応が控えめだと指摘する声があるが、台湾は「ソフトなアプローチ」によって日本を支持している。例えば台湾の人々に日本への旅行や、日本製品の購入を促したりすることで事態の沈静化を図っている。なぜなら、中国のナショナリズムは一旦刺激されると、制御不能になる可能性があるためだ。緊張を高めることは、どちらの側にとっても無益だ。それは北京にとっても同じであり、衝突の危機が高まることは北京の利益に合致しない。
今回の日中間の緊張状態は、沈静化までに約1年かかるだろう。しかし、高市首相の発言は国会での質疑を受けたゆえのものであり、政策の転換を意味するわけではない。北京は「習近平の面子(メンツ)を守るため」になんらかの象徴的な行動をとって、その支配力を示す可能性があるだろうが、最終的には安定を求めるだろう。
インド太平洋地域の「格子状の構造」
日本が台湾の安全保障と日本自身の安全保障を結びつけて考えようとしている中、台湾と日本はいずれも、防衛力と外交調整の両面で責任を分担する必要がある。また、インド太平洋地域にはNATO(北大西洋条約機構)のような集団防衛のシステムが存在しないため、台湾は米国、日本など民主主義のパートナーとの二国間協力を強化し、こうした二国間の枠組みを「格子状(lattice-like)の戦略的構造」に結びつけることで、地域の安全を共同で維持し、権威主義の拡張を防でいきたい。
米中関係について
米中首脳の電話会談で台湾への言及がなかったことが注目を集めている。しかし、トランプ政権がインド太平洋および第一列島線に対して安全保障上のコミットメントを示していることは疑いようのないことだ。これは戦略の形態が異なるだけであり、米国は同盟国に対してより多くの防衛費負担を求め、自己防衛の意志を強く示すことを期待している。そして、頼清徳総統は防衛費の増額、徴兵期間の延長、非対称戦力の強化、社会全体の防衛の強靭化などの措置を通じ、台湾の民主主義を守る決意を示している。
南アフリカにおける台湾の政府代表機関の移転問題について
南アフリカ政府は、台湾が同国に設置した政府代表機関(大使館に相当)について首都からの移転を求めている。台湾側は来年1月に南アフリカ政府と会談を行い、問題解決を図るよう提案している。
頼清徳総統の米国立ち寄りについて
頼清徳総統は今年の夏、中南米諸国(パラグアイ、グアテマラ、ベリーズ)を訪問する際、経由地として米ニューヨークとテキサス州ダラスに立ち寄る計画だったが実現しなかった(中国との関係悪化を懸念した米国政府が拒否したと伝えられている)。近い将来、これが実現すると確信している。
台湾と欧州との関係について
台湾と欧州は安全保障、サプライチェーン、権威主義への対抗、民主主義の守護など、幅広い分野で協力の空間を持つ。今年11月には、蕭美琴副総統が「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」の招待を受け、欧州議会に赴き演説した。これは台湾が欧州との交流を深めるための大きな成果となった。
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Taiwan Today:2025年12月3日
写真提供:外交部
外交部の林佳龍部長(外相)は今月2日、ニューヨークを拠点にする国際経済メディア「ブルームバーグTV」のインタビューを受け、日中関係の緊張、トランプ政権下における台米関係、地域の安全保障情勢など、海外が注目する議題について台湾の立場と政策・方向等を説明した。
