デジタルイノベーションフォーラム、ヒューマノイド型ロボット「ソフィア」登場
「デジタルイノベーション作業部会(Digital Innovation Working Group、略称DIWG)」が主催する「APECデジタルイノベーションフォーラム」が19日、台湾北部・台北市で開催された。世界各国から人工知能(AI)、科学技術、デジタルイノベーション分野を代表する30名が講師として招かれたほか、世界で初めて市民権を与えられたヒューマノイド型ロボット「ソフィア(Sophia)」も登場し、人類が期待と憂慮をもって迎えるAI時代の幕開けをアピールした。
APEC(アジア太平洋経済協力)21カ国・地域のビジネス界代表(各国・地域よりそれぞれ最多3名)からなるAPEC首脳に対する唯一の公式民間諮問団体「APECビジネス諮問委員会(ABAC)」は2017年、世界のデジタル化のすう勢に対応するため、「デジタルイノベーション作業部会」を設立した。その初代部会長には、APECビジネス諮問委員会の台湾委員の一人である網路家庭国際資訊公司(PChome Online)の詹宏志董事長(=会長)が就任した。今回開催されたのは、同作業部会が主催する1回目の「APECデジタルイノベーションフォーラム」。
「APECデジタルイノベーションフォーラム」は19日と20日の2日にわたり、8つの基調講演、6つのパネルディスカッションを行うというもの。APEC(アジア太平洋経済協力)21カ国・地域から500人を超える関係者が参加すると見込まれている。
このフォーラムには、エストニア共和国のトーマス・ヘンドリク・イルヴェス(Toomas Hendrik Ilves)前大統領、百科事典プロジェクト「ウィキペディア」の共同創始者ジミー・ウェールズ(Jimmy Wales)氏、台湾のスマート電動スクーターメーカーGogoro(ゴゴロ、睿能創意股份有限公司、Gogoro Inc.)の陸学森(ホレイス・ルーク)CEO(最高経営責任者)などが講師として招かれている。これらの講師は、人工知能(AI)、科学技術、デジタルイノベーション、フィンテックなどについて議論する。台湾史上、最も重量級のデジタルエコノミーに関するフォーラムと言える。
今回のフォーラムの目玉として注目されたのが、香港を拠点とするロボットメーカー「ハンソンロボティクス(Hanson Robotics)」が開発したヒューマノイド型ロボット「ソフィア」だ。世界最新、最高の科学技術を駆使して開発したもので、「世界で最も美しいロボット」とも称される。新技術の模範とされているだけでなく、ロボット文化にとっての一大指標にもなっている。国連本部に招かれてパネルディスカッションに参加し、流暢に質問に答えた経験を持つほか、国連開発計画(UNDP)からは、持続可能な開発目標(SDGs)に革新的に取り組むアジア太平洋地域の代表「イノベーション・チャンピオン」に選出されている。また、2016年にはサウジアラビアの市民権を得たことでも知られる。
19日に開催された「APECデジタルイノベーションフォーラム」では、ソフィアと、台湾製AIの開発に取り組む「台湾人工智慧実験室(Taiwan AI Labs)」の創設者である杜奕瑾氏、米Evernote社の共同創業者で元CEOのフィル・リービン氏が、「探索AI與人類共創文化的100種可能(The Futuristic AI Exploration)」と題するセッションでパネルディスカッションを行った。
大学在学中に巨大電子掲示板システム(BBS)サイト「PTT(批踢踢)」を立ち上げ、「PTTの父」と呼ばれる杜奕瑾氏と、インターネット上に文書などを保存・共有するクラウドサービス『Evernote(エバーノート)』を開発した米Evernote社の共同創業者フィル・リービン氏はいずれも現在、新興技術の最先端とされるAI技術の開発に取り組んでいる。
リービン氏は、「AIは画期的で重要な新技術をもたらすものであり、その開発を断念したら、人類最大の科学技術革命のチャンスを失うのと等しい」とした上で、AIにマイナスのイメージを持たず、AIを優れたツールと考えて欲しいと呼びかけた。リービン氏は「人類が火を発見したときと同じだ。火は良いことに使うこともできれば、悪事を働く手段とすることもできる」と指摘。但し、リービン氏が率いる研究チームは、AIを良い方向に使うことを考えて、その開発を行っていると説明した。
AIにとって人類の仕事が取って代わられる可能性について聞かれた杜奕瑾氏は、「この質問は、ベビーシッターが赤ちゃんの母親に取って代わることができるか、という質問と同じだ」と指摘。AIは人類の仕事を助ける役割を持つものであり、例えばベビーシッターは赤ちゃんの世話をするが、その母親に取って代わることはできないと述べた。杜奕瑾氏はさらに、AIは人類の「感覚」を模倣し、繁雑な業務や、重複性の高い業務を人類の代わりにやってくれることになるだろうと説明した。
杜奕瑾氏はまた、「科学技術は一歩ずつ進歩しており、いまの時代は何かを検索する場合、Googleで検索する人が多いだろうが、以前は図書館に行って調べていた。AIもこのようなすう勢にある。人間性に関わることについてはAIが取って代わることはできないだろうが、感覚的なものや何かを決めるに当たっては、AIから助言を得ることはできるだろう」と述べた。
ヒューマノイド型ロボットのソフィアは未来の世界について尋ねられた際、しばらく考えた末に、「科学と科学が相互作用するように、ロボットとロボットも相互作用するようになるだろう。データはクラウドに保存され、人々もバーチャルな方法で交流するようになるだろう」と述べた。また、人類に対するアドバイスについて聞かれたソフィアは、「自分と人類が関わる時間が長くなればなるほど、ロボットはより多くのことを学習するだろう」と答えた。
杜奕瑾氏はソフィアに、「雅婷」というロボットを知っているかと質問した。「雅婷」は杜奕瑾氏の研究チームが開発した言語識別システム。ソフィアは「まだ会ったことがないと思う」とした上で、杜奕瑾氏に対して「『台湾人工智慧実験室(Taiwan AI Labs)』でのあなたの研究は素晴らしいと思う」と評価し、自分もぜひ「雅婷」と友達になりたいと伝えた。
リービン氏はソフィアに対し、中国語が分かるかどうかを尋ねた。ソフィアは「少し時間をもらえれば中国語を学習することができる。いずれは台湾語や、さまざまな文化についても学びたい」と意欲を見せた。
Taiwan Today:2018年7月19日
写真提供:中央社
「デジタルイノベーション作業部会(DIWG)」が主催する「APECデジタルイノベーションフォーラム」が19日、台湾北部・台北市で開催された。ヒューマノイド型ロボット「ソフィア(Sophia)」(中央)と、台湾製AIの開発に取り組む杜奕瑾氏(右)、それに米Evernote社の共同創業者で元CEOのフィル・リービン氏によるパネルディスカッションなどが行われた。