台湾文学フェスタが開幕、陳耀昌『フォルモサに咲く花』から牡丹社事件を考える

王淑芳・台湾文化センター長（左２）、『フォルモサに咲く花』の作者・陳耀昌氏（右２）、『牡丹社事件・マブイの行方』の作者・平野久美子氏（中央）

左より陳耀昌氏、司会進行兼通訳の野嶋剛氏、平野久美子氏

　台北駐日経済文化代表処台湾文化センターは10月18日、「台湾文学フェスタ」開幕第一弾として、東京・虎ノ門の台湾文化センターで『フォルモサに咲く花』（原題：傀儡花）の作者・陳耀昌氏を招き、『牡丹社事件・マブイの行方』の作者・平野久美子氏と対談した。このなかで、19世紀後半における米国の「ローバー号事件」と日本の「牡丹社事件」から、台湾原住民と外国勢力との出会いから発展した事件の歴史背景について考察した。

　王淑芳・台湾文化センター長は、「台湾文学フェスタ」の開催に先立ち、「台湾の文化力の高さをもっと知ってもらうため、心が動かされる台湾の歴史物語の作品を日本に紹介したい。台湾の優秀な作家の作品を通して、台湾にはタピオカドリンクやグルメ以外にも、奥深い台湾文学があることを感じてほしい」との考えを示した。

　陳耀昌氏は、1860年代に米国の船が台湾南部に漂着した「ローバー号事件」を題材にした『フォルモサに咲く花』について、「この小説はテレビドラマや映画になることを想定して、戦いと愛情を描いた」と語り、主役のパイワン族と客家人の混血である「蝶妹」（テャプモイ）がフィクションである以外は事実を基にストーリーが展開し、「蝶妹」が歴史上の人物たちをつないでいく役割を果たしていることを解説した。

　陳耀昌氏は1949年生まれ。台湾の著名な血液疾病専門医であり、1983年に台湾で初めて骨髄移植を成功させた。同時に台湾史小説家であり、『福爾摩沙（フォルモサ）三族記』が文化部（省）「2012年台湾文学賞」および2013年台北国際ブックフェアの「書展大賞」を獲得した。『フォルモサに咲く花』の原作である『傀儡花』は2016年に台湾で出版され、同年の台湾文学賞図書類長編小説賞を受賞した。日本語版『フォルモサに咲く花』は下村作次郎氏の翻訳により2019年9月に出版された。現在、台湾の公共テレビ（公視）で曹瑞原監督によりテレビドラマの制作が進められている。

　10月19日には東京・日本橋の誠品書店で『フォルモサに咲く花』新書発表会が開催され、原作者の陳耀昌氏と訳者の下村作次郎氏が対談した。

牡丹社事件について解説する陳耀昌氏

誠品書店で開催された『フォルモサに咲く花』新書発表会
原作者の陳耀昌氏（左）と訳者の下村作次郎氏（右）

《２０１９年１０月２３日》