蔡英文総統、中華民国建国109年祝賀演説の概要

蔡英文総統、中華民国建国109年祝賀演説の概要

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 蔡英文総統は10日午前、総統府前で行われた中華民国建国109年祝賀大会で「団結台湾、自信前行(=台湾を団結させ、自信をもって前進する)」と題する演説を行った。概要は以下のとおり。

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一、新型コロナウイルス対策の成果と世界貢献

 きょう(10日)は中華民国109年の「国慶日(=建国記念日)」です。今年は新型コロナウイルスの影響で式典の規模を縮小しましたが、すべての国民が、どこにいようとも心から中華民国台湾を祝賀し、そして挑戦に満ちたこの一年を過ごしていることでしょう。

 2020年という年は、新型コロナウイルスの脅威が台湾のみならず、全世界に驚きと波乱をもたらしました。しかし、この世界的危機があったからこそ、国際社会は台湾という「強靭な島」の特性と忍耐力を目の当たりにすることになりました。

 我々はコロナ禍にあっても、適切な規制措置を実施しながら、プロ野球公式戦をスタートさせ、大型の芸術・文化活動を再開した世界で数少ない国の一つとなりました。さらには誇るべきその国力をもって、感染症対策のための医療物資を世界各地に無償提供しました。

 今年3月以降、台湾の新型コロナウイルス対策について言及した海外での報道は3,300件を超えました。国際社会における台湾の存在感はますます明確になり、過去のいかなる時期よりも輝きを増しています。

 このような成果は、台湾の人々の団結と協力のたまものです。最も大変だった医療・看護、検疫関係者の皆さんに、私たちは感謝しなければなりません。製造業者の皆さんも手を取り合って協力し、感染症を予防するための医療物資を生産しました。ハイテク企業はアプリを開発しました。薬局やコンビニで働く人々は、サージカルマスクの販売に協力しました。そして台湾のすべての住民が、秩序を守ってこれに協力し、感染症対策を徹底しました。

 日本の森喜朗元首相、チェコのビストルジル上院議長、アメリカのアザー厚生長官、クラック国務次官が相次いで台湾を訪問し、台湾に対する敬意を示されました。これは多くの国民に無類の勇気を与えました。

 新型コロナウイルスに立ち向かうことを通して、私たちはこの国が逆境の中でも生存能力を持つことを証明しました。そして国民の自信を確立しました。なによりも重要なのは、私たちが団結したことです。なぜなら私たちは、国家を守ることの重要性を、身をもって理解したからです。だからこの一年は確かに苦しく、厳しい一年でしたが、収穫もあった一年となりました。

二、新たな情勢下の経済戦略

 新型コロナウイルスの封じ込めに成功したことから、台湾はGDP成長率がプラスを維持できる、世界でも数少ない国の一つとなりました。私たちは新型コロナウイルス収束後を見据え、経済発展においても先手の対策を講じます。台湾はいま「六大核心戦略産業」の推進に向けて積極的に取り組み、「将来を見据えたインフラ建設計画」も段階に分けて特別予算を計上し、現在推進を加速しているところです。

 最も私たちを奮い立たせたのは、数十年来で最大の回帰投資を迎えることができたことです。海外に進出していた台湾企業による対台湾回帰投資はすでに1兆台湾元(約3.7兆日本円)を超えています。それに加えて数千億台湾元規模の海外資金が続々と台湾に投資されています。多くの外資系企業や有名な多国籍企業が対台湾投資を強化しています。これらはいまも現在進行形です。

 国際経済・貿易分野の協力について見ると、我々には少なからぬ進展がありました。台湾と米国はハイレベルの経済対話を通して、グローバル・サプライチェーンの再構築、テクノロジー協力、インフラ建設などの分野で、これからも協力の可能性を模索していくことで一致しています。

 先週、台湾と米国の双方は「対インフラ建設融資の台米協力フレームワーク」の立ち上げについて協定を結んだと発表しました。双方は米国やインド太平洋地域におけるインフラ建設計画で協力することになります。台米経済協力の深化は、すでに実際の行動の段階に入っているのです。これも、私たちが国際的な経済・貿易協力において、全面的なブレークスルーを模索するためのスタートとなるでしょう。

 今後を展望すると、さらに困難な道のりが私たちを待ち受けています。コロナ後の世界経済の回復で、人類の生活形態は大きく変わるでしょう。世界及び各地域の経済・貿易情勢は劇的に変化します。そして経済秩序の再編成が行われます。どれも私たちの経済の耐久性、そして全体的な適応能力を試すことになるでしょう。

 過去数十年来で最大ともいえる国内外の情勢変化に向き合うため、中華民国政府は3つの戦略で対応し、皆様が期待される新たな台湾経済を作り出します。

 まず、私たちは全力且つ全方位的に、サプライチェーンの再構築に取り組みます。現在、世界のサプライチェーンは急速に崩壊し、そして再構築されています。これはすでに後戻りできない趨勢です。世界各地を拠点に活動する台湾企業もいま、市場の差別化、生産拠点の移転、台湾への回帰投資などを加速させています。

 私たちはすでに「5+2産業イノベーション」、「六大核心戦略産業」などの重点産業へのテコ入れ、1兆元規模の投資計画、「新南向政策」、台米経済協力、地域経済統合への参与などを進めています。これらはすべてサプライチェーンの再構築と密接に関係するものです。

 私たちはこれらの関連する政策や計画をつなぎ合わせ、そして官民の資源を融合し、省庁を越えてエネルギーを集約することで、全力且つ全方位的に取り組み、台湾をグローバル・サプライチェーンにおいて不可欠な存在とするべく努力します。

 第二に、私たちは台湾を世界から資本、人材、デジタルテクノロジーが集約する拠点とします。

 第三に、私たちは経済と社会がバランスよく発展できるよう、全力で取り組みます。コロナ後の経済や産業の発展は、バランスを失するリスクをはらんでいます。資金の供給が大幅に増えることは、後遺症を残すことになりかねません。

 ですから、これから政府は資源の合理的な分配をより重視しなければなりません。経済システムの転換によって衝撃を受ける弱者を守り、若者の雇用促進を強化し、資金が最も効果的に利用されるよう導く必要があります。台湾経済の再起によってもたらされるメリットを、全国の国民が共有できるようにしなければなりません。

三、堅実な国防で国家の安全を維持

 当然ながら台湾経済の前途は、大部分が地域の平和と安定に依存しています。そして私たちは明確に知っています。弱さを見せて後退しても平和はもたらされないことを。準備を十分に行い、防衛にかける強い決意と実力を持つことによってのみ、台湾の安全を保障し、地域の平和を守ることができるのです。

 国防力を高め、戦争のリスクを減らすこと。これは現時点におけるわが国の国防政策の原則です。最近、対岸(=中国を指す)の軍用機や軍艦が台湾周辺に出没し、台湾海峡両岸の情勢を緊張させていますが、私たちの軍隊は随時状況を把握し、これに対応することで防衛を死守するという任務を達成しています。

 対岸の軍事拡張と挑発に対し、私たちはこれからも防衛戦力の近代化と「非対称戦力」の強化を継続します。つまり、海外からの武器・装備を購入すると同時に、これからも国防自主(=軍備の自主開発、国産化)の推進を加速していきます。高等練習機や潜水艦の国産化はすでに大きな成果が上がっています。私たちは今後も、この二つを同時並行で進めることで、私たちの防衛の実力を強化していく考えです。

 武器・装備の性能を上げるだけでなく、国軍にはより素質の高い戦士が必要です。志願制の職業軍人の専門的素養を高めるだけでなく、予備役に関する制度を改善し、国軍のマンパワーの素質と戦力を強化する必要があります。「常備軍と予備役の一体化」を原則に、これから予備役動員制度の改革を急ぎたいと考えています。

 地域の平和と安定が脅かされているとき、私たちは「戦いを恐れず、戦いを求めず」の原則を貫き、一触即発の事態を避けなければなりません。国防部(日本の防衛省に相当)は適時、中国人民解放軍の動向を発表し、周辺諸国と情報を交換し、安全のためのパートナーとしての役目を強化しています。国民に台湾海峡の動きを明確に知らせることで、「全民国防」をより堅実なものにしています。

四、積極的に地域の協力に参加

 最近、私たちは地域の安全保障に関わる情勢の変化に高い関心を寄せています。それには南シナ海、東シナ海における主権問題、中国とインドの衝突、台湾海峡情勢の変化、ひいては各国が関心を寄せる香港版「国家安全法」の実施などを含みます。インド太平洋地域の民主主義、平和、繁栄はいずれも大きな問題に直面しているのです。

 私たちは、この変化による試練を、歴史の転機に変えようとしています。主権を堅持し、民主主義の価値を守るという私たちの原則に変化はありません。但し、戦略上は柔軟性を持ち、臨機応変に振る舞う必要があります。

 情勢が変化する中、先手の政策を講じることで、未来を掌握できます。そうすれば変化の波に流されたり、他人によって運命を決められたりすることがありません。

 私たちは、これからの世界や地域の新たな秩序の確立に、積極的に参与していきます。私たちは「価値の同盟」を原則に、国際社会と広く良い関係を作り上げ、近い理念を持つ国々や、台湾に友好的な国々とのパートナーシップを強化していきます。私たちはまた、地域及び国際的な多国間協力や多国間対話に、積極的に参与していきます。

 平和を維持し、繁栄と発展を促進すること。これが中華民国台湾の、地域における最も重要な価値なのです。

 私はまた、対岸の指導者(=習近平氏を指す)が最近行なわれた国連総会一般討論のビデオ演説で、「中国は永遠に覇権主義を唱えず、拡張せず、勢力範囲の拡大を求めない」と発言したことに注目しています。

 この地域の国々、ひいては全世界の国々が、中国の覇権主義に懸念を示しています。私たちは、これが本当の変化の始まりになることを願っています。

 とりわけ全世界がインド太平洋及び台湾海峡両岸の情勢変化に高い関心を寄せているこの重要な時期、北京当局が台湾の声を受け止め、両岸関係(=中台関係のこと)と向き合う態度を変え、台湾と共に両岸の和解と平和的対話を実現することができれば、この地域の緊張状態を必ず解くことができると信じています。

 両岸関係について、私たちが暴走することはありません。私たちは原則を堅持します。両岸関係の安定の維持は、両岸共通の利益です。私たちは両岸の安定を維持する決意があります。しかしこれは台湾が一方的に担うことではなく、双方の共同責任なのです。

 現在、両岸にとっての当面の急務は、互いに尊重し、善意をもって相手を理解しようとする態度で、平和と共存の道や方法を共に議論することです。北京当局に対立を解消し、両岸関係を改善しようという意思があれば、対等・尊厳という原則の下、私たちは有意義な対話を実現したいと考えています。これが台湾の人々の主張であり、与野党の一致した見方です。

五、結論:団結と協力で共に挑戦を乗り越える

 最近、私たちはより明確に感じています。台湾の対外関係や国家安全の議題において、台湾の人々の考え方が少しずつ近づきつつあることを。台湾の人々は、地域の平和と繁栄が、これからも永遠に続くことを願っています。

 私は台湾の各政党に呼びかけます。一緒に手を携えて努力しようと。国家の生存と発展のために、民主主義の価値のために、私たちは対外的に一致団結して努力し、手を取り合って国家がこの挑戦を乗り越えられるように導くべきなのです。

 過去71年間、台湾が経験してきたように、苦境は私たちの強さを磨いてきました。挑戦は私たちの士気を高めてきました。今回の新型コロナウイルスは、台湾の人々の団結に対する意識を固め、さらに前進しつづける勇気を私たちにくれました。

 私たちが新型コロナウイルスの侵入を防ぎ、経済発展のための戦略を練り、地域情勢の安定と台湾の安全を守ろうとするのは一体なんのためでしょうか?それはつまり、壮大な国家を台湾の次世代に残すためです。

 私たちがいまここで奮闘しているのはすべて、台湾の次世代、子々孫々に至るまでが、自分たちの創作に自信を持ち、この土地の文化や価値を誇りに思い、そして世界へ向かって果敢に歩み出せるようにするためです。

 中華民国の国慶(建国記念日)というこの日、私たちは一緒に願いましょう。20年後の台湾人が2020年を振り返ったとき、あの年、私たちが時代の転機をつかみ、変化の中で勇敢に前進し、課題を克服し、足枷から脱したからこそ、(20年後の)彼らが真に自分の意思で未来を選択する機会を持てるようになったと思えるように。

中華民国、誕生日おめでとう!皆様、ありがとうございました。

Taiwan Today:2020年10月12日

写真提供:総統府
 蔡英文総統は10日、総統府前で行われた中華民国建国109年祝賀大会で「団結台湾、自信前行(=台湾を団結させ、自信をもって前進する)」と題する演説を行った。