【記事】トランプ政権の対中・対台湾政策 いまだ不透明

トランプ政権の対中・対台湾政策いまだ不透明

トランプ政権発足から3週間。すでに多くの摩擦が発生しているが，米中関係と台湾問題にどう向き合うのか，トランプ大統領は就任後はまだ語っていない。

ティラーソン国務長官，マティス国防長官は議会の指名公聴会で中国について強い姿勢を表明したが，トランプ大統領本人は，為替相場操作国として日本と中国を挙げて批判した以外は中国関連の発言はない。

嵐の前の静けさという感じがする。

トランプは当選後「一つの中国政策」を疑問視する発言をし，中国との交渉で「台湾カード」を使う意図を示した。トランプ発言は台湾にとってありがたいが，同時に警戒感を高める必要がある。

蔡総統は，トランプとの電話会談以降，冷静にふるまい，トランプ発言についてのコメントを控えている。これは賢明なやり方だ。

米歴代政権の「一つの中国政策」は，台湾を国際的に封じ込めると同時に台湾の安全を保障する繊細な計算に基づいている。トランプの意図がわからない段階で台湾がうかつに動けば中国に介入の口実を与え，中国共産党内の強硬派を喜ばせることになる。

トランプが中国を刺激すると中国は台湾に報復するという行動パタンが見えているから，立場の弱い台湾は慎重にしていなければならない。

状況は非常に入り組んでいる。

中国に対するソフトバランシングとして期待されていたTPPはトランプによってあっさりと放棄された。

トランプ政権が通商問題で中国に対決姿勢をとり中国製品に輸入関税を課したら，中国に部品を輸出し中国で組み立て対米輸出する台湾企業に打撃となり台湾経済にも悪影響が及ぶ。

通商重視のトランプ政権は台湾への武器売却と絡めて豚肉市場開放を強硬に要求する可能性がある。台湾は飼料添加物ラクトパミンを使用した米国産豚肉の輸入を禁止している。養豚農家と養豚関連業者は中南部の民進党の支持基盤を成し，輸入解禁は蔡政権への深刻な打撃となる。

トランプ政権が鳴り物入りで台湾を持ち上げれば，中国は逆効果になるとわかっていても台湾を締め上げにくる。交渉のカードとなれば台湾はもみくちゃにされる。

台湾が必要としているのは勇ましい言葉ではなく，静かで目立たない着実なサポートだ。

台湾は米中の駆け引きから逃れられないが，翻弄されるだけの存在ではない。嵐の中で居場所を見出し，常にサバイバルを続けてきた。

来たるトランプ暴風雨を前に，対米関係をぐちゃぐちゃにした陳水扁でもなく，中台トップ会談に猛進した馬英九でもなく，退屈すぎるほど慎重な蔡英文が台湾の総統であるのはよかったと言えるであろう。

政権交代の真の意味がこれから問われる。

【インターネットの記事】

Fukuoka Branch, Taipei Economic and Cultural Office in Osaka