台湾週報2140号(2004.4.22)
台湾WHO加盟に日本の支持を
世界衛生促進のため台湾の加盟必要
衛生人権の概念に反し台湾のWHO加盟はいまだ閉ざされたままであるが、総統府国策顧問である呉樹民・台湾医界連盟基金会理事長を団長とする「台湾のWHO加盟推進」国際遊説団が来日し、台北駐日経済文化代表処の主催によって4月7日、東京・帝国ホテルで記者会見し、医療衛生国際協力の観点から台湾のWHO加盟支持を訴えた。まさに台湾のWHO加盟は日本を含め世界の保健医療のためであり、日本の協力が望まれる。
●日本に強い支援を要請
本年度の世界保健機関(WHO)年次総会が五月十七日からスイスのジュネーブで始まる。台湾は過去七年間、オブザーバーの身分をもって年次総会に参加することを申請してきたが、いずれも中国の執拗な妨害によって実現しなかった。このため本年も国内の政界、医学界などで組織した国際遊説団を日本や欧州に派遣し、支援を要請している。
その一環として四月七日、総統府国策顧問でもある呉樹民・台湾医会連盟基金会(日本医師会に相当)理事長を団長とする遊説団が駐日経済文化代表処の主催によって東京都内のホテルで記者会見を開き、これまでの日本の支援に感謝を表明するとともに、本年こそ台湾の参加が実現するよう、改めて日本政府および民間各界に協力を呼びかけた。
このなかで呉理事長は「台湾全体が超党派ならびに官民が一体となり、WHOへの加盟を強く求め、その活動を積極的に展開している」と強調するとともに、日本政府および民間各界が台湾が一日も早くWHOのメンバーになれるよう支援を継続することを要請した。
同遊説団は呉樹民氏を団長に、呉運東・国策顧問兼無任所大使、李応元・民進党副秘書長、および与野党立法委員の頼清徳、葉宜津、銭林慧君の各氏、李鎡堯、黄亦昇、李明峻の各学者専門家らで構成された。
呉理事長は、記者会見の前に高橋雅二・日本交流協会理事長と会見したことを明らかにし、交流協会が日本政府の立場を代表できないものの、高橋理事長が会見のなかで日本側は継続して台湾のWHO加盟を支持する意向であることを表明したと明らかにした。
同時に呉理事長は「第五十七回世界保健機関年次総会は本年五月十七日から二十二日までジュネーブで開催される予定である。一九九七年から台湾はすでに七年間の努力をつづけてきたが、まだ実現していない。台湾は国際社会の一構成メンバーとしての責任を果たすべく、官民各界は不撓不屈の努力をつづけている。また、このほど再選が決まった陳水扁総統も、台湾がこの一、二年以内にWHOに加盟できることを強く期待している」と表明した。
さらに「SARSや鳥インフルエンザの重大な疾病は人類の健康を著しく害しており、そこに国境や地域の区別はない。世界の普遍的な価値観である衛生人権は、政治的な圧力や干渉を受けるべきではない」と強調した。
また、現在台湾政府は加盟の形態として、「衛生実体」の名義でオブザーバーとしてWHO年次総会への参加を要請し、各国にも支持を呼びかけているが、李応元・民進党副秘書長はさらに一歩進んで「オブザーバーとしての資格で年次総会に出席するのではなく、正式メンバーとして加盟したい」と述べた。
《台北『中央社』4月7日》
●多くの友邦の支持を望む
陳建仁・行政院衛生署長(厚生相に相当)は四月八日、台北で「わが国のWHO加盟について、今年はさらに多くの国々の支持が得られると思う。われわれの目標は一歩一歩前進していると確信している。衛生署は今後とも各種の対外活動を通じて、中国が言う『台湾民衆の健康の面倒を見ている』とする謬論を論破していく」と語った。
さらに陳署長は「欧州向けに与野党立法委員で構成された『台湾のWHO加盟推進』遊説団は、オーストリアの国会がわが国のWHO年次総会参加支持の決議をするなど、多くの成果をあげて帰国した。これまでの一年においても、わが国はAPECの衛生委員会と緊密な連携をとり、日本とは相互交流を進めてきた。これらのことから、わが国のWHO加盟は早期に実現するものと確信している」と表明した。
また阮涓涓・衛生署国際合作組主任は同日「今年はわが国がオブザーバーの身分でWHO年次総会参加の活動を始めてから八年目になる。目下中国は国際社会に、台湾民衆の健康の面倒を見ているなどと喧伝しているが、われわれはこれを論破するだろう。SARSが流行したときも、台湾は自己努力によって難関を突破した。平時においてもわが国三万一千余名の医者が責任感をもって国民の医療に当たっており、中国には根本的に台湾人の健康に留意する能力はない」と表明した。
また阮主任は「わが国はAPEC衛生委員会の構造下に、二十一の経済実体と緊密な連携をとっており、たとえばオーストラリア、カナダ、米国と共同で人材の育成計画を進めている。日本の厚生労働省とは協議を重ね、感染症研究所に関する協力関係強化の協定に調印し、疾病予防について専門家の相互訪問を進めている。今年の冬に流行性感冒が蔓延したときには、タイ、ベトナム等に治療薬、マスクなどを提供した」と明らかにした。
同時に「わが国は欧州連合の研究計画にも参加しており、オランダやイギリスの医療専門家と共同研究を進めている。これらは台湾が公共医療の分野において決して孤立しているのではないということを顕著に示している。各国がわが国医療衛生界のレベルをさらに認識し、わが国のWHO年次総会参加を支持し、わが国が国際医療活動に十分貢献できるようになることを強く望んでいる」と表明した。
《台北『中央社』4月9日》
●台湾のWHO加盟は必要
WHO憲章は「全人類は最高レベルの保健衛生を享受する基本的権利を有しており、またあらゆる加盟国はこの目標を達成するため、世界レベルで善意による協力をしなければならない」と規定している。世界の一人ひとりの健康のため、また全人類の健康のため、これがきわめて重要な概念であることは誰しも否定できないだろう。だが、台湾はこの世界普遍的な価値観の範囲外に置かれたままになっている。
このため台湾は非常な苦難を強いられ、またWHO加盟への努力をつづけている。しかし妨害の壁もまた厚い。たとえば、昨年のWHO年次総会にオブザーバー参加を求めた台湾に対し、中国の代表は「誰が台湾など相手にするものか」と発言し、台湾の加盟を妨害した。その一方において中国政府は「台湾民衆の健康の面倒を見ている」などと事実とは逆の宣伝を国際社会にしている。今年も国際社会とWHOはこのような国の圧力に屈し、台湾に門戸を閉ざすのであろうか。それは人類の悲劇と言う他はない。
昨年のSARSの流行は、医療対策国際協力の重要性を改めて人類に示した。今年もまた鳥インフルエンザの流行が、それを世界に示している。医療の国際連携に盲点があってはならない。もしアリの一穴でもあれば、すべての国際協力が水のアワとなりかねない。台湾は東アジアと西太平洋のヒトとモノの往来の要衝にあるのだ。それを思えば、台湾のWHO加盟が台湾のためだけではなく、世界のためであることは明白であろう。また台湾は医療衛星面においても国際貢献ができる十分な能力を持っている。今年こそWHOの機能を完全なものにするため、世界に台湾への支持を強く要請したい。
【本誌編集部 4月10日】
週間ニュースフラッシュ
◆「台湾客家映像記録学会」が誕生
行政院客家委員会は昨年下半期から客家文化の発展と保存に力を入れ、客家の映像製作の人材育成計画を推進しはじめたが、今年三月二十七日、それを継続的に進めるため客家人二十九名の専門家らが「台湾客家映像記録学会」をスタートさせた。
《台北『民生報』3月28日》
◆台湾高速鉄道に世界最長の高架鉄道完成
台湾高速鉄道敷設工事は目下急ピッチで進んでいるが、彰化県八卦山トンネル以南から高雄市左営までの全長百五十七・三キロの世界最長高架鉄道が三月三十一日に完成した。これまでの世界最長は米ルイジアナ州の三十八・四キロであった。
《台湾『民生報』4月1日》
◆米国は法によって台湾の防衛に協力
米国が台湾に早期警戒レーダーの売却を決定したことについて、マクレラン・ホワイトハウス報道官は三月三十一日、「米国の対台湾政策に変化はない。米国は法に基づいて台湾の防衛に協力する」と表明した。
《台北『自由時報』4月3日》
◆台南銃撃事件に超党派調査委員会設置は違憲
野党の国民党・親民党陣営は台南で発生した三・一九銃撃事件の真相究明のため、超党派真相調査委員会の設置を政府に要求しているが、游錫堃・行政院長は四月六日、「銃撃事件の調査に超党派の委員会を開設するのは、憲政体制に合致せず、憲法に抵触する疑いもある」と述べた。
【行政院 4月6日】
◆三月末の外貨準備高二千二百六十五億二千三百万ドルに
中央銀行は四月五日、三月末の外貨準備高が二千二百六十五億二千三百万ドルとなり、過去最高を記録し続けているが、上昇スピードは先月に比べ鈍化したと発表した。
《台北『工商時報』4月6日》
◆第一・四半期の新竹科学園区への投資八倍に
ハイテク工業団地である新竹科学園区管理局の統計によれば、今年第一・四半期に十二社が新たに進出するなど、この第一・四半期における投資総額は二百三十九億元(約八百四十億円)となり、昨年同期比約八倍になったことが明らかとなった。
《台北『青年日報』4月7日》
◆中国当局は香港民主主義の発展を抑圧
中国全人代が四月六日に香港基本法の解釈権は北京にあると決定したことに対し、行政院大陸委員会は同七日、「中国当局は香港行政に過度の干渉を行い、香港の民主主義発展を抑圧するもので、香港の開放社会に重大な障害になろう」と非難した。
【行政院大陸委員会 4月7日】
◆新憲法では国名も新たに
二〇〇六年に予定されている新憲法公民投票について、姚嘉文・考試院長は四月六日、「新憲法では国名も改正するのが好ましい。中国との区別をつけてこそ台湾の明日がある。ただし各界のコンセンサスが必要だ」と表明した。
《台北『中国時報』4月8日》
◆立法委員選挙に四項目の公民投票実施
公民投票法は立法委員、国民も提議ができると定めていることから、林佳龍・行政院スポークスマンは四月八日、「年末立法委員選挙と同日に国会定数半減、第四原発問題、WHO加盟、党資産処理の四項目について公民投票を実施したい」と表明した。《台北『中央社』4月8日》
◆米在台協会理事長の交代で台米関係影響受けず
米国務省は四月八日にシャヒーン米在台協会理事長の辞表を受理したと発表したが、高英茂・外交部次長は同日、「米国内部の決定であり、これによって台米関係が影響を受けることはない」と表明した。
《台北『自由時報』4月9日》
「両岸政策」は「一つの平和」を原則
陳水扁総統が米外交政策全国委員会に明示
陳水扁総統は四月五日、米外交政策全国委員会の訪台団一行と総統府で会見し、今後の両岸政策について所信を述べた。同訪台団はジョージ・スワブ会長を団長に、ウィストン・ロード前国務次官補、ドナルド・ザゴリア同委員会円卓会議主任、ロバート・スカラピノ・バークレイ大学教授らによって構成された。
訪台団一行はまず冒頭において陳水扁総統の再選に祝意を表明した。陳総統は今後の両岸政策の基本方針について要旨以下のように述べた。
今回総統選挙での最大の意義は、台湾における民意の主流というものを明確にできたという点である。すなわちそれは「台湾を守護し、中国に対抗する」というものであり、北京当局はこの台湾主体の意識の高揚を重視すべきである。
二〇〇〇年の選挙において私は三九・三%の得票率で勝利を得たため、一部の人からは偶然の勝利と見なされ、また少数総統と見なされ、多数の民意基盤を持たない少数政権だなどと言われつづけてきた。したがってこれまでの四年間、両岸政策においても積極的な対策を次つぎと打ち出したが、北京当局、米国の一部の団体、さらには台湾内部の野党勢力などから、否定的な態度をとられつづけてきた。だが、今回の選挙においてふたたび勝利を得ることができた。僅差とはいえ、得票率は前回より一一%も拡大し、票数では百五十万票も増加した。まさに私は主流の民意を得たことになる。このことから私は、今回の選挙によって、北京はふたたびわれわれを少数政権だとか、多数の民意を代表していないなどとは言えなくなり、同時にわれわれを軽視することもできなくなったものと確信している。
このあと五月二十日の就任演説において、私は二〇〇〇年の就任演説の内容を基礎に、両岸関係に対する新たな主張をするつもりである。前回の就任演説では「将来における一つの中国の問題」を取り上げた。それは二千三百万台湾国民は、現在においては「一つの中国」の原則は受け入れられないからだ。「一つの中国」は実際には「一国二制度」であり、これは台湾国民の到底受け入れられないものだ。中国は「一つの中国」は「原則」だと主張するが、わが方はそれを「議題」と見なしている。議題なら、将来話し合うことは可能なものとなる。
このため私は当時、両岸の指導者が知恵を出し合ってこの問題を解決しようと呼びかけたのだ。もし四年前、北京当局がこの呼びかけに理解を示していたなら、今日の両岸関係はこれほど疎遠にならず、台湾の主体意識もこれほど高まりは見せなかっただろう。近年の国家アイデンティティーの民意から言えば、現在の考え方は、自分は台湾人だと認識する意識が、中国人だと認識する意識の五倍以上になっており、これは以前には想像もできなかったことである。北京が対台湾政策を改めない限り、情勢はますます北京にとって不利となるだろう。
こうしたことから、私はすでに両岸平和安定の相互連動メカニズムの構築を提示し、「一つの平和」の原則を「一つの中国」の原則に代え、双方が膝を交えて話し合えるようにし、両岸関係の正常な発展を促そうとしている。今後四年間変わらぬ基本政策は「台湾の団結、両岸の平穏、社会の安定、経済の繁栄」である。このうち両岸平和安定の相互連動メカニズムの構築においては、李遠哲・中央研究院院長に共同召集人の一人となってもらって準備を進めており、早急に具体化するものと確信している。米国も積極的な役割を演じ、両岸の平和の使者となり、架け橋となっていただきたい。
今後四年間において公民投票を憲法の条文に組み入れる予定だが、それは民主改革の目標でもあり、民主主義深化のためであって、台独のためのものではない。公民投票の憲法条文化は、国家の長久な繁栄と政府の行政効率向上のためのものであって、台独とは無関係である。今後も透明と公開を原則に、現状の維持を前提に、憲政改革を進める。
【総統府 4月7日】
呂副総統が銃撃事件の真実を証明
事件発生当時の状況を仔細に語る
呂秀蓮副総統は四月四日、「三・一九銃撃事件の実録」を発表し、さきの選挙活動中に起きた陳水扁、呂秀蓮正副総統の狙撃事件について詳細を語った。以下はその要旨である。
三・一九銃撃事件は、いまだに解明されておらず、一部にはわれわれの自作自演ではないかという声まで上がっている。私は最初に銃撃を受けた身として、いま事件発生当時の経過について各界に説明し、事実を明らかにする必要を感じている。
三月十九日の午後、私は陳水扁総統とともに、同市の選挙本部が用意した赤い小型のジープに乗って市内を遊説していた。われわれが台南市の金華路で、爆竹の音が鳴り響くなか、支持者の熱烈な歓迎に手を振り応えていたその時、突然「パン!パン!」という音が耳に飛び込んできた。この瞬間、硝煙で視線は遮られ何も見えなかったが、私は右膝に強い衝撃と痛みを感じた。かがんで見ると、スラックスが破れ鮮血が滲んでいた。私はすぐ随行員に負傷したと告げ、傷の応急処置をしたが、「まさか撃たれたのでは?」という思いが胸に広がっていた。
この時、私の手が右隣にいた陳総統のジャケットに触れ、何か湿ったものに触ったことに気付いた。見ると総統は手で下腹を押さえながら、もう一方の手はなおも支持者に向かって振り続けている。私が体を起こすと、随行員がジープの防風ガラスの右前方を指差した。するとそこには、輻射状の亀裂が入り、中心に明らかに銃弾と分かる穴が開いていたではないか。私は戦慄を覚えたが、総統はまだ手を振り続けていた。「私たちは二人とも撃たれた。すぐここを離れなさい!」と私は叫んだ。狙撃犯がまだ現場にいて、再度撃たれる危険があったからだ。私の声は周りの音にかき消されたが、私はすぐ病院に連絡するよう指示した。
総統の顔色は次第に青ざめ、「大丈夫ですか」と聞くと微かに頷いたが、私がガラスの弾痕を示すと、「銃撃でしたか」と顔色を変えた。彼は爆竹が当たったと思っていたらしい。総統の顔色がますます悪くなるのを見て私は焦ったが、しばらくして医療班が到着し、ジープを奇美病院へ誘導した。大勢の護衛に囲まれていたため、総統が病院に入る姿は見えなかった。私が救急室に運ばれた時、腕時計を見るとちょうど午後二時だった。後に証明されたところでは、狙撃時刻は午後一時四十五~六分の間、場所は金華路十二~二十号の間で発生したとのことである。
以上、事件発生直後から病院へ到着するまで約十五分間の記憶をたどったが、これにより少なくとも次のことが証明できる。
第一に、陳総統と私は確かに三月十九日の午後に銃撃を受けたこと。これは決して虚構ではない。第二に、最初に弾を受けたのは私であり、弾痕を発見したのは私の車に同乗していた随行員であるため、銃撃事件を最初に認識したのは私である。第三に、事件発生時、私は現場を離れるよう指示したが、犯人を刺激しないよう冷静に対処したため、異常事態に気付いたのは同乗した随行員のみであった。第三に、私は一週間前にも足を負傷し、車に設置した椅子に座って高い位置にいたため、弾は膝に当たり体は免れた。第五に、陳総統に当たった銃弾は彼のジャケットの右前方からワイシャツと下着を貫いて腹部を切り裂いたが、その後ジャケットの内側で止まり、幸運にも私には当たらなかった。
これらの経過はすべて真実であり、だからこそ陳総統と私は、社会が不安に陥らないよう、指導者として国民の範となるべく、傷つきながらも平静を保ち、痛みに耐えたのだ。これを疑う人があることは非常に遺憾であり、そうした疑念が撤回されるよう願うものである。
【総統府 4月4日】
ニュース
台南銃撃事件で内政部長交代
蘇嘉全・屏東県長が新部長に
三月十九日に台南で発生した総統副総統銃撃事件の責任をとるとして余政憲・内政部長(内相に相当)と張四良・行政院警政署長(警察庁長官に相当)が辞任を申し出ていた件について、陳水扁総統と游錫堃・行政院長(首相)は四月五日に会見し、両名の辞表を受理するとともに、新任の内政部長には蘇嘉全・屏東県長を任命し、警政署長は現副署長の謝銀党氏が暫定的に署長代行となることで了承した。行政院では謝銀党氏は職務能力も高く、警察業務の倫理にも合致した人物であるとして、状況を見て正式に警政署長就任もあり得るとしている。
内政部長に就任する蘇嘉全氏は、国民大会代表、立法委員を経て屏東県長選挙に当選した人物であり、林佳龍・行政院スポークスマンは同日、「蘇氏は国会経験も豊富で、屏東県長としての行政手腕も周囲の認めるところであり、国政のため最適の人事である」と表明した。
《台北『自由時報』4月6日》
行政院が新年度施政方針通過
新十大建設を全力あげて推進
行政院院会(閣議)は四月七日、「二〇〇五年度施政方針」案を通過した。内容は陳水扁総統が提示した「台湾の団結、両岸の平穏、社会の安定、経済の繁栄」を施政の総目標とし、全力をあげて国家経済の体質改善を進め、積極的に新十大建設を進め、国民の生活を向上させるというものである。
游錫堃・行政院長はこの施政方針について次の六大主軸を提示した。①各種両岸交流を強化し、全民外交を推進し、国家の平和と安全を確保する。②経済の構造転換を進め、研究開発能力を高め、産業発展の潜在能力を強化する。③金融・財政改革を継続推進し、農業金融構造の健全化を進め、国家資産の運用効率を高める。④生涯学習教育ネットワークを確立し、文化創意産業とスポーツ・レジャー活動の充実を進める。⑤行政改革を進めて地方自治の枠を拡大する。⑥社会安全ネットを拡充し、社会正義を維持する。
【行政院 4月7日】
三月の輸出入過去最高に
景気の回復ますます顕著
世界的な景気回復の影響を受けて台湾の三月の輸出入額は過去最高を記録し、台湾経済の景気回復がますます顕著となった。三月の輸出額は百四十七億八千万ドル、前年同月比一七・二%増であり、輸入額は百四十一億ドル、同二九・二%増、出超幅は六億八千万ドルであった。一~三月累計では輸出額は三百九十八億一千万ドル、前年同期比二二・五%増、輸入額は三百七十八億二千万ドル、同三一・三%増であった。
三月の地域別輸出額は香港・中国が五十二億八千万ドル、前年同月比二二・九%増、米国が二十四億二千万ドル、同七・四%増、欧州が二十一億五千万ドル、同二一・八%増、日本が十一億三千万ドル、同四・七%増であった。また三月の輸入品目は農工原料が九十八億七千万ドル、前年同月比二八・四%増、資本設備が三十億四千万ドル、同三六・八%増となり、景気回復傾向が今後も継続することを示している。
【行政院主計処 4月7日】
北京常駐代表処設置検討
蔡英文・陸委会主委が語る
陳水扁総統は海峡両岸双方が互いに相手国に代表処を設置することを提議し、五月二十日の就任式までに台湾側の北京駐在代表の人選を行うと表明している。これについて四月八日、立法院内政委員会で質問があり、蔡英文・行政院大陸委員会主任委員は「この陳総統の提議は、可能性を論じ合うことよりも積極的に考慮するかどうかが重要だ。両岸が相互に代表処を設置するのは、両岸の意思疎通の上にきわめて重要なことであり、両岸の長期的な関係維持のため、絶対に必要なことだ。両岸関係の良好な相互連動メカニズムの構築は政府の既定方針である」と述べ、相互間の代表処設置に前向きな姿勢を示した。
同時に「中国はまだ台湾を観察しているようだが、その時期が一段落ついたなら、台湾の民意の動向と台湾海峡の現実を、実務的に見るよう希望する」と、中国当局への期待感も表明した。
《台北『中央社』4月8日》
教育について思う④
李遠哲・中央研究院院長
八、新たな問題と知識モデル
世間ではわれわれ委員会を「教育改革者」と呼び、また別の人たちからは「教育改革団体」と呼ばれていた。だが、われわれはそもそも団体などではなく、メンバー同士意見が一致することなど、そう多くなかった。官には官の見解があり、民には民の意見がある。民間には多くの団体があり、それぞれに主義主張がある。このため互いに譲歩できず、教育改革についても常に矛盾や衝突が生じた。こうした状況において、今日多くの「教育改革政策」はそれぞれ異なる背景を持っており、そのことが多様でありながらその改革理念と哲学がわかりにくいものとなってしまっている。このため、単純に「教育改革者」とひとくくりにし、それらの責任の所在を求めることはできない。
まず「四一〇教育改革連盟」について、われわれ教育改革委員会が設立された同じ年の四月十日に行われたこの大規模デモから話を始めることにしよう。かれらが当時主張したのは、政府に対し、より多くの教育費を投入して質の高い高校、大学を増設し、都市と地方の格差を縮め、進学の圧力を減らすことだった。こうした主張は、当時社会から大きな支持を得たはずである。
われわれは最終的な報告書を提出して解散したが、その後社会状況が変化したからといって、改革に対する考え方や政策の策定、実施の歩みを止めるわけにはいかない。このため、教育改革の分野において新たな事項が次々と浮上した。「九年一貫カリキュラム」も、あくまでその中の一つである。
「九年一貫カリキュラム」は、実際には放課後のカリキュラムにおいて、教育の専門性と自主性を促し、授業科目を減らし、生活教育の定着を進めるものであった。そのプラスの意義は失われてはいないものの、カリキュラム全体の起草から企画、推進の段階で、それらは必ずしも段階的に実施されず、急いでカリキュラムの目標と指導要綱が定められてしまった。そこには教材も授業も試行期間を与えられず、教師も研修時間が設けられないまま、全国一斉に「一二四七案」が実施されることになった。それは、二年目から小学一、二年生、四年生と中学一年生(または七年生とも言う)において、同時に実施するというものであった。
準備作業が不十分だったために、かつてないほど大規模で広範囲なこのカリキュラムの改革は、授業目標からカリキュラムの概念、指導要綱の策定、さらに教科書の編集、教師の育成について、どれも不満足なものとなった。
当時各地で行なわれた座談会で、私は「教師こそ教育改革の推進力にこそなれ、圧力になってはならない」と繰り返し強調した。残念なのは、「九年一貫カリキュラム」が一部の教師から大きな恨みを買ったことである。カリキュラムの改革はもともと教育改革の重要な柱である。改革が順序よく段階的に行われなければ、問題も起きるだろう。
ここでもう一つ、大学数が増えた問題について述べてみたい。
これは、大量に五年制専科学校を学院に昇格させたことが問題の根源だと指摘され、多くの人びとが「高校・大学の増設」政策に不満を示した。だが、われわれは一度もこれを提議したことはなく、教育部ももとよりそうした政策は考えていなかった。ただ、高校・大学の増設が、その精神から乖離して「技術立国」の政策に結び付き、五年制専科学校の昇格という措置が、こうしたねじれの構造のもとに実施されたのである。
われわれはまた、選挙のたびに政治家が競って小切手を切り、地方が要求する大学設立の要求に教育部は断り切れない状況を知っている。これについてわれわれは、もともと普通高校と職業高校の比重を調整して高校生の数を増やすとともに、全体的に高校の質を高める前提で、四年制大学の受け皿を適度に広げることを考えていた。
残念ながらここ数年、批判する人びとは問題の禍根をすべて高校・大学の増設に帰している。これは状況の原因と結果を単純化した言い方にすぎず、実際には何の役にも立っていない。
ここ数カ月、「十二年義務教育」が新たにホットな話題となっている。この問題はおのずと「進学圧力の緩和」に関連してくる。時代が変化し、義務教育のレベルアップはもはや避けて通れない趨勢となっている。ただ前人の轍を踏まないことが重要だ。もしわれわれがこの問題を重要視するのなら、もっと真剣にこれについて討論し、企画を練り直し、円滑に実施できるよう各種の措置を講じるべきである。これは多くの教育改革の問題より、もっと困難な問題である。
いまこの問題に手をつけるかどうかは、社会と政府が国民の素質や社会全体のレベルアップを、どれだけ重要視しているかにかかっている。行政院高等教育宏観企画委員会はすでに将来の高等教育に対する青写真を示しており、教育部は事前に出生率の教育全体に与える影響などを真剣に検討し、将来の教育計画の参考とすべきである。
そしてこれらは、すべて公開の討論と理性的な思考を経て多くの人びとの意見を集約し、徐々に実現可能な政策としてまとめあげる必要がある。ここ数年、教師の専門性と自主性が問題になっているが、いま教師たちが積極的に動き出していることは非常に喜ばしいことである。専門を極めるのに終わりということはなく、それ以上に尊いのはそうした信念を確立したことである。
私は数カ月前、妻と一緒に清境農場へ朱銘大師を訪ね、ある農家でお茶を飲んでいた際、数人の若くて情熱的な教師と知り合った。かれらは私を一目見るなり、「私たちは教育改革を支持しています。改革にそれほど大きな問題はありません」と語り、別の学校の校長や主任の多くも同様の言葉をかけてくれた。私はこうした現場の教師の努力と自信に感動した。だが、一方でそうした教師のいない不幸な学校のあることも知っている。そうした学校は解決すべき問題がほかにもあるかもしれない。しかし教育改革の多くが、実際にはその解決方法を見つけ出すことはそれほど難しくはないのだ。
郷土言語の授業について言えば、その学習にテストはそぐわないという意見がある。なぜなら、郷土言語は家族とのコミュニケーション言語だからだ。子供に対し、もっと両親や家族との対話を促せば、学習の障害を取り除くことができるかもしれない。もし熱心なあまり授業で学習を強要したら、かえって子どもたちの拒否反応を引き起こしてしまうだろう。
われわれの社会は急速に変化し、科学技術の進歩は経済構造の転換をもたらした。これにより、単純な繰り返し作業や固定された仕事の多くは、頭のよい機械に完全に取って代わられ、手に職を付け一生を安泰に過ごしたいとの伝統的な考え方も、徐々に失われつつある。人類学者の言うように、古い知識体系では新しい問題に対応できず、われわれには新たな知識モデルが必要なのかもしれない。それは知識体系に限らず、一般的な行政体系も同様である。
われわれは、新しい教育システムを確立するには、教育部組織法の修正、教育行政システムの改善、教育組織の構造転換が必要であると建議した。もしそれぞれに専門の審議委員会が設置されれば、教育政策はより専門的な方向へと向かうだろう。そしてそれこそが教育改革に求められる点であり、われわれの次世代はよりよい、より多くの教育が受けられなければならない。
教育には安定した不断の改革と、時とともに進歩することが求められる。改革は苦難を伴い、より多くの人材と資源を必要とする。政府の教育に対する投資は充分とは言い難い。かつて、教育、科学、文化に対する政府予算は憲法により総予算額の一五%と保障されていた。だが、憲法修正によって、この価値ある条文が削除されてしまったのだ。政府の地方に対する教育補助も、地方交付税の条例枠に組み込まれた結果、削減されてしまった。
政府の教育に対するツケはいまや積もり積もって膨大となり、一回限りではもはや返済できなくなっている。だが、われわれは毎年徐々に減らしていく努力を続けなければならない。そして、われわれにとって最も重要な投資は教育であることを決して忘れてはならない。
(以下次号)
《台北『自由時報』3月6日》
李遠哲・中央研究院院長が来日講演
両岸問題では「共通の心理」を指摘
ノーベル化学賞受賞者の李遠哲・中央研究院院長は四月三日、東京都内のホテルで「知識分子の社会責任」と題した講演をおこなった。本講演会は、早稲田大学の名誉博士学位の贈呈式に出席する李氏の来日に合わせ、台湾中工会日本分会、留日大学教師聯誼会、日本台湾医師連合、中華民国留日東京同学会が主催したもので、旅日各僑会、僑団の共催、台北駐日経済文化代表処の後援により開催された。
李遠哲氏は講演のなかで、「知識分子(高等教育を受けた国の精鋭)はともに台湾社会を改革する責任を担う勇気を持って欲しい」と呼びかけ、「知識分子はその本分である学業にいそしむのはもちろんのこと、強い信念を堅持し、道徳と勇気を持って、台湾社会を公平で正義に溢れる理想の民主法治国家となすべく努力しなければならない」と主張した。また「次世代の生存と地球の持続的発展のため、人類はできるだけ早急に過度なエネルギー使用による環境生態の汚染と破壊を解決すべきだ」と述べた。これまで九・二一中部大地震後の復旧事業や教育改革などの諸問題に大きく貢献して来たことについては、「台湾社会が危機に直面した際、求めに応じてそれを助けて来ただけだ」とその功績を謙遜した。李氏はさらに、「人と人の競争において手段を選ばず相手を追い詰める方法が横行しているが、こうした現象は法の不備と深い関係がある。古い法治観念を持ち続けていることが台湾社会における最大の悲劇だ。政府改革、国会改革と並び、民主法治を改めて推進することが台湾社会における緊急課題である」と強調した。
●両岸の「共通の心理」を指摘
また、さきごろ両岸九人小組の招集人の一人に選ばれた李遠哲氏は、両岸問題に言及し「中国は過去二百年の間虐げられてきたため、『統一』の主張が非常に強くなった。同様に、台湾は二度の大戦後、政府の威力と権力、統治の腐敗により、多くの人が『いつの日か立ち上がろう』と強く願うようになった」と述べた。さらに李氏は「中国の言う『統一』にせよ、台湾で一部の人が主張している『独立』にせよ、その背後にあるのは『もうこれ以上虐げられはしない』という共通の心理であり、互いにこの観点については理解し合うことができる」と指摘し、「この考えを基礎とし、両岸がともに努力し、長い目で考えるなら、現在の硬直した局面を打開する方法がみつかるだろう」と表明した。
両岸九人小組は近々活動を開始する予定で、陳水扁総統はさきごろ、関連事項について李氏に相談を申し入れたことが伝えられている。また読売新聞のインタビューでも、五月二十日の就任式で両岸関係について新たな主張を発表することを示唆した。李遠哲氏が今回の講演で表明した「両岸共通の心理」がこの新主張の一部となるのかが、注目されるところとなっている。李氏はさらに、「いま台湾は生態環境資源の保護、両岸問題、政府および国会改革など数々の問題に直面しているが、両岸の平和安定と意思疎通が非常に重要である。台湾はこれ以上時間を無駄にすることはできない」と訴えた。
影響力の強い人物として有名な李遠哲氏の講演には、数百名に及ぶ在日僑胞らが出席した。講演内容は氏の専門分野である自然科学から社会人文など多岐に亘り、また中部大地震の発生直後に、夫人が早く逃げるよう叫ぶ側で停電の時刻から地震の規模を計算していたエピソードなど、ユーモアも交えた経験豊かな話し振りで聴衆を惹き付けた。
《台北『中央社』4月3日》
宝島あれこれ
胡おじさんの貸し本屋
台北市の新東街に、知る人ぞ知る、老舗の古本屋がある。この店には店名も看板もなく、エアコンもなければ客のデータを管理するパソコンもない。口コミで聞いて来る客がほとんどだが、客足は絶えることなく、十七年続いているという。
六十年代にタイムスリップしたような古びた店内には、漫画や小説が所狭しと並べられ、名物店主胡おじさんの大声が響く。
「うちでは気分で本を貸しているからね、客も返したい時に返してくるよ。返却を催促するなんてやぼなことはしないね。読書というのは楽しむためにするんで、せかされたら読む気も失せるだろう」
胡さんは以前は副業でこの店を営んでいたが、定年退職後は「貸すも返すも客次第」の信用貸しでやっている。この店で借り始めて一年というある客は、「最近流行りの貸本チェーンはあれこれ規則ばかりだが、この店は証明書も保証金も取らないし、返却も融通が利く」と、台北郊外の新店から、わざわざ通っているという。またある客が「どこでさがしてもなかった最新刊の漫画をここで見つけた」と話すほど、古い店だがなんでも揃っている。
本が帰ってこない例も時々あるが、半年間十数冊を借りっぱなしで返すのを忘れ、四冊失くしたからと弁償金を渡そうとした客には、頑としてこれを辞退したという。その一方で、別の客が遅れたおわびにと差し入れたビール半ダースは快く受け取る。昔なじみの客が海外から帰国し店に来ては「まだつぶれずにやっているのか」とからかうが、胡おじさんは気にせず、「個性的で人情味のある店をやりたいから」と、嫌な客を見れば貸し賃を値上げし、アイドル系雑誌や一部の本はくだらないからと扱わず、今日もマイペースである。
《台北『聯合報』3月25日》
焼きたてパンをもっと食卓へ
台湾の街角でよく見かけるパンやケーキを売るベーカリーだが、統計によると、台湾全国にはこうしたベーカリーが七千店以上あり、それらの年間総生産高は百六十九億元(約六百億円)に上るが、最近ではコンビニエンスストアがこの分野で勢力を伸ばし、市場の取り合いが激しくなりつつある。
こうしたなかで「第四回台北国際ベーカリー食品および設備展」が三月二十六~二十九日まで「すてきな一日は焼きたてパンから」をテーマに開催された。二年に一度のこの展示会に、今年は三百社が出展し、各社自慢のさまざまなパンやケーキの実演販売がおこなわれ、一元(約三十円)パンのタイムサービスも人気を集めた。また、三秒で月餅の皮を作れる手動式成型機をはじめ、最新の製造設備も展示実演された。台湾ではベーカリー食品の製造設備も毎年六百万ドル輸出されており、同展示会は設備や原料の展示もあり、同業者間の技術交流の場ともなっているという。
主催者の台北市糕餅商業同業組合はこの展示会に際し、「コンビニパンは大量生産で、パン本来の味が生きていない。弾力があって香ばしい、本物のパンをもっと食べて欲しい」と、専門店の味を消費者にアピールしている。
《台北『青年日報』3月24日》
台湾で初の女子リトルリーグ結成
三月二十五日、台湾初の女子リトルリーグチームが花蓮明廉小学校で結成された。小学校三年~六年生の十三名で構成され、すでに少年野球チームと練習試合も済ませ、正式な試合を待つばかりだという。結成に携わった明廉小学校の教員・李玉祥さんは「台湾に多くのチームが生まれ、ともに女子野球界の発展を促進したいと願っている」と語っている。
《台北『中央社』3月25日》
「雲嘉南濱海国家風景区」が誕生
バードウォッチング、製塩体験、史跡めぐりなど魅力満載
台湾西南部の海岸沿いに位置し、砂丘、潟湖、河口、湿地と多彩な地形に富み、伝統の製塩や悠久の史跡にも恵まれ豊かな観光資源を有している。観光局において長期にわたる準備を重ね、当地に昨年末、台湾で十二番目の国家風景区「雲嘉南濱海国家風景区」が誕生した。
【概要】
雲嘉南濱海国家風景区管理処は二〇〇三年十二月二十四日に成立した。雲林県、嘉義県、台南県および台南市と、南部の四つの県と市にまたがる。北は牛挑湾渓、南は塩水渓、東は台十七線、西は沖合い二十メートルまでを範囲とする。陸の面積は約三万三千ヘクタール、海の面積は約五万六百ヘクタールである。
「雲嘉南濱海国家風景区」の設置は、「二〇〇八国家発展重点計画」の柱の一つである観光客倍増計画に合わせたプロジェクトである。延べ数十キロの砂州、砂丘、湿地、潟湖などの海の生態、当地伝統の塩田産業および漁業文化、宗教文化、漢民族到来の史跡、さらに毎年冬季に訪れるクロツラヘラサギなどを目玉にして観光開発が進められてきた。
●旅のテーマ
「雲嘉南濱海国家風景区」では、さまざまなテーマを持った旅をセレクトし、個人の趣味やスケジュールに合わせた行程をアレンジできる。たとえば、自然生態の旅、地場産業に触れる旅、歴史宗教の旅などである。短時間で中身の濃い台湾の旅が体験できよう。
(1)自然生態の旅
当地には世界の六〇%にあたるクロツラヘラサギが集まる。国際的な保護鳥で、世界にわずか一千羽前後しかいないと言われている。毎年十月ごろになると、シベリアから台南の沿海に渡ってきて冬を過ごす。ときには七カ月も逗留し、バードウォッチングや鳥類研究のメッカとなっている。また、延べ数十キロにわたる砂州、砂丘、湿地、潟湖などには豊かな生物が息づいている。さらにマングローブは、鳥類、魚類、カニ、貝などの生物の宝庫である。以下にその主な生態観察のスポットを挙げる。
①外傘頂洲:雲林嘉義の外海に位置し、おもに濁水渓の砂石が沖積している。一つの漂流する砂州島で、海流や季節風の影響を受けて、毎年八百メートルずつ南に移動していると言われる。外傘頂洲と台湾本島の中間の海底は陸棚になっていて、水深はわずか二~三メートルで、浅い海の魚介類が豊富だ。カキ、ハマグリなどの養殖も盛んである。昼、外傘頂洲は黄砂に包まれ、夜にはそれが金色に輝く。晴れれば満天の星に手が届くようである。カニなど砂地の生物の天国になっている。
②鷔鼓湿地:嘉義東石郷に位置し、湿地植物、鳥類の宝庫である。白頭翁、大巻尾、緑繍眼、彩鷸などの留鳥に加え、魚鷹(ミサゴ)、ガン、カモ、筒鳥(ツツドリ)、カモメ、黒鸛(ナベコウ)、灰斑鶲(エゾビタキ)などの旅鳥が立ち寄る。バードウォッチングの愛好家には見逃せないスポットである。
③曾文渓口湿地:アジア東端の渡り鳥の中継地になっている。毎年数万羽の渡り鳥が越冬するが、なかでもクロツラヘラサギがもっとも有名である。世界ですでに一千羽に満たないという稀少な鳥であるが、台湾ではそのうちの七百羽以上が冬を越す。台湾では、世界の関係者と協力してその保護に当たっている。
④七股潟湖:台南県七股郷にあって、河川から運ばれてきた砂が堆積し、さらに海水、風力の作用によって河口を塞いだもの。分水嶺を境に、内海と外海に分かれる。潮の流れは確保されているので、湖水は活性状態が保たれ、内海の生態は豊かである。水質は良好。台湾最大の潟湖で、その地理的特性から世界的にも有数の生態環境を具えている。少なくとも二百種以上の魚介類、三十種以上のカニが発見され、鳥類、両棲類とともに自然の教室を形成している。
⑤マングローブバードウォッチングエリア:七股の曾文渓河口は、マングローブが繁茂する湿地を形成しており、生態保護区に指定されている。一面に呼吸根が水面から顔を出している姿は壮観である。淡水、海水の混じるマングローブ林にはいろいろな生物が生息し、湿地にはトビハゼ、シオマネキ、シラサギを見かける。当地に来る渡り鳥も数万羽に達する。
(2)漁、塩業の旅
嘉義布袋から台南七股にかけて続く三十数キロの海岸線上に、布袋、北門、七股と台湾三大塩田が並ぶ。その合間には養殖池が点在し、数十ものピラミッド状に積まれた白い塩と水面が平原に輝いている。塩田、塩山のほか付近には塩業博物館、塩業体験村、遊園地がある。伝統産業を観光開発に生かした好例である。
①七股塩場:毎年四月の収穫期には、ブルドーザーやトラックが塩田の間をめまぐるしく行き来する。この一帯最大の塩山である。七股塩山は、高さ二十メートル、重量八万トンに達する。市場価格に換算すると一億元(約三億五千万円)以上するという。この塩が特別なのは、台湾において伝統的製法で作られた最後の塩だということである(現在はすべて機械によって製塩)。七股塩場には、ソルトアイスキャンディや健康塩プールがある。得がたい体験が待っている。
②カキの養殖:カキは当地住民の重要な生計の源となっている。水深に合わせて、「浮棚式」「垂呎式」「平掛式」といった三種の方式で筏をつくり、湖面を珊瑚礁のように覆っている。そうした筏を漁民たちが行き来する様も風物詩の一つである。近くのレストランでは、新鮮なカキを使った料理が味わえる。
(3)歴史、宗教の旅
雲嘉南地方は漢人がもっとも早期に開発した区域で、台湾開拓の出発点として多くの史跡が残っている。鹿耳門は四百年前に渡来した漢人が上陸したところで、古い運河や砲台などがその歴史を物語っている。当地の民は媽祖や王爺を信仰している。代表的な廟である媽祖を祭る北港朝天宮・王爺を祭る麻豆代天府および南鯤◆代天府には、毎年千五百万人の参拝客がある。こうした寺巡りも当地の観光の魅力である。
①鄭成功上陸記念碑:明末の英雄・鄭成功は四百艘の船を率いてこの地に上陸し、当時台湾を占領していたオランダ人を追い払って台湾開発の基礎を作った。この記念公園は、鄭成功にまつわる重要な施設で、園内には鄭成功の銅像、記念館、上陸記念碑、さらに太鼓橋、東屋、噴水などもあって、散策が楽しめる。
②南鯤◆代天府:南鯤◆代天府は、五姓王爺廟と呼ばれるように、李、池、呉、宋、范という五つの姓の王爺を祭っている。明末の創建で、国家二級古跡に指定されている。台湾最高の王爺廟として信仰を集め、年中線香の火が絶えない。敷地は六万坪近く、建築は勇壮かつ優美。旧暦四月末(新暦六月中旬)は李王爺および范王爺の誕生日に当たり、南鯤◆代天府では王爺祭が執り行われる。台湾の祭りならではの、いろいろな陳頭(武術集団)が集まり、熱気に包まれる。台湾の人たちの篤い信仰に触れる絶好の機会である。
③鹿耳門天后宮:祭られている媽祖像は樹齢千年の紫檀をもって明代に彫刻されたもの。寺の建築も華麗かつ非凡で、南方寺廟建築の代表と言われている。媽祖船は台湾でも極めて珍しく、旧暦新年、元宵節、媽祖生誕など重要な祭典のときにのみ廟を出る。
当地へは、南北縦貫高速道路のほか、東西方向の快速道路も建設中で、交通至便である。台南市内、阿里山、日月潭などその他の著名観光スポットへも一時間足らずで行ける。
●お奨め一日コース
①東石―布袋―好美寮:鷔鼓でバードウォッチング・ミニトレインー◆港から筏乗船―外傘頂洲―東石港で食事―網寮漁村体験―布袋塩田周遊―自然を満喫
②北門:双春の浜―烏脚病医院見学―北門塩業文化探訪―カキ漁村体験(あるいは藍色公路)―海濤園で昼食―瓦盤塩田とカニ観察―東隆宮
③七股:海寮ハーバーでバードウォッチングー藍色公路―網仔寮汕観砂―内海藍色公共路―観海楼から展望―塩業博物館で昼食―塩山―青鯤◆塩扇で夕景―将軍港からボート
④クロツラヘラサギ―台江:ヘラサギセンター―国宝鑑賞―国聖灯台―南湾から竹筏―頂頭額汕◆水―六仔孔で潮干狩りー渓南村で昼食―聖母廟―北汕尾地形センター―四草塩田生態文化村
●お奨め二日コース:
①第一日:鷔鼓湿地バードウォッチング・ミニトレイン―◆港から竹筏―外傘頂洲―東石港で食事―網寮漁村体験―白水湖塩田―好美寮潟湖羽舟行―七股塩山宿泊
②第二日:馬砂溝海水浴場―将軍港―青鯤◆塩扇、カニ観察―藍色公路―網仔寮汕観砂―観海楼―七股塩山、塩業博物館で食事―海寮ハーバーでマングローブバードウォッチングー龍山の夕景
●在地美食小吃
*東石海鮮:カキ養殖で有名な東石郷の新鮮な海鮮。年中を通じてとれるカキを使ったカキのフルコース。付近に海鮮レストランが多い。
*七股北門サバヒー:塩田地帯は台湾最大のサバヒーの養殖区で、獲れたてのサバヒーを使った料理のほか、北門郷農協では干物、蒲焼、団子、缶詰などを売り出している。
さらに各都市部では観光夜市があり、いろいろな郷土の小吃が安価で楽しめる。
《『台湾観光月刊』3月号より転載》
文化ニュース
台湾の大学生チームが国連大学生サミットに参加
台湾の大学生チームが四月にニューヨークで開催される「大学生による国連サミット会議」に参加する。
台湾が同会議に参加するのは今回が初めてで、金車教育基金会が窓口となり、全国から応募のあった百人余りの大学生の中から優秀な二十三人が選抜され、青年大使として派遣される。
選ばれた二十三人は全員半年間にわたる厳しい専門の訓練を受けた。世新大学法律学部の林怡君さんは「英語の議事規則と弁論術が大きな試練だった。正式な政策報告とその質疑応答もレベルが高く、自分にとって非常に勉強になった」と話している。
会議では、世界の各大学生チームがそれぞれ割り当てられた国連加盟各国の経済や社会情勢などについて深く勉強し、それらの国ぐにを代表して出席する。台湾の大学生チームはタイとギニアを代表し会議に臨む。五日間の日程で行われ、最終日には実際に国連本部で会議を行ない、国際政治を生で体験する。
同会議は国連の賛助を受けており、世界各国から大学生およそ三千人が参加する。この中には中国の学生も含まれている。現実の社会では台湾は中国の圧力により国連に参加できないでいるが、会議を通して大学生は対等の立場で中国と渡り合い、国際政治の現実を学ぶ機会となる。
《台北『民生報』3月27日》
暗算と数学で台湾が世界一
四月四日にソウルで開催された「二〇〇四年第20回国際暗算・数学競技大会」で、台湾の参加チームが両種目とも総合優勝という快挙を成し遂げた。
大会は暗算と数学の二種目について、それぞれ幼稚園児、小学生、中学生、高校生の部で行われた。開催地の韓国をはじめ、日本、カナダ、香港など世界十二カ国から合わせて六百名余りの選手が参加し、台湾からは二百六名が出場した。
台湾のチームは、両種目の総合優勝だけでなく、暗算、数学の各々の部すべてで一位を獲得した。
台湾チームの活躍について、韓国や日本の監督は「前回より非常にレベルアップして驚いた」と話している。また黄栄村・教育部長は「暗算は学校の授業科目ではないが、台湾では一貫して重視されてきた。課外活動や塾などで教師が熱心に指導しており、生徒の努力と成果が現われた」と喜びを語った。
《台北『中央社』4月5日》
台湾観光年
魅力あふれる玉山登山
●玉山の標高が修正
台湾一の高さを誇るだけでなく、東アジアの最高峰でもある「玉山」は、日本統治時代には富士山より高い山という意味で「新高山(ニイタカヤマ)」とも呼ばれた。日本の年配者のなかには現在も「ニイタカヤマ」の呼び名の方が馴染み深いという人もいるかもしれない。
実はこの玉山の標高はこれまで何度か修正されている。最も高かったのは、一八九七年に日本人によって測量された4145メートル。現在台湾のほとんどの教科書は3952メートルと紹介している。これは伝統的な三角測量によって割り出された数字で、内政部土地測量局が一九九九年九月二十一日の中部大地震直後に測量した際には3978・454メートルだった。そしてふたたび昨年七月から十一月にかけて行った測量では3951・798メートルという結果が出た。今回は水準測量、重量測量、それに衛星を使った測量の三つの方式で実施され、最も正確な数値と見られている。「従来の三角測量では誤差が多く、四年前の数値より約二十六メートルも低くなったのは、海底のプレート運動による影響を受けているためと思われる」と内政部では分析している。
《台北『聯合報』3月31日》
●三千㍍級登山が個人にも開放
ところで、台湾の面積は九州より小さいにもかかわらず、三千メートルを超す山々が百以上あることをご存知だろうか。これまで三千メートル以上の登山は団体ツアー客に限られていたが、昨年から個人登山も認められるようになっている。とくに玉山ではガイドの同行も自由になったため、単独あるいはカップルで登頂を目指す人も増えている。
富士山や日本アルプスの登山経験のある人なら、玉山への登頂は難しくない。玉山への登山口は標高2600メートルにある塔塔加(タタカ)鞍部で、この手前の上東埔までは車で行けるため、自家用車はこの駐車場に停めておき、ここから山頂まで一泊二日で往復することになる。前夜はこの付近、あるいは阿里山中腹の旅館か民宿で一泊するのが普通だ。早朝に宿を出発し、塔塔加で一休みして、ここから八・五キロの山道を五~六時間かけて排雲山荘まで歩く。山荘で一泊して翌朝午前三時ごろに山荘を出発すれば、ちょうど山頂で御来光を拝むことができる。山頂からは天気がよければ三百六十度の大パノラマが広がる。
排雲山荘までの登山道は危険な個所や急な勾配は少なく、変化に富み、飽きない。とくに、日本と異なり、三千メートルを越しても緯度の関係で樹木が鬱蒼と繁っており、高度の上昇とともに広葉樹林から針葉樹林へと、その変化を楽しめる。
●玉山登山への注意事項
玉山は山地管制区にあるため、登山には事前に入山許可の申請が必要。遅くとも一週間前までに内政部警政署(台北)に申請するか、玉山国家公園管理処のホームページ(http://www.ysnp.gov.tw)を通して申し込む。
《『台湾観光月刊』2003年11月号より抜粋》
順益原住民博物館が十周年
台北の故宮博物院に隣接し、先住民をテーマにした私立博物館「順益原住民博物館」が今年九月で創立十周年を迎える。同館では特別展を開催するため、今年一月から休館にして準備を進めてきた。三月三十一日から始まった特別展では、同館にまつわる昔の写真を展示しているほか、中国語と英語による案内板、コンピュータ案内システムの導入、さらには中国語、英語、日本語による音声ガイド機の貸し出しなど、この十年間の展示方法の変遷を写真やパネルで紹介している。
また一階には新しく先住民音楽を鑑賞するエリアが設けられた。台湾を北限とし、東はチリ・イースター島から西はアフリカのマダガスカル、南はニュージーランドに至る南島語系のさまざまな民族音楽が納められている。このほか、地下一階には3Dシアターが誕生し、台湾の先住民をテーマに、かれらの大自然との共存を描いた映画『原猟』などを放映している。
《台北『民生報』4月1日》
新刊紹介
台湾ビジネスの法務・会計・実務
白石常介 著
本書は、台湾進出日本企業の経営者、ビジネスマンのために編纂された専門書であり、台湾の有力会計事務所である「勤業衆信会計師事務所」が編集し、国際的なプロフェッショナル・サービスファームである「監査法人トーマツ」が監修している。執筆者の白石氏は勤業衆信の幹部メンバーである。本書は台湾のビジネスに携わっている人を対象とし、企業の台湾進出形態、各種拠点設立の手続き、またその変更等に関する登記関連事項、営利事業所得税、公司法、証券交易税、関税、外国人投資条例、労働基準法等の主要諸法規、会計基準規定、日台勘定科目対訳表、連結・税効果会計・キャッシュ・フロー計算書の概要、その他の重要事項が平易に解説され、台湾でのビジネス展開のガイドとなっている。
〈発行‥(株)税務経理協会 ℡03(3953)3301 ¥5400+税〉
春 夏 秋 冬
余計なお節介は迷惑そのものだが、台湾の総統選挙に中国が日本、米国とまったく異なる反応を見せ、それの度も過ぎていたことにはいささか驚いた。3月26日に中央選挙委員会が法の規定に沿って陳水扁総統・呂秀蓮副総統の第十一代正副総統選挙当選を公告したが、これを受けて日本の交流協会は即座に「台湾がますます発展し、今後の日台関係がさらに発展することを希望する」との祝電を陳総統に送った。米国も同日、マクレラン大統領報道官が米政府の祝賀声明を発表した。これら日本や米国からの祝賀の言葉は、台湾の国民にとって民主主義の深化に自信を持たせるとともに、相互間の友好関係を一層強めるものとなった。ところが中国の反応は、これとは正反対だったのだ。
当選公告の日、中国国務院台湾事務弁公室は、野党側の「強烈な反対にもかかわらず」中央選挙委員会が陳総統、呂副総統の当選を公告したことに、まず「注意を払っている」と睨みを利かせ、ついで「もし台湾情勢が混乱したなら、座視するわけにはいかない」などと凄味を見せたのだ。
日本のマスコミでもよく報じられているように、選挙後混乱が発生していることは事実だ。しかしそれらは選挙の事務的管理の法によって処理されている。なぜなら、台湾は中国と違って民主法治の国だからだ。一時大規模なデモもあったが、それも民主主義のルールを重視する市民の理性によって、すでに沈静化に向かっている。
ここで問題なのは、中国が明らかに台湾に対する内政干渉を行い、そこに暴力団まがいの脅しまで付け加える発想の根本は何かということである。中国語に「以小人之心度君子之腹」という言葉がある。小人の尺度をもって君子の腹を量るという意味だが、十五年前の天安門事件を思い起こしていただきたい。中国は反対意見を腕力で無理やり封じ込めた。これが中国のやり方であり、民主法治の台湾とは根本的に異なる。つまり中国は自分の尺度で、台湾での今回の混乱を見つめ、それが拡大するかのように思い込んでいる。その思惑が外れたとき、中国は自己の見方の誤りが理解できるだろうか。
米国はこれに対し、当選祝賀声明のなかで「われわれは民主主義原理を脅かす暴力を拒絶する」と言明している。まさしく台湾海峡の平和擁護は、民主主義を護る戦いであるのだ。日本の各界も、この台湾海峡の紛争の本質を十分に見極めて欲しい。(K)