台湾週報2141号(2004.4.29)
中国の理不尽な批評を指弾
行政院が北京に現実直視を促す
中国の国務院台湾事務弁公室が、台湾の公民投票を台独へのタイムスケジュールだなどと非難し、さらに陳水扁総統が両岸関係を破壊しているなどと事実に反した中傷を展開している。これに対し、行政院ならびに行政院大陸委員会はその誤りを指摘し、中国側に民主化の過程を理解し、両岸の現状を直視するよう注文をつけた。また羅福全・駐日代表は東京での講演で、今回の公民投票は現状を変えるものではないと言明した。
●中国は台湾を正確に見よ
中国の国務院台湾事務弁公室は四月十四日、台湾が二〇〇六年に予定している住民投票による新憲法制定を「台湾独立に向けたタイムスケジュールであり、台湾海峡情勢の緊張と危険を生み出すもの」などと批判し、陳水扁総統に対しては「両岸関係を破壊する」などと中傷する談話を発表した。
これに対し、林佳龍・行政院スポークスマンは同日、記者会見において「わが国は民主国家であり、この憲政体制の改革を進めるのはまったく自然のことであり、台独とは無関係である」と述べ、「中国当局は台湾の民主主義発展の過程を正確に認識し、早急に全面的対話を進め、平和で安定した両岸関係を構築すべきだ」と中国側に呼びかけた。
さらに林スポークスマンは、要旨以下のように述べた。
「台湾の将来における政治状況の進展は、民意によって決定されるものであり、陳総統が今回の総統選挙において過半数の民意による支持を獲得したのは紛れもない事実であり、中国当局が誠実に台湾の民意および民主主義の進展に対応することを望む。五月二十日に陳総統が再就任したあと、両岸双方が全面的な対話を展開し、共同で両岸平和安定のメカニズムを構築することは、両岸人民が心より望んでいることであるばかりか、世界各国、とりわけアジア太平洋地域の国々が強く望んでいることでもあるのだ。
台湾の民主化への過程とは、すなわち国民を主人とするためのものであった。もし中国当局がいつも言っている『台湾人民に期待する』というものを望んでいるのなら、誠意をもって台湾の民意に向かい合い、民意を基礎とした陳総統と向き合い、契機を作り出し、両岸の相互利益と平和で安定したメカニズムを発展させるべきである。
台湾はこれまで戒厳令を解除し、『動員勘乱(反乱平定)条例』体制を排除し、国会の全面改選を行い、総統直接選挙を実施し、最近では第一回目の公民投票を行った。これらのいずれもが、台湾民主化への歴史的な過程であり、国内はもとより国際的にも高く評価されており、中国当局が将来において政治改革を進行させる場合に参考となるものである。
両岸関係は北京が一方的に決定できるものではなく、それはただ対立を増大させるばかりのものとなる。ここに中国当局に呼びかけたい。歪曲よりも誠意を多く持ち、相手を非難するばかりでなく、包容力をより多く持たなければならない。そうしてこそ真に新たな両岸関係を切り開くことができるのである」
また、中国国務院台湾事務弁公室が「両岸三通(直接通商、通航、通信)実施の最大の障壁は陳総統が三通問題を国際化しようとしている点にある」と批判した件に関しては、林佳龍スポークスマンは次のように述べた。
「三通問題に障壁があるかどうか、それは北京の考え方しだいだ。中国は高飛車な態度を改め、中央政府が地方政府に対するといった立場を放棄すべきである。双方が平等の立場で相対してこそ、各種項目についての実質的な交渉が進められるのである。それを海峡交流基金会と海峡両岸関係協会との交渉で行うか、世界貿易機関(WTO)の構造下で進めるかについては、わが政府は柔軟な姿勢をとっている。中国が三通問題を政治問題化し、両岸人民の三通への期待を裏切ることがないように求める」
【行政院新聞局 4月14日】
●行政改革と台独は無関係
中国国務院台湾事務弁公室(以下、中国国台弁)が四月十四日に、ふたたび陳水扁総統に対して名誉を損なう事実歪曲の批判を展開したことに対し、行政院大陸委員会(以下、陸委会)は強い遺憾の意を示した。
このなかで陸委会は「これまでの四年間、陳総統は再三にわたり両岸関係について小三通(地域限定の三通実施)、中国記者の台湾での長期滞在の認可、各方面での積極的開放、有効管理による対中国投資政策の推進などの善意を示し、四年来の両岸情勢に平和と相対的な安定を維持してきた。中国国台弁がこれらを政治的にとらえ、事実を歪曲し、個人の名誉を損なうような方式で批判を加えてきたことは、わが方としては到底受け入れられないものである」と強調した。
また、台湾が公民投票を憲法に明文化しようとしていることに対し、中国国台弁が「台独へのタイムスケジュール」などと非難し、わが国の元首に対し、再三にわたって名誉を損ない事実を歪曲して批判する方法をとっていることに対し、陸委会は「中国がすべてを政治的かつ感情的にとらえていることが、両岸関係を安定的に進展させない主因である」と表明した。このなかで陸委会は要旨つぎのように述べた。
「わが方が推進しようとしている憲政改革は、今年三月に中国全人代が憲法改正の建議を採択したのとまったく同じことであり、憲政改革は国家が進歩し発展するために必要な手順であって、その意義に憶測をはさむ余地などないことを中国は理解すべきである。
中国は常に各種の政治的な障壁を設定し、そのために三通に関連する問題の正式協議の進行が再三にわたって延期されてきた。両岸の経済貿易関係の正常な発展のため、中国はただちにあらかじめ設けた障壁を取り除き、実務的にわが方と対等の協議をスタートさせ、早期に三通に必要な準備を成し、両岸双方が共に利益を受けられるようにし、三通開始によって派生するかもしれない被害をできるだけ減少させるように取り計らうべきである。
陳水扁総統はすでに両岸平和安定の相互連動メカニズム構築という具体的な提議をし、これを両岸の今後における共同の努力目標となし、このための専門委員会を設置し、可能な方法を検討して実施に移し、早期に長期的な平和で安定した両岸関係を構築しようとしている。われわれは中国が、この両岸の人民にとって有益となる政策の建議に対して正面から取り組むことを希望している。いろいろな理由による口実を設け、ふたたび回避したり遅延させたりするべきではない。
われわれは中国に対し、海峡両岸人民のための福祉の観念をもって、あらかじめ設定した政治的な障壁を取り除き、わが方との意思疎通と協議を推進し、もって両岸平和安定の相互連動メカニズムを構築すべきであることを呼びかける」
【行政院大陸委員会 4月14日】
●台湾は海峡の現状を維持する
羅福全・駐日代表は四月十四日、「国際親善協会」の招きで東京都内の全日空ホテルにおいて「台湾の現状と今後」と題した講演を行い、中国との三通が遅れている問題について「台湾と日本の環境は異なる。三通開放前に台湾は安全保障問題を考慮しなければならない。両岸の対話にいかなる前提条件があってもならない」と強調した。
さらに羅代表は「今回の総統選挙が国際的に注目されたのは、選挙の結果がアジアの平和に重大な影響を与えるからである」と指摘した。現状維持と公民投票の問題については「ブッシュ米大統領は台湾での公民投票について、両岸のいかなる一方も現状を変更することに反対だと語ったが、何を現状と言うか、それは定義の問題だ。中国は『台湾は中国の一部分』と主張しているが、台湾は中国の一部分ではない。両岸は一辺一国であり、これが現状である。公民投票の実施は、この現状にいかなる変更も加えるものではない」と言明し、「今回の公民投票は成立しなかったが七百数万人が投票した。注目すべきは、賛成票が九二%に達したことである」と指摘した。
《台北『自由時報』4月15日》
週間ニュースフラッシュ
◆駐バングラデシュ代表処は正常に運営
台湾が二月二十七日、バングラデシュに「民間商団機構」の名称で代表処を開設して以来、中国は「台湾の金銭外交」などと根拠のない非難をし、バングラデシュ政府に台湾の代表処を閉鎖するよう圧力をかけている。これに対し外交部は四月十日「わが国とバングラデシュの実質関係の発展は平等互恵を原則とし、経済貿易関係の拡大を前提としている。いまだ支援などについて話し合ったこともない。民間商団機構は正常に運営されている」と表明した。
【外交部 4月11日】
◆中国の銀行の在台湾事務所開設認可へ
行政院の対中国政策関連各部門はこのほど、中国の銀行が台湾に事務所を開設するのを認可する件で合意に達した。開放の時期は、行政院大陸委員会が両岸政策を総合的に観察し決定する。すでに福建工業銀行など四行が台湾に事務所開設を申請している。
《台北『工商時報』4月12日》
◆連戦・国民党主席が立法委員選挙まで辞任しないと示唆
国民党では世代交代が焦点となっているが、連戦主席は四月十二日「世代交代は当然あるべきだが、党の指導者の交代には一定の手順が必要であり、年末の立法委員選挙のあとが好ましい時期だ」と、年末立法委員選挙まで辞任する意思のないことを示唆した。
《台北『中国時報』4月13日》
◆総統選挙票再集計は五月中旬に開始
連・宋陣営は総統選挙の陳・呂コンビの当選無効の訴訟を起こしているが、双方の弁護団が四月十二日に話し合い、裁判所による票再集計は五月中旬に開始することで合意に達した。裁判所での全面再集計には時間がかかり、五月二十日の総統就任式に間に合うかどうかは不明である。
《台北『聯合報』4月13日》
◆両岸平和安定構造推進小組のメンバー月末には発表
総統府は四月十三日「両岸平和安定構造推進小組は目下李遠哲・中央研究院院長と辜振甫・海峡交流基金会理事長が共同召集人となって設立準備を進めており、月末にはメンバーを発表できる」と表明した。
【総統府 4月13日】
◆三・一九台南銃撃事件自作自演説は二重の衝撃
呂秀蓮副総統は四月十三日、訪台中のシンガポールのシンクタンク・グループと会見し「私は三月十九日に暗殺の対象とされたが、まだ真相が明らかになっていないのは遺憾だ。一部の人は自作自演だなどと言っているが、私にとっては二重の衝撃だ」と心中を吐露した。
《台北『自由時報』4月14日》
◆総統就任式と同時に民主カーニバル開催
邱義仁・総統府秘書長は四月十三日「五月二十日の総統就任式の日に、五十万人参加による民主カーニバル慶祝大会を挙行する」と述べ、野党指導者にも参加を呼びかけた。
《台北『青年日報』4月14日》
◆行政院長がデモ参加者に呼びかけ
游錫堃・行政院長は四月十四日、選挙後の騒動に加わっている人々に対し「選挙後のさまざまな紛争は国内観光業、国際イメージ、海外からの投資意欲に深刻な影響を与えている。紛争の参加者らは民主法治の軌道に回帰するように」と呼びかけた。
【行政院 4月14日】
◆米国は法によって台湾に武器提供
チェイニー米副大統領は四月十五日、上海復旦大学で講演し「米国政府は台湾関係法を遵守し状況に応じて台湾の自衛能力に必要な兵器を適宜に提供する。大事なのは両岸の対話であり、いずれの一方も現状を変更することに反対する」と表明した。
《台北『中央社』4月16日》
陳唐山外交部長で新たな船出
両岸安定の中に台湾の立場を世界に知らせる
●新外交部長に陳唐山氏
游錫堃内閣は五月十二日に総辞職し、ただちに新内閣を組織して二期目になる陳水扁総統の五月二十日の就任式に備える予定だが、主要ポストについて内定が進んでいる。このうち最も注目されるポストの一つである外交部長については、現任の簡又新・部長が四月九日に辞表を提出したため、游院長は同日、後任に在米経験の長い民進党立法委員である陳唐山氏を指名した。
陳唐山氏は米国で博士号の学位を修得し、六カ国語に精通して米国務省に十数年在籍し、ワシントンに駐在していた時には世界台湾同郷会会長、台湾人公共事務会(FAPA)会長を歴任し、当時の政権からブラックリストに名を載せられ「体制外の駐米代表」と言われるなど、逆境に強い人物である。また在米時代に培った人脈は多岐にわたり、政府、議会、シンクタンク、社団の各層の有力者を網羅している。台湾の民主化が進み、台南県長時代には「最も優秀な県長」と言われ、その行政手腕は広く認められている。
さらに、昨年陳水扁総統が総統選挙と同日に平和に関する公民投票を実施すると表明したとき、陳唐山氏は台南での記者会見で「米国は世界の強国であり、建国の理念は自由と民主である。台湾が現状を変えず、米国に影響を与えない範囲内において、米国は台湾の公民投票に反対する理由はない」と米国に呼びかけるなど、旗幟を鮮明にした。
游錫堃・行政院長は四月十一日、行政院において陳唐山氏とともに記者会見に応じたが、このなかで陳唐山氏を「二十年来の旧くからの友人」と称し、陳氏は年下の游院長を「政治上の先輩」と称した。さらに游院長は陳氏を「実務的な理想主義者」と紹介し、陳氏は「かつてはブラックリストに名を載せられ、米国で体制外の活動をしていたが、時代は変わり、体制内の外交部長を担当することになった。実務的な観点から外交政策を進めたい」と語った。
また米中台の三国関係について、陳氏は「中国の台湾に対する謀略的意図に変化はなく、台湾を最も重要に考える者にとって、国際活動の場の開拓を継続することによってこそ、両岸関係の安定が得られると思う。対米関係においては、台米両国の共同利益を基礎とし、米国の利益と台湾の尊厳を考慮して二国間関係を推進すれば、必ず順調に進むものと確信している」と表明した。
《台北『自由時報』4月10~12日》
●陳唐山・新外交部長略歴
一九三五 台南県塩水鎮生まれ
一九五九 台湾大学大気物理学科卒
一九六六 米オクラホマ大学修士
一九七二 米プドゥー大学博士
一九七三~九二 米商務省在籍
一九七九 全米台湾同郷会会長
世界台湾同郷会会長
一九八二 台湾人公共事務協会会長
一九九二 立法委員
一九九三~二〇〇一 台南県県長
二〇〇〇~現在 総統府科学技術諮問委員会委員
二〇〇一~〇四 立法委員
【外交部 4月20日】
●台湾の意思を世界に知らせる
新旧外交部長の交代式が四月十六日、外交部において挙行された。この中で陳新部長は、これからの台湾外交として「中華民国の国家主権と国家としての地位を堅持する。台湾海峡の安定と平和を堅持する。国際協力への参加を堅持する」と語った。さらに「私には夢がある。外交部と台湾のすべての力を結集し、世界の人々に、西太平洋に島国があり、その国は中国の強権に断固対抗しており、その国の名は『中華民国』というが、それがすなわちわれわれ台湾であるということを知らせることだ」と語った。
《台北『自由時報』4月17日》
与野党とも年末立法委員選挙に始動
目標はいずれも過半数獲得し政局の主導権
総統選挙は民進党現職の陳水扁総統と呂秀蓮副総統コンビが僅差で連戦・国民党主席と宋楚瑜・親民党主席コンビに勝利を収めたが、台湾政界の焦点はすでに年末に予定されている立法委員選挙に移っている。
前回二〇〇一年十二月一日の立法委員選挙の結果は次の通りだった。
▽与党陣営
民進党八七、台湾団結連盟一三
計一〇〇議席
▽野党陣営
国民党六八、親民党四六、新党一
計一一五議席
▽無所属 一〇議席
民進党は第一党になったものの、友党である台湾団結連盟(以下、台連)の十三議席を合わせても、定数二百二十五議席の過半数である百十三議席に達しなかった。このため与党陣営は過半数を獲得し政局の安定を図り、野党陣営は過半数を維持し引き続き政局の主導権を握ることをそれぞれの目標としている。
●与党陣営の目標は一二三議席
民進党は四月十三日、張俊雄・党秘書長を召集人(委員長)とする「立法委員輔選策略小組」第一回会議を開催した。会議のあと、邱義仁・総統府秘書長は「前回選挙時には民進党の基礎票は多くはなかったが、票の配分に成功し議席数は躍進した。今年の選挙ではさらに分析を加え、台連と合わせて過半数の目標に達する」と述べた。さらに「過半数に十議席を上乗せし、百二十三議席を目標とする」と明言した。
その根拠として邱秘書長は「今年の立法委員選挙は、二〇〇一年の時よりも客観的に見て有利である」と述べ、その理由として「①与党陣営の基礎票はこの三年来増加している。②選挙戦術がいっそう精緻になっている。③野党陣営の基礎票は混乱し、分断しやすくなっている。④台湾の経済情勢が好転している」の四点をあげた。
また、同日にひらかれた党中央常務委員会は、党公認立候補者について、四月二十七日に立候補予定者名簿を作成し、五月二十三日に党内選挙を行い、七月十六日に当選者(公認候補者)を発表するという手順を決定した。
林志嘉・台連秘書長は同日、張俊雄・民進党秘書長とすでに接触し、選挙協力で合意に達していることを明らかにし、台連の議席については「民進党との合計で過半数を達成するため、現有の十二議席から少なくとも倍増の二十五議席を得たい」と表明した。ただし、ある台連筋は「各選挙区で本土票をめぐって確執もある」と明らかにした。
●野党連合は一二五議席を目標
林豊正・国民党秘書長は四月十三日、「国民党と親民党はすでに選挙協力についてコンセンサスを得ている。これまで党に貢献があった現役の立法委員が優先的に公認候補となって過半数を維持し、さらに新人が十五から二十議席を獲得し、絶対多数である百二十五議席から百三十議席を目標として設定する」と述べた。
ただし、国民党・親民党連合ではすでに「連合候補、現職優先」の基本ラインを定めているが、丁守則・国民党組織発展委員会主任委員は「十人から十五人の公認候補については、若さと専門家のイメージのある人材を選ぶ」としており、その人選については今後の課題となっている。さらに国民党内には、早急に党の方針を定めなければ混乱するとの声や、親民党との票割を明確にしなければならないとする声もあり、選挙協力についての問題はまだ完全には解消していない。さらに国民党内で「過半数は単なるスローガンではないが、候補者イコール当選者とも限らない」とする声もある。
一方、親民党は国民党副主席である馬英九・台北市長との関係はよいとは言えない。このため親民党の「中央挙行幹部会議」は、「連を支持し、馬を打たず」との原則を確立し、党幹部および立法委員が党中央と異なる発言をしないよう通達を出している。党中央の決定とは「全力をあげて連氏を支持し、ふたたび馬台北市長を批判するようなことはしない。国民党内部の問題に親民党は介入しない」というものである。
《台北『自由時報』4月14日》
第四原発問題が公民投票の議題に
年末の立法委員選挙と同時実施、経済への影響に注目
林佳龍・行政院スポークスマンは四月八日、与党民進党が年末の立法委員選挙と同日に、国民が発動する形で、第四原発問題を含む四項目の公民投票を実施する考えのあることを明らかにした。議題は、立法委員の定数半減、世界保健機関(WHO)加盟、党の資産処理が含まれており、このうちとくに第四原発問題については四年前に一度建設が中止され経済界に大きな衝撃をもたらしたことから、公民投票でふたたび是非が問われた場合の経済への影響について、各界とも注目している。
●公民投票成立条件を低く
公民投票は、「公民投票法」第十七条により総統がみずから発動できるほか、立法院や国民も発動できることが同法で定められている。国民が発動する際は、提案の時点において最も近くに行われた正副総統選挙時の有権者総数の千分の五以上の連署が必要となる。もし年末に実施する場合、さきの三月二十日に実施された総統選挙での有権者数が一千六百万人だったため、八十万人の連署が必要条件となる。なお総統選挙と同時に実施されたさきの公民投票は、投票率が有権者の過半数に達しなかったため成立しなかった。
これについて林スポークスマンは「公民投票の議題範囲に憲法の修正問題が排除されていることや、公民投票の発動に必要な連署人数の規定が厳しすぎるなど、現行の『公民投票法』には不合理な点が多い」と述べ、現行規定を修正する必要性を強調した。これを受けて内政部は、公民投票の成立条件を低くした「公民投票法」修正案をすでにまとめている。
●各界の反応
行政院が第四原発問題の公民投票実施の計画を明らかにしたことについて、各界とも経済への影響に注目しながらも、さきの総統選挙での公民投票より衝撃は小さいと見ており、株式市場への影響も限定的との見方が強い。
葉雲龍・匯豊中華協理は、個人的見解と断ったうえで「公民投票で第四原発を問うことの衝撃は総統選挙時より小さいだろう。実際に株式市場の立場からすると、民生問題は政治問題ほど深刻ではない。しかも、台湾は電力が不足しているわけではないため、第四原発が建設されなくても国内経済への影響はそれほど大きくない。企業の多くは年末の立法委員選挙の株式市場への影響について、与野党のどちらが過半数を獲るかの争いに注目している。公民投票の議題については、さきに実施された公民投票で投票率が過半数に達しなかったが、誰も問題にしなかった。このことは公民投票が問題の核心ではないことを示している。注目すべきは、与野党の悪質な争いがもたらす台湾経済への中長期的影響だ」と語っている。
商業総会の陳正毅・執行秘書は「さきの総統選挙での実施により、国民の公民投票への認識は高まり、民主的素養も深まっている。与野党はすでに第一回の公民投票の洗礼を経て、次回の投票では平常心で臨めるはずだ。野党はこの年末に台北県と台北市の合併について公民投票を実施すると先に主張していたが、さらに今回与党が第四原発を含む四項目の公民投票実施を打ち出した。公民投票の議題が政党の利益と衝突を招き、不要な争いを引き起こすことは好ましくない」と述べ、与野党に理性ある態度を求めた。
一方、原発建設の当事者に当たる台湾電力は「政府の政策は絶対的に支持する」としながらも、内部にはまたも建設問題の是非が問われることに困惑が広がっている。同社は四年前の建設中止に伴う善後策に現在も奔走しており、「政策がふたたび変更されることになれば新たな賠償金問題が浮上し、これまでの努力が無駄になってしまう」との危機感を募らせている。
●民間に求める声あれば応じる
行政院の発表に対し、与党民進党では、柯建銘・民進党立法院党団召集人が「党内にまだそれに関連した計画はないが、もし民間でこれを求める声が強ければ公民投票の議題として排除しない」と語っている。
《台北『工商時報』4月9日》
「台湾関係法」は台湾海峡安定の柱
『青年日報』(4月11日)
米国の「台湾関係法」施行以来今年で二十五周年を迎える。この間、国際情勢は大きく変化し、西太平洋諸国の関係も次第に複雑化して来た。今後いかに台米関係のさらなる緊密化を図り、法の原則を徹底させ、米国に中国寄りの政策をとらせず両岸問題を適切に処理するかが、台湾の外交における主要な任務となるだろう。
いうまでもなく、過去二十五年間における「台湾関係法」の重要性とは、台米間の実質的関係を確立し、非公式な原則のもとで双方の多角的な互いに利益ある交流を促すとともに、台湾の安全保障を確保する上で大きな役割を果たしてきたことにある。
両岸関係において、「台湾関係法」は米国の台湾に対する防衛的武器の供与の義務を確立したが、これは中国に米国の台湾海峡政策における立場を示すこととなった。今後同法の効力が引き続き台米、台中、米中三方が担うバランスを保つべく発揮されたなら、米国政府の台湾海峡政策は中国に傾斜しないと思われる。
さらに同法第十四条には、米国の行政部門が台湾海峡政策を施行する際、「上下両院外交委員会と議会の他の適当な委員会はこれを監査する」と明記されており、すなわち台湾の安全政策は米国会の直接の監督により施行されるもので、この点から言えば「台湾関係法」は米中間の「三つの共同コミュニケ」よりも格が上であり、強い拘束力を持っていると言える。だが一方で、これは米国の国内法であるため、国際的危機に直面した際には、その効力に限界があることも事実である。
「台湾関係法」を語るとき、中国の存在を度外視することはできず、同法は台湾、米国、中国三方の関係による影響と制約を受けている。米国にとっては、同法のなかで台湾に「防御的性格の武器を供給」し、「台湾の人々の安全、社会または経済体制を危険にさらすいかなる武力行使にも抵抗する能力を維持」するとあるように、台湾地域の平和と安全の維持は、その外交政策のなかできわめて重要な問題だと言える。中国が持続的に軍拡を進めているのは米国政府もよく知るところであり、したがって今後どのように法の原則を整備し、これに拘束力と強制力を持たせ、有事の際速やかに反応するよう事前に備えるかが、われわれの重要な任務となるだろう。
一方、中国にとってみれば「台湾関係法」は米中間の国交樹立に際し制定された米国の国内法である。しかし同法の全文を見れば、西太平洋地域の平和と安定に危機をもたらす中国の勢力を防御しようとする米国の意図を認識せざるを得ないだろう。同地域の平和安定は関連諸国の共同責任であり、それを破壊しようとする者は誰であれ、国際社会が許さないのだ。
最後に、台湾の立場から言うならば、両岸の緊迫した環境のもと、われわれは「台湾関係法」により過去二十五年間にわたって護られてきた貴重な平和と安全を重視し、今後さらに国際的状況と現実的なリスク、法的条件を把握した上で、国際関係と両岸関係の推進を加速化させ、平和な協力関係を構築し、台湾の安全保障を確立しなければならない。このこともまた、今この瞬間、われわれが「台湾関係法」を維持し結実させるために進むべき道なのである。
教育改革について思う⑤
李遠哲・中央研究院院長
九、社会への思いやりの実践
私は青年時代、ツルゲーネフやプーシキンなどロシア人作家の作品以外に、一九三〇年~四〇年代の中国の小説や政治、社会の評論を読み、それらがどれも社会に対する関心と思いやりに満ちて描かれていることに、深く心を動かされた。
六〇年代初期、私はカリフォルニア大学バークレー校に入学したが、当時はまさに学生運動の吹き荒れる真最中だった。バークレー校の学風は米国の各大学に理性と覚醒を促し、運動に参加している学生は自己の利益のためでなく、まして権力のためではなく、ただまっとうな政治、社会、文化の秩序を求めた。
バークレー校の同窓生で現在中央研究院の王靖献所長が「バークレーの精神」と題し記した文章がある。当時の学生たちの社会に対する思いが明確に示されているので、ここで紹介したい。それは以下のくだりである。「バークレー校の学生は、本分である学問的思想の上でリーダーとして活躍しただけでなく、一般民衆をも喚起した。学生たちは下層階級のコミュニティーにも関心を示し、かれらのために請願し、富の合理的配分を訴えた。さらに、資本家が利益のために建設するビルが都会の緑を奪うことに抗議し、工場汚水による公害を阻止し、何千万もの住民の生活を擁護した」
六〇年代のこうした社会に対する関心は、今日から見れば特別でもなく、極めてまっとうである。改革とは本来艱難辛苦を伴うものであり、バークレー校の学生の例は、主義主張を堅持しさえすれば、改革の理想は実現不可能ではないことをわれわれに示している。もう少し時間が経てば、多元入学や一綱多本などの改革も、あたりまえのこととして受け止められるのかもしれない。
同僚のなかには、私のことを楽観主義者だと笑う者もいる。王靖献所長はさきの文章の末尾で、「楽観こそバークレー精神の要諦である」と述べている。私は自分の楽観主義がどれだけバークレー精神を体現したものかはわからない。バークレー校に在籍していた数年間、私はひたすら学問に励んだが、だからといって学校の内外で盛んに行われていた学生運動や民権運動、フェミニズム運動、反戦運動などにまったく無頓着でもなかった。
われわれの世代は六〇年代の社会改革の高揚した雰囲気に染まらずにはいられなかったという点において、六〇年代の産物と言えるかもしれない。とくに、この世代のバークレー校の学生にとって、バークレー精神は潜在意識の部分で自然にわれわれの学問の素養ともなった。バークレー精神とは、王靖献所長の言葉を再度借りるなら、「学術研究と社会とが一体となった精神」とでも言えるだろう。
国を出て三十二年、この間、数年をハーバード大学とシカゴ大学で過ごした以外、残りの二十数年間はすべてバークレーにいた。私は教鞭をとりみずからの研究に励むかたわら、コミュニティーや大学、州政府、連邦政府、国際ボランティアの活動にも多く参加した。そして、これらの活動は社会に対する関心を実践する一部となり、現在でも続けているものもある。
私が青年時代に読書を通じて体得した社会への関心はバークレーで形として示された。私は個々人の潜在意識のなかで、みずからの専門以外に社会に対する関心を持つことによって、より公正で正義ある社会を創造できると信じている。
私は一九九四年に帰国し、中央研究院院長に就任したが、教育改革は私が帰国後初めて従事した大きな仕事の一つである。その委員長の仕事も九六年に解散し、幕を閉じた。
そして九九年九月二十一日に中部大地震が発生し、私は災害復興委員会の顧問に招かれた。さらに翌二〇〇〇年の総統選挙以後、超党派小組の召集人として声がかかった。帰国して十年間、私はこれらさまざまな諮問の任務を預かったが、そのいずも自ら主体的に選んだわけではない。それらは必ずしも私でなければならないものではなかったが、どのみち誰かがしなくてはならないことであった。
私はそれらの問題が非常に複雑で一筋縄ではいかず、うまくいっても正当には評価されないことを知らないわけではなかった。それらはどれも社会の急速な変化と変革に直面し、どの人にとっても初めての経験に違いなかった。そしてこれらが政治や利益の紛争と関わっていることも、もちろん承知していた。そもそも諮問という業務はそれぞれ意見を述べ合うだけで、最終的にはなにもまとまらないことも少なくない。だからこそ、私自身この仕事を引き受けるかどうか迷ったのだ。だが、最終的には若い同僚の言った「結果を求めず、ただやるだけ」という気持ちで決心した。
これらの仕事は、私にとっては長年の社会に対する関心の延長線上にあった。これまでと異なるのは、台湾は私が生まれ育った土地であり、台湾の社会に捨て難い気持ちと責任とを感じていることである。
「旅の鳥は古き巣を思い 池の魚は古き淵を思う(陶淵明の詩より)」私は三十二年間外国で暮らし帰国したが、そのときの心情は故郷を懐かしむと同時に、生まれ故郷の社会のために尽くしたいとの思いだった。もし私たちの社会がすでにすばらしいものであったなら、私が帰国した意味はあまりない。ずっと科学の研究を続け、その場所が結果的に終の棲家となるのが最も理想的な選択かもしれない。これは別に偏狭な民族主義ではない。
長年、私は第三世界の科学院の仕事を応援してきた。その目的は、第三世界の科学と教育を改善することにあった。私はまた国際科学院の実務にも関心を持ち、以前国によって迫害されたある科学者を援助したこともある。
私が最も尊敬しているのはキューリー夫人のように個人の利益を省みない科学者だ。ここ数年、多くの国々を訪れ私が説いてきたのは、地球のエネルギーと生態問題、教育の重要性、そして第三世界と開発途上国の自助とともに他国とも協力する道であった。
つまり、私はかなりのコスモポリタンである。私はわれわれが住む世界がより好ましく、台湾がよりよい社会になることを願っている。超党派小組の召集人を引き受けたのも、純粋に台湾の社会をよくしたいとの一念からである。
私は、台湾の政治文化が互いを信用せず、同類には味方し異分子を攻撃することを知らなかったわけではない。政治は統一か独立かの両極に分かれ、社会は分裂し、国力もそのために疲弊し、問題はいっこうに解決しない。忍耐なくして危機感なくして、こうした困難な仕事を引き受けるだろうか。正直なところ、容易な仕事なら私がやる意味はない。私は、党や派閥が異なっても、立場さえ違っても構わないと思っている。もし自らを解放し、胸襟を開いて相手との対話を望み、相手との距離が縮まれば、台湾の発展のため、さらには両岸の数十年来の争議に、一つの解決の道が示される可能性もあると信じる。
政権の浮き沈みや個人のそれも、やがては煙のように消えてしまう。永遠に続くのはただ国家と人民だけである。こう考える私を「理想的すぎる」「楽観的すぎる」と笑う人もいるが、果たしてそうだろうか。そろばんをはじいて、一体最後に何が残るのだろう。教育改革についても、善悪がわからず、幾重にも捻じ曲げられたなかで、本来の姿が見えなくなっている。私自身、この文章がその面目を果たしているなどとは恐れ多くて言えない。
この文章を書いた目的は、教育改革委員会の役割と機能、それにわれわれが建議した内容について補足的に説明し、皆さん方に委員会の本来の考え方と未来図を理解してもらいたかったからである。それが果たされたかどうかは、時間が証明してくれるだろう。
今日すでにいくつか実施されている教育改革は、われわれが建議した未来図とはすでに距離のあるものとなっている。改革の過程で好ましくない部分は決して改善できないわけではない。社会通念を見直し、社会の価値観を変えることは、どの改革においても必ず直面する最大の試練であり、教育改革も例外ではない。われわれはただ大きな忍耐と決意をもってこれに立ち向かうだけである。
(完)
《台北『自由時報』3月6日》
台湾観光年
「二〇〇四客家桐花祭」開催中
台湾では桜のあと、晩春から初夏にかけて、山の麓や台地に真っ白な「油桐花(オオアブラギリ)」が開花する。木々の鮮やかな新緑にまじり純白の小さな花びらがたわわに咲き、風に乗って地面に散りゆくそのさまは、まるで雪を思わせる美しさがある。「五月の雪」の異名を持つこの桐の花をテーマに、四月十五日から五月十六日まで「二〇〇四客家桐花祭」が開催されている。
台湾の「油桐花」は日本統治時代苗栗以北の山地に広く移植され、とくに新竹、苗栗一帯は一大群生地となっている。この地に住む客家の人びとは、早くからこの「油桐花」で生計を立ててきた。「油桐花」の実は油を採取でき、これは防水塗料となったほか、木や枝は家具や下駄、マッチ棒の軸などに利用された。幼年時代「油桐花」の木の下で遊んだ記憶を持つ客家の人びとは少なくない。かれらにとって「油桐花」は馴染み深い花というだけでなく、重要な経済の拠り所でもあったのだ。時代が変わり、その経済価値はもはや薄れてはきているが、花の美しさは時を経た今も人びとを魅了してやまない。
行政院客家委員会の主催で毎年行われている「桐花祭」は回を重ねるごとに好評を呼び、昨年は十八万人が訪れた。各地に知られる「油桐花」の名所を見て歩き、客家料理を味わい、さまざまな客家文化に触れるこの祭りは、今年さらに規模を拡大し、台北、桃園、新竹、苗栗、台中、南投の六県市で、合わせて六百回以上開催される。祭りの各種イベント、名所コースの地図、客家レストランのクーポン券などがついた「二〇〇四客家桐花祭導覧手冊」(ガイドブック)が全国のコンビニの7-11で入手できるほか、期間中同店では祭りの関連グッズも発売している。なお、五月二日には苗栗西湖度假村で、純白の「油桐花」の花びらの舞うなかで、ロマンチックな結婚式が行われる。
●行政院客家委員会
http://www.hakka.gov.tw
《台北『民生報』4月9日》
台北築城百二十周年
記念イベントがスタート
一八八四年、台北城が建設されて今年で百二十周年を迎えるのを記念して、台北市は四月九日から九カ月間にわたり「台北築城百二十周年記念」イベントを開催する。
台北の町は一八八四年以前には一つの集落に過ぎず、福建省の管轄下にあった。これを当時、郵政大臣だった沈葆◆が清廷に台北城の建設を建議し受け入れられ、劉銘伝が初代台湾巡撫として派遣され、これにより台北の本格的な開発が始まった。
台北城は周囲が四・六キロメートル、城壁に五つの門(東の景福門、西の宝成門、北の承恩門、南の麗正門、さらに重熙門)が設けられた。清末に台湾で建設された最後の城で、十九世紀の世界において、おそらく人の手で石を切り出し造った最後の城と思われる。
台北城は日本統治時代に撤去されたものの、城壁の一部は現在も残っている。イベントが正式にスタートする前の四月七日、中山堂前広場で、残されたそれらの石を集め、当時の規格に合わせて城壁の一部が再現された。馬英九・台北市長と寥咸浩・文化局長が城壁に空いた三カ所に象徴となる発砲スチロール製の模型の石を組み込み、イベントの開始が宣言された。
四月九日から始まる一連のイベントは、中山堂と台北一〇一ビル前信義十三号広場の二カ所を会場に、コンサートや歌仔戯(台湾オペラ)、西洋オペラなどの演目以外に、台北城ゆかりの歴史散歩や歴史講座、台北市の歌の募集など、さまざまなイベントが予定されている。
「台北文化パスポート」も開始
台北市は四月十日から市内五十カ所の文化施設で利用できる「台北文化パスポート」を発行させた。利用した施設でスタンプを押してもらい、集めたスタンプの数に応じて旅行が当たったり、プレゼントや抽選券などがもらえる仕組みだ。パスポートはそれらの文化施設のほか、新交通システム(MRT)各駅とコンビニのOK便利商店などで無料でもらえる。有効期間は一年間。
《台北『中国時報』4月11日》
国際文化芸術フェスティバル
●二〇〇四澎湖国際ランドスケープアート・フェスティバル
日 時 5月~8月
会 場 馬公市青青草原
主 催 澎湖県文化局
http://www.phhcc.gov.tw
澎湖を訪れたことのある人なら、その島々の美しさに感動を覚えたことだろう。澎湖の風、咾呫石、玄武岩、砂浜などは観光客が最初に触れる澎湖の美で、ここから海の楽園に対する想像がふくらんでいく。美しい島々からなる澎湖の人びとは、芸術活動も積極的に推進しており、芸術創作者と愛好家たちの努力のもとで、年々大きな成果をあげてきた。
二〇〇一年と二〇〇二年に、澎湖県文化局が大自然と文化を結びつけて開催した「国際ランドスケープアート・フェスティバル」は、県民や観光客から大きな反響を得て、二〇〇四年もふたたび開催することになった。この意義あるイベントは、澎湖の特色を大きく打ち出すものとなる。
「二〇〇四澎湖国際ランドスケープアート・フェスティバル」は、三カ月の準備期間を経て行われる。これまでの経験を生かし、県では内外の芸術家二十名を招き、有名な澎湖の「青青草園」で創作活動を行う。文化局は県内の小中学生も招き、会場で芸術家と交流できるように計画している。
ランドスケープアートは「大地の作品」である。芸術と大自然を結びつけ、大自然本来の姿を維持しながら人為的な創作を行うというもので、見るものに改めて周囲の環境を考えさせるものだ。別の言い方をすれば、澎湖の景色に芸術家が多少手を加えて装飾し、澎湖の顔を変えるというもので、これは澎湖の多様な美しさを見直す最良の機会となるだろう。
ランドスケープアートという概念が知られていなかった台湾で、このフェスティバルが開催されたのは画期的なことと言える。ここ十年、一九九〇年代の中ごろにインスタレーションアートが流行する前、東北角の塩寮の海辺でランドスケープアートに類した現代彫刻のイベントが開かれた。このほかに、九四年に台北県主催の「環境芸術」、九五年に「淡水河上の風雲」、九七年に「河流新アジア芸術と台北の対話」、そして「嘉義インスタレーションアート展―大地、都市、シンフォニー」などのイベントが行われており、その一部の作品はランドスケープアートの精神を表現していたが、規模や純度の面では澎湖のフェスティバルには及ばない。
澎湖県では二〇〇〇年の第一回ランドスケープアート・フェスティバルを西嶼で開催したが、今回は馬公市四維路一帯の青青草原で行う。植物が植えられた青青草原の面積は一万坪を超え、長さは三百メートル近い。県はこの周辺に「郷土種原生植物園」を設置する計画を立てており、また道路と観音亭を結びつけてスポーツもできる緑と青い空と海のレジャー空間にする予定だ。実は、四維路の末端は長年放置されたままの空き地で、雑草が生え、ゴミや廃棄物なども置かれていた。ここが美化され緑化された上でフェスティバルが開催されることは、また意義深いことと言えるだろう。
【行政院文化建設委員会】
国際市場で中国書画の人気上昇
絵本作家ジミーの作品も仲間入り
最近、国際的オークションでは中国の伝統書画が人気を集めており、台湾のコレクターも多くの作品を高値で落札している。さきごろ台北で開催された「伝統と刷新―二十世紀の中国書画展」でも、百三点の展示品のうち、約半数がこうした有力コレクターから借り出された。
この展示会は、国父記念館が台北羲之堂に委託しておこなったもので、巨匠・張大千の「溌墨瑞士雪山(スイスの雪山)」、陸儼少の「巫峡清秋」、林風眠の「巾幗英雄」の三大作をはじめとする民国初期~中期までの作品が展示された。このうち陸氏の作品は京劇を題材とした絵画で、六〇年代初期にスイスで描かれたものが、九六年十月にオークションで落札され、台湾のコレクターの手に戻ってきたという。
数多くの美術展を手がけている台北羲之堂の陳筱君社長は、「中国書画に買い手が殺到している背景には、中国の企業やコレクターが伝統書画の収集に熱心になっていることがある。また中国書画を自分の手元に取り戻したいという意志が働いているようだ」と話す。こうした現象で貴重な書画の価値がますます吊り上がり、展示会では高額の保険をかけるようコレクターから要請があるため、企画側にとっては少々頭が痛いようだ。今回の展示会でも、展示品の保険総額は五億元(約十八億円)に上り、三点の大作には通常の額縁にアクリルフィルムで保護するなどの特別な措置がとられたという。
《台北『民生報』3月6日》
●ジミー作品がオークションに
台湾の人気絵本作家・幾米(ジミー)の作品が、このほど初めて中国書画の国際オークションにかけられることになった。
業界の老舗サザビーズが四月二十六日に香港で開催する二〇〇四年春季のオークションには、二十世紀中国画壇の巨匠・齊白石、傅抱石、張大千氏らの、いずれも伝統的な中国書画が出品されるが、絵本作家のイラストが出品されるのは異例のことだという。香港サザビーズでは、「大衆文化が注目されつつある今、若い買い手にもっとオークションに参加してもらい、市場全体を活性化させたい。ジミー氏の絵本は多くの言語に翻訳され海外でも人気があるため、オークションへの出品を昨年から打診していた」と話している。
ジミー本人にとって昨〇三年は作品が映画やテレビ化され、意外な喜びの多い一年だったが、サザビーズの申し出には驚いたという。中国書画のオークションと聞いて、伝統的画風で創作しようかと思ったが、主催者側の意向により独自の画風で「秋深まる朝、蝶の最後の歌を聴く」「想像に溢れた快楽は日の出から日没まで」という二作品を完成させた。
ジミーは今回の創作にあたり、「挿絵以外の創作に挑戦できたことは意義深かった。いつもよりさらに心の向くまま、自由な感覚で描くことができた」と、自らの創作が新たな一歩を踏み出したことに、喜びを表している。
《台北『民生報』3月27日》
文化ニュース
台湾で薬物アレルギーの遺伝子発見
世界初、今後の投薬事情に福音
中央研究院と長庚病院ではさきごろ、重篤な薬物副作用「スティーブンジョンソン症候群」を起こす薬物アレルギーの遺伝子を発見したことを明らかにした。同症候群は投薬によって突発的に皮膚粘膜が火傷状態となり、危篤状態にも至る。今後は患者がこの遺伝子を持っているかどうかを血液検査で事前に予測できるようになり、医療現場に新たな福音をもたらすこととなった。
今回の発見は欧米など各国の研究機関や大手薬品メーカーが研究を進めるなか、世界初の薬物アレルギー遺伝子の発見となり、四月一日に国際的著名科学雑誌「ネイチャー」に発表された。
《台北『中国時報』4月1日》
●先進技術で蛍光色に光る観賞魚
最近の台湾における遺伝子組み替え技術の進歩は目を見張るものがある。台湾の観賞魚開発メーカー邰港科学技術(Taikong Group社)では、遺伝子組み換え技術によって身体が赤く光るように改良された観賞蛍光魚を発表した。同社がこれまでに開発した蛍光観賞魚にはいずれも繁殖能力がなかったが、今回クラゲとサンゴの遺伝子を取り込んで新しく発売された「レッド一号」は、一回だけ繁殖できるよう改良され、単価は百三十元(約五百円)とやや高級だ。
同社では今後、観賞用のほかに、水質の異常に反応して蛍光色に変わるなど、特殊機能を持つ魚の開発にも取り組む予定だという。
《台北『中国時報』4月1日》
墾丁にカマスの群れが出現
二十年来初めて千尾規模
今年の冬、墾丁国家公園で大規模なカマスの群れが確認された。カマスは美しい形の群れをつくることで有名だが、今回発見されたのはこの二十年来最も多い一千尾以上の体長五十~七十センチのカマスの群れで、その壮麗な姿は海外のダイビングスポットに劣らないという。今年の冬は寒さが厳しく、旅行者が少なく海域が静かだったことが原因と見られており、関係機関ではこの貴重な群れの保護を公式に呼びかけている。
《台北『中国時報』4月1日》
台北春季コンピューター展が盛況
ノートパソコン、デジカメとも好調
三月三十一日からおこなわれていた台北春季ソフトウェア・コンピューター展が四月四日、盛況のうちに閉幕した。来訪者延べ人数は五日間で合計三十万人、週末は一日六万八千人に上り、単日での売り上げは例年の三割以上の伸びを見せた。今回人気が集中したのはノートパソコンで、ヒューレッドパッカードでは二週間前に発売した新機種を含め、最高七千元(約二万五千円)引きの特別価格を打ち出した。エイサーでも全機種の値引き幅を平均五千元とするなど出血大サービスで、メーカー各社の平均売上げ台数は二~三千台となった。デジタルカメラの売り上げも前年比五割アップし、ブースには絶えず人の波が押し寄せ、販売店は対応に大忙しとなった。
今回の展示会では女性専用のハイテク商品コーナーが設置され、赤や黄色の服を着ている女性には入場無料にするなど、女性をターゲットにした企画もあり好評を博した。
《台北『青年日報』4月4日》
台湾生活美学叢書が出版
生活に根付いた文化創造を
台湾の特色ある生活工芸品を幅広く紹介する「台湾生活美学シリーズ叢書」が、行政院文化建設委員会(以下、文建会)監修、国立台湾工芸研究所企画、生活美学館の編集出版により、このほど完成した。「新生活美学」、「新美食美器」、「新蘭花花器」、「新生活工芸」など全十巻からなるこのシリーズは、優れた技を持つ職人百人以上と優良な創作メーカーに取材し、台湾の質の高い陶磁器や食器、紙製・金製工芸品、竹細工などを、写真をふんだんに取り入れて紹介している。
文建会では、文化創意産業の推進策として、台湾独自の審美眼に基づいた「生活美学」の創造を提案しており、今回の叢書出版について「このシリーズは、わが国の優れた工芸品を人々の生活に浸透させ、台湾の生活美学を創造するための実用書としたい。これにより市場の需要を高め、さらに秀逸な作品が生まれるよう好循環も促したい」と述べている。
《台北『中国時報』3月20日》
文化・芸能ミニ情報
大人も熱中の人形コレクション
玩具に夢中になるのは、子供だけとは限らない。最近、台湾のコレクターに人気なのが、「少年阿虎(スター・ランナー)」映画の主人公をモデルにしたフィギュアである。この映画はボクサーが男の理想に向かって戦うストーリーで、不滅のヒーローを緻密に再現した人形は、細かい関節まで自在に動かせ、顔の造りはこの映画で銀幕デビューしたアイドルグループ「F4」の呉建豪(ヴァネス・ウー)に瓜二つの精巧さだ。女性には、バービーならぬ羽西(バーシー)が人気だ。バービー人形はアメリカのロングセラー玩具としてあまりにも有名だが、最近中国でこれに対抗し、豪華なチャイナ・スタイルのバーシー人形が発売され、王朝風衣装や髪飾りなど優雅な細工に、大人の女性までが夢中になっている。これらの人形はいずれも価格は高めだが、販売店に行列ができる人気ぶりだという。
《台北『中国時報』3月26日》
新刊紹介
そのとき自衛隊は戦えるか
井上和彦 著
日本の自衛隊が発足してから今年は五十年になる。世界最新鋭のイージス艦や世界最強のF15戦闘機やハイテク国産戦車を保有する自衛隊が、もし実戦の場合どれだけの戦力を発揮するのか。イラクへの派遣やテロ対策、また集団自衛権など、今後の法整備等の問題も踏まえ、その真相と問題点に鋭く迫る。
特に第六章「自衛隊もし戦わば━中国人民解放軍との戦い」では、日中の海空戦力に触れ、中国軍の能力を測定する。即それは台湾軍の迎撃能力の測定にもなる。中国は今、米国にハイテク兵器の台湾への売却をしきりに牽制しようとしているが、そこには中国軍の隠された弱点が秘められている。台湾にとって米国の「台湾関係法」は最大の盾となっているが、日米同盟も台湾の盾となる可能性が極めて高い。本書はそれらをも示唆する。
〈扶桑社刊 ¥1500税込〉
お知らせ
「アジア太平洋交流学会5月例会・創立5周年記念講演」
日 時 5月22日(土)午後2時~
開場 午後1時30分~
講演 午後2時~3時
質疑応答 午後3時10分~3時50分
懇親会 午後4時~5時30分
講 師 深田祐介氏(直木賞作家)
演 題 「アジア昨日今日」
会 場 東京霞ヶ関 霞会館(霞ヶ関ビル34階)
会 費 学会会員:2千円
一般:3千円
学生・修学院会員 1千円
※懇親会は別途3千円
主 催 アジア太平洋交流学会
日本李登輝学校修学院
問合せ アジア太平洋交流学会
TEL:03-5816-1293
春 夏 秋 冬
今年も世界保健機関(WHO)の年次総会が5月17日からジュネーブで始まる。台湾はすでにWHO総会への参加活動を七年間にわたって続けてきたが、中国の妨害工作と各国への圧力により、総会議題に上げる前に葬り去られてきた。昨年のSARSの流行は、防疫体制の確立に国際協力の必要性を改めて世界に教えるものとなった。今年も鳥インフルエンザと狂牛病の問題が目下進行中である。これらを考えれば、中国の妨害工作は台湾2300万人の国民に対する嫌がらせばかりでなく、自己のイデオロギーによる世界の人類全体に対する非人道的な所業というほかはない。なるほど経済面では開放政策をとっていても、政治的にはまだ一党専制を死守しているような遅れた国では、アメリカが指摘するまでもなく、人道思想まで欠如しているのかとつくづく思わせられる。
今年の年次総会開幕を踏まえ、台湾のWHO加盟促進のための遊説グループが4月7日に東京で記者会見し、団長の呉樹民・台湾医会連盟(日本医師会に相当)会長が「SARSや鳥インフルエンザの重大な疾病は人類の健康を著しく害しており、そこに国境や地域の区別はない。世界の普遍的な価値観である衛生人権は、政治的な圧力や干渉を受けるべきではない」と主張した。まさにその通りである。WHO憲章も「全人類は最高レベルの保健衛生を享受する基本的権利を有しており、またあらゆる加盟国はこの目標を達成するため、世界レベルで善意による協力をしなければならない」と定めている。
昨年のSARSや今年の鳥インフルエンザの状況を見れば、この憲章は単なる理想ではなく、実行しなければならないことは理の当然であろう。そこに一カ所でも疎漏があってはならない。まして台湾は日本とは一衣帯水であり、さらにヒトとモノの往来において、西太平洋における要衝の地でもある。そこでの保健衛生における国際協力の重要性はいっそう顕著と言わねばならない。
台湾の遊説グループは官民の医療専門家、超党派の国会議員で構成されている。このことからも台湾全体がいかに一丸となってこの問題に取り組んでいるかが分かろう。昨年は2004年の福田康夫内閣官房長官の台湾支持の発言を踏まえ、川口順子外務大臣、坂口力厚生労働大臣が記者団に台湾のWHO参加の必要性を述べ、ジュネーブでの総会では木村義雄厚生労働副大臣が台湾支持を明確に表明した。これらは台湾を大きく勇気づけるものであった。本年も日本の力強い支援を期待したい。
(K)