台湾週報2149号(2004.7.1)
新十大建設予算案が立法院を通過
今後五年間は公共建設年で社会に活気
●台湾の国際競争力を強化
懸案であった新十大建設計画を推進するための「拡大公共建設投資特別条例」案が六月十一日、立法院を通過し、これにより政府の新十大建設計画は本格的に進められることとなった。同条例の立法院通過について張景森・行政院経済建設委員会副主任委員は同日、「非常に喜ばしい。新十大建設の特別予算のほかにも、政府はその他の主要公共建設予算も適度な成長を維持できる。台湾はこれからの五年間、公共建設年となる」と語った。
また游錫堃・行政院長は同条例立法院通過後の記者会見で、次のように語った。
「基礎を固め、手堅く進む。これは国家の経済発展の基本であり、新十大建設計画はまさにわが国経済の基礎を強化するものである。本日、与野党各派の折衝とコンセンサス確立によって『拡大公共建設投資特別条例』案が通過したことは、行政院の施政方向が明確になるとともに、国民の支持を得たことを意味するものと認識する。新十大建設計画によって今後政府と民間は毎年千八百億元(約五千四百億円)を投入し、年平均六万四千個の就業の機会を創出することになる。この建設計画が順調に進めば、随時インフラ建設への投資を拡大することになるが、それは内需を刺激するばかりでなく、当期間内における経済成長率を引き上げるという波及効果も生むことになろう。後続する新十大建設特別予算についても、引き続き立法院の支持が得られるよう希望する」
【行政院 6月11日】
●立法院での質疑応答
なお、立法院での新十大建設に関する質問に対し、行政院長の主たる応答は次の通りである。
▽新十大建設計画の波及効果についての応答:
「新十大建設計画は『挑戦二千八百年‥国家発展重点計画』を加速することを政策の主軸に据えたためのものであり、これには当然政府の財政負担が増大することは免れない。このため政府は重要性、刷新性、将来性、緊急度、さらにバランス維持などを基準に、重点項目の中のさらに重点を選択したものであり、台湾経済の構造転換とレベルアップを促進するものである。計画期間中は実質GDPを毎年一~一・四ポイント引き上げ、実質民間需要も年平均〇・六~〇・八ポイント増大させ、さらに年平均六万四千個の就業の機会を創出し、また二十五年間にわたって年間二千四百億元(七千二百億円)の税収入増加を生み出し、このように経済と財政に十分な貢献をしうるものである。国民がこの新十大建設計画の内容とその波及効果について十分に認識するように、行政院は今後各種の方法を通じて啓蒙活動を展開し、国民の皆様に新十大建設計画が国家の国際競争力を向上させるため、直接的な効果があることを理解していただくよう努力する」
▽環境への影響についての応答‥
「行政院環境保護署が政策に対する環境への評価細則規定を定めている。新十大建設計画は国家の永続的発展を出発点としており、各項目については計画の段階から、環境に優しい交通システム、下水道の汚水処理、旧式ダムの撤去など、十分な考慮がなされている。個別の計画について交通関係が環境と最も深い関係にあるが、すでに影響評価、影響説明、影響の度合いに対する分析などを十分に行っている。その他、全島をブロードバンドで結ぶM台湾計画、大学のレベルアップ、芸術創造産業の発展など、非交通部門については環境評価を必要としない」
【立法院 6月11日】
黄埔軍官学校八十周年を迎えて
新たな時代に向け陳水扁総統が記念講話
「黄埔軍官学校」が今年で開校80周年を迎え、6月16日に現在の同校所在地である高雄県鳳山で記念式典が行われた。陳水扁総統はこの式典において、民主主義国における軍隊はあくまで国家と国民のための軍隊であることを強調し、「党国一致」は過去のものであるとの観念を鮮明にした。同時に憲法改正が公約であることを明言し、総統の任期満了までに新憲法を提示することを改めて明確に述べた。以下はその全文である。
「黄埔軍官学校」開校八十周年を迎え、三軍総帥の身分をもってふたたびこの高雄県鳳山(同校所在地)を訪れ、皆さまと共に黄埔の栄えある歴史に接することを嬉しく思います。いましがた陽光のふりそそぐなか、生徒諸君の輝く目、強健な体躯、堂々たる行進を見ることができ、胸中感動を覚えるとともに、数日前テレビで見た映画「プライベートライアン」を想起いたしました。
本年六月六日はノルマンディー上陸作戦六十周年にあたりますが、「プライベートライアン」はノルマンディー上陸作戦の歴史的なDデーを背景とし、敵地に入った米軍の一特殊部隊の、あくまでも上官の命令による任務を遂行し、兵士ライアンを生還させる物語でした。特に私の胸に残ったのは、部隊がライアンを生還させ、死に直面した隊長がライアンに「無駄にするな、しっかり生きろ! 」と語った言葉です。
黄埔開校より八十年、国家はさまざまな激動の時代を経てきました。北伐から抗戦、さらに台湾に至るまで、黄埔の先人たちは犠牲的奮闘をし、みずからの血を流し、一頁また一頁と壮絶なる詩歌を描いて参りました。確かなのは、われわれはそれらのすべてを大事にしなければならないということです。
黄埔開校の八十年前、中華民国は軍政時期にあり、外からは侵略を受け、内には軍閥が割拠し「党国一致」(党と国は一体)の観念が、軍にも民心にも深く根付いておりました。八十年後の中華民国は、民主改革の洗礼と軍隊国家化(国家の軍隊)の具現を経て、台湾は多元的民主主義の社会体制となりました。
われわれはみなぎる力と活力あるエスニシティーを有しております。われわれは自由に異なる主張をすることができます。われわれの軍人は国家と国民のために尽くすものであり、一つの政党あるいは個人に忠誠を示すものではありません。民主主義体制がまだ完璧とは言えない中、われわれは汗水を流し、共に協力しあい、憲政体制の改革と民主主義の深化のため尽力しております。これらのすべてが、われわれの大事にしなければならない成果と価値観であり、また「黄埔精神」に必要な動力源でもあります。
さらに、現在においても中華民国は依然として対岸からの脅威を受けております。この脅威は、旧来の党が軍を支配し、軍が政を支配するという、民主国家の常道に反する権威主義体制とともに、中華民国の安全保障と国際社会での生存にとって、重大な障害となるものであります。ここに「国家一体」の観念こそが、絶対的に中華民国政府および二千三百万台湾国民の生命、安全、さらに福祉を護る最重要な要素となっているのです。
いわゆる「国家一体」の観念とは、軍は中華民国の軍であり、二千三百万台湾国民の軍であり、政党がどのように替わろうとも、軍が「何のために戦い、誰のために戦うか」の根本的信念は微動だにしないということを指します。国家の軍隊とは、国家の生存と発展のために戦い、国民の安全と福祉のために戦い、台湾の民主主義と自由のために戦うものでなければなりません。さらに言えば、誰が台湾・澎湖・金門・馬祖を侵犯しようとしているか、誰が中華民国を併呑しようとしているか、すなわち誰がわれわれの敵であるのか、この一点こそ断じて曖昧にしてはならず、いかなる疑義も持つことはできないということです。
黄埔軍官学校が広東黄埔の地に設立され、台湾鳳山の地に毅然と存在しているように、「犠牲、団結、責任」という「黄埔精神」の核心は、時代の進展とともに新たな生命が付加されなければなりません。私は、伝統的な「黄埔精神」のなかに「勇気、信奉、信頼」という新時代の意義を注入し、次の八十年への新たな価値観にしなければならないと確信しております。
かつての黄埔人は、忠を尽くし生死を省みず、国家民族のために尽力してきました。この犠牲的精神こそ過去から受け継がれてきた「黄埔精神」です。今日の黄埔人は、身は異なる時代にあるとはいえ、「勇気」を発揮し使命を堅持して何ものをも恐れず、犠牲を享受し、民主主義を体現しなければなりません。そうしてこそ憲法を護り、国家を保衛することができるのです。
「団結」は一貫して「黄埔精神」の核心です。かつて黄埔人は指揮官の下に団結し、忠実に任務を遂行してきました。今日の黄埔人は国家の民主憲政体制への「信奉」精神を発揮し、国土と国民を護らねばなりません。すなわち「団結」の精神は「国家体制への信奉」と「憲政規範への信奉」の基礎の上に発揮されなければなりません。たとえ指導者が代わろうとも、「国家への忠誠」と「国家アイデンティティー」を揺るがせ、「誰が敵か味方か」の判断を誤るようなことがあってはなりません。
黄埔の第三の精神とは、すなわち「責任」です。黄埔人は過去から現在に至るも、一貫して部隊に対する責任、上官に対する責任、歴史に対する責任が必要であり、それゆえに黄埔人は強靭な意志と行動力が発揮できるのです。もとよりそれらは法による行政と厳格な規律の上に成り立つものであり、特に民主法治の国家においては、すべてが法に合致しておらねばならず、イデオロギーに拘泥されるようなことがあってはなりません。
私は中華民国総統として、台湾社会の安定と繁栄に、転嫁できざる責任を負っております。憲法は国家の基本法であり、政府と国民の契約書でもあります。だから私は五月二十日の就任演説において、「台湾の団結」「両岸の安定」「社会の安定」「経済の繁栄」など、政府の主要な施政目標を明示しましたが、現行憲法および修正追加条文の手続きに沿って憲政改革を完遂し、任期満了の前に時代と台湾の身に合致した憲法を国民に手渡すことも公約として明確に述べました。
改憲は「修憲」や「制憲」などといった文字の争いではなく、重要なのは、「合憲」の手続きに沿って「新憲」を創り出すことです。この新憲法は国家の主権と領土、統一か独立かといった問題に抵触するものではなく、行政の構造改革を進め、政府が良好な政治を行えるようにするためのものです。したがって軍が全面的に擁護すべきは憲法であって、このことは私の公約であり、国民が共同で実現する理想でもあり、外部による歪曲が許されるものではありません。
私は中華民国第十一代総統に就任したとき、「憲法を遵守し、職務に忠実に励み、国民の福祉を増進し、国家を保衛する」ことを宣誓しました。国家の安全保障は国民の福祉に関わり、とくに日々増大する中国の脅威に直面している今日、私利私欲を捨て、超党派で自国防衛を強化してこそ「有効な反撃」の能力を整え、予測しうる中国の軍事的蠢動を「有効阻止」できるのです。
われわれはまさに新たな時代に直面しており、ここに「黄埔精神」が発揚されなければなりません。われわれは共に努力し、自信をもって次の世代に「無駄にするな、しっかり生きろ」と言えるようにならなければなりません。
【総統府 6月16日】
新十大建設概要
新十大建設計画は二〇〇四年から五年間で五千億元(約一兆五千億円)を投入し、経済発展はもとより学術、文化面においても台湾の国際競争力を大幅にレベルアップしようとするものであり、その策定基準と概要は以下の通りである。
●策定の基準
①刷新的内容‥永続的な生態の発展、クリエイティブ産業、知識経済産業など創造的価値を持つプロジェクトを選出。
②骨幹となる建設‥経済の構造転換とレベルアップにメリットがあるプロジェクトを選出。
③指標となる効果‥環境を中心とする各種問題を克服でき、地域の発展をうながすことができるプロジェクトを選出。
④緊急の需要‥遅滞し早急に解決する必要があり、年度予算に収まらないプロジェクトを選出。
⑤バランス性を重視‥地域のバランスのとれた発展ならびに中央と地方の連携を考慮し、各プロジェクトを評価した上で策定。
●十大プロジェクトの概要
一、ハイレベル大学と研究センターの充実=アジアで最高、世界でトップ百位の一流大学と優秀な人材育成を目指す。
目標:一流大学を建設し、ハイレベルな人材を育成する。五年以内に少なくとも十五校の大学および各校にまたがる研究センターを設立し、アジアで最高レベルにする。十年以内に少なくとも一校を世界大学ランキング百位以内に押し上げる。
二、国際芸術および大衆音楽センター設立=国際文化を地方に根付かせ、台湾文化を世界の舞台へ送り出す。
目標:北・中・南・東部の各生活圏に国際芸術文化の発表の場を提供し、台湾を華人の大衆音楽創作と発表のセンターとなす。
三、M台湾計画=低価格のダブルネットワークで全島の場所と時間を問わずアクセスできるようにする。
目標‥世界最高のダブルネットワーク応用サービス環境を整備し、通信産業を第三の一兆元単位産業として発展させる。
四、台湾博覧会を開催=二〇〇八年に台湾博覧会を開催し、科学技術、観光、文化建設などの文化活動に全国民の積極的行動をうながす。
目標‥台湾の活力と創意の発揮を具現し、科学技術、観光および歴史、文化遺跡の保存を含む文化建設全体の発展をうながす。
五、台湾鉄道網のMRT化を促進=台湾の鉄道網をMRT化によって生まれ変わらせ、新しい都市を建設する。
目標‥二〇〇五年の高速鉄道(新幹線)の開通にともない、各関連駅、運行本数の増設、各在来線と新設線の高架化、地下化により、台湾の鉄道を都市と地域を結ぶ高速鉄道として再生し、各沿線都市の再開発を進める。
六、第三波高速道路の建設=花蓮、台東、南投地方を再開発し、シティライフの快適化を図る。
目標‥宜蘭、花蓮、台東および南投などの観光地を再開発し、北・中・南部の都市生活圏の快適化を促進する。高速道路の路線を拡大し、第一および第二高速道路と連結する。
七、高雄港遠洋コンテナセンターの建設=高雄にハイレベルの遠洋港を建設する。
目標‥新しい時代の遠洋コンテナセンターを建設する。アジアにおける一万五千TEUコンテナ船の停泊港として、高雄港の運用価値を向上させる。
八、北・中・南部の交通網を整備する=各地方に合計十路線の高速鉄道網を整備する。
目標‥全長百八十二キロの高速鉄道網を建設し、北・中・南部における交通の利便性を高める。
九、汚水処理下水道を完備=環境を改善し、河川と海洋を救う。
目標‥生活環境を改善し、水質を浄化し、本来あるべき美しい河川と海洋を取り戻す。
十、平地ダムと海水の淡水化処理場を建設=生態、観光、水資源を三位一体化する。
目標‥高地ダムの使用停止と平地ダムの建設によって水不足を解決し、水資源、観光、生態を多元的に使用する人造湖の新景観を創造する。海水の淡水化処理場を建設し、新竹科学園区および離島の深刻な水不足を解消する。
【行政院新聞局】
米が台湾WHO参加支持法案通過
二年以内の加盟が現実的に
ブッシュ米大統領は六月十四日、ホワイトハウスで声明を発表し、台湾の世界保健機関(WHO)参加を支持することを定めた連邦上院第二〇九二号法案にサインしたことを明らかにした。ブッシュ大統領はこの声明のなかで、「米国は台湾がWHO加盟に向けて推進する活動を、オブザーバーとしての参加も含めて、全面的に支持する。米国はこれまでも台湾支持の立場を公式に支持してきたが、今後も引き続きこれを支持する」と述べた。さらに本声明には、米国の行政部門は同法に基づき、台湾のWHO参加を推進するもっとも適切な方法を決定すること、今後は米国務次官が同法の規定により、適切な方法をもって国会に報告書を提出することが盛り込まれている。
外交部は米国の行政、立法部門が昨年に続いて台湾のWHO参加に支持を表明したことについて、感謝と歓迎の意を表すとともに、「米国の支持は、台湾の努力が国際社会の友人から評価されたことを顕著に示したものと言える。外交部は今後も全力でWHO加盟を推進し、国際社会から普遍的な賛同を得るよう努力する」と強調した。
【外交部 6月15日】
●台湾支持の「法制化」意義大
ブッシュ米大統領がサインした第二〇九二号法案では、米国会の開催月までに米政府が台湾のWHOへのオブザーバー参加に協力する法案を通過すること、今後本件は国務次官により主管され、国務院は法案通過後三十日以内、およびその後は毎年四月一日までに、台湾が推進する各種措置と計画への協力について、国会に報告書を提出することが規定されている。
今年のWHO年次総会は五月十五~二十二日までジュネーブでおこなわれたが、この際、米国代表団団長のトンプソン保健福祉省長官が李鍾郁・WHO事務局長に台湾支持の書簡を送り、また会議期間中に台湾のWHO参加支持を強調するなど、すでに台湾支持の具体的行動をとっていた。第一線で台湾のWHO参加を進めている沈呂巡・台湾駐ジュネーブ弁事処処長は、「米国が台湾のオブザーバー参加を支持するその誠意と行動は、高く評価すべきものであり、感謝に値する。米国は本法案の内容以上の行動ですでに台湾支持の姿勢を示しているが、米国の行動が法制化されたことに大きな意義がある」と強調した。
《台北『中央社』6月15日》
●行政院がWHO禁煙公約を通過
行政院は六月三日、WHOが推進する「タバコ規制枠組条約(FCTC)」の通過を閣議決定した。
本条約は、タバコの供給と消費規制のためWHO総会で採択されたもので、六月末までに加盟国四十カ国が批准すれば即有効となる。台湾はWHO加盟国ではないが、各国に先駆けて本条約を批准することにより、公衆衛生問題に取り組む確固たる決意を示すことがねらいだ。今後は六月末に向け、早急に立法院での通過を目指す。
【行政院新聞局 6月16日】
許世楷・新駐日代表略歴
七月五日に台北駐日経済文化代表処代表に就任する許世楷(KOH SE-KAI コー・セカイ)氏のプロフィールは以下の通りである。
一九三四年七月七日、台湾彰化市生まれ。
学歴‥国立台湾大学卒業後、日本に留学、早稲田大学政治学修士、東京大学法学博士。学術界での経歴は、津田塾大学で助教授、教授、学科主任を経て現在、津田塾大学名誉教授。
▽主な経歴
一九七二年 台湾独立建国連盟日本本部委員長
一九八七年 同総本部主席
一九八八年 津田塾大学国際関係学研究所委員長
一九八八年 同研究所所長
(一九九二年 台湾の民主化とブラックリスト解除により帰国、その後総統府に迎えられ、総統府人権諮問小組委員に就任)
一九九四年 台湾文化学院院長
一九九八年 台湾憲政研究センター委員長
静宜大学教授
建国党主席(99年退任)
▽主な著書
『日本政治裁判史録』(共著)全五巻
一九六八~七〇年 第一法規出版
『日本統治下の台湾』
一九七二年 東京大学出版会
『国際関係論基礎研究』
一九七六年 福村出版
『台湾新憲法論』
一九九一年 前衛出版社(台湾)
『世界各国憲法選集』
一九九五年 前衛出版社
『台湾憲政基本問題』
一九九八年 前衛出版社
『台湾前途危機管理』
二〇〇一年 前衛出版社
この経歴ならびに著書からも分かるとおり、許世楷氏は憲法学者として日本でも広く知られ、特に『台湾新憲法論』は台湾での憲法論議の主流的な文献となっている。また歴史学者としても大きな功績があり、『日本統治下の台湾』は、日台関係史研究家のあいだでバイブル的存在となっている。
(本誌編集部 6月)
台湾憲政改革への理解増大
新代表が語る主要対日政策
新駐日代表として近く日本に赴任することが決まっている許世楷氏は六月十六日、マスコミとの意見交換において、これからの重点的対日政策の一つとして「日本政府における陳水扁総統の憲政改革の理念に対する理解を増進し、台日両国間の安全保障における協力関係を深めることである」と語った。
このなかで許氏は「陳総統は憲政改革の推進を宣誓しているが、国際社会ではまだこれに対する理解がすくなく、憂慮を示している例も見られる。日本でもあまり理解されていない状況である。このたび日本に赴任することになり、陳総統の憲政改革の内容を詳細に説明し、日本側の疑念を解くことに努力したい」と表明した。
また、台日間における防衛協力深化の必要性の背景として「一九九六年に日米安保条約は台湾を防衛協力の範囲に組み込み、このことにより台日間に国交はないものの両国の国防関係はかなり緊密になった。同様に台米間においては、台湾関係法が米国の台湾に対する防衛性兵器の提供を義務付けている。こうした関係は台湾海峡の平和と安定にとってきわめて重要である」と語った。
さらに許氏は「日本が今年わが国のWHO加盟に支持を表明してくれたように、外交関係には開花の結果が必要であり、政府と民間の各種の努力、さらに多くの柔軟な交流パイプを通じてこそ、最後の成果を得ることができるのだ」と語った。
《台北『中国時報』6月17日》
ニュース
米国会で「一中政策」検討案
両岸の実状に適した政策を
米国議会の超党派機関である「米中経済安保調査委員会」は六月十五日、米国会で、「一つの中国」政策を再検討すべきだとする提案を発表した。同委員会は十五日、米中関係に関する一提案として本件を取り上げ、「米国議会と政府は中国と台湾の状況の変化を考慮し、本政策のプラス面とマイナス面、実現の可能性を改めて検討すべきだ。米国会は行政部門と協力し、中国の圧力で経済的苦境に立たされている台湾に協力する適切な方法を模索し、積極的に両岸対話に協力し、両岸問題の恒久的かつ平和的解決を促進すべきだ」と提案した。本委員会は二〇〇〇年に米国会の二大政党により組織され、毎年台湾、中国、香港を訪問し、国会で米中経済や安保関係に関する報告をおこなっており、内部関係筋は「共和党と民主党の議員で組織された本委員会が、満場一致で米国の『一中政策』見直し案を採択した意義は大きい」と述べている。
《台北『自由時報』6月16日》
今後も農漁民の福祉を継続
産業の高付加価値化を目指す
游錫堃・行政院長は六月十日に行われた農漁業発展座談会に出席し「ここ数年、国内の農・漁業は世界貿易機関(WTO)の加盟により、少なからず打撃を受けた。政府は今後も農漁民の福祉向上を図るとともに『中央農業研究院』を設立し、農水産物の研究開発とマーケティングを強化し、農漁業の高付加価値化を目指す」と語った。
さらに游院長は「私自身農民の出であり、農漁民の皆さんには特別な思いがある。今後も千億元(約三千億円)規模の『農産物輸入損害救助基金』を通して福祉を充実させるほか、米価の安定や原油価格高騰による損失補填、年金額の引き上げ、農漁民への融資金利の引き下げ、農漁民子女の教育助成金の拡充を実施する。さらに『中央農業研究院』を設立して各地の試験場を統合し、研究開発力を蓄積し、バイオテクノロジーパークを設置し、農漁業の高付加価値化に向けて努力する」と述べた。
《台北『青年日報』6月11日》
圧力は中国内部闘争が原因か
国安会:すでに情勢を掌握
このところ中国が名指しで民進党を支持する台湾企業を批判したり、芸能人の中国での活動を圧迫していることについて、邱義仁・国家安全会議(以下、国安会)秘書長は六月十三日、「中国の尋常でない一連の行為は、現在把握している情報から判断して、中国内部の権力闘争による可能性が極めて高く、政府は今後も情勢を注意深く観察していく」と述べた。
情報筋によると、陳水扁総統の再任に対し、江沢民を長とする軍部の活動が活発になっており、そのことが胡錦涛体制への大きな雑音となっているという。国安会は、「台湾企業の投資や芸能人のコンサート活動は地方にとって利益につながるはずであり、これを圧迫する背景には、中央政府の指示があるからに違いない」と見ている。
これらの情報を受けて、陳総統は変化する両岸関係に適切に対応すべく、すでに戦略を見直している。
《台北『自由時報』6月14日》
台北国際食品展が開催
過去最高の七百四十一社が出店
二〇〇四台北国際食品展が六月十七~二十日まで台北市の世界貿易センターで開催された。
昨年新型肺炎(SARS)の発生で開催が中止されたことや、消費、飲食マーケットの国際化を受けて、今年の参加企業は前回より二割以上多い七百四十一社にのぼり、過去最高となった。とくに海外から三百社以上が出展し、日本、ウクライナ、スロバキアも今年初めて参加した。
最大ブースを占める米国は、狂牛病(BSE)の発生で現在も牛肉の輸入が禁止されているため、今年は豚肉にターゲットを絞り、風味や品質にこだわったウインナー、ソーセージ、生ハムをPRする一方で、米国のBSE対策を説明したチラシを配布し、業者や消費者に理解を求めた。また今年注目されたのは、スロバキアの名酒・トカイワインや、東欧の伝統的な食前酒・プラムブランデーで、いずれもコスト面で大きな競争力があり、話題を集めた。
《台北『民生報』6月16日》
移民政策で少子化に対応
「経済性移民」の受け入れ促進
台湾の少子化と高齢化傾向が強まるなか、政府はすでに移民政策の積極推進によりこれに対応する方針を固めた。今後は経済効果をもたらす「経済性移民」受け入れを奨励し、投資を目的とした移民の受け入れ枠を広げ、中国からの専門技術者に対する移民申請規制の緩和も検討する。さらに「出入国および移民法」を改正し、審査方法など関連条項の追加をおこなう予定だ。
一方、行政院が六月十六日、院会(閣議)で通過した「現段階における外国籍および大陸籍配偶者の移民対応法案」によれば、これら配偶者の数は二〇〇三年末で二十八万人に上っている。政府は移民政策の一環として、過去三年間の平均人口増加率をもとに次の年の移民受け入れ数を決める「移民人口調整のメカニズム」策定を検討中だが、このうち外国籍配偶者の受け入れ数は一六%までに抑え、定期的に検討、調整をおこなうこととしている。
《台北『民生報』6月17日》
ますます進む少子化現象
昨年イタリアと並び一・二
台湾でも年々少子化が進んでいる。昨年の新生児数は二十二万七千人で、前年比一一・八%も減少し、出生率も一・二にとどまり、過去最低となった。これは、先進主要国で構成される経済協力開発機構(OECD)加盟国において、日本の一・三を下回り、イタリアと並んで最下位にある。
これを受けて游錫堃・行政院長は六月十二日、台北看護学院の卒業式に出席し、若者を前に「出生率の低下は、高齢化、少子化が進むなかで、社会的負担増を招いている」と指摘し、「台湾を愛するならたくさん子供を産むべきだ。少なくとも二人は必要」と訴えた。
OECDの報告によると、出生率の低下の主な原因は経済構造の変化と見なされるが、米国(二・一)やデンマーク(一・八)で比較的高いのは、男性の育児や家事への参加率が高いことや、女性が仕事と育児を両立できる環境が整っているためと思われる。
《台北『青年日報』6月13日》
09年ワールドゲームズが高雄で開催
台湾で初の国際的スポーツ競技会
二〇〇九年におこなわれる「ワールドゲームズ」の第八回大会が、二年間にわたる積極的な働きかけの末、高雄市で開催されることが決まった。六月十四日、謝長廷・高雄市長は高雄市のランドマーク「海洋の心」広場において、ロン・フローリック国際ワールドゲームズ協会(IWGA)会長とともに調印式をおこない、台湾で開催される初の国際的総合スポーツ競技会に向けて第一歩を踏み出した。
ワールドゲームズは「第二の五輪」とも言われ、オリンピック競技種目に採用されていない種目を集めて開催される総合競技大会で、一九八一年に始まり、すでに九十以上の国と三十四の協会、三千名の選手が参加する競技会となっている。米国サンタクララや英国ロンドンをはじめ、日本の秋田でも開催された。台湾は第一回目から毎回参加しており、これまでに金メダル十六個、銀メダル十五個、銅メダル十五個を獲得している。二〇〇一年の秋田大会ではメダル数で上位十三位に入り、国際レベルの大会で初めて中国の記録を上回った。
今後高雄市では、早急に準備委員会を設立し、二〇〇五年六月一日までにワールドゲームズ組織委員会を設立する。また、行政院体育委員会(体委会)は三カ月以内に行政院に企画書を提出し、高雄市と協力して準備委員会を設立、各種準備作業に入る予定だ。〇九年高雄ワールドゲームズでは、合気道、ボーリングなど三十一種目の公式試合のほか、ゲートボール、チュックボール、ドラゴンボートの三種目で模範試合が予定されている。
《台北『中国時報』6月15日》
●政府も開催に向けて全面協力
〇九年高雄ワールドゲームズの開催について、陳水扁総統は六月十四日、フローリックIWGA会長と会見し、これまでの支持と協力に対し心から謝意を表すとともに、「高雄市での開催が決定したことは台湾の体育建設に対するIWGAの評価であり、台湾国民全体の誇りである」と述べた。さらに、「国際的スポーツ交流は政治と切り離されるべきであり、国際友誼と世界平和の促進を目標とすべきだ」と強調した。
一方、游錫堃・行政院長は同大会の開催にあたり、「これは高雄市だけでなく、台湾全体にとっての喜びである」と述べ、「政府は同大会をつつがなく成功させ、国際社会に台湾の繁栄と友情を知らせるため、今後四年間にわたって全面的に各種準備作業に協力する」と表明した。
【総統府、行政院 6月15日】
国際文化芸術フェスティバル
●二〇〇四年宜蘭国際「子供の遊び」フェスティバル
日 時 七月三日~八月十五日
会 場 冬山河親水公園
http://www.lcch.gov.tw
「台湾の子供の夢の楽園、世界の芸術の重鎮、宜蘭県人の文化の故郷」という「子供の遊び」フェスティバルに対する宜蘭県の美しいビジョンが、七年の努力を経て少しずつ実現しつつある。
宜蘭国際「子供の遊び」フェスティバルは、台湾では世界的に最も知名度の高い民俗の祭典だ。毎年夏休みになると、冬山河親水公園は子供たちの心をひきつけ、このフェスティバルは多くの人びとの共通の記憶となっている。一九九六年に第一回フェスティバルが開催されて以来、参加者や来場者は年々増え続け、二〇〇二年の来場者数は延べ百万人を突破した。このイベントは宜蘭の文化の土壌をより豊かにし、地元にビジネスチャンスをもたらしているだけでなく、他の自治体にとっても芸術文化発展の手本となっている。
二〇〇三年はSARSが流行したために、フェスティバルは緊急に中止され、感染拡大が収まってから「子供の遊びFun一夏」というイベントを行った。この活動も素晴らしいものだったが、やはり本格的なフェスティバルにはかなわず、来場者数も減少してしまった。この一年間の準備を経て、今年の子供の遊びフェスティバルは夏休みに大々的に行われる。
二〇〇四年宜蘭国際子供の遊びフェスティバルは、これまでの国際性、レベルの高さ、文化芸術交流、親子で楽しむといった主旨を貫き、演技と展示、ゲームと親水を四大テーマとして行われる。
世界各地から招かれる音楽、舞踊、民俗芸能などの団体の演技が、このフェスティバルの一大特色だ。アフリカの熱気、アメリカ大陸の情熱、太平洋の島々のロマンなどが一同に会し、子供たちにとっては、さまざまな文化に触れて刺激を受け、異文化を受け入れる絶好の学習機会になる。
展示についても主催機関は知恵を絞り、毎年さまざまな変化を持たせている。各国の玩具や遊戯、最新の玩具とハイテクゲームなど、各種テーマで展示を行っている。たとえば、「世界の人形劇館」「マシン玩具館」「人類百年飛行展」「アニメ魔法学園」など、毎年来場者に新しい体験をさせてくれ、知的で内容の濃い旅をしたいと思う人なら、大人も子供もきっと満足できることだろう。
遊戯ゾーンには、子供たちに大人気の大型立体迷路があり、今年はその造形や仕掛けがさらにレベルアップするので、ぜひ挑戦してみたい。また、長い行列ができる高い吊橋「High Net」も装いを新たに登場する。子供たちは高い場所で思いっきりスリルを味わうことができるだろう。
このほかに、水の迷宮、びっくりトンネル、超大型ウォーターベッドといった遊びの施設が設けられ、音楽やラフティングによる変化も加わり、楽しみは尽きない。暑い夏の日、ここで思い切りストレスを解消してはいかがだろう。
これらのほかに、内外から団体を招いて文化芸術や遊びについての学習会も行われ、会場内では玩具のDIY教室やダンス教室なども開かれる。新しくネット上に設けられた「遊び公園ホームページ」は、子供たちに遊戯や玩具の作り方や創意コンクールの場などを提供する空間で、フェスティバルの質を高め、より広く普及させるものだ。
子供の遊びフェスティバルの明るく楽しい雰囲気は、実際に体験してみなければわからない。大人も子供も、美しく広々とした冬山河を訪れ、台湾が生んだカーニバルに参加してみようではないか。
●二〇〇四年桃園歌謡フェスティバル
日 時 七月二十四日~八月二十二日
会 場 石門ダム風景区
http://www.tyccc.gov.tw
その土地に根付いた歌は、一曲一曲が文化の結晶であり、じっくり味わう価値のある作品だ。
海を越えて台湾に来た先祖たちは、故郷を離れての開墾の苦労のなかで、「思想起」を歌った。客家の山歌や小唄は、客家の女性たちの茶摘みの様子を記録したものであり、客家の人びとの暮らしの喜びや悲しみをうたっている。天から美声を授かった台湾の先住民族はかつて「八部合唱」で世界中を魅了し、中国大陸各地からの移民者は大陸各地の調べをもたらした。これらが集まった台湾の民謡は、さまざまな音色にあふれたシンフォニーのようだ。代々受けつがれてきたこれらの歌は、歌詞もメロディーも感動的で、それぞれの地方の特色を持ち、台湾の多民族文化の特色を強く反映している。
山々に囲まれ広大な土地と自然に恵まれた桃園県には外省人、閩南人、客家人、先住民族が暮らし、さらに外国人労働者の人数も台湾で最多と、多様な民族が暮らしている。こうした文化的特色を活かして「二〇〇四年桃園歌謡フェスティバル」は「地元の歌声と世界の音楽の発見」をコンセプトに開催される。
歌謡フェスティバルでは「パフォーマンス」「展示」「コンクール」「シンポジウム」を四つの活動の柱としている。「世界音楽博覧」と「声の美しさの発見」というシンポジウムでは、世界の音楽に関する商品の販売のほか、各国の歌謡の歴史や、創作の発展、芸術伝承などを理解することができる。会場では歌作り教室も開講され、テーマ曲の公募が行われるなど、音楽創作愛好者には見過ごせないイベントだ。
パフォーマンスでは、台湾、客家、先住民など地元の音楽家や世界各国の伝統民謡、現代歌謡のグループなどの演奏が毎日行われる。外国人による台湾歌謡の歌合戦「地球村で歌い継ぐ」も計画され、外国人とともに歌を通じて楽しく交流していく。
歌謡フェスティバルの活動地点は、大漢渓が流れる石門ダムの風景区に位置し、周囲は美しい景勝地や観光スポットに囲まれている。たとえば、遊園地「アジアパーク」や「ゴールデンバードパーク」「童話世界」などがあり、主催者は旅行業者と提携して日帰りツアーや一泊ツアーなどを用意している。各国の歌のパフォーマンスを楽しんだあとは、古い街並みが連なる大渓や、桃が特産の復興郷など桃園の名所旧跡を訪ねたり、近隣の中壢市や新屋近辺の牧歌的な情緒に満ちた客家の伝統建築の店で、この地方独特のお菓子などをお土産に買うのもいいだろう。歌声が響きわたる桃園歌謡フェスティバルは、美しい景色に美しい歌声、美味なる名産品を合わせた充実した旅となるにちがいない。
【行政院文化建設委員会】
台湾観光年
リニューアルオープンした「台湾民俗村」
今年リニューアルオープンした彰化県の台湾民俗村で、七月一日から八月三十一日まで、第一回「台湾涼水節」が開催される。
台湾民俗村は、創立者の施金山氏によって台湾各地の史跡建築を保存する目的で開かれた施設で、日本で言えば栃木県日光江戸村の歴史民俗テーマパークに相当する。園内には澎湖島から運ばれた伝統建築や、台北の昔の北投駅舎をはじめ、台湾各地の貴重な歴史建造物が数多く保存されている。台湾中部最大のテーマパークに数えられ、開園当時から毎年百万人を超す参観者が訪れ、政府の優良レクリエーション施設として表彰されてきた。
ところが二年前に経営難が発覚し、その後経営権をめぐり紛糾が続き、施設経営が不安定に陥った。だが調整を重ね、最終的には経営のプロに任せることで決着し、現在は伝統建築郡や嘯月山荘、健康クラブ、小皿料理ストリートなど、これまでの施設、景観はそのままで、古代の結婚式や紙漉き、細めん打ちの伝統芸の披露も復活した。
●台湾涼水節で暑さ吹き飛ばそう
「台湾涼水節」はそうした台湾民俗村リニューアルオープン以降、最大規模となるイベントで、地元の花壇郷役場と彰化県観光協会、台湾民俗村が共同で主催し、夏の暑さが厳しい台湾にあって涼をテーマにした催しには大勢の参観者の入場が期待される。
イベントでは、全国各地のアイスや氷菓子、ドリンクを一堂に集め販売する。また全長三キロにわたる道の両側に、約三万株の蘭の花と彰化の草花二万株を植え、人工的に霧を発生させ、霧の中で花を愛でる趣向もある。
このほか、水に関連する十一種類のゲームや、ラムネを自分で作るDIY(手作り)コーナーなどがあり、子供も大人も楽しめる。またテーマ館には、清末から日本統治時代、さらに現代まで、各種アイス、氷菓子を製造する機械や道具、それに当時の写真などが展示される。
◆「台湾民俗村」彰化県花壇郷湾雅村三芬路360号(午前8時30分~午後6時30分)料金:三百八十元(約千百円)
http://www.t503.com.tw
《台北『民生報』6月11日》
各地で鉄道節のイベント開催
●彰化駅を観光拠点に
台湾の鉄道は清朝一八八七年、当時民政長官だった劉銘伝が開いたとされる。今年は鉄道開通百十七年目にあたり、鉄道節の六月九日を記念して、各地でさまざまなイベントが行われた。
彰化駅ではおよそ百年前の蒸気機関車(CK-101)が黒煙を吐きながらプラットホームにゆっくり滑り込むと、集まった約三百人の市民から一斉に歓声が起こった。子供たちはものめずらしそうに機関車の車体に触ったり、年配者は写真をとって懐かしんだ。また翁金珠・彰化県長は「古跡に指定されている車庫と合わせ、彰化駅を重要な史跡観光拠点にしたい」と期待を述べた。
●阿里山でも蒸気機関車が運行
嘉義県阿里山でもこの日、森林鉄道で蒸気機関車(第三十一号)が運行された。機関車は北門を出発し、途中、竹崎駅で燃料を補給したあと、奮起湖まで運行された。
葉賢良・嘉義林区管理処処長によると、九八年に蒸気機関車(第二十六号)を復活させた際、各界から大きな反響があったため、さらに今年三十一号の大規模修理を行い運行させることにしたという。奮起湖駅にはカメラを手にした大勢の市民、鉄道ファンが集まった。
《台北『青年日報』6月10日》
文化ニュース
永遠の象・林旺よみがえる
生前の姿そのままに動物園へ
昨年二月、八十六歳という世界最長寿でこの世を去った台北市立動物園のオスのアジア象・林旺が六月七日、生前の姿そのままに、ふたたび人びとの前に蘇った。
林旺は、第二次世界大戦中ビルマ(当時)で、日本軍の武器運搬用に使われていたところを、中華民国の軍隊によって捕獲された。他の十二頭とともに軍の貴重な運搬手段として活躍し、戦後は中国大陸へ渡り、のちに軍とともに台湾へやってきた。その間、厳しい行軍で仲間の六頭が衰弱死し、台湾への航海では嵐に遭うなど、数々の苦難に遭遇した。だが台湾に安住の地を得てメスの「馬蘭」と半世紀にわたり添い遂げ、動物園の人気者として長い間人びとに愛された(詳細は本誌二〇八八号を参照)。戦中、戦後、現代と、中華民国、台湾の歴史とともに歩んだ林旺を永遠に残そうと、昨年十一月から専門家の手で剥製の標本作りが進められてきた。
作業は林文龍氏が中心となり、市内の深坑地域の空き地に建てられたプレハブ小屋で行われた。標本は実物と同じ大きさで、身長が約三メートル、幅約一・六メートルで、皮の重さは三百キロに及ぶ。眼球、牙、足の爪、尻尾、右目の睫毛以外はすべて本物だ。林氏は小屋の横に止めた車内で寝泊りしながら、仲間とともに連日十四、五時間作業を続け、およそ半年間かけて完成させた。
林氏は「みんなが求めているのは単に美しい標本というだけでなく、ある時代を回顧させるものでなければならない。つまり、林旺の眼差し、表情がどれほど大切かということだ」と語り、精魂込めて完成した林旺には「自分の一部が宿っている」と言う。
作業を終えた翌六月七日の朝、林旺は特製のタンカーに載せられ、およそ一年四カ月ぶりに台北市立動物園に戻った。この日、林旺を目にした市民からは「本物そっくり。まるで生きているみたい」と、驚きと喜びの声で沸いた。林旺は六月末まで園内の教育センターに安置され、その後、特別区が完成する十月以降、正式にお披露目される予定だ。
《台北『中国時報』6月8日ほか》
昭和天皇の特別客車が公開
豪華な内装、最古の電灯列車
昭和天皇が皇太子時代、台湾の行啓で使用された特別客車(SA4102)が六月九日、台北市内でメディアに公開され、その後一般市民にも公開された。
この特別客車は一九〇四年に製造され、台湾最古の客車とされている。主賓室、侍従室、食堂、配膳室、トイレなどがあり、さらに自家発電機を備え、電灯や扇風機があり、台湾で電灯を備えた列車の草分けともなった。内装は豪華で、台湾産のヒノキが贅沢に使用された。また取っ手や室内彫刻、壁画、抱き枕にはどれも天皇家を象徴する菊の紋が彫られている。床には黄金色の絨毯が敷かれ、窓には色ガラスが使われるなど、ヨーロッパ調の優雅さが漂う。昭和天皇はこの客車で日月潭や阿里山を訪れた。戦後は蒋介石総統の専用車として使われたが、その後三十年余り、車庫に保管されたまま人目に触れることはなかった。
一般公開には、台湾総督が使用した一九一三年製造の特別客車(SA4101)も合わせて披露された。
《台北『聯合報』6月13日ほか》
盛況だった台北国際コンピュータ展
過去最高のバイヤー数
ドイツ・ハノーバーに次ぎ世界第二の規模のコンピュータ見本市である「台北国際コンピュータ展」が六月一~五日に開催された。
新型肺炎(SARS)の発生で九月に延期して行われた昨年の展示会は、バイヤー数、展示ブース数ともに過去最高を記録し大盛況を収めたが、世界景気の回復で今年は昨年を上回る二万七千人のバイヤーが訪れた。参加企業は千三百四十七社、展示ブースは約二千八百個で、バイヤー、一般合わせて期間中約十万人が参観した。
今年のテーマは「デジタル家電」。会場には、液晶テレビや家庭用デジタル製品をネットで連結するさまざまな商品が展示された。また今年は米インテル社の新型チップセットを使用したマザーボードを台湾の主要メーカーが出展したことも大きな話題となった。
台北市コンピュータ公会の張笠副総幹事は「欧米諸国からの注文は以前からすでに安定しているが、今年はあらたに東南アジアやロシア、中東からの引き合いが増え、台湾の情報産業の実力が証明された」と語っている。
《台北『聯合報』6月6日》
南区に紀元前博物館建設へ
教育部、文建会が実地を視察
新竹科学園区に続く台湾第二のサイエンスパーク・台南科学園区は、通信光電、半導体などを主とするIT産業が集まるハイテクエリアだが、何千年も前の古代文物を抱える世界有数の遺跡出土地という別の顔も持つ。教育部と文化建設委員会は五月十四日、同園区に建設が予定されている国際レベルの紀元前博物館予定地を視察し、遺跡の状態や出土品について実地調査をおこなった。
南区紀元前博物館建設の責任者である臧振華・台東紀元前博物館館長によれば、南区には現在二十五カ所の遺跡出土エリアがあり、このうち十四カ所はすでに適切な処置が施されており、紀元前五千~三百年の完全な人骨が出土している。一つのエリアにここまで多くの遺跡が集中している例は、世界でも稀だという。これらの人骨は各種の異なる断層から出土しており、現代の科学技術によってDNA鑑定をおこなえば、歴史、文化、医学など各研究分野に、古代人の生活や文化の資料を提供することができる。南科全体から出土する人骨は千五百体に上る見込みであり、この貴重な歴史の資産に、各国の学術機関が続々と研究の意向を申し入れて来ている。こうしたなか、同園区に国際レベルの遺跡博物館が建設されることとなり、建設地選定と遺跡の状態調査のため、主管機関の教育部がこのほど関連省庁とともに、非公式に実地調査をおこなった。
呂木琳・教育部次長は「すでに十ヘクタールの予定地を選定済みである。将来は研究、収蔵、展示および教育的機能を併せ持つ博物館を建設し、ハイテクと人文研究の価値を兼ね備えたサイエンスパークとなるだろう」とコメントしている。
《台北『中国時報』5月15日》
●四千五百年前の犬の骸骨が出土
台南科学園区から、台湾の考古学史上最古の完全な犬の骨が出土した。七年前から南区で遺跡の発掘作業をおこなっていた中央研究院考古学班が発見したもので、専門家の検証によればこの骨は約四千五百年前、新石器時代の大坌坑文化層に属する遺跡であることが分かった。人骨とともに埋葬された形跡があるため、食用ではなく、当時の人類が狩猟や門番として飼っていた可能性が高いという。人に飼われていた犬の遺跡としては最古であり、人間とともに生きてきた忠実な友の歴史を辿る貴重な発見となった。
《台北『中国時報』5月19日》
●金門では鄭成功時代の砲筒出土
一方、金門の后豊港沿岸ではさきごろ、「国姓爺」鄭成功時代のものと見られる砲筒が発見された。李炷烽・金門県長が五月二十五日、実地訪問したところによると、この砲筒は長さ二百六十センチ、口径十五センチ、重さ八百六十キロの鉄製で、地元住民が岸から六十キロ離れた水域で発見し、機械を使ってようやく岸まで引き上げたという。地元の専門家らによれば、これは鄭成功率いる軍が「反清復明」の根拠地として金門に駐留していた一六○○年代のもので、金門沿海で清の軍隊と激しく戦闘した際使用され、台湾に移動する船から海中に落ちたか、あるいは岸に残されたものが歳月とともに水中に埋まったものと見られている。三百五十年前の金門開発史を実証する国宝級の文化財であり、発見地で砲台に据え付けるか、鄭成功を祭った延平郡王祠に安置するかを現在検討中だ。
《台北『中国時報』5月26日》
台南で「ルカイ族写真展」
移りゆく文化撮り続け十三年
十三年の間、ルカイ族の旧い集落を訪ねて山に入り、人々の生活と文化を撮り続けたアマチュア写真家・王有邦さんによる「ルカイ族写真展」が、六月六~七月五日まで、台南市百達文教センターで開催中だ。
王さんは彰化出身、民間企業の工場に勤めるサラリーマンだが、三交代制の仕事の開いた時間には、いつもルカイ族の集落である好茶部落へ写真を撮りに行っていた。好茶部落は、西ルカイ族の一大集落・霧台郷にある部落のひとつで、傾斜の激しい坂に阻まれた旧い集落である。ここに暮らしていた人々は、一九七四年以降、交通の利便性を求めて現在の新好茶集落に移り住んだが、その後は伝統的な生活習慣も次第に廃れてきた。王さんが撮ったのは旧好茶の人々で、忘れられていくルカイ族の文化を記録した点で、貴重な作品となっている。
今回の写真展では、王さんが初めて集落を訪れてから十三年間、仕事の合間を縫い、睡眠時間を削ってカメラに収めた五十六枚の写真が展示されている。その多くがルカイ族の生活文化を撮ったもので、深い皺が刻まれたルカイの老人たちの顔や、冠婚葬祭など生活の様子をつぶさに捉えている。
当初、王さんを好茶部落へ連れて行ったルカイ族作家の欧威尼・卡露斯(オヴィニ・カルスワン)氏は、特別写真展開催セレモニーで講演し、「王氏が苦労して発見したものは、無限の啓示と感慨、美しさがある。一枚一枚の写真が彼の汗と涙の結晶だ」と述べ、「あとはルカイ語が分かるようになれば、被写体との距離をさらに縮めることができるだろう」と王さんを激励した。
《台北『中国時報』6月7日》
文化・芸能ミニ情報
王力宏が「Best buzz台湾」受賞
日本の音楽専門チャンネルMTVJAPANが主催する日本最大級の音楽賞で、今年で三年目を迎えた「MTV ビデオミュージックアワード2004」が五月二十三日、浦安市でおこなわれた。
受賞イベントには国内外から人気アーティストや豪華プレゼンターが登場して盛り上がり、日本ポップス界の歌姫・浜崎あゆみや、最近台湾公演を成功させた安室奈美恵らが各賞を受賞するなか、台湾の実力派アーティスト王力宏(ワン・リーホン)が、「ラスト・ナイト」で「最優秀 buzz Asia 賞 from Taiwan」を受賞した。
同賞は台湾で活躍する最優秀歌手に贈られる賞で、今年から新設され、張恵妹(アーメイ)や陶喆(デビット・タオ)、周傑倫(ジェイ・チョウ)ら九名がノミネートされていた。王力宏は最近日本限定版アルバムを発売するなど、日本での活躍も目覚しいアーティストで、今後の活躍が楽しみだ。
《台北『中国時報』5月24日》
台湾漫画家十四人が合同イベント
五月二十三日、「台湾と世界の漫画一〇〇特別展」が、中華漫画家協会と新城市画廊の合同主催で、台北市内でおこなわれ、台湾国内の漫画家十四名の作品六十点が展示された。
政治漫画家の第一人者で本名羅慶忠のL.C.C(台湾語で爺さんの意)さん、野球選手の似顔絵で人気の鐘孟舜さん、ニューエイジ代表の若手漫画家可楽王さんなど、台湾の青年、中年、老年三世代の漫画家十四名が会場に登場し、それぞれの創作スタイルや漫画に対するこだわりについて、見学者と直接語り合った。訪れた人々は各世代の作品を堪能し、同時におこなわれた即売会では、十二万元(約三十六万円)で販売された画もあった。
《台北『中国時報』5月24日》
お知らせ
躍動台湾・台日友好歴史写真展
in ISHIKAWA
日本統治時代、台湾の水利事業の振興に大きく貢献した八田與一氏の彫像が今年五月、台湾から氏の故郷である金沢に贈られたのに合わせ、台日友好を目的にした写真展が開かれます。日本統治時代から戦後の復興、台湾の豊かな自然風景、伝統芸能、文化など約百五十点が展示されます。
※入場料無料
日 時 7月7日(水)~12日(月)
会 場
①メイン会場:めいてつエムザ「エムザギャラリー」2階
②サブ会場:「エムザダイニングガーデン特設会場」地下1階・レストラン街
(①は午前10時~午後8時/②は午前10時~午後10時)
主 催 行政院新聞局、台北駐日経済文化代表処、台北駐大阪経済文化弁事処
問合せ 遠東亜太交流センター 東京事務局(TEL:03-5336-6255)
春 夏 秋 冬
今年6月3日、広島市内のホテルで、日台の政財界人ら約300人が出席した記念式典があった。広島-台北間に定期航空路が開設され、それの就航式である。これで日本と台湾を結ぶ定期航空路は、東京、大阪、名古屋、福岡、那覇、札幌、仙台、広島の八路線となる。このなかで新路線の双方にもたらす利益は大きい。藤田雄山・広島県知事は式典で、この定期路線の開設を「広島と台湾の交流に新紀元を開くもの」と位置づけ、「この航空路を活用し、広島と台湾の間の文化・経済交流に努力したい」と述べた。さらに、この路線は「日本の中国、四国地方千四百万人の住民に、台湾との往来へ便宜を提供するものになる」と述べた。これまで中国、四国地方の人が台湾に行く場合、大阪か福岡に出なければならなかったことを考えれば、大きな福音となるはずだ。同時にそれは、台湾から日本の中国、四国を訪れるに際しても、一段と便利になったことを意味する。
羅福全・駐日代表は「過去最高時で台湾から日本に年間八十八万人の観光客が訪れ、千八百億円を消費した。日本から台湾への観光客は、昨年はSARSの影響で減少したものの、一昨年は百万人に近づいた。台北-広島間の定期航空路開設は、双方の観光業に新局面を開くものであり、台日交流の新たな歴史の開始となる」と語った。
目下、日本も台湾も海外からの観光客誘致に力を入れており、この定期航空路開設により、本年中に双方の往来100万を達成もしくは回復するのは、決して夢ではなくなった。この点でも、本路線開始の意義は大きい。魏幸雄・中華航空社長が「台日間の新定期航空路開設は台日双方政府の努力の結果であり、この新路線が台湾と日本の中国、四国地方との交流に新局面を開くものと確信している」と語ったのも大袈裟ではない。
だが、すべてが好転しているわけではない。式典のなかで許水徳・亜東関係協会会長は「台湾は日本の人々に30日間のビザ免除を認めているが、日本は台湾人に対し72時間のトランジットビザ免除を認めているにすぎない。広島から日本政府に呼びかけて欲しい。もし日本も台湾に30日のビザ免除を認めたなら、台湾から日本への観光客は必ず増加するだろう」と強調した。その通りであろう。
さらに、日本は韓国と中国の修学旅行生へのビザ免除を実施しているが、これを台湾にも適用すれば、若者の交流も倍増することは間違いない。本誌からも、日本の関係者に改善を強くお願いしたい。
(K)