台湾週報2153号(2004.7.29)
台湾の外交基本戦略は国際協力
任期内にふたたびアフリカ・中米訪問
中国は軍備増強を着々と進める一方、国際社会での台湾圧迫をますます 強化している。台湾はこれに対し防衛力を強化する一方、外交戦略として は従来の平和的国際協力および人道支援を強化し、国際社会との協調をよ り一層強める姿勢を示している。陳水扁総統はこの外交基本戦略を、最近 の二つのイベントの中で明らかにするとともに、任期内にふたたびアフリ カ・中米を訪問する意思を明らかにした。以下はその内容である。
台湾とアフリカのきずな
アフリカ友好諸国の駐台大使らを招いての「アフリカの日」の催しが七月九日、台北市内で開催された。このイベントは一九六三年から年中行事として行われ、二〇〇二年にはこれが「アフリカ連盟」として組織化されたものである。この日、出席した陳水扁総統は祝辞の中で、台湾とアフリカの基本的関係について以下のように述べた。
○ ○ ○
アフリカと台湾は距離的には遠いものの、感覚的には近く感じられます。私は二〇〇〇年八月と二〇〇二年七月にアフリカを訪問し、友好国官民の心ある歓迎を受けるとともに、ブルキナファソでは開拓地で台湾式の棚田を見ることができ、ガンビアでは台湾農業技術チームと現地の人々が共同で豆栽培に従事しているのに接し、マラウイ、サントメプリンシペ、チャド、スワジランドでは台湾医療チームとボランティアの活動を見ることができました。現在アフリカから十三名の研究生が台湾の各大学と研究所で学んでおり、今年九月にはこれが四十名に増えます。これらが、私がアフリカを身近に感じる原因です。
アフリカ諸国はかつて欧州各国の殖民統治を受け、独立後も艱難辛苦の道を歩み、わが国国民とアフリカの人々は経験を分かち合い、多方面にわたって協力しあい、台湾同様に急速な発展を遂げました。アフリカの友好諸国は、台湾の支援に感謝するとともに、国際社会において強く台湾を支援してくれています。とくに本年、WHOの台湾参加問題について、アフリカ友好諸国は中南米およびアジア太平洋の友好諸国とともに台湾支持を積極的に発言し、米国、日本とともに台湾支持の票を投じ、EUとカナダも台湾支持を表明してくれました。「徳は孤立せず、必ず支援者がいる」との言葉どおり、医療、衛生に国境はなく、台湾は本年も一歩前進することができました。わが国は今後二年以内にWHO年次総会オブザーバー参加の目的を達成する所存です。
私はアフリカ友好諸国の台湾に対する正義ある支持に心より感謝しております。ここに重ねて、わが国とアフリカ友好諸国が今後とも友好協力関係を強化し、能力の範囲内においてアフリカの発展と建設に協力して行くことを明言いたします。わが国は自由と平和を愛するとともに、同じ理念を持つ世界の国々との友好を深めたいと願っております。
今年五月二十日の総統就任式にアフリカ友好七カ国のうち、五カ国の国家元首が直接参加して下さり、二カ国の国家元首が祝電を寄せていただいたことに、最高の感謝を表明いたします。私はすでに二度にわたりアフリカを訪問しておりますが、私の感覚ではまだ少なすぎると感じております。アフリカは太陽があふれ将来のある地域であり、これからの任期四年間のうちに、もう一度訪問したいと思っております。
【総統府 7月9日】
台湾技術チームを激励
台湾は国際協力の一環として多くの各種技術チームを友好各国に派遣し、当該国の生活向上のため尽力している。これらのチームの団長ならびに専門家グループは必要に応じて一時帰国し、いっそうの支援強化のため研修を受けている。陳水扁総統は七月十四日、これら技術チーム帰国研修団一行と会見し、政府と国民を代表して感謝の意を述べるとともに、以下のように語った。
○ ○ ○
本日「駐外技術チーム団長および専門家の管理能力向上のための研修計画」に参加された方々とお会いできたことを嬉しく思います。
各国に派遣された技術チームは、外交部の各駐在機関とともに台湾外交の最前線に立つものであり、同時に「国際協力」と「人道支援」実践の模範でもあります。さらに技術チームの活動は、台湾が積極的に国際社会に復帰して行くため、国民からもきわめて重視されており、政府も外交戦略と実践の最重要の一環としてとらえております。
わが国は一九五九年にベトナムに農業支援チームを派遣したのを嚆矢とし、一九六一年に国際協力の専門小組を設立し、アフリカ諸国に農業チームを派遣し、友好各国の食料増産を支援し、その歴史はすでに四十数年に達しています。この四十数年間、各技術チームは開発途上の友好諸国の農業、漁業、医療サービスの向上に協力してきました。今後とも台湾は、各国政府および国民とともに台湾の経験を分かち合い、台湾の技術を当該国の国民に移転し、それらの国民が永続的発展の基礎を確立することを望んでおります。
私は就任以来、アフリカや中南米諸国を訪問し、各技術チームが炎天下で現地農民に稲作、野菜栽培、果物栽培の指導をしている姿を拝見し、感謝とともに感動を覚えました。ブルキナファソを訪問したおり、わが国のチームが荒涼とした荒地を上質の水田に変え、現地農民の士気を高めている姿を拝見したときの印象には強烈なものがありました。ガンビアではわが国チームによる野菜栽培指導が奏功し、現地の婦人たちが自ら栽培した野菜類を市場で換金している姿に接し、わが国技術チームへの評価と感謝の声が高いことも直接知ることができました。
アフリカではマラリアがいまなお広く蔓延し、わが国医療チームが自ら感染の危険を冒しながら現地の医療改善の指導に当たっていることを私は十分に知っております。今回研修のため帰国された方々は、それらを指導する立場の方々であり、私はここに政府と国民を代表し、心より感謝の念を表明いたします。
各在外技術チームの成否はわが国の外交に大きな影響を与えるものであり、その成否は皆様方リーダーのあり方にかかっております。今後とも各チームがわが国外交のため尽力されることを願ってやみません。また、今後四年間において、私はふたたび現地を訪問し、皆様方にお会いできることを希望しております。
【総統府 7月14日】
週間ニュースフラッシュ
◆蘇貞昌・総統府秘書長がフィリピンを電撃訪問
中国の外交圧迫が強まるなか、蘇貞昌・総統府秘書長がフィリピンを二十四時間電撃訪問したことが七月十日の帰国後明らかにされた。フィリピンの一部メディアは蘇秘書長はアロヨ大統領と陳水扁総統のフィリピン訪問について話し合ったと伝えたが、蘇秘書長は肯定も否定もしなかった。台湾とフィリピンの元首外交は李登輝総統(当時)が同国を一九九四年に訪問して以来、途絶えている。
《台北『中国時報』7月11日》
◆ドミニカ共和国上院議員一行が訪台
游錫堃・行政院長は七月十二日、アフクナーク・ドミニカ共和国上院議長を団長とする同国上院議員訪台団一行十二名と会見し、ドミニカ共和国が台湾のWHO参加支持を表明していることに感謝の意を表明し、ドミニカ共和国訪台団一行は游院長に同国名誉上院議員証を授与した。
【行政院 7月12日】
◆台湾での人民元両替を試験的に解禁検討
邱太三・行政院大陸委員会スポークスマンは七月十二日、国内の飲食業者が公然と人民元での支払いを受け付けていることから、試験的に台湾国内の人民元両替を公認することを考慮していると明らかにした。現行では両岸関係条例により、台湾での人民元交換は認められていない。
【行政院大陸委員会 7月12日】
◆日本で初の台湾系参院議員誕生
七月十一日に投開票された日本の参議院選挙で、東京選挙区から民主党公認で出馬した蓮舫さんが当選した。蓮さんは日本で最初の台湾系国会議員となったが、台湾のメディアのインタビューに応じ「今後、日台交流に尽力したい。尊敬する政治家は陳水扁総統だ」と語った。
《台北『自由時報』7月13日》
◆八月十二日に立法院臨時会召集し新十大建設予算案討議
行政院は立法院が新十大建設予算案を早急に討議することを望んでいるが、王金平・立法院長は七月十二日、与野党協議の結果八月十二日に立法院臨時会を召集し同予算案を討議すると表明した。このとき游錫堃・行政院長に改めて予算案の説明を求める意向も示した。
《台北『青年日報』7月13日》
◆年末選挙で与党が過半数占めれば公民投票法改正
「第四原発公民投票促進会」は七月十三日、民進党本部を訪れ、年末立法委員選挙で民進党が過半数を取り、公民投票法を改正し、非核国家に進むことへの期待感を示した。これに対し李応元・民進党副秘書長は「過半数を得れば公民投票法を必ず改正する」と答えた。
《台北『中国時報』7月14日》
◆日台がFTA締結し、共同で中国および世界市場に進出
陳水扁総統は七月十四日、「東亜経済会議」第十六回幹部会議の一行と会見し、「日本と台湾が自由貿易協定(FTA)を締結し、共同で中国および世界市場に進出すれば、直面するリスクを回避できる」と語り、日台両国のFTA締結に強い期待感を示した。同時に陳総統は、東亜経済会議が日台の経済交流に大きく寄与していることに高い評価を示した。
《台北『中国時報』7月15日》
◆ドミニカ共和国と台湾の友好関係は不変
一部の外電がドミニカ共和国が中華人民共和国に接近していると伝えているが、陳其邁行政院スポークスマンは七月十五日、「游錫堃・行政院長が八月十四日にドミニカ共和国を訪問する日程に変更はなく、フェルナンドス新大統領も台湾訪問を了承しており、両国の友好関係に変化はない」と表明した。
《台北『聯合報』7月16日》
李顕龍・シンガポール副首相が訪台
両岸問題、軍事交流、経済交流などについて意見交換
シンガポールの李顕龍(リー・シェンロン)副首相が七月十一日、台湾を訪問し、四日間の滞在中、陳水扁総統、游錫堃・行政院長、連戦・国民党主席らと会談した。
李副首相は、李光耀(リー・クアンユー)上級相の長男で、五十二歳。十四年間副首相を務め、来月、ゴー・チョクトン首相の後任に昇格することが決まっている。三十二歳の時に軍隊から政界へ転身して国会議員となり、八六年に発表した「二十一世紀のシンガポール」レポートは大きな話題となり、その後同国発展の青写真ともなった。
●隠密訪問
今回の李副首相の訪問は私的なもので、非公開とされた。李副首相がこの五月に北京を訪問したばかりであるため、中国に配慮したものと受け止められる。シンガポールと台湾の関係は以前から密接で、最近では李光耀・上級相が二〇〇〇年九月と〇二年九月に台湾を訪れ、陳総統と会談を行っている。行政院筋によると、今回の李副首相の訪問は先方からの要請を受けたもので、「首相就任前に積極的に海外を訪問し、国際的地位を高め、国際実務の視野を広げさせたい」との李上級相の計らいがあったとされる。
●両岸問題への関心強く
十一日、李顕龍副首相は游錫堃・行政院長や蘇貞昌・総統府秘書長と会見した。消息筋によると、双方の経済、軍事交流、両岸問題などについて話し合われた模様で、李副首相はとくに両岸問題について強い関心を示したという。李副首相が今後、両岸交渉の仲介役となるかどうかについて、政府高官は「仲介役にはそれ相応の条件がなければならない。李光耀・上級相は中国寄りと見なされたため、李登輝前総統と次第に疎遠になった。また、仲介役は双方にある程度保障を与えなければならない。その意味で、米国はそれができるが、シンガポールは無理」と分析している。
李副首相は翌十二日午前、陳総統と会見し、夜は官邸で開かれた歓迎会に出席した。会見は一時間ほどで終わり、消息筋によると、議題は双方の経済交流やASEAN(東南アジア諸国連合)の問題におよび、さらに李副首相は「辜汪会談」に類した両岸会談の開催を積極的に働きかけたという。これに対し陳総統は、五月二十日の就任演説で述べた「地域の安定と台湾海峡の平和を追求する決意と、両岸に横たわる偏見や意見の対立の解消に努力する」考えを改めて示した。歓迎会には陳総統夫妻、蘇総統府秘書長、邱義仁・国家安全会議秘書長らが出席し、なごやかな雰囲気のなかで李副首相夫妻を歓待した。
●軍事交流は安定
また、李副首相に同行し台湾を訪れたシンガポールの張志賢・国防相は十一日、台湾の李傑・国防部長と会見し、双方は一九七五年以降、シンガポールが兵士を台湾に派遣し訓練を受けさせる「星光計画」を今後も継続していくことを確認し、交流計画などについて協議した。
●野党とは経済問題で意見交換
李副首相は十二日、連戦・国民党主席が主催する歓迎会に出席し、政治問題には触れず、経済問題について意見交換した。会には王金平・立法院長、胡志強・台中市長ら国民党幹部が出席したが、馬英九・台北市長は姿を見せなかった。
●中国が不満、抗議を表明
李副首相の今回の訪問について中国外交部は十一日、「中国との度重なる厳正な交渉を顧みず、首相就任前に台湾で非公式訪問を行ったことに、政府として強い不満と抗議を表明する」との声明を発表し、大陸の中央銀行にあたる「中国人民銀行」の周小川総裁のシンガポール訪問を急遽取り消した。
《台北『中国時報』7月12・13日》
蒋介石・経国両氏台湾で国葬に
遺族の意思尊重し〇五年春埋葬へ
国防部は七月八日、蒋介石、蒋経国両氏の遺族および関係省庁と合同協議をおこない、現在台北郊外の桃園県に仮安置されている両氏の遺体を、遺族の希望により、軍の五指山公墓に埋葬する方針を固めた。
八日の会議には、経国氏長男・孝文氏の嫁・蒋徐乃錦さん、蒋介石氏次男・蒋緯国氏の子息蒋孝剛さんら遺族をはじめ、総統府、行政院、内政部、外交部、退役軍人輔導委員会、僑務委員会のほか、台北県、市および桃園県など各機関の代表が参席し、次の二点について合意に達した。一、「故総統蒋公および蒋経国氏移霊奉安準備委員会」を設立する。国防部と内政部により葬儀執行綱要計画草案を作成し、行政院に報告後、総統の承認、命令により準備委員を指名する。内政部は法に従い国葬儀式弁事処を設立し準備を開始する。同弁事処が設立されるまでは、国防部と内政部により事務委員会を組織し、共同で準備を進める。二、国葬と陵墓の建設に必要な費用は、内政部および国防部が行政院に申請し、二〇〇四年末までに予算化する。両氏の国葬は、二〇〇五年三~五月の間におこなわれる予定だ。
蒋介石、蒋経国両氏はそれぞれ一九七五年、一九八八年に死去し、桃園県の慈湖と頭寮に別々に仮安置されていた。以降、霊廟は国防部のもとで管理されてきたが、今年一月二十七日、蒋経国夫人の蒋方良さんと蒋邱如雪さんが遺族全員の名義で、両氏の遺体を国防部管轄下の五指山公墓に埋葬することを国防部に申し入れて来た。国防部が遺族の意向を陳水扁総統に報告したところ、陳総統は「遺族の希望を尊重し、国葬法に基づき謹んで葬儀を執り行うよう」指示したという。また、呂秀蓮副総統も八日、「一人の人間が一生のうちもっとも大切な土地を認識することは正しい決定である」とコメントした。総統府は、陳水扁総統の指示により、遺族を尊重し、関連法規に基づき厳かに国葬をおこなうため協力する意向を示している。
●台聯:政府は慎重に処理を
蒋介石、経国両氏の国葬に関し、台湾団結連盟では七月八日、両氏の埋葬には積極的姿勢を示しながらも、「二度の国葬が妥当かどうかについては、政府は国家財政を考慮し慎重に処理すべき」と指摘した。李登輝前総統の事務所は本件について特にコメントしていないが、陳建銘・立法院台聯党団総召集人は「李前総統の著書『台湾見証』から、蒋経国氏への尊敬の念が読み取れる。基本的には遺族の意向と政府の姿勢を尊重するものと思われる」と述べている。また、立法院民進党団では、「両氏の台湾での埋葬は台湾のアイデンティティーの表現である」と本件を評価し尊重する意向を示した。
一方、国民党の郭素春スポークスマンは「国民党も両氏の国葬に全面的に協力する」と述べ、葬儀の際に棺に党旗を被せるかどうかについては、「遺族の希望を最優先させる」と強調した。
●台湾での埋葬は遺族全体の意思
蒋経国の子息である章孝厳・国民党立法委員は、七月八日、メディアの取材に応え、両氏の国葬に全面的に賛同する意を表明し、本件については蒋孝剛氏から事前に聞かされていたことを明らかにした。公墓への埋葬は、孝剛氏から大規模な陵墓は生前から「質実剛健」だった両氏の意向に反するという思いを伝えられ、財政に配慮し決定したという。しかし、葬儀はすべて蒋経国夫人の蒋方智怡さんの意見を尊重することを表明し、「台湾での埋葬は両氏のこの地への貢献とアイデンティティーを示すものである」と述べた。
両氏の埋葬については、国民党執政下の一九九六年にも、党内と遺族で論議が紛糾した経緯がある。当時国民党内では、まず台湾で埋葬し、両岸統一後改めて中国へ埋葬する提案がなされたが、蒋経国の三男・孝男氏が断固大陸への埋葬を主張して譲らず、多くの意見が錯綜した。最終的に宋美齢夫人が「台湾で埋葬し、統一後に中国へ埋葬」という二段階の奉安計画を提案したことで、論争は収まったが、両氏の遺体は現在まで仮安置されたままとなっていた。
《台北『自由時報』7月9日》
ニュース
米国の対台政策変わらず
中国の兵器輸出停止要求拒否
●ライス氏が中国の要求拒否
北京を訪問したライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)と中国首脳部との一連の会談は七月九日に終了した。この内容について、米『ワシントンポスト』紙は七月十日、「中国は米国に、台湾への兵器輸出を停止するよう要求したが、ライス補佐官はこれを拒否した。またライス補佐官は中国首脳部に対し、ブッシュ大統領の言葉として、米国は台湾海峡両岸が対話を再開することを望んでいる旨を伝えた。
同日の米『ニューヨーク・タイムス』紙によれば、ライス補佐官は江沢民に対し、台湾政府との交渉再開の道を開くよう呼びかけるとともに、「北京が台湾に対して『一つの中国』を受け入れるよう迫っていることは、両岸交渉再開にとってなんら益するところはない」と告げた。
《台北『中時電子報』7月9日》
●米国の対台政策に変化なし
バウチャー米国務省報道官は七月十四日、「米国の台湾海峡両岸問題に対する政策は不変であり、三つの共同コミュニケと台湾関係法を遵守し、『一つの中国』政策を堅持し、両岸のいずれもが一方的に現状を変更しようとすることに反対するというものだ。これを北京について言えば、台湾に対して武力を使用してはならず、あるいはそれに類する脅迫をしてはならないということである」と述べ、台湾への兵器輸出は従来どおり実施することも明言した。
《台北『聯合報』7月16日》
台湾の名を正し正常な国家に
時代に合致した国号に変更を
七月十日、現代文化基金会が主催する「台湾憲政シンポジウム」が台北中央図書館で開催され、出席各氏が台湾の正名(名を正す)問題について意見を述べた。政治大学国際関係センターの洪茂雄研究員は、外交的観点から国号変更を主張し、「中華民国の『台湾化』は必至であり、古い歴史を脱ぎ捨て、中華民国を『現地化』『本土化』させてこそ、台湾は国際社会のなかで正常な国家としての役割を果たすことができる」と述べた。また張炎憲・国立歴史博物館館長は「中華民国という国号は、中国が一中政策で台湾を圧迫する理由となっている。有名無実の国号を早急に変更すべきだ」と主張した。
一方、尤哈尼・伊斯卡卡夫・国策顧問は、先住民の立場から発言し「元来台湾で主権を持つ先住民が参加して、台湾のための憲法を制定し、台湾国民主体の新国家を建設してこそ、真の前途と希望が生まれる」と強調した。
《台北『自由時報』7月11日》
ライス訪中は「一中」検討か
辜寛敏・総統府資政が予測
辜寛敏・総統府資政は七月十日、「台湾憲政シンポジウム」に出席し、ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)が、さきごろアジア各国訪問の際、中国で胡錦涛・国家主席および江沢民・中央軍事委員会主席らと会見したことに関し、「ライス訪中は近年における中国の軍拡が原因だ」と述べた。辜資政は、「日本の防衛白書によれば、二〇〇四年における中国の国防予算は前年比一一・六%増で、〇三年の増加率九・六%を上回り、近隣アジア諸国、とくに台湾にとって脅威となっている。今回ライス氏が中国と日本、韓国を訪問した理由の一つはこのことである」と指摘した。
さらに「米国が原則としてきた『一つの中国』は、近年台湾国内での主体意識の上昇により、すでに両岸情勢に適さなくなっている。ライス氏の訪中は、米国が『一中政策』を検討するにあたっての、視察の外遊だと思われる」と予測した。
《台北『自由時報』7月11日》
「国土復育特別条例」検討へ
年間百億元投じ国土蘇生
游錫堃・行政院長は七月十二日、経済建設委員会(以下、経建会)に、七月二~三日に台湾中部で起きた七・二災害の被害再建、移住、土地徴収の法的根拠となる「国土復育特別条例」草案を策定するよう指示した。経建会ではすでに条例策定作業に入っており、二週間以内に初期報告を提出する予定だ。
游院長はまた、「従来の『国土三法(地質法、海岸法、国土計画法)』は予防のため、『国土復育特別条例』は治療のための法である」とコメントし、今後は現地調査を経て、一定海抜以上の高地に対する開発、開墾および居住を禁止する方針を明らかにした。これを受けて張景森・経建会副主任委員は、「山地の無秩序な開拓が七・二災害の元凶である。政府は毎年の公共工事予算のなかから少なくとも百億元(約三百億円)を国土蘇生予算とし、山地や海岸の農地利用や居住を減らし、災害の発生防止に努める方針だ」と強調した。
《台北『青年日報』7月13日》
国・親合併が暫時棚上げ
立委選挙前の合併は困難に
関係筋によれば、宋楚瑜・親民党主席はさきごろ、張昭雄・親民党副主席が反対していることを理由に、国・親両党の合併協議を暫時停止するよう連戦・国民党主席に要請した。これにより国民党側は、合併関連事項協議のため八月に予定していた臨時全国党代表大会の召集を無期延期することを決め、また九月四日の第十六期中央委員会第四回総会で、国親合併案を議題に入れるかどうかも未定としている。
国親合併は党規約修正に関わる問題であり、合併の詳細についても全国三千名の党代表の承認が必要だが、親民党側の要請により、臨時党代表大会が無期延期となったため、本年十二月の立法委員選挙までの合併実現は、事実上不可能となった。
国民党内部では、宋楚瑜氏への不満の声が高まっているが、連戦主席は党規約の修正関連方案を早急に検討するよう党内関連部門に指示し、依然合併の余地を模索している。
《台北『中国時報』7月14日》
戒急用忍と南向政策を貫徹せよ
『自由時報』(7月12日)
最近二つの隠密訪問が注目を集めた。一つは蘇貞昌・総統府秘書長のフィリピン訪問であり、もう一つは李顕龍・シンガポール副首相の台湾訪問である。蘇秘書長の訪問は、帰国後も情報が公開されず、ベールに包まれたままだが、李副首相の方は、それに比べると公開されたが、李氏本人はメディアに一言も発せず、訪問の目的が何なのか、気になるところだ。いずれにせよ、台湾とアジア諸国との関係強化は、近隣諸国との相互連動を増進させることにつながり、台湾の国家利益に合致する好ましいことである。
シンガポールの指導者は、これまで一貫して両岸の積極往来を支持し、第一回目の「辜汪会談」が当地で開催されたことからも、同国が両岸関係に何らかの役割を果たすであろうことは考えられる。シンガポールの指導者は、台湾が権威主義の時代から密接に交流し、その間、台湾の民主化への転換や台湾の国民みずからが国の前途を決定するという民意の堅持を見守ってきた。シンガポールは華人中心の国だが、国内で中国との統一を求める主張は一度も起きなかった。なぜなら、文化のアイデンティティーと国のそれとは異なることを深く認識しているからである。われわれはシンガポールの指導者が、北京に「一つの中国」支持の立場を示すだけでなく、台湾の国民の主権維持の決意を、ぜひ合わせて伝えて欲しいと思う。
同じ東南アジアのフィリピンも、台湾との関係は非常に深い。同国は台湾の外国人労働者の重要な担い手であるだけでなく、有望な海外投資先の一つでもある。さきごろアロヨ大統領が再任された際、陳総統が蘇秘書長を就任式典の特使として派遣したのも、自然の成り行きであった。そして今回、蘇秘書長の訪問は、両国の高官クラスの相互訪問に道筋をつける意味合いもあったと思われる。政府のこうした東南アジアへの積極外交は、それらの地域への積極投資を呼びかけた「南向政策」再開の可能性をうかがわせる。というのも、台湾の中国投資の過熱はすでに警戒線を超えており、リスク分散が避けられない状況にあるからだ。
一九八〇年代、東南アジアは台湾の対外投資の重点であり、双方に正式な国交はないものの、密接な互恵互利の関係にあった。それが八八年以降は中国にとって代わられ、政府が九三年に打ち出した「南向政策」は、まさに中国への盲信的な投資を転換させるためであった。
しかし残念なことに、当時の政府はこれをまじめに推進しなかった。現在、国民総生産に占める中国への投資を見ると、台湾は約五〇%に及んでおり、米国の〇・三%、日本の〇・六%などと比べて飛びぬけて多く、深刻な状況にあることは明らかだ。その中国は、われわれの投資に感謝するどころか、台湾企業を人質にし、政府に圧力を加える、いわゆる「商を以って政を囲む」格好の材料としているのだ。こうしたことからも、「戒急用忍(急がず忍耐強く)」と「南向政策」は極めて正しい視点であり、経済制裁の発動をほのめかす中国に対抗するには、この二つを貫徹させる以外に有効な手立てはない。
ここ数年来の中国の強力な経済吸引力は、東南アジア諸国の成長に陰りをもたらし、中国の軍拡は南海の安全に脅威を与えている。こうした今こそ、台湾は南向政策を積極的に推進し、経済リスクを分散することで、中国から身を守らなければならない。
台湾での埋葬は最良の選択
『自由時報』(7月9日)
蒋方良・故蒋経国夫人は今年一月、桃園県に仮安置されてきた蒋介石・経国父子の遺体を、台北県五指山の国軍公墓へ埋葬するよう正式に申請した。政府はこれに全面協力し、両氏を国葬することを明らかにした。両氏の台湾での埋葬について、多くの国民が蒋方良夫人の選択を評価し、蒋一族が台湾に根を張ることを歓迎することだろう。また、このことの政治的意味は、人々に多くのことを考えさせるはずである。
蒋介石父子が台湾に渡ってきたのは、言うなれば歴史の偶然だった。戦後、中国からの敗退を迫られた蒋介石は、日本軍に替わって台湾を統治した。やがて朝鮮戦争が始まると、反共産党の冷戦のもとで、台湾は西側大西洋防衛ラインの要衝となり、政治、軍事ともに主要民主国家の支持を受け、経済面では米国の庇護のもと、安定した成長を開始した。蒋介石は台湾で戒厳令を敷き、いわゆる恐怖政治を展開したため、厳しい弾圧のなかで、勤勉質実な台湾国民は政治から離れていき、すべての力を経済発展に注いだ。その結果、中小企業から海外市場へ進出する大企業が生まれ、台湾はついに世界に名だたる経済の奇跡を起こしたのである。
蒋介石・経国統治下の台湾はこのように進展してきたが、その一方で、両氏の政治的目標は、台湾を主体としたものではなかった。かれらにとって台湾は「反攻大陸」の拠点であったに過ぎず、当時「反攻大陸、共匪殲滅」あるいは「三民主義が中国を統一する」といったスローガンが叫ばれ、作られた神話が政権独占の口実となったのである。
しかしその後、「華米共同防衛条約」が締結され、当時蒋介石から政権を引き継いでいた蒋経国は、「反攻」はすでに叶わないことを悟ったはずである。だからこそ中国国民党というこの外来政権は、次第に本土化の道を歩き始めたのであり、ほかに選択の余地はなかった。とりわけ蒋経国は、台湾各地を視察し、みずから「私は台湾人だ」と言及するなど、台湾のアイデンティティーを意識していたことが伺える。こうした政治的手法は、もとは国民党政権を維持するためのもので、当時の強権政治は台湾国民の自由と人権を奪ったが、「反攻大陸」が事実上実現不可能となった後、台湾のアイデンティティーに向き合わざるを得なくなったことも、また事実なのだ。
両氏は生前、北京当局との接触、交渉、妥協には一切応じず、台湾経済の建設と台湾の安全保障維持を最重要任務としてきた。台湾自身が国力をつければ、中国に併呑されないことを、両氏ともよく知っていたからである。一部の人々が両氏の真の思惑を理解せず、ただ政治的思惑から「統一」を利用し中国に迎合して、国民の両氏に対する評価を下げているのは非常に残念なことだ。
両氏の台湾での埋葬を申し出た遺族の複雑な心境は、想像に難くない。だが、一歩踏み込んで考えれば、これは台湾における両氏の有終の美を飾るものであり、かれらの歴史的終焉の地として台湾を選んだことは、最良の選択だと言えるだろう。このことはわれわれに、台湾に来た約半世紀前、望んで来たにせよそうでないにせよ、すべての人の運命は共にあったことを気付かせてくれる。両氏とともに台湾に移住し、現在も両氏を崇めている人々は、今回両氏が縁あって台湾の正式な移民となったように、いま最良の方法は台湾に根を張ることだと認識しなければならない。それを踏まえず、北京の統一戦略に騙され、反共が転じて共産党に媚び、統合されようとするならば、そうした人々は蒋介石、経国両氏の遺志に背くだけでなく、みずからの一生さえも歴史の灰燼と化してしまうだろう。
防衛力を強化し国家の安全を確保
必要な先端兵器の配備と全民国防の意識
台湾にとって、戦争の抑止、台湾海峡の安定、国土防衛が当面の国防政策である。だが近年来、中国は軍事費を大幅に増加し、海軍、空軍の戦力とミサイルの配備を絶えず強化拡大し、すでに初期的な奇襲攻撃の能力を持つに至り、台湾海峡両岸の軍事バランスは崩れ、台湾の国防と安全は非常な試練に立たされるところとなっている。国防部は国家の安全を確保するため、防衛について一九九五年より中国からの脅威ならびに全般的な戦略面からの検討を加えてきた。それにより、米国による台湾の防衛に必要な兵器評価の結果も踏まえ、パトリオットミサイル、対潜哨戒機、ディーゼル潜水艦を購入し、対ミサイル防衛能力および敵軍による海上封鎖と渡海作戦の阻止能力を高め、有効な戦争抑止能力を備え、国民のミサイルに対する心理的恐怖感を除去し、海上交通の安全を確保する計画を立てた。この計画は国防部が急務として綿密に検討し、シミュレーションを何度も重ねた上で導き出した結論なのである。
敵を知り防備を固める
すでに広く知られているように、中国は台湾に対する武力侵犯の意図をいまだ放棄せず、とくに近年、経済発展の成果を流用して積極的に「軍の質的向上、ハイテク化」を進め、さらに「戦略の重点」を東南沿海部に置き、台湾に対する攻撃部隊の配備を着々と進め、台湾の安全保障の危機は日増しに高まってきている。中国軍は「遠洋作戦能力向上、緒戦での勝利」を作戦マニュアルとし、猛然と軍備を整えるため、一九八九年以来、軍事費を十五年間にわたって毎年二ケタ成長させてきた。本年度の公表軍事費は二百五十四億ドルであったが、米国務省は、秘匿された予算を含め実際にはその三~四倍であると分析している。その重点は海空軍および第二砲兵隊(ミサイル部隊)に置かれている。
空軍では新型戦闘機の購入、国産新型機の研究開発、訓練の強化を進めており、十年以内に強大な第四代戦闘機部隊を備えると予測される。海軍では自主建造の新一代に属する旅海級、旅滬級、江衛級駆逐艦およびロシア製ソブルメンヌイ級駆逐艦二隻を備え、海上戦闘力を大幅に向上させている。潜水艦は明級、宋級潜水艦を増強し、さらにロシアのキロ級潜水艦をライセンス製造し、年々在来艦と交代させている。また〇九Ⅲ型攻撃用原子力潜水艦を建造中であり、また〇九Ⅳ型ミサイル原子力潜水艦を研究開発中である。ミサイル部隊では、目下戦術ミサイル六百基を保有し、台湾全島をその射程に入れ、さらに毎年五十~七十五基増強している。
軍は国家の安全と国民の生活を守る盾である。台湾はいま重大な安全保障の危機に直面しており、このため「有効な抑止力、専守防衛」の理念の下に、早急に防衛力を強化する必要に迫られている。ところが台湾の防衛予算は年々減少し、満足できる防衛力が維持できず、安全保障の確保に深刻な影響が出ている。国防部が前述三種類の兵器購入の計画を立てたのはこのためである。
安全保障は生存の確保
安全確保は国家の生存と発展を維持する最も重要な道である。いかなる場合においても十分な備えをし、防衛力を高め、敵に乗じる隙を与えないようにしなければならない。
このたびの兵器購入特別予算の総額六千百八億元(約一兆八千億円)は確かに膨大な額である。国民の中には、これらの予算を教育、文化、健康保険、医療の方面に回せという声もある。しかし、着実な国防力がなかったならどうなるであろうか。いかなる投資も建設も、すべてが無に帰すのである。実力のないところに安全はあり得ない。政府が台湾の安全と安定の確保を厳にしてこそ、海外からの投資を呼び込むこともでき、国民の生命と財産を守ることもでき、国民が安心して経済発展に努力することもできるのである。これこそが経済発展の基礎となるのである。このため、今回の特別予算は国防支出というだけではなく、国民の利益に合致した投資ということができるのである。
防衛と軍拡競争は異なる
台湾の国防予算は多年来、中央予算に占める比率が下がり続け、この三年間はマイナス成長とさえなっている。いわゆる「国家は国防なくして成り立たず、民は軍なくして不安」という状況となっているのだ。国防は国家の重要政策であり、それは国家の安全と利益を維持するためのものである。国防部は「兵戦は好むなかれ忘るゝなかれ」の理念の下に、脅威を自覚し方策を練り、台湾防衛に必要な「有効な抑止力、専守防衛」のための兵器を算定した。それはあくまで自国の防衛力強化のためであり、中国と軍拡競争をしようというものではない。
軍は当然ながら政府が中国と接触し、話し合いによって平和的に両岸の歴史的な対立を解決するのを支持している。しかし忘れてならないのは、中国がこの十数年来、軍事費を増大し軍備を拡張し続け、台湾に敵対する配備を進め、その演習までしており、中国の善意に期待することはできないという点である。まさに「備えあれば憂いなし」というべきで、全国民が国防強化を支持し、防衛戦力を確立してこそ、国家の生存と発展、国民の安全と福祉を守ることができるのである。
各兵器への専門的評価
近年来、国防部が進めている「全民国防」の理念が社会的にも重視されるようになり、兵器購入特別予算案に対しても、マスコミは大きな関心を寄せており、これは好ましい現象である。ところが各種評論のなかには、情報や知識不足のため、国民に誤解を生じさせる内容のものも散見できる。今回の特別予算案は、一九九五年から三年間にわたって検討し、二〇〇一年に米国政府が台湾への輸出に同意したものであり、一時の政治的考慮によるものでは決してない。それらは必要最低限のものであり、ここに主要三種類の兵器の効能を列記したい。
一、パトリオット三型ミサイルを配備することにより、敵ミサイルに対する防衛範囲を台湾全域に拡大でき、人口にすれば現在の防衛範囲を全人口の二五%から七〇%に拡大でき、産業防衛も現在の八%から六〇%以上に拡大できる。このように中国のミサイルに対する脅威を大幅に低下させ、国民の士気も兵力も温存でき、中国に軽々に戦端を開かせないようにできるのである。一九九六年に中国が台湾近海でミサイル実射演習をしたおり、軍はその動向を把握していたが有効な防御能力を持たず、そのため国民への心理的影響には大きなものがあり、株価は急落したものであった。これを思えば、ミサイル防衛の必要性がいかに重要かが実感できよう。また、このミサイルの性能はすでに実戦によって証明されている。
二、P3C哨戒機は米軍の現役機種であり、現在十六カ国が採用しており、高速で偵察範囲も広く、滞空時間も長いという特質を備えている。ミサイル、魚雷などの発射能力、水雷の敷設能力にも優れ、敵潜水艦の動向を把握し、中国による海上封鎖を阻止するのに有効である。
三、ディーゼル潜水艦はシミュレーション演習の結果、その能力は証明されており、これを配備することにより、台湾海軍の警戒範囲は現在の五倍に拡大でき、ミサイル、魚雷などによる攻撃能力は百倍以上となり、台湾の経済発展、海上交通の安全維持にきわめて有効である。
透明な軍の予算編成
国防部の予算編成は一定の秩序の下に行われ、すべてが法によって進められ、透明化されている。装備は作戦の必要性を熟慮した上で決定し、最小の費用で最大の効果を挙げることを念頭においている。こうして策定した予算案は、立法院の同意を得て実施に移される。
中国軍の軍事的強大化、さらに国際社会でのわが国への圧迫強化から、台湾に対する危機はますます増大している。こうしたなかに、中国はミサイルで台湾を威嚇し、海上および水中の作戦で台湾の海上封鎖を実施し、台湾国民の士気を崩壊させ、投降に追い込む作戦をとろうとしている。このため台湾が有効な抑止力を持つことは、台湾経済と国民への最大の後ろ盾となるものであり、そこには国民の理解と協力が是非とも必要なのである。
《台北『青年日報』7月12日》
台湾観光年
「雲林国際人形劇フェスティバル」華やかに開催
毎年雲林では国内外の人形劇団を招き、特色あるさまざまな人形劇が繰り広げられる。今年の「雲林国際偶戯節(人形劇フェスティバル)」は七月十日~十五日に開催され、日本やドイツ、カナダなど九カ国から十一団体と、国内の二十三団体を合わせた三十四の団体が参加した。
フェスティバルに合わせ、前日の九日からは「人形劇文物展」が開催され、古代から伝わる人形劇の歴史が、銅鑼などの楽器や人形の衣装、その他の道具によって紹介された。
また公演以外に「雲林人形劇の将来」と題したシンポジウムも開催され、人形劇のあり方や劇団経営、人形作り、せりふの研究など、さまざまな問題について話し合われた。
《台北『民生報』7月9日ほか》
●台湾の布袋戯を紐解く
台湾伝統の人形劇には、布袋戯(指人形)、皮影戯(影絵芝居)、傀儡戯(あやつり人形)の三つがある。いずれも中国福建省から伝わったものだが、今では台湾の方が盛んである。
かつて布袋戯に使う衣装はいたってシンプルだったが、それが見た目に布製袋に似ていたり、あるいは人形師が道具を大きな布袋につめて移動したりしたことが、布袋戯(ポテヒ)という名の由来になったと言われている。
布袋戯は原則として、人形担当が二人、演奏担当が四人の、六人で演じられる。物語は、おなじみの「三国志」や「西遊記」、あるいは「水滸伝」など、日本の時代劇に相当する「武侠小説」を素材にした戦記ものが多く、その多くに宗教的、道徳的な意味合いが込められている。
布袋戯のセリフは台湾語であるが、登場人物の役柄がはっきりしているので、意味がわからなくても、観るだけで充分に楽しめる。
役柄は大別して六種類。正義のために悪に立ち向かうヒーローの「生」は、文人肌の「文生」と武人肌の「武生」に分けられるが、両者は服装で見分けがつく。ヒロインの女性は「旦」、老人は「末」、道化は「丑」、そして主人公を助ける「浄」は顔が赤や青などに塗られている。赤は忠義、青は短気な性格を表わし、三国志の関羽が赤顔、張飛が青顔というのはその代表例である。孫悟空などの動物は「雑」に入る。
布袋戯の面白さは、精巧な人形の作りや敏捷な手さばきだけでなく、空を飛んだり宙返りをしたりする、派手なアクションにある。衣装の裾に切り込みを入れてあるので、宙返りをした時に服の下から足が見えたりすると、その臨場感についつい引き込まれてしまう。
かつては、祭りの時によく演じられた布袋戯は庶民の愛する娯楽だったが、徐々にその存在感が薄れてきた。ところが一九七〇年代、台湾雲林県に、やや大ぶりの人形を使い、レーザー光線による照明効果やシンセサイザーを取り入れた「金光布袋戯」が登場するや、若者の心をとらえて、伝統芸能を蘇らせるきっかけになった。さらに大胆な演出を取り入れた「霹靂布袋戯」がテレビで放送されると、視聴率九〇%をあげるなど、一世を風靡した。この霹靂シリーズは、今でもDVDなどで人気を博しているという。
このように、進化を遂げつつある布袋戯は、台湾でもとくに郷土色の強い舞台芸術と言える。こうした新旧の布袋戯に詳しいのが「叙旧茶飯劇場」のオーナー、陳建華である。陳氏は、もっと多くの若い世代に人形を操る面白さを伝えたい、外国からの客に台湾民俗芸能を気軽に体験してもらいたいと、布袋戯が楽しめる台湾料理のレストランを六年前にオープンした。毎週土曜日の夜は伝統劇、日曜日の夜は現代物がライブで演じられているほか、十人以上の団体の予約が入れば、随時上演してくれる。
小さい人形を使う布袋戯は、こうして間近で鑑賞するのが一番だ。しかも簡単な指導を受けて、実際に体験できるのもうれしい。店内では布袋戯の人形も販売しており、土産に買い求める人も多い。
〔布袋戯を鑑賞できる主な劇場〕
①旧茶飯劇場:台北市伊通街140号
②大稲埕偶戯館:台北市民楽街66号
③李天禄布袋戯文物館:台北県三芝郷芝柏山荘芝柏路26号
④西園社布袋戯団:台北県新荘市公園路139号
《『台湾観光月刊』6月号より転載》
ミュージカル「荷珠新配」が登場
新時代の台湾舞台劇めざす
現代台湾演劇の神様・金士傑氏が二十四年前に脚本化した舞台「荷珠新配」が、ミュージカルとして生まれ変わり、七月一~四日、国家戲劇院で上演された。
「荷珠新配」は、京劇の伝統喜劇「荷珠配」をモチーフにした現代劇で、大金持ちになろうと奮闘する若い男女と、周辺の人々の人間模様を描いた喜劇だ。
酒楼で働く水商売の娘、荷珠は自分の仕事に飽き飽きし、いつも金持ちの暮らしを夢見ていた。ある日ひょんなことから大金持ちさい斉子孝夫婦に幼くして生き別れた一人娘がいることを知り、これになりすまそうと画策するが、常連客の趙旺に見破られてしまう。しかし当の趙旺も、実は斉家の使用人で、主人の名を騙って酒場に出入りしていた。これも金持ちへの野心を燃やす男で、斉家の財産を虎視眈々と狙っている。また、荷珠の養父・劉志傑や、酒楼の支配人・老鴇らが、荷珠の生みの親が大金持ちだと知るや、その分け前に預かろうとする。一方、荷珠が失踪していた娘だと名乗り出てからずっと、偽者ではないかと疑っているのが斎夫人だ。面子が何より大事で、どこの馬の骨とも知れない娘に大事な財産を騙し取られるのではと、気が気でない。ところが、大金持ちの斎子孝、以前は羽振りがよかったが、実は家計は火の車だった。財産があったときには人がたくさん寄って来たのに、今では誰も助けてくれない。しかし上流階級の奥様という誇りだけが生きがいの夫人を奈落の底に突き落とすことだけはできない。心では明日の借金を算段しながら、顔では優雅に振舞い、必死に隠しているのであった。
●「荷珠新配」の誕生
舞台劇「荷珠新配」が誕生したのは、台湾の演劇界で小劇場運動が盛んだった一九八○年代に遡る。当時、その先駆け的存在として立ち上げられた劇団「蘭陵劇坊」のメンバーだった金士傑氏が、京劇の伝統喜劇をもとに現代劇の脚本を完成させた。台湾全土で三年間に三十三回の公演をおこない、流れるようなセリフまわしと絶妙なテンポにより繰り広げられる舞台は、台湾の小劇場運動に新たな道を切り拓いた。「蘭陵劇坊」には金氏のほか、当時ヒロイン役の荷珠を務めた劉静敏氏(現在「優人劇場」主宰)、李国修(現在「屏風表演班」芸術総監)ら、いずれも現在演劇界の重鎮となった面々がおり、実験的演劇を追求し、若い情熱をぶつけ合っていた。
●新たな時代の喜劇を―金士傑氏
それから二十五年経ち、二〇〇四年、大風劇団が金士傑氏から上演権を授権し、京劇の伝統的節回しを残しつつ、歌と舞踊をふんだんに取り入れたミュージカル「荷珠新配」が誕生した。配役には、テレビCMでもおなじみの顔嘉楽が、奔放で大胆な水商売の娘・荷珠を、それを見破る大富豪の使用人・趙旺役を黄士偉が演じる。顔嘉楽、黄士偉ともに国内のミュージカルに多数出演し、業界では不動の地位を持つ役者だ。
「荷珠新配」のミュージカル化に、原作著者の金士傑氏は「大風劇団から最初話を持ちかけられたときはクエスチョンマークだった」という。喜劇は独特のテンポが売り物なので、ミュージカルになれば、そのリズム感が崩れてしまうからだ。「それをやるなら、もとの脚本をただミュージカルにしただけでは意味がない。新しい時代の新しい顔を持った舞台を一から創ることだ」と語る。後に李明澤が監督を、主役が顔嘉楽と黄士偉の二人だと知り、「彼らはみな私の教え子だ。ミュージカル化は難しいが、李氏ならこの劇のポイントを理解していると思った」と、金氏はミュージカル上演を託したという。
《台北『民生報』7月1日ほか》
文化ニュース
「台湾歴史辞典」が出版
台湾歴史研究に最適な工具書
構想から八年、編集に三年を費やし、国内で初めて、台湾の歴史研究の工具書となる「台湾歴史辞典」が七月八日、出版された。
「台湾歴史辞典」は、行政院文化建設委員会(以下、文建会)が、中央研究院、台湾大学、国家台湾文学館など国内の主な学術機関と共同で進めてきた。紀元前から二〇〇〇年までの台湾における政治、外交、軍事、経済、社会、教育、文化、風俗など各分野が網羅され、収録項目数は四千六百語、執筆者は百人以上という大掛かりなものだ。国立台湾師範大学の呉文星・文学院院長、日本愛知大学の黄英哲教授、清華大学の劉瑞華教授、政治大学の薛化元教授が、それぞれ教育、文化、経済、政治面を監修した。
呉文星教授は「執筆者は若年、壮年、中高年の三世代にわたっており、辞典にはここ十年の国内の台湾研究の成果が反映されている。一九九〇年から現在まで、国内の歴史に関する研究論文のうち、およそ四割が「台湾」をめぐるテーマとなっている。現在それらの研究成果を累積しており、今後より便利な、台湾の立場で編纂された歴史辞典が必要になるだろう」と語っている。
「台湾歴史辞典」は台湾に関するさまざまな時代の歴史資料を集大成し、学術研究で実証されている内容を基準に編纂されている。中央研究院の許雪姫・研究員によると「これまでは清朝、日本統治時代、戦後と、各時代の台湾の歴史は研究されてきたが、歴史全体を研究するための工具書となるものがなかった。台湾歴史辞典は、研究者にとって調査に便利な格好のツールになるはずだ」と話す。
実はこうした辞典は、日本や中国ではすでに出版されているが、台湾の研究者にとって、決して満足できるものではなかった。「たとえば、中国で出版されている台湾の歴史、文学、経済に関する辞典は、われわれから見れば必ず入れなければならない内容も、歴史解釈の違いから、中国は故意に盛り込んでいない。中国の出版物には、台湾を『偽政権』呼ばわりしているものもあり、政府機関の名称にも引用符をつけるなどして、研究者が利用する際に心理的な影響を受ける部分が少なくない」と許研究員は指摘する。
「台湾歴史辞典」には別冊の付録がついており、中国語および外国語の参考書籍、史料、書誌のほか、オランダ統治下の歴代台湾長官、行政区設置の沿革、台湾の古跡、博物館、鉄道路線の沿革など、約五百ページにわたり四十四項目の解説がついている。
「台湾歴史辞典」は遠流出版社の出版で、定価三千元(約九千円)。半年後にはインターネット上にも内容が掲載される予定で、閲覧は無料。内容は、今後更新を重ねていく。
《台北『中国時報』7月9日》
第八回国家文芸賞が発表
今年から建築、映画部門追加
文化、芸術分野の功労者に贈られる「国家文芸賞」の授賞者が、七月五日、発表された。同賞は文化芸術事業促進を目的とする財団法人国家文化芸術基金会により、一九九六年に設立され、今年で八回目を迎える。
今年は賞の活性化をはかるため、もとからある文学、美術、舞踊、演劇に加え、建築、映画分野が新たに受賞対象となり、また最終審査では部門を分けず、合同審査員団が受賞者を決定する方式が導入された。
今年、この栄えある賞を受賞したのは、詩人の林亨泰さん、作曲家の蕭泰然さん、音響芸術家の杜篤之さん、舞踏舞台芸術家の李静君さん、画家の陳其寛さんの五名である。審査員団は授賞理由として、「林亨泰さんおよび蕭泰然さんは、体の調子が優れないなかで創作に励み、本土に対する想いを表現した点を評価した」とコメントしている。林さんは日本統治下の台中で生まれ、その詩作と評論には、人類と土地への想いが溢れており、濃厚な郷土色とともに現代的芸術性も兼ね備えているという。また、蕭さんも台湾の郷土をテーマにした作曲家だ。今年はすでに金曲賞の最優秀作曲賞も受賞しており、さらに国家文芸賞を授与されて、輝かしい一年となりそうだ。
一方、雲門舞集副芸術総監督の李静君さんが受賞したことは、新世代の舞踊家にとって大きな励みとなるだろう。李さんは「林懐民・芸術総監督と同僚たちに感謝する。今後さらに努力する」と述べた。また、台湾の首席音響芸術家・杜篤之さんと画家の陳其寛さんは、芸術に対する造詣が深く、海外での知名度も高いなか、それに甘んじず努力する姿勢が評価された。今年五十歳の杜篤之さんは、台湾の新映画運動において重要な音響技師であり、新設された映画部門の最初の受賞者となった。杜氏は「これまでの仕事は、さまざまな監督がくれたチャンスのおかげ」と語っている。また、八十三歳の画家、陳其寛氏の作品は、装飾性色彩と幻想的空間を有し、伝統的水墨画を通して描かれたものである。受賞の知らせに、「突然で驚いたが嬉しい」と喜びを表したという。
《台北『中国時報』7月6日》
教育関連ニュース
二〇〇四年「指考」受験生は十一万人
大学の多元入学の一環として、分配入学方式の重要な選考材料となる二〇〇四年度・大学指定科目試験が七月一~三日、一斉実施された。
今年の指定科目試験は、全国二千八百六十三の試験場で実施され、受験者総数は十一万七千七百九十二人となった。教育部が定める分配入学方式の合格枠は八万八千百三十一人であるため、合格率はおよそ七四・八%となる見込みだ。
試験科目は国語、英語、数学甲、数学乙、歴史、地理、物理、化学、生物で、このうち英語の受験者が十一万七千七百十七人でもっとも多く、国語、数学がこれに続いた。また、ちょうど試験実施日に起こった七・二風水害の影響で、台湾東部と中南部の試験場では、受験生が試験会場に到着できないケースや、試験場で床上浸水が起こるなど、混乱した事態となった。こうした事態に鑑み、大学入試センターでは、二十二~二十三日に、二百二十一人に対し追加試験を実施することを決めた。
《台北『中国日報』7月2日ほか》
第二次中学基礎学力試験が実施
二〇〇四年中学基礎学力試験が七月五日、予定通り終了した。今年の願書提出者数は十八万八千七百八十三人で、試験の欠席率は四・八四%となった。
試験は国語、英語、数学、社会、自然科学の五科目が実施されたが、最終日の数学と社会に関しては、受験生は一様に「難しくなかった」と答えており、出題内容については中学校教師から肯定的な反応がみられている。また、台湾中部の風水害の直接的な影響はなかったが、被災地の中学校教師らは、災害が原因で受けた心理的プレッシャーが試験の成績を左右したとして、救済措置を求めている。
《台北『中国時報』7月6日》
お知らせ
アジアの高速鉄道
「新幹線は台湾をどう変えるか」
台湾の高速鉄道に日本の新幹線技術が初めて導入され、来年動き出します。その政治的・経済的意味、技術上の諸問題と今後の課題について、鉄道の専門家であり著書も多数著しておられる佐藤芳彦先生に問題提起をしていただきます。会議当日はOHPを使用します。
日 時 8月7日(土)午後2時~4時
講 師 佐藤芳彦氏(東日本トランスポーテック(株) 取締役車両事業部長)
会 場 日本プレスセンタービル9階大会議室(東京都千代田区内幸町2-2-1 TEL03-3503-2721)
交 通 東京メトロ千代田線・日比谷線・丸ノ内線「霞ヶ関」駅、都営地下鉄三田線「内幸町」駅下車
会 費 二千円
問合せ アジア問題懇話会
TEL・FAX03-3444-5745
台湾の果物をネットで手軽に注文
台湾国内の果物農家によって組織された農業協同組合「台湾省青果運銷合作社」の日本法人である「台湾青果株式会社」では、台湾のさまざまな果物をインターネット上で紹介し注文を受付けている。マンゴー、レイシ、ポンカンなどを扱っており、検疫を合格したものだけを輸入、販売している。ネット上では、蓮霧(レンブ)や楊桃(スターフルーツ)など、日本でまだ販売されていない幻の台湾の果物についても紹介している。
●台湾青果株式会社
東京都港区赤坂4-7-16台湾青果ビル (Tel:03-3582-0921)
http://www.taiwan-fruits.jp
春 夏 秋 冬
「高度な自治」を謳った「港人治港」や「五十年不変」はどうなったのだろう。中国返還七周年を迎えた7月1日、香港で53万人もの市民が街頭に出て抗議デモを展開した。香港基本法を北京の全人代が、香港市民の意向とは関係なく拡大解釈し行政長官の選出はおろか立法会議員の選出も、完全普通選挙を行えないようにしてしまったのだ。
7年前、中国は「一国二制度」を高らかに謳い、この制度により香港の自由は50年間不変と宣伝してその地を接収したのだった。ところが50年どころか10年さえ経ずしてその約束を反古にし、世界の潮流に逆行しようとしているのだから、当地の市民たちが怒りだすのは当然のことだ。それはまた、こうした政策を臆面もなく打ち出す中国の体質に対する不満の現れでもあろう。
ここで注目すべきは、上記の香港の情勢から見られるとおり、これが中国政治の本質ではないかという点だ。つまり中国にとって、約束とはその場での方便に過ぎない。中国政府は最初から「一国二制度」など守る意思はなかった。こうした政策を臆面もなく推進するのが中国なのだ。さらにあの国は、そうしたペテン政策をなおも拡大しようとしているのだ。つまり守る意思のない制度を、台湾におしつけようとしている。
中国はかつて一方的に台湾との両岸交渉を中断し、その上で交渉再開の条件として、台湾にこの「一国二制度」を受け入れるよう迫ってきた。しかも中国は問題の「平和解決」を謳いながら、台湾侵攻のため海軍力と空軍力を着々と高め、台湾上陸を想定した大規模な陸海空三軍合同演習を行おうとしている。つまり、軍事的脅しをかけてまで「一国二制度」を台湾に受け入れさせようとしているのである。台湾がこうした理不尽な脅しに屈した場合、結果はすでに見えている。その重大さは現在の香港の比ではない。それは、中国の領土拡大であると同時に、一つの成熟した民主主義体制の消滅を意味するのである。
二十一世紀の世界において、このような十九世紀か二十世紀前半のような帝国主義まがいの領土拡張政策を、国際社会は放置していてよいのだろうか。
今日の香港のようすから、以上のことを連想したが、これは決して杞憂ではない。今日の軍備増強などの面から見れば、中国が現実にその方向に向かっているのは確実だ。このことを、最も近い国である日本は<もっと深刻に見つめる必要があるのではないか。
(K)