台湾週報2154号(2004.8.5)
中国の脅威に備えた演習実施
高速道路を戦時滑走路として活用
中国の軍事的脅威が高まる今日、台湾では主権と市民生活を護るため、防空体制の確立が当面の急務となっている。このため恒例の漢光二十号演習では、中山高速道路を臨時の戦時滑走路と指定したミラージュ戦闘機による離着陸訓練が組み込まれた。7月21日早朝にそれは実施され、空軍は多大の成果を得た。また、この演習は発表当時から国際的な注目を受け、訓練の成果は台湾の意思を国内外に広く示すものともなった。
高まる中国の軍事的脅威
中国軍は一九九〇年代中期より毎年五~八月に、台湾海峡に面した東山島一帯で台湾侵攻を目的とした軍事演習を実施しているが、今年は特に陸海空軍連合による大規模な演習を展開していると伝えられている。さらに中国は台湾に照準を合わせたミサイルを年々増強しており、中国の台湾に対する軍事的圧力は近年日増しに高まっている。
今年の中国の軍事演習について、英『ファイナンシャル・タイムズ』(7月19日)は、専門家の分析として「中国軍の台湾に対する今回の軍事演習は従来の規模とは異なり、高度な科学技術と三軍連携能力を保持していることを示しており、北京の言う『台湾回収』が単なるスローガンではないことを証明するものである」と報じた。さらに同紙は「今回の演習は、軍事力発動による台湾占領の成功を保証するものとはならないが、軍の指揮官は上層部に対し、以前に比べて可能性は高まったと報告するはずだ」とも報じた。
また、米軍事専門誌の『ディフェンス・ウィークリー』も最新号で「中国空軍はすでに米空軍に対抗し得る戦闘力を持つに至った」と報じた。
《台北『自由時報』7月21日》
台湾も一連の防衛演習
こうした中国からの脅威に対応するため、台湾も定期演習である「漢光演習」を行っており、本年第二十回目の第一段階であるシミュレーション演習を六月に終了し、今年は特に第二段階の演習として七月二十一日、空軍基地が中国軍のミサイルによって破壊されたことを想定し、高速道路を一時閉鎖し約一・五キロの滑走路を確保した上でミラージュ戦闘機二機による離着陸訓練を、台南県仁徳地区の中山高速道路で実施した。戦闘機の路上離着陸演習は二十六年ぶりのことであり、同演習は発表当時から台湾の意思を示すものとして内外から強く注目されていた。
二十一日午前五時十五分、天候観測のため経国号戦闘機四機が台南県上空を旋回し、同五時三十分から高速公路局の清掃車と兵員百名が道路の清掃を開始した。五時四十分にミラージュ戦闘機四機が北部の新竹空軍基地を飛び立ち、南部仁徳地区に向かった。同六時ごろ演習地の上空を百羽近くの白鷺が舞いはじめたので、直ちに空軍S70C型ヘリコプター一機が出動して白鷺の群れを追い払った。六時二十分、一機目のミラージュ戦闘機が高速道路に着陸し、一分後に二機目が着陸した。両機とも給油に十三分、ミサイル各二基装填に五分、最後の安全点検に十一分を要し、七時十二分に高速道路を離陸し、新竹空軍基地に向かった。
この演習には空軍、陸軍のほか国道高速公路局、公路総局、国道警察隊、台南県市政府警察局、高雄県政府警察局などが参加し、参加人員は七百五十人であった。
このあと「漢光二十号」演習は演習地を南部海岸部に移して第三段階に入り、陸軍と海軍による上陸阻止演習、さらに西南部の小琉球水域で海軍と空軍による対潜水艦演習などが八月下旬まで行われる。
《台北『中国時報』7月22日》
緊急離着陸演習の意義
今回の高速道路における戦闘機の緊急離着陸演習の必要性と意義について、国防部は演習当日の七月二十一日、次の文章を発表した。
○ ○ ○
「防空なくして国防なし」は歴史が証明しており、英国は第二次世界大戦において制空権争奪戦で優勢を維持し、ドイツ軍の英本土上陸作戦を阻止したが、日本は太平洋戦争で制空権の優勢を失い、無条件降伏に至った。フォークランド紛争においても、アルゼンチン軍は先に同島を占拠したが制空権を持っていなかったため英軍に敗れた。歴史はいずれもこうした教材を提示している。中国の脅威が日増しに増大する今日、いかにして国家の安全を確保し、軍が最後まで国土を守りきれるか。それには制空権の確保が重要なカギとなっている。
台湾西部の各飛行場は完全に中国のミサイルと戦闘機の脅威に直面しており、戦時には必ず敵は制空権奪取のためそれらを攻撃目標にする。各飛行場とも格納庫の安全体制は整えているものの、滑走路は敵の波状攻撃によって破壊されやすい。このため、滑走路の補修と同時に高速道路を臨時滑走路として使用し、緊急に備える必要がある。その体制は、リスクを分散するのみならず、大きな抑止力ともなるものである。
漢光演習はわが国の恒例のものであるが、敵の脅威の変遷によって演習内容は変化する。このため今回の「漢光二十号」演習には戦時滑走路離着陸訓練を実施することになったが、これは空軍の戦時滑走路活用の経験を得るのみならず、将来の台湾・澎湖防衛戦における戦時滑走路確保の検証ともなり、さらにこの演習を通じて国民に国防の重要性を認識してもらうためのものでもある。以下に戦時滑走路の総合的概要を説明する。
一、道路と戦時滑走路
中山高速道路は七〇年代に政府の「十大建設」の主要な一環として建設が開始された。西部における空軍基地は七カ所のみで、戦時防空には不足していたため、「国防と民生の合一」という観点から、スイスの例を参考とし、戦時滑走路の建設が中山高速道路建設の一環に組み込まれた。これにより七五年から七八年まで、中山高速道路が順次開通するのにともない、F一〇〇、F一〇四、F五、T三三など各戦闘機の離着陸訓練を中壢、員林、民雄、麻豆、仁徳で実施し、高速道路が戦時滑走路として使用できることを確認した。しかし全線開通後は急速に国内経済が発展し、高速道路は鉄道とともに国内輸送の大動脈となり、国防部は国民生活に影響を及ぼさないようにするため、その後の高速道路での演習は見合わせた。ただし戦時滑走路としての機能を維持するため、指定した地域での樹木植え込み、建物などの建設を禁止し、道路の補修は高速公路局が責任を持ち、空軍も定期検査を行い、その性能を維持してきた。
中山高速道路建設当時は、全線を通じて六カ所の戦時滑走路を確保していたが、このうち中攊地区は都市として発展して高層建築物が林立して滑走路としての機能が低下した。だが近接する桃園国際空港とのバイパスが使用できる。小港地区も高雄港の発展により飛行の安全性に疑問が持たれるようになったが、佳冬地区がその代替滑走路として使用可能となっている。したがって、現在なお空軍は六カ所の戦時滑走路を保持しており、空軍が戦力を維持する能力は低下していない。
二、戦時滑走路演習
国防部は経済発展における高速道路の重要性と国民生活に影響を及ぼさないという観点から、一九七八年の戦時滑走路離着陸演習を最後に、その後二十六年間、同様の実地演習はおこなっていなかった。だが、常に戦時に備える必要性から、国防部は「法によって企画し、法によって行う」ことを原則に、「全民防衛動員準備法」第四章ならびに「国家安全法施行細則」第三十四条の規定を根拠とし、戦時滑走路を軍事施設管制区に組み込み、本年四月十九日に内政部、交通部と共同で「軍が高速道路戦時滑走路を使用する順序」を公布し、道路使用の法的根拠を確保した。同時に関係各機関が高速道路戦時滑走路使用の準備を進めた。
戦時滑走路は空軍が作戦を進める上にきわめて重要なものとなる。この作戦には地域の交通を考慮するのはもとより、機動性が必要とされ、さらに軍以外の行政機関の協力も必要とされ、したがって今回の演習は歴年の漢光演習にくらべ、広範囲かつ綿密な準備が行われた。
また、今回の仁徳地区での実地演習は本年突然行われたものではなく、まず二〇〇二年の「漢光十八号」演習で桃園空軍基地で滑走路を高速道路に見立てての模擬演習を行った。二〇〇三年の「漢光十九号」演習では麻豆地区での演習が考慮されたが、高速公路局および関係機関との連携に問題点があり、場所を台南空軍基地に移して演習が行われた。そして本年の「漢光二十号」演習では事前に十分な検討が行われ、場所を仁徳地区に選定し、当該地点を臨時空軍基地として作戦準備が進められた。
三、演習目的
近年、中国軍の各種ミサイルの技術ならびに精度は年々上昇し、わが国の各飛行場への脅威が絶えず増している。これまでの「漢光演習」により、わが国に対する敵ミサイルの「第一波攻撃」のあと戦時滑走路の必要性が痛感されており、「戦時滑走路離着陸訓練」が演習計画の中に組み込まれることとなった。台湾の道路網は十分に張り巡らされており、これらを戦時滑走路として活用できたなら、わが空軍の戦力温存に多大の効果を発揮する。戦時滑走路も飛行場と同様に敵ミサイルや戦闘機の攻撃を受けることも考えられるが、リスク分散と戦力温存の原則から、実質的な意義を有する。この観点から本年の訓練には何が必要かを検討し、戦時滑走路離着陸訓練を「漢光二十号」演習の中に組み入れた。それは中国軍の攻撃により空軍基地の滑走路が破壊され、航空機の離着陸が不可能となった場合、あるいは応戦準備および戦況による兵力散開が必要となった場合を想定し、戦闘機の臨時基地を確保して戦力温存を図ることを目的とするものである。
このほか、本演習にはシミュレーション、司令部対応能力、実戦配備の各演習が含まれる。この「仁徳演習」は表面的にはミラージュ戦闘機のみの演習のように見られるが、高速道路を戦時滑走路として臨時の空軍基地とするため、総合防空、地域防空、野戦防空のすべてが含まれ、本演習にはこれらすべての動員体制が組まれた。
四、演習内容
演習内容には、戦時滑走路策定のあと、各関連機関による交通管制、兵站補給および飛行管制、道路復元作業の迅速な処理の訓練も含まれている。演習はこれらの全面的な実地訓練により、空軍の戦力維持を確保しようとするものである。
空軍は戦時滑走路離着陸訓練の地点を選定するため、昨年より調査を開始した。第一に考慮したのは、市民生活への影響を最低限にとどめることであり、同時にその他の安全面も考慮した。各候補地の中で、仁徳地区が道路状況ならびに周辺環境が臨時飛行基地に最も適しており、安全な演習が実施できると判断した。もちろん、道路閉鎖後における代替道路の確保も他の地区より容易であったことも、仁徳地区を選定した主要な理由の一つである。
このように、今回の演習は急に組まれたものではなく、長期にわたる検討の結果実施されたものである。韓国では北朝鮮の奇襲に対し、高速道路上に、二~三キロにわたって直線かつ中央分離帯のない箇所が十カ所設けられ、随時米軍との共同訓練を実施している。
中国の脅威が年々増大する今日、軍が台湾二千三百万人の生命、財産の安全を護るためには、「国防と民生の合一」の観念を持った国民の協力が是非とも必要なのである。
【国防部 7月21日】
週間ニュースフラッシュ
◆柏楊氏が国旗の変更を提唱
総統府資政で人権作家でもある柏楊氏は七月十四日、蘇貞昌・総統府秘書長から憲政改革について意見を求められ、憲法に「人権立国」の精神を盛り込むことや、現在の「青天白日満地紅旗」が国旗として適切化どうかを論じ合うこと、国歌の「吾党」の部分を「吾民」へ変更することなどを提唱した。
《台北『自由時報』7月15日》
◆政治的受難者のための記念碑を建立
陳水扁総統は七月十四日、戒厳令下に政治的迫害を受けた被害者の記念音楽会に出席し、政府の政治的受難者への救済は物質、精神の両面から行うことを改めて示すとともに、現在それらの受難者を追悼する記念碑の建立を進めていることを明らかにした。
《台北『自由時報』7月15日》
◆米下院が台湾関係法堅持を決議
米下院は七月十五日、台湾関係法の堅持や中国の軍備増強への注視、台湾の防衛に対する米国の支援、両岸対話の積極推進、「一つの中国」政策を盾にした台湾の高官の米国訪問制限を改めることなどを盛り込んだ決議案を、四百票対十八票の圧倒的多数をもって可決した。
《台北『自由時報』7月17日》
◆李顕龍「中国の圧力に屈しない」
アジア太平洋地域の中央銀行会議が開催されたシンガポールで、七月十五日に同国の李顕龍副首相の主催で行われた歓迎会に中国の代表団が欠席したのは、さきの李副首相の台湾訪問への不満と見られている。これについて李副首相は「台湾訪問はアジア情勢を理解する上で非常に重要だ」と述べ、中国の圧力に屈しない姿勢を明らかにした。
《台北『自由時報』7月17日》
◆エネルギーの多元化を図るべき
前行政院副院長で現在総統府資政を務める林信義氏は七月十六日、「政府はエネルギーの多元化を図るべきだ」と述べ、新竹科学園区と台南科学園区に、それぞれ海水の淡水化工場を設置することを建議した。
《台北『経済日報』7月17日》
◆海峡交流基金会秘書長に劉徳勲氏
辜振甫氏が董事長を務める海峡交流基金会の新しい秘書長に行政院大陸委員会副主任委員の劉徳勲氏の就任が濃厚となっている。近く辜振甫氏らによって最終決定される見通し。
《台北『経済日報』7月17日》
◆台湾の宇宙開発の潜在力は無限
陳水扁総統は七月十八日、国内の宇宙開発関係者と会見し、「さきの地球観測衛星『華衛二号』の打ち上げ成功は、台湾が宇宙映像の輸出国となり、宇宙開発国の仲間入りを果たしたことを示している。台湾の宇宙開発の潜在力は無限だ」と語った。
【総統府 7月19日】
◆上半期の対中投資総額が六八%増加
経済部が七月二十日発表した今年一~六月の上半期における対中投資総額は三十三億九千万ドルで、前年同期より約六八%の大幅増となっている。台湾積体電路、鴻海精密工業、友達光電など大手企業の大型投資が相次いだためで、投資件数も千七十四件で、同約一二%増となった。投資先は多い順に江蘇省、広東省、浙江省、福建省、河北省となっている。
《台北『経済日報』7月21日》
◆今年の予測経済成長率、五・七六%に上方修正
中央研究院は七月二十一日、今年の予測経済成長率を五・七六%に上方修正すると発表した。同院によると民間投資がかなり改善し、今年は前年比二三%増が期待できるという。行政院主計処もさきごろ予測経済成長率を五・四一%に上方修正したが、今回はそれをさらに上回った。
《台北『工商時報』7月22日》
中国の対台湾強硬姿勢への分析
江沢民の強硬発言に潜むものは何か
●物騒な江沢民発言
最近、中国で中央軍事委員会の拡大会議が開催されたことを香港メディアの『文匯報』が紹介した。このなかで同紙は、主席の江沢民が「平和と発展が現代の主要なテーマであり、予見しうる将来に新たな世界大戦が始まる可能性はないが、局地的な戦争は不可避である。今後十年ないし二十年間において中国にとっての最大の安全に関する脅威は台湾問題である」と述べ、さらに「今世紀の最初の二十年間は中国の発展にとって重要な時期であるが、この期間内に台湾問題を解決することを排除しない」と語ったと報じた。また一部国際メディアは、これを中国の台湾問題に対する見解としてとらえ、問題解決を無期限とせず中国の軍事発動もありうることを示唆したものとして報じている。
これに対して行政院大陸委員会の邱太三スポークスマンは七月十五日「江沢民の発言が中国の中央軍事委員会としての政策決定なのかどうか判定はできない。したがって陸委会として論評することはまだできない。北京の正式発表ではなく、香港のメディアがこれを報じた真意も分からない」と表明した。同時に「この二十年間を発展の時期としながら、台湾への武力発動を示唆するのは矛盾している」と批判した。
また林中斌・前国防副部長は「香港の『文匯報』は中国の中央軍事委員会が二〇二〇年までに台湾問題を解決することを決定したと報じたが、これは中国軍の増強スピードと長期軍備拡張戦略から見た場合、信頼性と合理性があるものと言える。だが中国要人のこうした発言は、台湾に対する心理戦である」と述べた。さらに「中国軍の総合的な増強スピードから観測すれば、中国軍は二〇一二年には台湾を麻痺させる各種準備を整えることになろう。そのとき中国は台湾侵攻の条件を整え、台湾に対する軍事行動を起こす可能性は高まる」との分析を示した。
《台北『中国時報』7月16日》
●中国の愚かな選択
香港の『文匯報』が、江沢民が「二〇二〇年までに台湾問題を解決する」と発言したと報じたことについて、台湾のメディアは以下のような分析を紹介した。
中国がもし台湾問題の解決を急ぐなら、それは愚かな行為であり、自国の経済のみかアジア、ひいては世界の経済に害を及ぼすことになり、それでも中国は台湾を手中にすることはできないだろう。中国の軍事力が台湾を占領するのに足りるかどうかにも、大いに疑問がある。まして両岸問題は国際問題であり、中国が一方的に行動を起こせば世界は許さず、国際社会は具体的行動をもってこれを阻止するだろう。
ところが最近、香港のメディアが台湾問題解決の時間表を江沢民が示したことを報じた。これを単純に見過ごすことはできない。なぜなら別の意味がそこに含まれているからだ。すなわち江沢民が今後とも軍を掌握しつづけるか、胡錦濤と江沢民の権力闘争がどう展開するかである。胡錦濤は現在、国家および党の最高指導者となっており、対台湾政策に対する決定権も掌握している。江沢民は現在、中央軍事委員会の主席に過ぎず、理論的には軍事面だけを掌握しているに過ぎない。したがって江沢民が台湾問題の武力解決を示唆したとしても、それが中国の集団指導体制の総意かどうかは疑わしい。
胡錦濤が登場してからは、重点は国内の経済発展に置かれ、二〇二〇年までは国際環境の小康状態を保つことを上策とし、台湾問題の優先順位を後退させた。そのような中に江沢民が新華社や人民日報ではなく、香港のメディアを使って軍事強硬路線を示したのは、軍を背景とした自己の発言権低下の防止と、胡錦濤に対する揺さぶりと見られる。江沢民が本気で台湾への軍事発動を考えているかどうかは疑わしいが、彼の強硬な一面を示すものとして注目される。また、どうすれば中央軍事委員会を掌握しつづけられるかの観測気球を上げたものとも見られる。両者の闘争は一方の死まで続くだろう。
《台北『自由時報』7月16日》
ニュース
民進党が全国代表大会開催
立法院選挙で過半数目指す
民進党は七月十八日に全国党員代表大会を開催し、陳水扁総統が党主席の身分で祝辞を述べた。このなかで陳総統は、今後の民進党の使命として次の四点を提示した。
一、新人を発掘し、台湾に新たな活力を=次期立法委員選挙には九十人の候補者を立て、このうち三分の一以上を新人とする。
二、台湾に自信を持ち、改革に終点はない=一切の干渉と困難を克服し、改革のための各委員会は党と国の人材を集め、最も適切で最も優れた人材を当て、各界の期待に応える。
三、立法院で過半数を占め、安定の中に進歩を図る=立法院で過半数を占める。これは党の勢力を拡大するためではなく、過去四年間の与野党対立の悪循環を絶ち、政府の消耗を防いで前進を図るためである。
四、民主を深化させる=今後四年間の使命は憲政改革と行政改革であり、効率的な行政府と独立した司法制度、超然とした監察制度を確立する。
《台北『自由時報』7月19日》
台湾民主学校がスタート
新たな政治勢力となるか?
元民進党主席の許信良氏を創立者とする「台湾民主学校」が七月十九日にスタートした。これにより、政治的な教育と啓蒙、人材発掘を活動目的とした機関は陳水扁総統設立(昨年三月)の「ケタガラン学校」、李登輝前総統設立(昨年五月)の「李登輝学校」、さらに蒋介石が四十年前に設立した国民党の「革命実践研究院」に次いで四つ目となる。
許信良氏は年末の立法委員選挙に「台湾民主学校」公認の候補者を立てることを明言しており、現在、許信良、施明徳、侯孝賢ら各氏の名が候補者として上がっている。計画としては一選挙区一名を予定している。 許信良氏も施明徳氏も元民進党主席であるが、現在の民進党とは一線を画しており、実際に候補者を立てた場合、与党の民進党や台湾団結連盟よりも野党の国民党や親民党に影響が出ると見られている。これについて、野党立法委員の中からはすでに警戒の声が聞かれている。
《台北『自由時報』7月20日》
国土自然の再生準備に十年
植林により再度の被害防ぐ
七月初旬に台湾中南部を襲った台風による七・二災害は各山岳地帯に土石流や崖崩れなど広範囲に甚大な被害をもたらし、山地の開発に大きな疑問を投げかけた。このため行政院経済建設委員会と退役軍人補導委員会は七月十六日、一九五二年から六三年にかけて山地に建設された福寿山農場(台中県)、清境農場(南投県)、武陵農場(台中県)、花蓮農場(花蓮県)など総計約五千五百ヘクタールを閉鎖し、植林によって自然林に戻すと発表した。これに関連して游錫堃・行政院長は同二十日、三年以内に前記農場の閉鎖を完成し、「国土復育特別条例」の制定によって関係者の補償は十分に行うと発表した。また游院長は「総合国土復育計画によって、土地の権利回収、耕作者への補償などを行うが、それらが完成するまでに少なくて五、六年、長くて十年は必要」と表明した。今後、山地の開発は自然保護のため厳しく制限されることになる。
【行政院 7月20日】
両岸に軍事信頼構造確立を
平和と安定に相互連動必要
米中台三国がそれぞれ軍事演習を展開していることについて、陳其邁行政院スポークスマンは七月二十日「中国が展開している東山島での演習は例年のもので、わが国の漢光二十号演習も毎年のものであり、米軍の演習も二年に一度定期的に行っているもので、それぞれに関連性はない」と表明した。この上で「両岸双方の軍事演習から、突発的な衝突や誤認を防ぐため、両岸双方が早急に平和安定相互連動メカニズムを構築しなければならないことが指摘できる」と述べた。
さらに陳スポークスマンは中国に、台湾に対する軍事威嚇を停止するよう呼びかけるとともに「政府は立法院に軍事特別予算案を提出しているが、これは台湾の安全にとって必要なものであり、国民が全面的に支持するよう求める。国防力を強化し、国民が防衛意識を高めてこそ、中国の軍事的威嚇を阻止することができるのだ」と強調した。
《台北『青年日報』7月21日》
政党を超越し台米関係の強化を
『中国時報』(7月17日)
新たに駐米代表に就任した李大維氏は近く米国入りし、台米外交の第一線の担い手として正式にこの重責を引き継ぐ予定である。この若く優秀な外交官に心からの祝福を表し、今後の台米関係の安定的発展を期待したい。
台米関係は台湾の国家利益に関わる問題であり、台湾海峡の安全保障、防御的武器の売却、経済投資、国際活動や文化交流など、各分野において双方の関係は非常に緊密だ。したがって両国間には国交がないとはいえ、駐米大使というポストはきわめて重要であることは間違いなく、李氏はまさに適任と言えよう。前途洋々たる李氏の就任によって、外交界幹部の若返りが図られたと言える。
昨今の台米関係は、さきに実施された公民投票や憲政問題などで一時ぎくしゃくしたものの、陳水扁総統の就任演説が功を奏し、信頼関係は完全に修復されたと思われる。こうした基礎のうえに、着実に双方の絆を深め、さらに全面的な外交活動を進めていくことが李氏の最大の任務となるだろう。
台米双方には、各自の国家利益が存在する一方で、数多くの共通した利益があり、それが互いの友好関係の基礎となってきた。台湾海峡における台湾の微妙な存在は、米国にとって中国を牽制するテコの作用となっており、台湾にとっては中国と対峙し合理的交流を同時に進めるうえで、米国の政治、経済、軍事的バックアップは重要な生存のカギとなっている。
しかし台米中の微妙なバランスは常に変化している。米中間には長期的な矛盾があるが、中国は米国のアジア政策を左右する多くのコマを持ち、また経済的にも強大化しているため、米国の両岸政策は政党や指導者の交代とともに変化する可能性がある。台湾はこのなかで極力米国との共同利益を追求し、米国と意思疎通を密にして全面的支持を得るよう努力しなければならない。
とくに米国では近く大統領選挙が控えており、イラク問題で不利になっているブッシュ大統領は苦戦すると思われるが、選挙結果がどうなるにせよ、与野党双方から台湾への支持を確保し、米政府および国会における台湾の利益を保持する必要がある。同様に、台湾でも年末に立法委員選挙があり、憲政、三通、両岸関係などの重要問題を左右する政治的構図が再編されるが、その新たな情勢のなかで、台湾の政策は米国と緊密な関係を保ち、台湾の未来のためにさらに大きな空間を切り拓いていかなければならないのだ。
外交は内政の延長であり、内政問題の延長とも言える。李大維・新駐米代表もまた、前任の程建人氏同様に、米国に飛び火した与野党間の確執に直面するだろう。関係筋によれば、米国華僑界における与野党各支持者間の対立は、国内に劣らず激しいという。国民党出身の李氏が、民進党政府の戦力として外交にあたることには、若干のプレッシャーもあるはずだ。しかし彼の存在こそ、台湾全体の共通利益とは、政党を超越したものだということを証明しており、共通の運命を分かつ台湾国民が、その奮闘を期待している。
李大維氏にとって、与野党を超えた台湾の国家利益を代表し、米国で台米間の共通利益拡大に努力することは、人生最大の挑戦となるに違いない。与野党はともに過去を教訓とし、この駐米代表をバックアップすべきであり、国家全体の利益を政党間の確執の代償とするようなことがあってはならない。
中国のエネルギー危機を直視せよ
『工商時報』(7月20日)
英BBCが中国マスコミの報道を引用し指摘したところによれば、中国は電力不足緩和のため、上海の二千社以上の工場に電力供給ピーク時の生産を夜間にシフトし、また約三千社の工場に一部の生産を夜間に回すよう指示した。中国の電力不足はますます深刻化し、それは中国経済と国民生活に打撃を与えるだけでなく、中国に投資している台湾企業と台湾経済にも影響を及ぼしている。
中国の今夏における電力不足は深刻で、中国国家電網公司の予測によれば、電力供給不足率は三千キロワットと昨二〇〇三年の倍に膨れ上がり、さらに猛暑到来にともない、SARS発生以来の国家的問題となっている。主要都市部のエネルギー不足はとくに深刻で、週休三日制で省エネ対応する工場が増えているという。
中国経済が世界経済において占める役割はすでに大きく、中国のエネルギー危機はおのずと国内外の注目を集めており、その背景や及ぼす影響についてさらに分析する価値がある。
まず、中国経済の急速な進展がエネルギー不足の最大の原因となったことは否めない。一九八〇年の経済改革以来、中国経済は著しい変化を遂げ、ここ数年は世界経済不振のなかで八%前後の高い経済成長率を記録したため、これに伴い電力消費量も急増した。雑誌「TIME」の予測によれば、一九八〇年に比べ現在のエネルギー消費規模は約一五〇%増加し、昨〇三年には中国国内の三分の二の行政区が電力不足を訴え、産業界と国民が多大なる被害を受けているという。
一方、施政者の能力不足も、深刻なエネルギー不足の原因だと思われる。中国では一九九三年の行政組織改編後、エネルギー関連機関の人員が削減され、その後のエネルギーの開発、建設の人材不足を招くこととなった。また一九九七年にアジア金融危機の影響で電力が過剰供給となり、中国政府が三年間発電所の建設を停止したことも電力不足の遠因だろう。実際、中国が電力建設に投入する予算は少なく、大陸中央経済発展委員会の資料によれば、インフラ建設総額に占める電力建設の予算の割合は、一九八五年の一二%から、二〇〇〇年には七・二%に減少し、電力建設が経済成長にまったく追いついていないという事実を明らかに示している。こうしたエネルギー産業建設における中国政府の計画性のなさと予測の甘さが、現在の深刻な電力不足を招いたと言える。
むろん、経済建設と生活消費によるエネルギー消費量の急増も電力不足の一因だろう。統計によれば、〇一年以前、中国の実質経済成長率は八%に満たなかったが、エネルギー需要の成長率も四%と少なかった。しかし〇二年以降、経済成長率が八%を超えると、エネルギー消費成長率は九・七%まで跳ね上がった。エネルギー消費産業が経済成長の主流となり、経済界では際限なく膨大なエネルギーが消費される一方で、電化製品の普及によって一般家庭の電力消費も急激に増加した。
中国という巨大な経済体の需要が急増したことで、石油や石炭など主要エネルギーの価格は世界的に高騰し、この数カ月きわめて深刻な事態となっている。一方、エネルギー危機とマクロコントロールの影響により、中国経済は明らかに減速し、台湾企業の生産・販売活動にも影響が及んでいる。台湾の両岸貿易への依存度は高く、部品や消耗品の対中輸出が制限を受ける可能性があり、その被害は間もなく露呈することだろう。政府と経済界は、中国のエネルギー危機から派生する問題に細心の注意を払い、ダメージを最低限に食い止めるために、適切な対応をとらなければならない。
中国の香港に対する「一国二制度」違反事例
行政院大陸委員会 二〇〇四年七月
公約一、香港市民による香港統治
▼公約の根拠:江沢民は香港特別行政区設立式典において、改めて「一国二制度」、「香港市民による香港統治」、「高度な自治」、「五十年間不変」を長期の基本方針として示した。
▼違反事例
①「愛国論」をめぐる争議
最近北京が打ち出した「愛国愛港」論は、政治に参与する香港市民を北京が定義する「愛国」の基準をもって審査するというもので、北京の方針に異議のある市民の政治への参与を排除するものである。
(備考)▽民主派は「『愛国』の基準が香港市民の参政を阻害するリトマス試験紙になる」と批判した。▽香港市民の世論調査結果によると、北京の愛国論をきっかけに、北京への信頼は五〇%から四三%へ減少し、一方北京への不信感は一九%から二二%へ上昇した。
②政治改革は事前に北京の了承が必要。
胡錦涛は「香港が政治改革を行う際は、事前に北京に了承を求めなければならない」と述べた。これは、香港市民による統治が北京による統治にとって代わられたことを意味する。
(備考)▽世界のメディアは「『一国二制度』、『香港市民による香港統治』『高度な自治』の破壊である」と北京を批判した。▽香港市民の世論調査結果によると、香港政府の政治改革に対する方針と主導権の喪失が明らかになるにつれて、市民の政治環境への不満は二〇〇三年同期の三四%から五四%に上昇した。
公約二、高度な自治
▼公約の根拠:香港基本法第二条「全国人民代表大会は香港特別行政区に対し、本法の規定に基づき、高度な自治、行政管理権、立法権、独立司法権、および最終公判権の執行を授権する」
▼違反事例
①普通選挙実施を否決
北京の全国人民代表大会常務委員会(以下、人大常委会)は香港の普通選挙の時期について、二〇〇八年以前の実施を否決し、香港の民主と自治を阻害した。
(備考)▽香港の民主派団体「民間人権陣線」がこれに対して行ったデモと集会には四十余りの団体が参加し、北京の決定に不満を示した。▽英国および米国は「北京の決定は香港市民による『高度な自治』に抵触する」とコメントした。
②香港の選挙に北京が介入
北京は香港の二〇〇四年第三回立法会選挙において、中国で事業を展開している企業やビジネスマンに、北京寄りの候補者を支持するよう要求した。
(備考)香港人権監察は「この件に関し、関係機関や選挙管理委員会に提出することも排除しない」と述べた。
公約三、立法権
▼公約の根拠:香港基本法第二条「全国人民代表大会は香港特別行政区に対し、本規定に基づき、高度な自治と行政管理権、立法権、独立司法権、最終公判権の執行を授権する」
▼違反事例
①香港の法改正権を剥奪
人大常委会が、二〇〇八年以前の普通選挙実施を否決したことは、立法会の法改正権の剥奪である。
(備考)▽法曹界で組織する「基本法四十五条監視グループ」は、「北京の決定により、今後は事前に人民大会で可決された後、香港立法会の審議に提案されることになる。これは『立法会が法改正を発動する』との基本法の規定に反し、立法会の権力を剥奪するものだ」と指摘した。▽「民間人権陣線」は抗議デモを発動し、約二万人が参加した。
②香港立法権の侵害
北京が香港に基本法第二十三条の立法化を迫っていることは、香港立法権への明らかな侵害である。
(備考)これにより香港では「七一」五十万人大規模デモが起こり、行政当局に対する市民の不満が示された。
公約四、独立司法権
▼公約の根拠:香港基本法第二条「全国人民代表大会は香港特別行政区に対し、本規定に基づき、高度な自治と行政管理権、立法権、独立司法権、最終公判権の執行を授権する」
▼違反事例
①香港に駐在する北京の機関は香港の一部法律の拘束を受けない。
香港臨時立法会は一九九八年に「法律適応化条令案」を可決した。これにより、香港駐在の大陸機関は「中央政府」が付与する権力と職責の範囲に基づいて事を行う場合、香港の一部法律の拘束を受けない。
(備考)香港弁護士会と香港人権監察は、「法律適応化条例はそもそも法的に基本法に違反しており、影響が大きい」と考えている。
②香港の司法管轄が阻害される
香港市民が中国または香港以外の地域で罪を犯した場合、中国の裁判所による判決を受けたため、北京と香港の司法管轄権をめぐり争議がもちあがった。
(備考)このことは香港立法会議員の関心を集めた。劉江華議員は「中国の公安当局が香港に来て勝手に法を執行するなら、『一国二制度』の深刻な破壊につながる」と指摘し、涂謹申議員は「香港市民の基本的人権と自由、および香港市民による香港統治に対する大きな脅威である」と述べた。
公約五、最終公判権
▼公約の根拠:香港基本法第二条「全国人民代表大会は香港特別行政区に対し、本規定に基づき、高度な自治と行政管理権、立法権、独立司法権、最終公判権の執行を授権する」
▼違反事例
香港の最終公判の判決が北京によって翻された。
北京の人大常委会は、大陸に居住する香港市民の子女の居住権の解釈を巡り、香港の最終判決を翻した。
(備考)▽米上院の東アジア太平洋実務委員会主席ならびに一部の下院議員が董建華・行政長官に対し「香港の司法の威信と独立性が著しく損なわれることを北京に主張すべきだ」と書簡を送った。▽世界のメディアは「香港の法治がマイナスイメージを受け、ビジネス環境も損なわれる」の認識を示した。
公約六、出版と報道、言論の自由
▼公約の根拠:香港基本法第二十七条「香港市民は、言論、報道、出版の自由、結社、集会、デモ、組織、組合への参加、ストライキの権利の自由を有している」
▼違反事例:
①「香港の時事番組の司会者が北京の圧力を受けた」
香港のテレビ、ラジオの時事番組の司会者が北京の圧力を受け、身体の安全から辞職を迫られるケースが少なからず起きており、香港の言論の自由に赤信号が点された。
(備考)国連もこの問題を注視し、主体的にそれらの調査を行った。専門家は「香港の言論の自由は国際社会が注目しており、このことは香港政府ならびに北京への圧力となるだろう」と見ている。
②「香港の自決を支持する立法会議員が包囲される」
香港の親中国陣営が、香港の自決を支持する劉慧卿・立法会議員を包囲した。
(備考)英国、米国は香港レポートのなかで、劉議員の事件が香港の自由と自治に衝撃を与えたと指摘した。
③香港のメディアは「両国論」を公開の場で宣伝、支持してはならない。
銭其琛は「香港は公開の場で『両国論』を宣伝、支持してはならない」と述べ、香港特別行政区連絡弁公室の王鳳超副主任も「香港のメディアは国家分裂を鼓吹する言論を行ってはならない」と語った。また、香港テレビ局が呂秀蓮副総統のインタビュー取材を中止させられたほか、伝訊テレビ局も新疆ウイグル自治区の独立運動に関する報道を差し止められた。
(備考)▽何俊仁・香港民主党副主席は「銭其琛の談話は言論の中身に対する審査に該当する」との認識を示した。また同党の李柱銘・前主席は「王鳳超の談話は香港の内政に対する厳重な干渉である」と指摘した。▽香港記者協会は「北京の政策の道具となることを望まない」と表明。香港の弁護士協会も「メディアに対する圧力は香港市民の報道の自由を奪い、『一国二制度』と香港基本法の原則、およびその精神に違反する」との声明を発表した。
米国務省スポークスマンは「報道の自由の追求を阻止するものは、いかなるものも支持しない」と表明し、
英外交部スポークスマンもこれに大きな関心を示した。
公約七、結社、集会、デモの自由
▼公約の根拠:香港基本法第二十七条「香港市民は、言論、報道、出版の自由、結社、集会、デモ、組織、組合への参加、ストライキの権利の自由を有している」
▼違反事例:香港政府が中国の異端分子の入境を拒絶した。
香港政府は中国の圧力を受け、異端分子の入境を拒絶するとともに、「六・四(天安門事件)」関連活動の申請に対し、厳格な審査を実施した。
(備考)香港民主党立法会の李永達議員は「異端分子と見なされている人の中には、香港返還前に入境を許可されていた者もおり、返還前後で政策の不一致が生じている」と指摘した。
公約八、信仰の自由
▼公約の根拠:香港基本法第32条「香港市民は信仰、宗教の自由を有し、公開の場での布教や活動、宗教活動への参加の自由を有する」
▼違反事例:香港政府は法輪功信者の入境を拒絶した。
香港特別行政区連絡弁公室は「法輪功が香港を反政府活動の拠点にしようとしている」と指摘した。また、董建華・行政長官が北京の対応に基づき法輪功を邪教と見なし、その活動を注視するとともに、信者の香港への入境を拒絶したことは、信仰の自由に大きく違反している。
(備考)▽英、米、カナダ、オーストラリアの各香港領事館はこれに関心を示した。米国総領事は「香港政府の措置は言論と思想の自由を制限するものだ」と指摘した。オーストラリア総領事は、香港市民と政治の権利が国際条約によって保護されるかどうかに注目している。▽立法会の呉靄儀、李柱銘の両議員は「董建華・行政長官が証拠もないのに、単に北京の法令に従い法輪功を邪教と見なしたことは深刻な干渉であり、このことは香港法治の破壊のみならず、「一国二制度」の破壊である」と批判した。▽香港人権監察は
「香港の高度な自治への深刻な干渉である」と、政府を批判する声明を発表した。
上述の事例は、香港返還後、中国が香港に対する公約に違反した重要な事件(香港の自由、人権、法治に関するもの)をメディアの報道に基づいて収集したものである。一九九七年の返還から二〇〇四年六月末までに、合計百五十七件起きている。
中国は香港の行政管理権、香港市民の組合およびストライキ参加の権利と自由、資本主義制度と生活方式の五十年間不変などを公約しているが、中国と香港の相互連動の各々の主要局面に中国の要素が大きく作用し、また香港政府のやり方が保守的なこともあり、香港の「中国化」は日増しに顕著となる傾向にある。
(完)
台湾観光年
八月は台北でグルメ三昧
八月十二日~十五日の「台北中華美食展」に加え、台北では八月の丸一カ月間「台北打牙祭」が開催され、グルメ三昧を楽しめる。
今年で三回目となる「台北打牙祭」には、圓山飯店をはじめ台北市内のホテルやレストラン約百二十店が参加し、中華料理、西洋料理など、それぞれ得意料理、豪華なセットメニューを打ち出す。回転寿司一人前四十元(約百六十円)からハリウッドスターのコース料理二千四百元(約七千二百円)まであり、それらは「美食パスポート」に掲載、紹介されている。
今年は従来のクーポン券による優待価格での提供をとりやめ、新交通システム(MRT)に乗って台北市内のあちこちのグルメを食べ歩く趣向を採っている。パスポートには、食の専門家やメディアが推薦する選りすぐりの店が、MRTの路線別に紹介されている。
「美食パスポート」は各レストランやコンビニ、台北市観光センター、観光局観光インフォメーションセンター、空港、駅、その他の観光スポットで入手できる。期間中、特別イベントとして、中国伝統菓子やケーキの展示即売、親子で参加できる児童菓子作り大会(八月六日~八日)、小籠包の有名店が会場で実演し、販売ランキングを競うイベント(八月十三日)などが予定されている。詳しくは下記のホームページを参照。
http://www.taipeiseasonforchefs.com.tw
《台北『民生報』7月16日ほか》
渓頭の森を空中散歩はいかが
杉林の広がる避暑地として知られる台湾中部・渓頭に、全長百八十メートル、高さがビルの八階分に相当する渡り廊下が建設された。観光客に渓頭の自然をより身近に体験してもらおうと、台湾大学実験林管理処が設置したもので、空中にあるため木の根元が観光客によって踏みしめられ傷つくこともなく、森の自然保護に配慮したつくりとなっている。
標高千百メートル、平均気温が十七度前後の渓頭は、日中の最高気温が三十五度を超える猛暑の都会にとって、まさにオアシスであり、夏はとくに涼を求めて多くの観光客が訪れる。
渓頭は、五年前の九・二一大地震や、その後の台風被害をきっかけに、道路や施設の全面的な整備が進められ、当地のシンボルである神木や大学池も完全に復旧されただけでなく、新たな観光スポットも設置された。
渡り廊下は近く最終点検が行なわれ、七月二十五日から一般に開放される予定だ。杉林を縫うように作られた渡り廊下からは鳥の巣までも間近に観察でき、大自然を満喫できるに違いない。
《台北『民生報』7月16日》
大鵬海洋観光園区がオープン
大鵬国家風景区に「海洋観光ゾーン」が正式オープンした。陸上と水上のスポーツ、海洋生態を結びつけた新たなリゾート地として注目を集めている。台十七線の屏東県東港鎮と林辺郷の境界にあり、戦前は日本軍の基地、戦後は「大鵬兵営地」であった。当時の軍施設が今も残されており、砲台を改築したコーヒーショップ、前方に広がる海原でのマリーンスポーツなど、サマーシーズンにはぴったりの観光コースだ。
《『台湾観光月刊』7月号より転載》
二〇〇四桃園国際空港カーニバル
二〇〇四桃園国際空港カーニバルが八月十四~十七日まで空軍桃園基地(桃園国際空港そば)で開催される。航空機の展示、軍用機やヘリコプターの曲芸飛行などのほかに、世界各国の航空機産業からも最新技術を駆使した航空機が出展される。今回の航空ショーは台湾初のイベントであり、アジアでは唯一の大規模な航空レジャーカーニバルである。
《『台湾観光月刊』7月号より抜粋》
台南産「アップルマンゴー」をPR
台南県が東京で販促会を開催
台湾産フルーツの紹介と販売促進のため、台南県と台北駐日経済文化代表処が主催する「台湾・台南県産フルーツ見本市試食会」が、七月二十日、東京都内のホテルでおこなわれた。
見本市には黄崑虎、金美齢両国策顧問をはじめ、さきの参議院選挙で初当選した蓮舫氏や、「日本李登輝友の会」会員、マスコミ関係者、貿易商社など、約二百人が出席した。
蘇煥智・台南県長は挨拶のなかで、「台湾がWTOに加盟して三年が経過した。加盟に際して日本側から賜った協力に感謝する。WTO加盟は台湾の農業国際化の好機となり、政府も台湾の農産物輸出に改めて力を入れている。七月に新設された台南県の燻蒸処理場も、日本への輸出に大きな門戸を開いた」と語った。日本では最近大手スーパーチェーン「イオン」がジャスコで台湾物産フェアを開催するなど、着実に拡販を推進中で、蘇県長は「台湾を訪れる日本の方々に好評を頂いている美味しいマンゴーを、ぜひもっと味わってほしい。今年を『台湾農業の元年』としたい」と力を込めた。
許世楷・台北駐日経済文化代表処代表は「台南の勤勉な農民が作ったフルーツを紹介するため、県長みずからが日本に乗り込んできたというケースは初めてだ」と蘇県長の意気込みを賞賛し、「今日は蘇氏の誕生日だ。一定の地位にある人物なら、誕生日は本国で盛大に祝賀会をしているところだが、こうしてみずから県の農産物をPRする姿勢には、敬意を表したい。この機会に台湾のマンゴーを、日本の消費者に知ってもらいたい」と述べて、今回の見本市と販売促進の成功を期した。
また、台湾人の父親を持つ蓮舫氏も会場に駆けつけ、「小さいころから台湾のフルーツを食べて育ったので、今もとても健康」と、台湾マンゴーの美味しさをPRした。
その後の試食会では、大皿に盛られた台南産アップルマンゴーとパイナップルが会場に運ばれ、来場者は瑞々しい台湾フルーツの美味しさに舌鼓を打った。とくに今回紹介されたアップルマンゴー(愛文種マンゴー)は、リンゴのような赤い皮をしており、果肉がなめらかで口当たりがよいと評判で、そのまま食べるほか、アイスクリームなどをトッピングした「マンゴーカキ氷」も台湾では人気だという。ビタミン、カリウムなどミネラル成分も多く含んでいるため、美肌効果や高血圧の人にもお勧めである。実際試食してみると、黄色く熟した果肉は見るからに瑞々しく、強い甘みとさわやかな後味、ソフトな触感が抜群に美味しい。灼熱の猛暑もジューシーなマンゴーを食べれば、元気いっぱいに過ごせそうだ。
アップルマンゴーの里、台南県は、東部に山地、西部に平原を有し、台湾海峡に面した気候温暖な亜熱帯地域である。湖の数は台湾一で、豊かな水と自然のなかで育った農産物は品質の高さに定評がある。鄭成功時代からの長い歴史があり、古廟や文化財の数も多く、見所も豊富だ。国際的に有名な保護鳥クロツラヘラサギの保護区もあり、二〇〇八年台湾博覧会開催予定地でもある。
(取材:本誌編集部 葛西)
めざせ金メダル!アテネ五輪
五輪代表団一五三名が決定
二〇〇四年アテネ五輪の台湾代表団の総合名簿が、七月十六日付けで正式に発表された。中華オリンピック委員会によれば、代表団は選手八十八名、職員六十名、および五名の同委員会委員により構成される合計百五十三名で、台湾の代表団としては史上最大規模となった。
今回代表チームは林徳嘉・元行政院体育委員会副主任委員が団長として引率する。職員には医師、ボディガード、野球の酒井光次郎(日本)氏ら外国籍コーチ六名も含まれている。
また、アテネ代表チームのユニフォームは、台湾ミズノが一括して全面提供している。オリンピック委員会では、「選手団を資金的にサポートし、五輪を盛り上げるのに一役かってくれた」と歓迎している。
《台北『中央社』7月16日ほか》
ソフトボール代表が前哨戦
金メダル有力候補と言われるソフトボールのアテネ代表チームは、七月十五日、南カリフォルニア州アーバイン市内の競技場で、同州のソフトボールチームと親善試合をおこなった。試合には台北駐ロサンゼルス経済文化代表処の魏武煉処長も応援に駆けつけた。一行は十九日米国での遠征試合を終えて帰国し、五輪に向けて最終調整に入る。
アテネ側によれば、今年ソフトボールには台湾チームのほか、米国、中国、カナダ、日本、オーストラリア、ギリシャ、イタリアの世界八強が参戦し、台湾は初戦でカナダと対戦する予定だ。
《台北『中央社』7月15日》
アテネ記念酒も発売
中華オリンピック協会では七月二十四日、アテネ五輪の記念ラベル酒発売を発表した。台湾酒タバコ公司に委託して製造したもので、収益の一部は五輪賛助金や関連活動に運用される予定だ。また、台北市内でも七月十二日、開幕日までをカウントダウンする大型電光時計が台湾の新しいランドマーク「台北一○一」ビルに設置され、除幕式には野球代表チームの潘威倫投手らも参加して注目を集めた。
《台北『中央社』7月20日ほか》
アフリカ飢餓を絵本で訴える
盧千惠・代表夫人が翻訳書出版
飢餓に苦しむ人々と愛をテーマに書かれた日本の絵本「ゴンダールのやさしい光」(作・ななみみなみ、挿絵・葉祥明)の中国語版『剛達爾温柔的光』が、児童文学家の盧千惠氏による翻訳で出版された。初めてNGO活動の食糧援助に参加した若者の実話をもとに書かれ、飢餓に苦しむエチオピアのゴンダールが舞台だ。ある男性が遠方からやってきた幼い姉妹に、自分の少ない食料を分け与える。明日をも知れぬ生活のなかで他人を思いやる男性の行動が胸を打ち、ボランティア活動とは何かを、正面から問いかけてくる作品だ。日本では中学校の指定図書でもある。
盧千惠氏は、日本で孫娘が読書感想文を書くためにこの絵本を読み、感動したのを目にし、「世界には飢餓に苦しむ二億の子供たちがいることを、台湾の人々にも知らせたい」と、中国語版の翻訳を思い立ったと言う。
盧氏は台中出身、十八歳の時日本に留学し国際基督教大学、国立お茶の水女子大学研究所で児童文学を専攻、帰国後『台湾人的歴史童話』『台湾仔回台湾』など著書多数。今年七月に就任した許世楷・台北駐日経済文化代表処代表の夫人である。
(本誌編集部)
お知らせ
無料コンサート「フォルモサの夢」
台湾音楽界の巨匠・蕭泰然の「ヴァイオリン協奏曲」、「玉山頌」、「フォルモサ・レクイエム」日本初公演が行われます。
日 時 8月22日(日)午後3時半~(開場:午後3時)
会 場 文京シビックホール大ホール(東京都文京区春日1―16―21)
※入場無料 直接会場へお越し下さい。
演 奏 台湾実践大学交響楽団、フォルモサ・フェスティバル合唱団
(指揮:欧陽慧剛、ソプラノ:何康婷、バリトン:巫白玉璽、ヴァイオリン:王中禎、総監督:謝孟雄、音楽監督:盧孝治)
交 通 東京メトロ丸の内線・南北線「後楽園」駅、都営地下鉄三田線・大江戸線「春日」駅/JR中央・総武線「水道橋」駅下車
(地図http://www.b-civichall.com)
主 催 留日台湾同郷会、東京華僑総会、日本阿扁之友会、日本台商会
後 援 台北駐日経済文化代表処
第54回新日台交流の会
日 時 8月21日(土) 午後3時~
テーマ 日本と台湾の文化財保存支援交流の現状
ゲスト 林煥盛氏(NPO文化財保存支援機構)
会 場 台湾資料センター会議室
※入場無料(但し事前に電話による申込み必要)
連絡先 台湾資料センター
(東京都港区三田5-18-12)
(TEL03-3444-8724 )
http://www.roc-taiwan.or.jp/data/index.html
春 夏 秋 冬
いま社会の話題は、目前に迫ったアテネ・オリンピック一色である。もちろん台湾の選手団も参加する。野球やテコンドーなど、メダルの期待できる種目もかなりあり、マスコミもこれらの報道にかなりのスペースを割いている。このオリンピックが終われば、次の国民的関心事は9月21日から始まる国連総会に移る。こちらは台湾にとって、かなり深刻な問題となっている。
いまや世界で国連に議席を持っていない国は、世界でバチカンと台湾のみである。バチカンの特殊性を考えれば、国連未加盟国は台湾一国ということになる。アラファト議長の率いるパレスチナ民族解放戦線ですら代表団を国連に送っているのだ。そこに台湾の姿が見られない。これはどういうことだろう。どう見たっておかしい。もちろん原因は、中国の横ヤリである。
国土も国民もあり、しかも中国と違って民主的な選挙によって国民から選ばれた政府が有効統治し、世界と貿易をし交流をしている国が現に存在しているにもかかわらず、中国はその現実を無視し、自国の公権力が一日として及んだこともないのに「自分の国の領土だ」などと言っているのだ。しかもそのつじつまを合わせるため、最近の軍事演習にも見られるとおり、武力まで公然とチラつかせているのだ。21世紀の今日にそのような行動をとる国が存在していること自体、異常といえるのではないか。世界はそこに気付くべきだ。
さらにもう一つ気付かねばならないことがある。確かに国連は1971年の第2758号決議によって「中国」を合法的に代表するのは中華人民共和国であると裁定し、その代表権を中華人民共和国政府に与えた。だが見落としてならないのは、この決議は単に中国大陸人民の代表権問題を解決したにすぎず、台湾2300万人の代表権問題は解決していないという点だ。これを中国が「一つの中国」をタテに「台湾は中国の一部」と言っているのは、まったくかれらの非現実的なエゴであり、だから武力に頼らざるを得ないのだ。
そしてなによりも、台湾は平和を愛し、国連に加盟する意思もあり、世界に貢献できる能力も保持しており、これを国際舞台から排斥したままにしておくのは、「加盟国普遍化」という国連の主旨にも反するということだ。このような重大なことが現在なお見過ごされているということをこそ、国連総会は討議すべきではないのか。これらの問題点について本コラムは順次述べていきたい。
(K)