台湾週報2161号(2004.9.30)
日台間には関係強化が必要
陳水扁総統が日本の国会議員に主張
陳水扁総統は9月10日、13日と立て続けに日本の国会議員ならびに親善訪問団と会見し、台湾と日本は自由経済と民主政治という共通の価値観を共有しており、自由貿易協定(FTA)の早期締結が、両国にとって有益であることを強調した。さらに中国の軍事力増強に直面し、日台両国が「軍事同盟」としての利害一致の関係にあることも指摘した。同時に人的交流拡大のため、日本側の台湾国民へのノービザの早期実現を求めた。
●深めたい日台の関係
陳水扁総統は九月十日午後、総統府において自民党衆議院議員の村上誠一郎氏、鴨下一郎氏と会見し、台湾の政府および国民を代表して歓迎の意を表明した。村上議員は当選六回で自民党副幹事長、財務大臣などを歴任した自民党内の実力派議員であり、鴨下議員は当選四回で、医者として環境保護と社会福祉問題に力を入れ、日本の国会議員として台湾の世界保健機関(WHO)加盟を強く支持している。
村上議員はこの会見の中で「十八年前の衆議院選挙初当選のあと台湾を訪問し、五年前にも『アジア太平洋フォーラム』参加のため来台し、今回は三度目の台湾訪問となる。ここ数年の台湾の変化を強く感じる。陳総統の勇気ある努力に敬意を表明する」と語った。さらに「日本と台湾が現在直面している問題には、非常に似通ったものがある。このため私は、両国が交流を強化し、共同で将来の方向を検討することを願っている」と述べた。
鴨下議員は「日本の社会は現在、出生率の低下と高齢化の現象に直面し、社会福祉の支出増加と赤字拡大という問題を抱えている。これはアジア各国が直面する問題であり、日本と台湾ならびにアジア各国が共同で検討し、解決しなければならない問題だ」と指摘した。
この鴨下議員の提議に対し、陳総統は「台湾はAPECなど国際組織への加盟にさまざまな障害があるが、台湾が参加できる機関を日本が中心となって組織するなら、台湾は積極的に参加したい」と表明した。
さらに陳総統は「台湾と日本の関係は歴史的にも長く、友好関係はますます緊密化しており、これを一層大事にしなければならない。両国は最も好ましいパートナーであり、同盟関係にある。なぜなら、両国国民は共に民主、自由、人権という世界普遍的な価値観を信奉しているからだ。これは『価値同盟』と言えるものだ。また両国の経済関係は友好的にますます拡大しており、したがってこれは『経済的パートナー』と言えよう。さらにアジア太平洋地域の安全と安定は両国の共通の利益であり、このため両国は『軍事同盟』の関係でもあり、中国の軍事費増大とミサイル配備の強化などを含む中国の脅威は、台日両国にとって決して軽視できるものではない」と強調した。
【総統府 9月10日】
●必然的な日台の友好強化
自民党衆議院議員の衛藤征士郎氏と大分県日華親善協会訪台団一行が九月十三日午前、総統府に陳水扁総統を訪問した。この会見にも邱義仁国安会秘書長が同席した。この会見で陳総統は、台湾と日本の両国が自由経済と民主政治に対する基本的価値観を共有しており、地理的にも安全保障の戦略面でも共通の利害関係を有していることを強調し、さらに両国が自由貿易協定(FTA)を締結し、経済関係を今日以上に強化したなら、両国経済の発展と世界戦略にもきわめて有益であることを強調した。一行を迎えた時の陳総統の談話全文は以下の通りである。
○ ○ ○
本日、総統府において皆様をお迎えできますことを、非常に嬉しく思います。特に嬉しく感じますのは、衛藤衆院議員の後援会の皆様と大分県日華親善協会の方々が遠路はるばる台湾へ友好の旅においで下さったことです。まさに「朋有り遠方より来る、亦楽しからずや」と言えます。皆様がお越し下さったのは、台日友好と相互連動がますます深まって来ていることを象徴しており、台日関係がますます緊密となり、なお一層強固になっていることをも象徴するものであります。
衛藤議員は日本政界の重鎮で、実力派の国会議員であり、一貫して台湾を支持して下さっております。副外務大臣に就任しておられた時、台日関係のため多くの提言をされ、その中には李登輝前総統の来日にビザを発給すべきだとする建言もあり、私は深く印象にとどめております。このため私は特に中華民国政府および台湾国民を代表し、わが国最高の栄誉である「大綬景星勲章」を、われわれが最も尊敬する衛藤議員に自ら授与いたしました。現在、衛藤議員は「日華議員懇談会」の幹事として、積極的に台日交流を進めておられ、台日関係の最も熱心なリーダーであり、台湾の最も良好な友人と申せます。もちろん私は、衛藤議員のご主張は当人お一人の台湾に対する好意のみならず、民主、自由、自主独立の国家である日本の立場として、ならびに日本自身の国家利益を基礎にしたものと確信しております。
台湾と日本は共に自由経済と民主政治という共通の価値観を基礎にしており、また地理的にも安全保障の戦略面からも利害関係が一致しており、最も好ましい伴侶となっております。さらに、台湾のWHO参加問題を例にとれば、それが日本ならびにアジア太平洋全域の防疫体制強化のために必要なことを日本が認識し、今年のWHO年次総会で台湾の参加を支持されたように、台湾のWHO参加は、台湾、日本、アジア太平洋地域、世界が共に利益を受けるものと言えるでしょう。これと同様に、衛藤議員は早くから台日間のFTA締結を促進しておられますが、台日両国がFTAを締結したなら、両国の経済関係はますます緊密になり、双方の国内経済の発展と世界戦略にも有益なものとなり、東アジアの将来における地域連携の指標にもなるものと確信しております。
もちろん双方の関係強化のためには、貿易の他にも観光や文化交流など各種の人的交流の拡大も必要です。目下、台湾と日本は共に「観光客倍増計画」を進め、地方経済の活性化と各国との友好を増進しようとしております。このたび皆様方はチャーター便で台湾に来られましたが、こうしたチャーター便が実績となり、台湾と日本との間にさらに多くの定期航空路が開設され、台北と大分間にも定期航空便が飛ぶことを期待しております。さらに私は、やがて日本が台湾国民の日本訪問を促進するため、ビザ免除の措置をとることを期待しております。それは両国国民の交流と相互理解増進に役立つことは間違いありません。
最後に、改めて皆様方のご来訪を歓迎するとともに感謝いたします。特に今回、私はわが国政府と国民を代表し、小泉首相、森前首相、細田官房長官に親善の言葉を伝達していただくよう依頼しました。将来これらの方々が台湾と日本の架け橋となられ、引き続き台日関係のレベルアップが促進されることを期待しております。皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
【総統府 9月13日】
週間ニュースフラッシュ
◆オリンピック選手の育成に全力で支援
陳水扁総統は九月八日、さきのアテネオリンピックで台湾に史上最多のメダルをもたらした選手と会見した。陳総統は台湾と国民を代表し、あらためてその栄光を称えると同時に、二〇〇八年の北京オリンピックで七つのメダル獲得を目標に掲げ激励するとともに、今後国内のスポーツ環境や設備の充実、予算や人材面で、政府としてオリンピック選手の育成に全力で支援する考えを示した。
《台北『青年日報』9月9日》
◆公務員の早期退職に奨励金を支給
行政院は九月八日、行政院の機能や業務、組織の見直しに関する法案を可決した。これにより、二〇〇五年一月~十二月に早期退職を申し出た場合、奨励金が支給されるほか、定年退職待遇の基準が緩和され、在職二十年以上、または在職十年以上で五十歳以上の場合にも適用されることになった。
《台北『青年日報』9月9日》
◆中学校社会科の学力試験、半数以上を台湾に関する問題に
教育部は九月九日、生徒の台湾への認識の強化を目的に、来年から中学生の「基礎学力試験」の社会科において、少なくとも半分以上の設問を台湾に関する問題に割り当てることを発表した。教育部によると今年の同試験の台湾に関する問題は四五%となっている。
《台北『中国時報』9月10日》
◆欧州連合の中国への武器禁輸解除に警戒
中国がこのところ欧州連合(EU)に対し武器禁輸を解除するよう強く求めていることについて、外交部は「このことは米国の利益を大きく左右するものであり、十一月の米大統領選までEUは具体的な行動を避けるだろうが、今年末が大きなカギとなる」との見方を示している。
《台北『自由時報』9月10日》
◆豪雨休暇、早くて来月から実施
最近立て続けに台風や大雨に襲われ、学校にも職場にも行けない状態になった台湾で九月十三日、陳其邁・行政院スポークスマンは「豪雨も休校、休暇の条件に加えることとし、各地方自治体にその基準の判断を任せ、早くて来月から実施したい」と語った。ちなみに、台北市はすでに一日の降水量が四百ミリを超えた場合休暇とする方針を決めている。
《台北『聯合報』9月14日》
◆交通大臣が台湾の旅行客に対するノービザ適用を支持
石原伸晃・国土交通大臣はさきごろ「閣僚会議において、台湾の旅行客に対する日本への入国ビザ免除を提案し、すでに外務大臣や法務大臣など関係機関の同意を得ている」と述べた。
《台北『中央社』9月15日》
◆台湾国に名称改めるべき
李登輝前総統は九月十五日「中華民国の名称は歴史用語であり『台湾国』に改めるべきだ。憲法改正と正名運動を行えば中国が台湾を攻撃すると懸念する人がいるが、それは間違いで、われわれが中華民国を強調すればするほど中国は台湾を攻撃する。なぜなら中華民国は国連ですでに中華人民共和国に取って代わられたからだ」と述べた。
《台北『中央社』9月16日》
◆来年一月からノービザへ期待
日本政府は九月一日から台湾の修学旅行生に対し、入国へのビザ審査費用と手続きの免除を実施しているが、さらに今後法律を改正し、段階的に台湾の旅行客にも規制を緩和していく方針を決定した。これにより、来年以降修学旅行生への完全ノービザが適用され、一般の旅行客に対しても愛知万博など特定の期間に限定してノービザを適用し、徐々に規制を緩和していく方針だ。
《台北『自由時報』9月17日》
台湾の国連加盟、継続して努力
十五カ国の積極的支持に深く感謝
●二十一カ国が台湾支持表明
第五十九回国連総会は九月十四日午後(米東部時間)ニューヨークの国連本部において開会された。同十五日には総務委員会で、台湾の二千三百万国民の代表権問題を本会議において討議すべきかどうかが論じられた。同委員会では百六カ国が発言したが、このうち二十六カ国が台湾の友好国で、八十カ国が中国の友好国であった。結局表決の結果、賛成二十一票、反対九十四票で否決された。これで一九九三年以来、十二年連続して中国の猛烈な妨害工作のため、総務委員会の壁を越えられなかったことになる。
今年は八月六日に、台湾の友好国十五カ国が連名でアナン国連事務総長に「台湾二千三百万人民の国連における代表権問題」を国連本会議で討議すべきだと提議していた。連名の十五カ国は以下の通りである。マーシャル諸島、パラオ、ソロモン諸島、ツバル、ブルキナファソ、チャド、ガンビア、マラウイ、スワジランド、セネガル、ベリーズ、グレナダ、ニカラグア、セントクリストファー、セントビンセント。
連名の十五カ国はそのメモランダムの中で要旨次のように主張した。
「中華民国(台湾)は自由で平和を愛する主権国家であり、台湾を国連の外に排除しておくことは、すでにグローバル化した国際社会に対し、道徳的にも法律的にも反するものであり、国連はすみやかに台湾二千三百万国民に対する政治的隔離を停止すべきである。台湾を国連体系の外に排除している不公正なやり方は、国連が堅持している加盟国普遍化の原則に反するだけでなく、国連が関与している人類全体の福祉を図る諸施策に参加する権利を、台湾国民から奪っていることにもなる。国連の主要任務は、世界の平和と安全を維持し繁栄を促進するところにある。また国連はこの主要任務を遂行するため、機会を提供しなければならない。台湾海峡の緊張緩和を図るためもし台湾が国連に加盟したなら、両岸双方の関係に有益な措置が講じられるようになるであろう」
中国ならびにその友好国は「一つの中国」を盾に「台湾の代表権問題は存在しない」と主張したが、ガンビアなどは「台湾二千三百万人の代表権問題は未解決」と反論した。また、これまで「一つの中国」支持を発言していた米国は、今回は沈黙を守ることによって、暗に台湾に対する支持を表した。
●明確化された両岸の区別
特に今回の十五カ国のメモランダムは、冒頭の一文に国名を「中華民国(台湾)」と記したが、そのあとはすべて「台湾」と記した。十二年前に台湾が国連加盟活動を展開した当初、友好国はすべて「中華民国」の国名を使用し、その後「台湾における中華民国」に改め、今年は冒頭に一回だけ「中華民国(台湾)」を使用し、あとは一律に「台湾」と呼称した。これは海峡両岸関係の現実を反映した適切な呼称修正と言える。
総務委員会での台湾の各友好国の意見発表も、ニカラグアは駐ニューヨーク台北経済文化代表処の提供した資料に基づき「中華民国」ならびに「台湾における中華民国」の英文名を使用したが、その他の友好国は、発音の煩わしさから一律に「台湾」を使用した。また中国の友好国側においても、「中華民国」と「中華人民共和国」を混同する一幕があり、多くの国は台湾海峡両岸を「中国」と「台湾」と発言し、その区別を明確にした。このように呼称によって両岸が確実に区別されるようになったことは、今回の国連における大きな特徴と言える。
《台北『中央社』9月16日》
彭明敏「台湾自救宣言」を振り返る
宣言四十周年を迎え、その意義を見つめる
現在、総統府資政(上級顧問)の任にある彭明敏氏の名を聞けば、年配者の中では四十年前の「彭明敏事件」を想起し、戦慄を覚える人は少なくない。発端は「台湾人民自救宣言」の発表であるが、彭明敏文教基金会は九月九日、宣言四十周年にあたり彭明敏・資政をはじめ李登輝前総統、陳唐山・外交部長、謝長廷・高雄市長、李鴻禧・ケタガラン学校校長、高俊明・牧師らの企画により、九月十一日から同二十五日にかけてシンポジウムや音楽会など一連の記念行事を催すと発表した。
まず『台湾歴史辞典』に記載されている「彭明敏事件」から紹介しておきたい。
〔彭明敏事件:一九六四年九月二十日、彭明敏・台湾大学教授とその学生の謝聰敏、魏廷朝が「台湾人民自救宣言」を配布して逮捕された。一九六五年四月二日、彭明敏は懲役八年、謝聰敏は同十年、魏廷朝は同八年の判決を受けた。その後彭明敏は国内外の多数団体の嘆願により特赦を得て釈放。一九七〇年一月スウェーデンに密航して米国に渡り、海外で台湾独立運動の主要人物となる。「台湾人民自救宣言」は「一つの中国、一つの台湾」によって台湾の国際的地位の問題を解決せよと明確に訴えたものである。さらに、台湾千二百万人民(出生地の如何にかかわらず)は、自由選挙で選出した政府をもって民意に欠けた蒋介石指導の政府に代え、新国家と新政府を樹立し、新憲法を制定し、新たな立場で国連に加盟することを求めた。彭明敏は世界的な国際法学者であり、その逮捕は国際的な関心を集めた。同宣言は当時の台湾独立思想を代表する一つである〕
以上だが、彭明敏・総統府資政は同日、メディアのインタビューを受け、要旨つぎのように語った。
「四十年前、学生の謝聰敏、魏廷朝と共に、総統普通選挙、政党政治、人権の保障、公務員の健全化、汚職の排除、住居移転の自由、特務の廃止、軍縮の八点を原則に、新国家樹立、新憲法制定、国連新規加盟を三大目標とする台湾自救宣言を発表した。四十年後の現在、これらの正しかったことが証明されている。
台湾の民主の道は、どの事件から始まったと言うことはできない。各時代の人々がそれぞれに努力し、代価を払ってきたのだ。台湾自救宣言四十周年は、民主化への道が正しかったことを象徴するものであるが、その宣言に関わった者が立派だったことを意味するものではない。なぜなら、非常に多くの無名の人々が尽力したからであり、そのため服役し、また処刑された人も少なくない。政府はこれら無名の英雄たちを顕彰する記念碑を建立すべきだ。
かつて、権威主義による統治が確実にエスニックによる対立を生み出した。これは事実で、二・二八事件がその顕著な例である。かつての政府の少数特権階級は、エスニックの問題を利用して台湾人と外省人を分断してきた。なぜなら、本省人と外省人が融合して民主化を要求するのを恐れたからだ。だが今日、この問題は徐々に緩和し、やがて問題とはならなくなるだろう。
遺憾なのは、現在の台湾社会において、一部の政客が今の外省人の立場をナチス時代のユダヤ人に譬え、本省人と外省人の対立を煽っていることだ。これは悪質である。外省人であるがゆえに生命の危険にさらされている人がどこにいるだろうか。台湾自救宣言は台湾民主化の方向を示し、それによってエスニックの融合を促進しようとするものだった。民進党による現在の政府もまたそうである」
さらに彭氏は当時の国外亡命について、周囲の支援により偽造パスポートを使って出国し、香港、ソ連、スウェーデン等を経て米国に入るまでにも、多くの団体、個人の援助を得たと明らかにした。
《台北『自由時報』9月8日》
ニュース
三年で学生の五割に英検合格
教育部が英語力引き上げ策
教育部は九月八日、「今後四年間における執政主軸活動方案」を発表し、学生の語学力向上のため、今後三年間で、大学生の英語検定試験の中級合格者および技術専門学校生の同初級合格者を五〇%に引き上げる方針を明らかにした。
杜正勝・教育部長によれば、教育部では今後、合格達成率を現在の三〇%から毎年一〇%ずつ引き上げ、この目標達成率によって、各校に対する助成や奨励策を講じる予定だ。
また、日本語、スペイン語などの外国語学部の学生に対しては、語学検定の合格率七〇%を目標とし、この合格達成率を、同学部の募集枠数決定の際の参考資料とする。
このほか、高校生の学力向上のため、教育部では現在、高校生の英検初級への参加推進を計画中であり、それによれば二〇〇七年までに、高校生の一〇%に英検初級、二%に同中級を合格させることを目標としている。
《台北『青年日報』9月9日》
伝染病防疫で台日が協力
双方関連機関が台北で会談
行政院衛生署疾病管制局は九月八~十日、日本の衛生関連機関を招いて、台北の圓山飯店で相互会議を開き、SARS、鳥インフルエンザなど新型伝染病の蔓延防止について意見交換をおこなった。
消息筋によれば、今回の会議は疾病管制局が主催し、日本の厚生労働省、農林水産省および東京、大阪の関連職員、および国立感染症研究所などの専門家を招いて開催され、アジア太平洋地域における鳥インフルエンザ共同調査体制などについて討論したほか、互いの防疫経験について意見交換した。
また、日本では新型伝染病に対する研究が進んでいるため、今後の実験室レベルでの協力についても、双方は基本的なコンセンサスに達した。これまでこの分野の協力は、日本側が中国からの圧力を考慮して個人的な情報交換に留まっていたが、今回の会談は双方の新たなパートナーシップ構築に繋がるものとなった。
《台北『中央社』9月11日》
記録メディア産業委員会設立
台湾の国際競争力向上めざす
国内の大手記録メディア産業によって構成される「台湾記録メディア産業委員会(TRIA)」が、九月四日、設立され、新竹で設立式典が盛大におこなわれた。
台湾諮詢儲存技術協会の黄得瑞理事長は、その挨拶のなかで「記録メディア産業が盛んな日本でも、早くから『日本記録メディア工業会(JRIA)』を設立している。台湾は生産高、シェアとも日本に遜色なく、産業協会の設立により、産官学が協力し、記録メディア技術の向上と、産業の健全な発展および世界各国との産業交流を促すことは必須である」と述べ、「記録メディア産業は、半導体、光電産業に続くスター産業となる」と強調した。
また、同産業委員会会長に就任した国内大手メーカー・銤徳科技執行長の葉垂景氏は「今後は同業者間で討論会や技術交流、市場分析をおこない、台湾の国際的地位を高めたい」と述べた。
《台北『中央社』9月14日》
香港の民主化要求は依然強い
陸委会が香港立法会選挙を評価
中国への返還後今年で六周年を迎え、昨年七月には「基本法」二十三条に反対する五十万人デモが起きるなど、民主化の要求が高まるなか、九月十二日、香港立法会(国会に相当)の議員選挙がおこなわれた。選挙は、中国当局がこれまでにない硬軟取り混ぜた介入を展開し、立法会の総数六十議席のうち、民主派二十五議席、親中派三十五議席という結果となった。
この結果について、邱太三・大陸委員会副主任委員は九月十二日、中華港澳之友協会が開催した香港民主化に関するフォーラムで「今回、民主派の議席は最終的に過半数には至らなかったものの、中国当局がさまざまな手段で親中派を支持したにも関わらず、民主派全体の得票率は六十二%となった」と述べた。さらに「これは民主化に対する香港市民の願いを証明するものであり、今回の選挙は香港の民主化にとって大きな一歩となった」と評価した。
《台北『青年日報』9月14日》
真の英語教育で国際競争力を高めよ
『青年日報』(9月10日)
杜正勝・教育部長は九月九日、大学生の英語能力強化のため、各大学への評価と奨励、助成策により、三年後までに大学生の半数が英検中級レベルに合格することを目標とする方案を発表した。全面的な国際時代を迎えた今、正しい英語教育のあり方が問われる時代が来ており、そうしたなかで本方案は、学生の英語能力向上に大きなプラスとなるだろう。
英語は現在国際社会で最も普及している言語であり、その普及率は現代化社会を図る尺度となっているだけでなく、一国の国際競争力を見るうえで重要なポイントとなっている。総体的に見て、台湾の学生の英語レベルは、これまでアジア諸国のなかで中くらいだったが、ここ数年では英語の重要さが指摘されるのに反し、学生の英語力は日増しに落ちているのが現状だ。
米国のある教育関連サービス業者の調べでは、二年に一度発表される世界各国のTOFUL試験の成績ランキングにおいて、二〇〇一年七月~〇二年六月にネットで受験した二十二カ国のうち、台湾の受験者の平均点数は百九十八点で、受講者全体の平均点数二百十四点を遥かに下回った。さらに大学試験センターの統計によれば、今年の大学指定科目試験では、生徒全体の英語の平均点が二十七点だったという。
大学生の英語力向上は今や、まぎれもなく緊急を要する課題だが、レベル低下の原因にはさまざまな要素がある。厳密に言えば、このような結果をもたらしたのは大学の英語教育ではなく、中学の英語教育に問題があるためで、ひいては教育制度全体の問題と言えるだろう。台湾の厳しい学歴社会のなか、これまで長い間、教育はイコール受験であり、大学入試で高得点を取るために、英語はコミュニケーション能力よりも、文法や読解に重点がおかれてきた。
大学生の英語力向上には、大学入試と卒業時に一定の英語レベル取得を課すだけでなく、入学以前に、英語の基礎力をしっかり身に着けることが肝要だ。これに関しては、教育部でも九年一貫教育の英語綱要を発表しており、二〇〇五年度から小学校三年生の英語教育をスタートさせている。
一方、教員不足もレベル低下の一要因である。現在十六の県、市で八百人の教員が不足していると言われるが、こうした教員の育成には、従来の教育基礎過程一年では足らず、適切な専門の訓練が必要である。今回教育部が打ち出した計画では、今後三年間、中学の英語教師に対し、中高レベルの英語検定合格率を、七割まで引き上げることを目標としている。
今後の英語教育については、中級レベル以下の学生の英語力を強化して、全体のレベルを引き上げることが肝要だ。さらに、英語会話クラス開設や原文教科書の導入など、学生が英語に親しみ、上達したいと思う環境をつくることも必要となってくる。奨学金留学制度などを通して、学生に国際的視野を広げさせることも方法の一つである。だがさらに重要なのは、英語検定の成績を卒業の条件とすることで、こうした荒療治は苦しいが、確実に結果を導き出せるだろう。
まさに、杜教育部長が言うように「学生に語学力が備われば、新しい世界の扉を開くことができる」。人材育成と、国際競争力向上のため、われわれは大学生の英語力アップを、全力で推進しなければならない。
先見の明あった「台湾自救宣言」
『自由時報』9月11日
四十年前、現総統府資政(上級顧問)の彭明敏氏が教え子の二人と台湾自救宣言を草案した。それは台湾の千二百万人(当時の人口)は共産党の統治を拒否し、蒋介石の支配にも甘んぜず、自救運動を展開すべきだとする内容だった。時期尚早であったか、かれらは逮捕された。だがその内容は先見の明に富むものであった。
自救宣言は、大陸反攻の不可能を認識して「一つの台湾、一つの中国を」を法的に定めることを求め、大陸反攻は政権の延命政策にすぎず、国民党政府は中国も台湾も代表するものではないと主張し、新たな政府を樹立し、新憲法を制定し、新規加入の形で国連加盟を求めるというものであった。四十年後の今日、それらの多くは国民的コンセンサスが得られ、国民共通の努力目標ともなっている。
自救宣言を発表する前、彭明敏台湾大学政治学科主任は政府から国連代表団顧問に任命され、国際政治を現場でつぶさに見つめ「一つの中国、一つの台湾」の信念を強くした。事実「中国代表権」で一九五〇年以降、国民党政権は針のムシロに座わらされたも同然となり、台湾に移ってからも「中国の唯一の合法政府」を名乗り続けた。世界の多くは中華人民共和国の中国有効統治を認め、米国さえ中華人民共和国との国交締結を模索しはじめていた。
ここで注目すべきは、米国は北京との関係正常化を認めるとともに、折衷案として中華民国の国連での議席を一般加盟国として残すことを考慮していたことである。米国政府は当時、中華人民共和国の国連加盟を認め、常任理事国となることにも賛成するが、中華民国の排除には反対すると発表していた。だが惜しいかな当時の国民党政府は「漢賊両立せず」(正統政府は共産党と両立できない)との方針を堅持し、「二つの中国」あるいは「一つの台湾、一つの中国」に耳を貸すこともなく、結局は国連を出てしまったのである。
この過程においては、台湾自救宣言が時の政府から政治的迫害を受けるのは必然的だったかもしれない。国際社会は台湾と中国の二重加盟に傾き、米国でさえ北京との関係正常化を進めていた時、国民党当局の関心事は国際社会での台湾の主権擁護よりも、その独裁統治の維持に移っていたのだ。この歴史的な重大な失敗により、その後の台湾の国際的地位まで危うくし、さらに新規国連加盟まで一層困難とさせてしまったのだ。陳水扁総統は「台湾が国際社会に進出するため、われわれは国際的に認められる身分証を保持することを放棄しない」と明言している。現在、台湾は国際的に軽視されているが、これは「漢賊両立せず」の政策が招いた禍根である。
幸いにも台湾自救宣言が脈々と今日まで受け継がれ、その中で主張されている「一つの台湾、一つの中国」が、この十年来に国民的コンセンサスが得られ、政府も認識するところとなってきた。李登輝前総統の「二国論」も陳水扁総統の「一辺一国論」も、その本意は台湾自救宣言の精神に合致するものである。
旧政権が国民の選挙によって下野し、また北京の併呑の意図にさらされている現在、われわれは従前の消極的な「自救」から積極的な「自決」に転じなければならない。「自決」とは「自ら自己の将来を決定する」ことである。台湾は主権独立国家であり、国名を自ら決定し、新憲法を制定する権利を持っていることは理の当然である。ある者は北京の恫喝に同調し、主権を強調すれば中国に攻められ台湾を戦争の淵に立たせると言う。だがこれは、台湾人は自己の国家を持っていることを忘れた主張であり、大事なのは国家としての意志であり、それを持ってこそ国際社会に生存できるのである。
「台湾新シルクロード」を提唱
高雄市の良好な投資環境と資本支出の成長を強調
高雄市の二〇〇五年度一般会計予算は約千十九億元(約三千五十億円)で、前年度比一七・四%の増加となっており、このうち資本の支出は約四百億元(約千二百億円)で、前年より四〇%以上の大幅増となっている。高雄市の予算全体に占める資本の支出は四一・六八%に達しており、この割合は台北市の一七・三%、政府の二〇%と比べて二倍以上に相当する。このことは、高雄市の建設がまさにピークを迎えていることを示しており、一方で謝長廷・高雄市長の戦略意図も伺える。
謝市長はこのほどメディアの取材に応え、高雄市の投資環境のメリットについて言及するとともに、台湾を中国進出の中継地と位置付ける「台湾新シルクロード」構想を提唱した。以下はその要旨である。
○ ○ ○
問:謝市長はこの二年間、みずから積極的に日本、韓国、欧米を訪問し、産業、企業誘致に取り組んでいられる。高雄市の投資のメリットは何か。
答:高雄市は不動産価格が安いうえ、ハード、ソフト面も急速に整備されつつある。全体の営業コストは北部より安く、しかも水、電力不足もなく、自然災害が少ない。まさに投資環境に有利な条件がここに揃っている。
問:政府も自治体も財源不足に直面しているが。
答:BOT(民間が一定期間後、経営を政府に委譲する)方式や、半官半民による経営は有効な解決法だ。自治体が企業のビジネスチャンスの開拓に奔走するのは、企業と政府がともに勝利するためだ。
地方の立場から言えば、両岸三通の実現、もしくは域外運輸オペレーションセンターの規模を拡大すべきだ。台湾は中国の発展過程で地方に追いやられてはならず、みずから戦ってこそ活力も生まれてくる。中国に投資する外国企業が、すべて台湾のシルクロードを経由できたら、台湾を世界の運輸オペレーションセンターに発展させることができるはずだ。
問:台湾のシルクロードとは具体的にどういうことか。
答:台湾にはハイレベルの人材が揃っており、資本金百万ドルの企業を管理できる人材は二十万人に達する。台湾を「新シルクロード」に位置付け、外国企業が中国へ投資する際の中継地、もしくは入口になることを強く期待している。
外国企業は中国の文化や政治、市場の特性などを充分に理解しているとは言えない。市場の圧力で中国に投資する外国企業の多くは、ほとんど失敗している。日本や欧米企業が中国に投資する前に台湾に研究開発センターもしくは営業本部を設置し、台湾の経験豊富な幹部を登用したなら、中国で成功する確率は高くなるはずだ。世界の小売業界第二位のフランスの「カルフール」がそのよい例といえるだろう。
問:台湾のメリットとは。
答:「台湾新シルクロード」構想は、中国の発展に台湾が参画しながらビジネスチャンスを勝ち取り、台湾の地方化を避けることができる。また、国家の安全保障にもプラスとなるはずだ。
問:高雄の位置付けについて、以前は香港に代わる自由貿易港を目指していたのでは。
答:今となっては遅すぎる気がする。台湾企業はこれまでずっと戦いを生き抜いてきた。台湾経済は外に向かい、直接中国と競争することで成長しつづけなければならない。できるだけ企業の競争力を制限せずに、柔軟に、透明性を持って、オープンにしさえすれば、経済発展の余地は大きく広がるはずだ。しかし、これも中国の協調がなければ無理な話で、たとえば、域外運輸オペレーションセンターも、汕頭、アモイ以外に、中国の主要港を開放してくれたら、両岸経済はともにより発展できるに違いない。
《台北『経済日報』9月13日》
走れ新幹線
嘉義駅の連絡交通網にバスを導入
交通部高速鉄路工程局(以下、高鉄局)は、来年十月の新幹線開通にともなう他の交通機関との連絡網の整備にあたり、嘉義・太保駅については「二連結バス」を導入し、OT(民間が運営管理、一定期間終了後に政府に委譲)方式を採用することを決めた。
高鉄局はもともと、嘉義・太保駅に狭軌鉄道を整備する計画を立てていた。何煖軒・高鉄局長は九月十二日、「新幹線開通直後は嘉義駅の利用者数が限られるため、しばらくの間、『二連結バス』を運行させ、一定の利用者が見込まれた段階で再度、狭軌鉄道の建設を検討する。この方が経済利益に適っており、すでに陳明文・嘉義県長や同県市議会議員の了承も得ている」と述べた。
「二連結バス」のメリットは車体が低いため改めてプラットフォームを建設する必要がなく、普通の平坦な路面ですぐに運用できる。さらに誘導システムを導入すれば、運転は手動にも自動にも切り替えができる。しかも、経費が七億五千万元(約二十二億五千万円)で済み、狭軌鉄道の八十億元(約二百四十億円)よりはるかに負担が少ない。
高鉄局では、「二連結バス専用道路」を設けることで、他の車両に影響を与えず、しかもハイスピードで走行できるため、多くの利用客を取り込めると見ている。
《台北『経済日報』9月13日》
台中、台南駅区の土地来月入札開始
高速鉄道公司(以下、高鉄)が九月末から台南―高雄間で新幹線車両の試運転を始めるのに合わせて、交通部高速鉄路工程局(以下、高鉄局)は十月中旬にも台中・烏日駅と台南・沙崙駅区の土地の入札を開始する方針を決定した。(なお、桃園駅区については、都市計画が未完成なことと、最近の水不足問題のため、暫時入札を行わない)
呉福祥・高鉄局副局長によると、台中・烏日駅について前回実施した三つの住宅区の入札では、最低価格が市価相場より三割も低かったため大勢の業者が殺到したという。今回の入札最低価格はまだ提示されていないが、基本的には市価より安く、住宅区と商業区合わせて五~八区画について入札を行う予定だ。このうち商業区の入札は、今回が初めてとなる。
《台北『経済日報』9月13日》
台湾観光年
日月潭カーニバル開催中
湖畔の夜空に打ち上げられる大輪の華、水上を舞うレーザー光線、軽快な音楽と舞踏―
夜のロマンチックな湖畔を舞台に繰り広げられる「日月潭カーニバル」が今年も九月十八日~十月十六日まで開催中だ。
期間中毎週土曜日の午後七時から九時まで、花火大会、音楽会、舞蹈芸術祭が開かれ、湖水に映ずるレーザー光線の中で、原住民の歌とダンス、吹奏樂と管弦樂、ジャズなどが演奏される。
日月潭を訪れるなら、ぜひ集集や埔里、霧社、竹山、鹿谷などの周辺スポットにも足を伸ばしてみよう。今年「台湾観光年」に合わせて運行されている観光バスなら、英語や日本語のガイドが付くため、外国人でも気軽に利用できる。台中発、埔里・日月潭日帰りツアーが一人千四百元(約四千二百円)、日月潭、清境廬山一泊二日ツアーが一人二千七百元(約八千百円)などとなっている。
● 台湾観光バス一覧
http://taiwantourbus.justaiwan.com/japan/index.html
● 日月潭国家風景区
http://www.sunmoonlake.gov.tw
《台北『聯合報』9月8日》
台北市オープンカフェを全面開放へ
台北市は市内の一部に限定し、街路樹のある歩道にオープンカフェを開設する実験的な試みを二年前から始めているが、消費者にも業者にも非常に好評なため、今後地域を市内の歩道全域に開放することを決定した。
オープンカフェは、業者にとっては営業面積を拡大でき、しかも喫煙者にも気軽に利用してもらえるというメリットがあり、消費者からは「ヨーロッパ風でオシャレ」との感覚が受けて、この二年間で合わせて十六カ所設置されている。今後は市内にさらに多くのオープンカフェが登場しそうだ。
《台北『民生報』9月10日》
文旦の出荷が最盛期
日本ではおもに四国や九州などで栽培、消費されている文旦は、台湾では旧暦八月十五日(新暦では今年九月二十八日)の中秋節に欠かせない果物として定着している。
台湾の文旦の産地は宜蘭、花蓮、苗栗などが知られており、これまでは各産地ごとに組合を結成し販売を行ってきたが、行政院農業委員会は今年からそれらすべてを統合し、「台湾文旦」連盟を設立した。
優劣さまざまある文旦のなかで、同委員会が「台湾文旦」として認めているのは、樹齢が十五年以上、果実の重さは四百~六百グラム、外観が整っており、病虫害がなく、糖度が十度以上のものに限定されている。
宜蘭県冬山郷では二百ヘクタールの土地に年間四千トン以上が栽培されており、中秋節を目前に、いま出荷の最盛期を迎えている。
ちなみに、価格は三㎏入りが一箱百六十元(約四百八十円)、六㎏入りが三百元(約九百円)となっている。
《台北『中国時報』9月8日》
上海カニも続々登場
中秋節以降十二月まで、台湾で秋の味覚を代表する食材として知られる「上海カニ」。台北市内の市場では、早くも中国産の「上海カニ」が登場し、人気を集めている。
台北市南門市場で高級海鮮を扱う業者によると、現在市場に出回っているのは主に湖北地方産のカニで、揚子江以南で捕れる本来の「上海カニ」は十月以降に入荷する予定だという。専門家によると、湖北地方のカニは甲羅の色がやや淡く、ミソは黄色、味も淡白なのに対し、江蘇地方のカニは甲羅の色が濃くミソは褐色を帯びており、中に赤い筋が入っているのが特徴で、何と言ってもその濃厚な味と香りが絶品と言われている。
今年の上海カニの水揚げは、ここ三、四年間で最も安定しており、品質もよいという。現在台北市内の市場で出回っている中クラスは一匹百七十五グラム、約二百元(約六百円)で販売されており、昨年より二割ほど安くなっている。なお、上クラスのカニは四百元(約千二百円)前後で取引されている。
《台北『民生報』9月11日》
文化ニュース
台湾先住民の起源に新解釈
ポリネシア人は台湾先住民の末裔
「台湾の先住民の祖先はどこから、いつやってきたのか?」という問いに、最近出されたのが次の回答だ。
「人類の起源はアフリカで、少なくとも一万四千年前には台湾へ移住したと考えられる。さらに遺伝学的に見ると、ハワイ一帯のポリネシア人は台湾先住民の末裔と見なすことができる」
これは馬偕病院医学研究部、林媽利教授のチームが今年六月にジュネーブで開かれた「ゲノムと言語、考古学の発見から見た東アジア大陸と台湾本島への人類の移動」と題するシンポジウムで発表した新しい解釈だ。
林教授によると、人類の起源は十万年前のアフリカに求められ、当時は陸地と海洋とに分断されておらず、人類は徒歩で南北、さらに東西へと移動した。考古学、遺伝学的見地に照らして、台湾へは少なくとも一万四千年前に移住したと見られるという。林教授らは、人類のゲノムの特定の部位から各民族間の遺伝的特徴を分析することができるとの立場から、組織の抗原、分泌構造、血小板などについてゲノムの研究を行い、台湾の各エスニックグループ間の関係を調査、分析している。
その結果、台湾の先住民は東南アジア、とくにニューギニアの民族と深い関係にあり、さらに興味深いのは、ハワイ一帯のポリネシア人が台湾から移住したと見られることがわかったという。台湾の先住民の一五%がB4a型を持っており、これを一万六千個の塩基配列で比較分析した結果、台湾の先住民がポリネシア人の祖先であるとの有力な手がかりが得られたという。このほかフィリピンのパナイ島の民族も台湾先住民の末裔の可能性があるという。
●ゲノムと考古学で見解は相違
一方林教授らの新解釈に対し、台湾史前文化博物館の臧振華館長は「ゲノムと考古学とでは見解が大きく異なる。考古学的には台湾の先住民は中国・華南の一民族が約五千年前に移住し、その後東南アジアや太平洋諸島へ移動したと考えられる」と反論している。
《台北『聯合報』8月29日》
平埔族の先住民認定へ前進
民族認定条例を策定
政府はここ数年、各エスニックグループや多元文化を重視する政策を採っており、その一環として行政院原住民委員会は現在「民族認定条例」の策定を進めている。年内にも完成する予定で、これにより近年正名運動を行っている各平埔族も、正式に先住民への認定の道が開かれることになりそうだ。
政府は現在、十二の部族を先住民として正式に認定しているが、そのうち十一部族は山地に住む「高砂族」で、平地に居住し早くから漢民族との混血が進んだいわゆる「平埔族」は、一昨年初めて「カバラン族」が正式に認定されたにすぎない。
浦忠成・原住民委員会副主任委員は「政府に認定を求めている平埔族のうち埔里に住むバサイ族は、言語、文化、集落が残っており、正名運動意識が高く、今後認定される可能性が最も高い」と語っている。
政府によって先住民族に認定された場合、部族の出身者は全員先住民の身分を持つことになる。「民族認定条例」は政府の先住民認定に対する緩和姿勢の表れであり、これにより今後先住民の数が増えることが予想される。一昨年認定された「カバラン族」は、もともと「アミ族」として先住民登録されていた人だけが対象となっており、それ以外でカバラン族の末裔とされる約二千人は認定されていないままだ。「民族認定条例」が完成すれば、カバラン族の問題も解決されると期待されている。
《台北『聯合報』9月10日》
「中薬行」再興プロジェクト始動
漢方薬販売にも現代化の波
台北旧市街に軒を並べる「中薬行」。日本でもおなじみの「冬虫夏草」や「葛根湯」など、いわゆる漢方薬材を売る店だが、この頃は夜遅くまで営業する店が増えたという。「儲からないから、長く店を開けるしかないんだ」と、何十年続いた店を切り盛りする店主は話す。
中薬商公会全国聯合会の林天樹・理事長によると、最近、こうした伝統的な「中薬行」の収益は落ち続け、ここ数年の売り上げは平均四割ダウンしている。二カ月前の理事会では、一日の売り上げが二千元(約六千円)なら上々で、五百元(約千五百円)足らずだと嘆く同業者もあったという。
林氏によれば、最近、漢方薬の処方にも健康保険が適用されるようになり、病院や診療所で処方できるため、わざわざ店に買いに来る人が減った。また、漢方薬の成分を入れたいわゆる「養生(健康)食品」がコンビニなどに出回り、手軽さが受けて客を取られているようだ。健康茶やスープといった健康食品の販売には薬事許可が要らないため、今や漢方薬メーカーのほか、バイオや食品、西洋薬品メーカーまでもが、こぞって生産に乗り出している。
一方、従来の「中薬行」は一歩店内に入ると薄暗く、山のように積まれた薬材のなかから、商品を選ぶのも面倒だ。大量の薬草を持ち帰って煮出すのも、手間と時間がかかる。
こうしたなか、行政院衛生署中医薬委員会は、国内に一万五千店ある「中薬行」の再興計画を打ち出した。五年間で四千店の売り上げをもとに戻すのが目標で、鶯歌の陶磁器街や苗栗の泰安温泉街などの振興を成功させたことで有名な財団法人中衛発展中心に委託しておこなう。
再興プランでは、まず店内を改装して暗いイメージを明るく快適に一新し、ウェブサイトを開設してネット販売をするなど、E(電子)化も進める。また、薬材以外に漢方薬を使った健康食品、基礎化粧品など品揃えを豊富にし、商品はすべて携帯に便利な小包装に切り替える。
中医薬委員会の陳中薬組組長は「現代人は忙しいが健康にも気を使う。『早い、手軽』はもちろん、『体に効きそう』というのは大きなポイントで、やり方を変えればシェア奪回は十分可能」と指摘している。
《台北『中国時報』9月7日》
教育関連ニュース
「海洋国家・台湾」の確立めざす
台湾は四方を海に囲まれ、豊かな 海洋資源の有効活用は国の主要課題でもある。教育部では、今後四年間における施政の柱のひとつとして「海洋国家台湾の確立」を挙げており、二〇〇七年までに小中学生の「カナヅチ率」を、現在の七〇%から五〇%に引き下げる計画だ。
同方案では、九年一貫教育の習得課程に基づき、小中学生の教学課程に「海洋台湾」を盛り込み、台湾の海洋文化を学習し、幅広く新しい海洋国民としての意識向上に重点が置かれている。教育部ではまた、各種マリンスポーツの指導や海洋生態学習に役立てるため、「海洋台湾」の文化と特色をテーマにした補助教材を編纂する予定だ。
このほか、各大学における海洋文化の専門教員育成コース開設や、各県、市の関連研修活動をバックアップし、二〇〇七年までに、海洋生態の専門教員四百人を育成する方針である。
《台北『中国時報』9月10日》
ハイテク人材育成に各省庁タッグ
景気回復に伴い、ハイテク産業の人材不足が深刻化するなか、経済建設委員会は九月三日、政府の今後の人材育成案について報告した。
政府の統計によれば、二〇〇四年のハイテク人材不足数は六千人を超えており、企業側の需要は切実なものとなっている。これについて李遠哲・中央研究院院長も三日、「台湾大学をはじめ、清華大学、交通大学などの主要大学が輩出するハイテク関連学部の卒業生は、大学生全体の五~六%足らずで、一万人に満たない。知識産業振興のためには、今後少なくとも四万人の人材が必要だ」と指摘している。
今回報告された人材育成案のうち、注目されるのは「産業発展のための短長期人材育成プロジェクト」で、若く優秀な人材の海外留学を奨励する「精鋭留学計画」を推進する。これは教育部、国家科学委員会、外交部、経済部などの共同プロジェクトで、今後三年間に毎年最低千五十人の交換留学および海外からの専門人材招聘をおこなう。
またこれとは別に、経済部では「修士生増強による産業への研究人材供給プロジェクト」を展開する。国立大学の大学院生(修士)募集枠を各校二百人ずつ広げ、台湾全体で年に千六百人増やし、今後三年間で計五千人のハイテク人材を確保するもので、今年度からすでに試験的に実施されている。
このほか、行政院では二兆双星産業の半導体、液晶ディスプレイ、通信、デジタルコンテンツ各産業の不足人材数リストを作成、分析済みだ。これら主要産業の人材不足数は計六千百七十人に上ることが明らかになっており、各省庁はこのデータをもとに対応を急いでいる。
《台北『中国時報』9月4日》
二〇〇五年の各入試日程が発表
教育部は八月二十日、二〇〇五年度の大学入試(学科能力試験と指定科目試験)、二技、四技(二年制、四年制科学技術学院)と二専(二年制の専門学校)の統一入試、および中学校基本学力試験の実施日程を、次の通り発表した。
教育部によれば、今年の試験が台風の影響を受けたことを教訓に、それぞれの試験日程の間隔を一週間前後離した。また二技と四技の高等専門学校はこれまで試験日が早すぎ、通常の授業に影響するという現場の声を反映し、ともに一カ月遅くした。
《台北『中国時報』8月21日》
文化芸能情報
世界音楽ランキング授賞式が開催
九月四日、第四回全球華語歌曲排行(世界中国語音楽ランキング)の受賞式典が、台北市内の台湾大学総合体育館でおこなわれ、台湾をはじめ中国、香港、シンガポール、マレーシアのアーティストが一堂に会した。
このうち、今年最も人気があった男性歌手に贈られる賞の「年度最受歓迎男歌手奬」には、台湾ミュージシャン周傑倫さんが輝いた。周さんは作曲、演奏ともにこなし、中国でも大人気を博している歌手で、今回のランキングでは他に四つの賞も獲得している。
今年で四回目となったランキング授賞式だが、台湾でおこなわれるのは初めてで、最大の意義はこれまで台湾に来るチャンスが少なかった中国のスターが台湾を訪れたことだろう。授賞式の開催前には、中国の歌手が訪台することに反発する声もあったが、式典では多くのファンたちがそんな心配を吹き飛ばすかのように、大歓迎でスターらを迎えた。この日の出席者は五十人を超え、各国のスターは互いに文化交流を深める貴重な時間を過ごした。各ランキング(抜粋)は次の通り。
・男性歌手第一位:周傑倫
・女性歌手第一位:孫燕姿
・グループ第一位:五月天、F.I.R、華児楽園
・最優秀アルバム:王力宏「不可思議」、周傑倫「葉惠美」、朴樹「生如夏花」
《台北『中国時報』9月5日》
喜多郎が七年ぶり台湾公演
NHKの特別番組「シルクロード」のテーマ曲で有名なニューエイジ音楽の第一人者・喜多郎が、九月七日、八日に台北市内でコンサートをおこなった。自然をテーマにした雄大で独特の「魂の音楽」に、多くのファンが酔いしれた。コンサートには、約二十年前に「シルクロード」の一部を英・中国語版でリリースしたベテラン歌手の黄鶯鶯さんをはじめ、張惠妹さんら台湾の有名ミュージシャンも数多く現れた。
《台湾『中国時報』9月9日》
新刊紹介
台湾
日本統治時代の歴史遺産を歩く
片倉佳史 著
今なお台湾には大小さまざまな日本時代の建造物、遺構が残る。総統府(旧総督府)のように現在立派に使用されているもの、あるいは公園の片隅に佇む石灯龍や鳥居など。本書はそれらを網羅しており、百件に及ぶ官庁建築、神社遺跡、駅舎、石碑、校舎などを写真付きで解説している。さらに本書では、各ポイントへのアクセスデータが付けられており、この本を片手にこれらの遺構を訪ね歩けば、そこには日本人が台湾に残した建造物をめぐるドラマが感じられ、奥深い台湾の歴史を体感することができるはずだ。
著者の片倉氏は、台湾に残る日本時代を探し求めるカメラマンとして知られ、すでに台湾で『台湾日治時代遺跡』と『台湾土地・日本表情~日治時代遺跡紀行』を上梓しており、本書は貴重な日本語版である。
お知らせ
国慶節関連行事
●東京
日 時 10月10日(日)
①慶祝大会:午前10時~11時30分
主催・問合せ 中華民国留日東京華僑総会(TEL: 03-3541-7481)
②園遊大会:午前11時30分~午後3時30分
主催・問合せ 中華民国留日東京同学会(TEL:03-3444-8725)
会 場 東京中華学校
●横浜
日 時 10月10日(日)
①中国芸能演技(中華学院校庭にて、民族舞踊、獅子舞など):正午~午後2時
②祝賀パレード(約一時間かけて中華街をパレード):午後2時55分~4時5分
③祝賀獅子舞(中華街全域を獅子舞が練り歩く):午後4時30分~8時
主催・問合せ 横浜華僑各界慶祝双十国慶大会委員会
( TEL: 045-681-2114)
http://kakyonet.com/
春 夏 秋 冬
先日、本誌編集部に「台湾の三戦とは何ですか」と質問の電話がかかってきた。本コラムが電話口に出て、まずそれは「台湾の三戦」ではなく「中国が台湾に仕掛けようとしている三戦です」と訂正させていただいてから説明に入った。説明し終わると、質問の主は心配そうに「台湾は本当に大丈夫ですか」と訊いてきた。心配なのは分かるが、これは台湾のみの問題ではなく、日本の将来にとっても重大な問題なのだ。
陳水扁総統は8月中旬に台北で開催された第2回「民主太平洋大会」での挨拶の中で、中国の台湾に対する軍事的恫喝が東アジア最大の不安定要素になっていることを指摘し「さらに注意すべきことは、中国が最近、積極的に心理戦、世論戦、法律戦という、いわゆる『三戦』の推進を検討していることだ」と述べ、これらは自由社会の弱点を巧みに突き、相手方を崩壊させようとするものであることを説明した。
言うまでもなく、心理戦とは「文攻武嚇」などで台湾社会に心理的な動揺を起こさせ、内部対立を起こさせようとするものだ。世論戦は「血の繋がり」や「同一の文化」、「祖国」などを喧伝し、台湾の自主性を崩壊させようとするものである。いずれもすでに進行している。この心理戦と世論戦は相反するものだが、今後とも中国はこれらを巧みに使い分けて来ることだろう。
次に法律戦だが、いままさに中国はこれを進めようとしているのだ。これが表面化すれば、台湾海峡の緊張は一挙に高まることは間違いない。これによって中国は、自己の国家エゴからますますアジアの平和を突き崩そうとする元凶であることを、自ら鮮明にすることになる。これについては本誌先週号の「アジアの平和に有害な中国の法律戦」をもう一度見ていただきたい。
陳総統は9月2日、訪問中のベリーズで随行記者団と茶話会を開き、中国が「国家統一法」の制定を進めていることに言及し「統一法は武力を用いて台湾海峡平和の現状を打ち破ることを意図したもの」と論じた。まさにその通りで、同法は台湾への武力侵攻を明確に規定し、抵抗する者は「百年にわたって訴追する」と、台湾人への威嚇を込めた居丈高な侵略戦争推進法なのだ。
万が一、台湾の民心が動揺し、台湾と台湾海峡の現状が変更された時、日本の国益はどうなるだろう。日本の近海には中国の潜水艦が今以上に出没し、それよりも日本のシーレーンを中国が押さえているのだ。
(K)