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  台湾週報2162号(2004.10.10) - 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan :::
主要ニュース
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台湾週報2162号(2004.10.10)

双十国慶節祝辞 台北駐日経済文化代表処代表 許 世楷

 ●国慶節の意義とは何か 

 本日十月十日、慶祝すべき双十国慶節にあたり、まず強調しておきたいのは、現在台湾と中国は互いに異なった道を歩んでおり、われわれ台湾は世界発展の本流の中に立っているということです。 

 今日の台湾は、自由、民主、人権という世界の普遍的な潮流の中に立っておりますが、中国は依然として共産党による一党独裁の道を改めようとせず、反自由、反民主の国であり続けているということです。台湾は世界発展の本流の中に立っておりますが、ソ連が崩壊した今日なお、中国、北朝鮮、ベトナム、キューバのみが共産主義体制を解いておりません。これは世界に対する逆流と言わねばならず、いずれこれらの体制は変化することになると思います。 

 現時点においては、中国は強大な軍事力を保持しており、あるいはそのように見えるため、われわれは時にはそれに押し潰されそうになり、また挫折や衝撃を味わうかもしれません。しかしそれは短期的なものであり、世界の歴史から見れば、流れに逆行する勢力は必ず頓挫し、崩壊します。われわれの国慶節では、このことを最も強調すべきであり、またそれへの自信を国慶節において深めるべきであります。

 ●憲政改革に向けて 

 われわれはこの民主主義体制を一層強化し、磐石のものとしなければなりません。そのため陳総統を中心とするわが政府は、台湾の背丈に合った憲法を制定し、徹底した憲政改革を推進しようとしております。しかし日本や米国は、それが中国を刺激するのではないかと懸念しております。 

 この懸念についてですが、台湾はすでに新たな時代に入っており、当然国の基本法である憲法は、かつて南京で制定され中国全体を対象とした骨組みではなく、今日の台湾を対象とした憲法に改めようというのが新憲法制定の主旨であり、これは台湾国民に当然あるべき基本的権利でもあります。つまりわれわれの憲政改革とは、磐石の民主体制を築き、台湾国民が一層の自由、民主、人権を享受できるようにしようとするものなのです。この点を、日米など関係各国に深く理解していただきたいと存じております。 

●重要な日本との関係 

 そこで日本の皆様に最も強く伝えたいのは、台湾の憲政改革の真意を理解していただいた上で、両国の関係を一層強化したいとわれわれは願っているという点です。台湾が確たる民主化に向けて変化している今日、体制を同じくする台日両国は、友好的な信頼関係をさらに緊密にしていくべきだと思います。 

 そのためには、たとえば国民相互による人的交流の拡大も非常に重要なものとなります。海外から日本を訪れる観光客の二〇%が台湾からであり、その範囲はいまや人気スポットの北海道や京都にとどまらず、仙台から日本海側の石川県、瀬戸内地方、九州にまで広がっております。一方、台湾に来られる観光客の内、断然多く常にトップを占めているのが日本からの方々です。この交流をスムーズに行うため、台湾はすでに日本に対して一カ月のノービザ制度を実施しております。もし相互主義によって日本も台湾に対し同様の措置をとったなら、双方国民の直接的接触による相互理解は一層深まるものと確信いたします。 

 最近、日本も台湾に対し修学旅行生を対象に、ビザ発給手続きに関する大幅緩和の措置をとるようになりましたが、さらに一歩進んで台湾同様のノービザ制度まで進め、両国民の相互理解に一層の便宜を図っていただけるよう希望しております。 

●台湾新幹線は台日関係を象徴 

 一般に台湾新幹線といわれているわが国の超高速鉄道が、来年いよいよ開通いたします。これは日本にとって重要な輸出プロジェクトの一つであり、台湾にとっては、社会に一大変化をもたらすものです。日本から新幹線の車輌を購入し、またその技術を導入することによって、台湾の北と南が一日の生活圏へと変化するのです。これは、台湾の社会生活、経済活動、地域再開発に絶大な変化をもたらすものと言わねばなりません。 

 この新幹線につきましては、当初フランスを中心とした欧州連合からの導入がほぼ決定していたのですが、最終的には日本の技術に対する信頼感と、日本との関係を一層緊密化させたいとの意思により、日本への発注に変更したという経緯があります。この流れは台日両国の関係を象徴するものであり、こうした努力の積み重ねによって、やがては両国関係のレベルアップを進め、政府間交渉がないという現在の変則的な関係を脱し、正常な関係へと発展させていきたいと願っております。 

 ●必要な両岸関係の安定 

 また台湾にとって必要なものに、両岸関係の安定というものがあります。これは台湾のみならず、日本を含む東アジア全体の平和と安定にとって必要なものであります。こうした中に、中国は常に武力をちらつかせ、今日の安定を突き崩そうとしておりますが、これほど世界にとって危険なことはありません。

 さきほど申し上げました通り、台湾の憲政改革が中国を刺激すると日本や米国は懸念しておられますが、台湾にとっては、現状に合わないものは変えて行かなければ生存そのものが危うくなるのであり、生存するためには不都合なものは改善して行かねばならないのであります。 

 成熟した民主制度による台湾が安定してこそ、中国と危険を回避するための話し合いも進められ、日本の国益に最も合致するのであります。過去の歴史を見るまでもなく、何事も一方的なエゴや押し付けでは問題は解決されず、危険を増幅するばかりであります。 

●大事な在日僑胞の役割 

 以上のような対日関係、両岸関係を促進するには、在日僑胞の皆様の力が非常に重要なものとなってまいります。台湾と日本は、自由、民主、人権の尊重において、共通の価値観を持っております。同時にそれは世界の主流でもあり、在日僑胞の方々には、わが国の政府と共に世界の主流に乗り、世界普遍的な価値観により、一層のご支援を賜りたいと存じます。また、こうした価値観を持つことは、観念を同じくする台湾にアイデンティティーを持つことでもあると確信しております。 

 最後になりましたが、世界の平和とアジアの安定を願いますとともに、台日関係が一層強化されることを希望し、さらに皆様方の日々ご健康でご活躍されますことを衷心より祈念させていただきます。  
  (完)

憲法追加修正条文の改正部分一覧 
立法院公告 二〇〇四年八月二十六日

 現行の「中華民国憲法」は一九九一年五月から九七年七月まで四回にわたって修正され「追加修正条文」が付け加えられてきたが、本年八月二十三日にこの「追加修正条文」の再修正ならびに追加案が立法院を通過した(本誌二一五八号参照)。以下は修正・追加された部分の全文である。 

一、中華民国憲法追加修正条文第一条、第二条、第四条、第五条、第八条の修正条文、および追加第十二条の条文: 

 第一条 中華民国自由地区の選挙民は、立法院(国会)が提示した憲法修正案、領土変更案に対して、公告から半年を経てより三カ月以内に投票によって複決(賛否決定)しなければならず、憲法第四条および第百七十四条の規定は適用されない。

 憲法第二十五条から第三十四条、および第百三十五条の規定は適用を停止する。
 

 第二条 正副総統は中華民国自由地区の全国民が直接選挙でこれを選出し、一九九六年の第九代正副総統より選挙を実施する。正副総統候補は連名で登記し、票はその一組に投じられ、得票の最も多い一組を当選とする。国外在住の中華民国自由地区国民の帰国による投票権行使は、これを法律で定める。

 総統が、行政院院長および憲法によって立法院の同意を経て任命した人員の任免および立法院の解散命令を発布するに際し、行政院院長の副署を必要とせず、憲法第三十七条の規定は適用されない。

 総統は、国家あるいは国民が緊急危難に遭遇するのを防ぎ、もしくは財政経済上の重大事に対応するため、行政院会議(閣議)の決議を経て緊急命令を発布することができ、必要な措置を取るため、憲法第四十三条の制限を受けない。ただし、命令発布より十日以内に立法院に送付して追認を受けなければならず、もし立法院が不同意の場合、緊急命令はただちに失効する。

 総統は国家の安全に関する重大方針を決定するため、国家安全会議および所属の安全局を設置することができ、その組織は法律をもってこれを定める。

 総統は、立法院において行政院院長に対する不信任案が通過してより十日以内に、立法院院長に諮問した後、立法院の解散を宣告することができる。ただし、戒厳令もしくは緊急命令の有効期間中においては、立法院の解散はできない。立法院の解散後六十日以内に立法委員選挙を実施しなければならず、選挙結果の確認より十日以内に立法院は院会(国会)を開き、その任期はこれより新たに起算される。

 正副総統の任期は四年とし、再選は一回のみとし、憲法第四十七条の規定は適用されない。

 副総統が欠けた場合、総統は三カ月以内に候補者を指名し、立法院が補欠選挙を行い、その任期は前任任期の満了までとする。

 正副総統が同時に欠けた場合、行政院長がその職務を代行し、本条第一項の規定により正副総統の補充選挙を実施し、その任期は前任任期の満了までとし、憲法第四十九条の関連規定は適用されない。

 正副総統の罷免案は、立法委員総数の四分の一以上の提議を経て、立法委員総数の三分の二以上の同意によって提出することができ、中華民国自由地区選挙民半数以上の投票を経て、有効投票総数の過半数が罷免に同意した場合に通過する。

 立法院が提出した正副総統の弾劾案は、司法院大法官(最高裁判事)に審理を要請し、憲法法廷の判決が成立した場合に、被弾劾者は即時解任される。 

 第四条 立法院立法委員(国会議員)は第七期より百十三人とし、任期は四年とし、再選は可能で、毎期の任期満了三カ月以内に、左記の規定によってこれを選出し、憲法第六十四条および第六十五条の制限は受けない。

一、自由地区直轄市(政令都市)、県市より七十三人、各県市より少なくとも一人。

二、自由地区平地先住民および山地先住民より各三人。

三、全国比例代表区および外国在留の国民より合計三十四人。

 前項第一款は各直轄市、県市の人口によって比例配分され、選挙人名簿の同数の選挙区からこれを選出する。第三款は政党名簿よりこれを投票選出し、百分の五以上の政党選挙票を得た政党が得票比率に従ってこれを選び、各政党当選者名簿の中において、女性が二分の一を下回ってはならない。

 立法院は毎年開会のおり、総統の国情報告を聴取することができる。

 立法院は総統により解散した後、新たに選出された立法委員が就任するまでは、休会と見なされる。

 中華民国の領土は、その固有の領域によるものとし、立法委員総数四分の一以上の提議を経て、立法委員総数の四分の三以上の出席により、出席委員の四分の三以上の決議により、領土変更案を提出し、ならびに公告より半年後に、中華民国自由地区選挙民の投票によって複決され、有効同意票が選挙民名簿総数の半数を越えなければ、これを変更することはできない。

 総統が立法院の解散後に緊急命令を発布した場合、立法院は三日以内に院会を開催し、開会より七日以内にこれを追認しなければならない。ただし、新任立法委員選挙投票日の後に発布された場合、新任立法委員は就任後にこれを追認しなければならない。もし立法院が不同意の場合、同緊急命令は即時失効する。

 立法院の正副総統に対する弾劾案は、立法委員総数の二分の一以上の提議を経て、立法委員総数の三分の二以上の決議を経た後、司法院大法官に審理を要請し、憲法第九十条、第百条および追加修正条文第七条第一項の関連規定は適用されない。

 立法委員は現行犯を除き、会期中に立法院の許可を経なければ逮捕もしくは拘禁されない。憲法第七十四条の規定は、適用を停止する。 

 第五条 司法院には大法官十五人を置き、その中の一人を院長、一人を副院長とし、総統が指名し、立法院の同意を経てこれを任命し、二〇〇三年より実施し、憲法第七十九条の規定は適用されない。司法院大法官は退官、転任者を除き、憲法第八十一条および法官(裁判官)終身職待遇に関する規定は適用されない。

 司法院大法官の任期は八年とし、期を分かたず、個別に計算し、再任はできない。ただし、正副院長を兼任した大法官は、任期の保障を受けない。

 二〇〇三年の総統指名による大法官で、その内の八名の大法官は正副院長を含め、任期を四年とし、その他の大法官の任期を八年とし、前項任期の規定は適用されない。

 司法院大法官は、憲法第七十八条の規定を除き、憲法法廷を組織して正副総統の弾劾および政党の違憲による解散事項を審理する。

 政党の目的もしくはその行為が、中華民国の存在あるいは自由民主の憲政秩序に危険または損害を及ぼす場合は違憲となす。

 司法院の提出した年度司法概算は、行政院において削減することはできないが、意見を付加し、中央政府総予算案に編入し、立法院の審議に付すことができる。 

 第八条 立法委員の報酬および待遇は、法律をもってこれを定めなければならない。年度ごとの調整を除き、報酬の単独増加あるいは待遇の規定は、次期より実施するものとする。 

 第十二条 憲法修改正は、立法院立法委員総数の四分の一以上の提議を経て、総数の四分の三以上の出席により、出席委員の四分の三以上の決議により、憲法修正案を提出し、ならびに公告より半年後に、中華民国自由地区選挙民の投票によって複決され、有効同意票が選挙民名簿総数の半数を越えた場合、これを通過とし、憲法第百七十四条の規定は適用されない。

二、公告期間:二〇〇四年八月二十六日より二〇〇五年二月二十六日まで。 
 (完)

陳水扁総統が国連特派記者団と会見 
台北とニューヨークをネットで結ぶ  

 陳水扁総統は九月十五日、台北の総統府とニューヨーク市内のホテルをインターネット回線で結び、国連記者協会(UNCA)の記者団と会見した。この会見は当初国連記者協会の要請で国連本部内で行われる予定であったが、中国の妨害工作に国連事務局が屈し、急遽場所が国連本部近くのホテルに移された。このため国連記者協会は国連事務局に対し「取材対象との接触を国連が禁じるのは遺憾」として抗議した。なお会見はロイター、AP、CNN、NHKなど世界二十カ国のメディアが参加し、今年も「台湾の国連参加」議案は総会で討議されないことになったものの、台湾の意志を明確に世界に示すものとなった。 

●陳水扁総統記者会見談話全文 

 十数年前、私は機会があって家内と国連本部ビルを訪れましたが、忘れ難いのは、国連の係員の方が、家内の足が不自由なのを見て、車椅子に乗ったまま優先的に参観できるように手配し、社会的弱者に対する尊重を示してくれたことです。私はこれによって、国連憲章がその第一章に掲げる原則に深く尊敬の念を抱くところとなりました。それは「平等と人民自決の原則を尊重し、同時に適切な方法によって人類の平和を強化し、国際関係の友好を促進する」というものです。 

 平和、尊重、平等、友好は、いずれも国連の根本的価値観となっており、国連が成立してより今日まで、世界と人類の重要な財産となっております。台湾は国際社会の一構成員として、国連が付与している義務を忠実に遂行しているばかりでなく、世界経済、平和の維持、人道支援、さらに民主の強化に不可欠な役割を果たしております。 

 台湾のように、自由と民主の国は、当然国際社会から正当で尊厳ある待遇を受けるべきであり、一年余前に中国大陸を発生地とするSARSがアジアを席巻した際に、台湾国民のみが国際医療体系から省みられなかったというようなことはあってはならないことです。台湾がWHOへのオブザーバー参加の活動を進めている時、中国の代表が「誰がおまえなど相手にするか」と発言したように、理に反した差別などあってはならないことです。 

 台湾のように、自由と民主の国が国連の「加盟国普遍化」の原則から洩れ、二千三百万国民が国際的な身分を得られず、「政治的に隔離」された国際遊牧民になることなどあってはならないことです。 

 国連総会開会に際し、マーシャル諸島など友好十五カ国の駐国連大使が八月十日に連名で、国連事務総長に台湾の国連加盟を受け入れるよう求める提議をしましたが、それは国連総会が台湾二千三百万国民の国連での代表権を認め、適切な措置を講じるよう求めたものです。 

 私はここで特に、第二七五八号決議は、単に中華人民共和国の国連および関連機関での代表権問題を処理したのみで、中華人民共和国に国連および関連機関において「台湾人民を代表する」権利を与えたものでないことを強調します。 

 台湾は台湾であり、「中国の代表権」を争うものではありません。台湾は三万六千平方キロメートルの国土を持ち、その政府はそこに住む二千三百万人を代表しているのです。 

 遺憾なことに、国連第二七五八号決議が台湾を国連から排除する理由に利用されていますが、それは台湾二千三百万国民から国連業務ならびに活動に参加する権利を剥奪するものであり、このことは「国連憲章」「世界人権宣言」さらにその他の国際人権規約に反するばかりでなく、国連が標榜する「加盟国普遍化」の原則に対する深刻な皮肉ともなっております。 

 今日の台湾は、十分な統治能力を持った政府、多元的な民主主義、人権保障の政治制度を有し、国民一人当たり所得は一万四千ドルに近く、外貨準備高は二千三百億ドルを越え、世界第十五位の貿易大国であり、国際社会および各国と有効な国際関係を保持しております。さらに台湾は二十五カ国の国連加盟国と正式な国交を持ち、WTOをはじめとする多くの国際機関の正式メンバーとなっています。 

 また、世界平和と国際秩序を維持する任務において、台湾は積極的に建設的な役割を担っています。国際反テロ行動から人道支援まで、また両岸の和解からアジア太平洋地域の安定まで、台湾の努力は国際社会が十分に知るところであります。今年の八月末に私はハワイに立ち寄った際、特に真珠湾を参観しました。このとき私は事前に、九月九日に予定していた漢光軍事演習の中止を発表し、台湾海峡平和への善意の表明としました。 

 真珠湾の歴史は、われわれに戦争と平和を示す厳粛な鏡となっております。民主主義国が基本的な防衛力を保持することは必要事項に属するものであり、特に反民主主義国からの絶え間ない軍事的脅威を明確に受けている台湾にとっては、なおさら自己の防衛力を高めねばなりません。ただし私は、最終的には平和こそ人類の永続的発展の最良の手段であり、民主主義こそ安定と平和をもたらす万能薬だと信じております。 

 私は本年五月二十日、再選を得ての就任演説の中で、国内与野党と社会各界から成る「両岸平和発展委員会」を組織し、「両岸平和発展綱領」を策定し、共同で両岸の平和安定と永続的発展の新関係を促進することを厳粛に表明しました。ここに国連が台湾を受け入れたなら、必ずや将来的に「両岸平和安定発展構造」に代わって最も効果的な国際監督機関を提供するものとなり、台湾海峡の平和、さらにアジア太平洋の安定に決定的な作用を及ぼすようになるはずです。 

 私は北京当局に、台湾が国連加盟を推進する意図は、中華人民共和国の国連における議席に挑戦するものでないことを呼びかけます。北京の指導者は、ドイツが統一する前には東西両ドイツが共に国連に加盟し、韓国と北朝鮮も現在国連加盟国となっており、双方共に朝鮮半島の統一を求めていることを認識しなければなりません。 

 このことから、台湾国民の国連加盟を阻止するばかりでは、ただ台湾と中国を遠ざけるのみとなり、両国の国民感情を害し、両岸の関係正常化に何の助けにもなりません。台湾はすでに平和へのボールを投げております。私は、その他の国連加盟国が、二千三百万の台湾国民が国連に加盟する正当性と台湾国民の強い意志を直視し、本年の国連総会において「台湾の国連加盟」の提案を支持するよう強く要求します。 

 このほど閉幕しましたアテネ・オリンピックで、台湾の選手は歴史的な金二個、銀二個、銅一個を獲得しました。小国とはいえオリンピック参加国の中で三十一位の成績を収めたのは、すばらしいことだと思います。しかし台湾はオリンピックの関連会場においては、国際的現実の必要に迫られ、「中華台北」といった呼称の使用を余儀なくされ、正式な国名の「中華民国」もしくは「台湾」の名を使うことができません。オリンピックで金メダルを得た選手も、表彰台で自国の国歌を歌うことも国旗を見上げることもできないのです。これほど無念で遺憾なことはありません。この心情を理解し、国際社会のあらゆる構成国が台湾国民の境遇を理解し、台湾に強い支持を与えて下さることを希望します。 

 最後になりましたが、ジェンキンス国連記者協会会長および本日ご参加いただきましたマスコミ関係者の方々に、心より感謝の意を表明いたします。台湾国民の選挙によって再選された総統が世界に向け声を発することは、民主台湾の国連および国際社会に参加したいという意志が断じて萎縮するものでないことを象徴するものであります。将来は国連の場において皆様方とお会いできることを望んでおります。また私は、国連記者協会のご尽力により、台湾の国連参加をテーマに、中国の胡錦濤主席と公開討論をすることを望んでおります。(完)

【総統府 9月16日】

「青年国是会議」が開催
八項目について若者の視点からコンセンサスを提示  

 行政院青年轉導委員会の主催で九月十八、十九の両日、かつて国民大会議場として使われていた台北の中山楼で、全国から百六十人の青年が一堂に会し「青年国是会議」が開催された。 

 青年の国政に対する主張を政府に提言する場として開かれたもので、高等教育、政治改革、知的財産権を含む八つのテーマについて討論を行い、コンセンサスが提示された。 

 一日目の開会式には人権作家の柏楊氏を招き、冒頭で今から十四年前、国民大会の全面改選を求めて展開された「野百合学生運動」の当時の記録フィルムが上映された。「野百合学生運動」は八〇年代台湾の学生運動の一つで、当時学生を大学の主体とする「大学改革」と、学生と一般社会との関係を問い直す「社会の実践」、学生も公民であることを示した「民主の抗争」の三つが学生運動の中心だった。柏楊氏は「中華文化は、われわれが論理や推理を受け入れないことを証明しているのみならず、一つの問題に複数の回答があることを認めない」と指摘したうえで、会場の青年に向かって、日常生活のなかで学習し、みずから思考し、情緒をコントロールする理性的な思考の重要性を強調した。 

 この日討論されたテーマは、「大学の学費問題」「学校教育と就業現場の格差是正」「憲政改革および青年の公民権の推進」「都市と地方の教育格差の是正」「知的財産権保護と青年の学習権とのバランス」「青年の国際参加の推進」「政府の財政問題への対応」「国土開発と生態保護の協調」の八項目。参加した青年からは忌憚のない意見が次々と寄せられ、八つのテーマに対し百を超えるコンセンサスがまとまった。

 とくに参加者から意見の多かったのが教育問題と憲政改革についてで、教育については「私立大学の財務情況を監督するシステムと、公的信用のある機関による全国大学と専門学校への評価システムの確立を通し、不適切な学校を淘汰することが強く提言された。このほか大学の学費問題については、個人の負担減への努力、教育資源の学生に対する健全な補助制度、企業の私立大学への寄付金に対する公平な待遇が出された。 

 また、憲政改革については「総統制(大統領制)が実施されて五年が経ち、すでに社会に定着している。台湾の狭い国土において、総統制は行政効率を高めることができる」と評価しながらも、権利だけでなく責任を伴った総統制の確立が要望された。さらに立法委員の定数半減については「定数を半減しても、不適任な委員が淘汰されるとは限らない。重要なのは審議の効率を高めることで、定数を半減して民意を代表できるかどうか疑問だ」として、反対意見が大勢を占めた。 

 会議二日目の前半は、青年代表としてコミュニティー大学の推進者である林孝信氏と、中央研究院副研究員の范雲氏、行政院青年轉導委員会副主任委員の鄭麗君氏の三人と、陳総統との間で茶話会が行われ、それぞれの世代で関わった社会運動の歳月を振り返り、青年の国政参加の意義を語り合った。また後半は、陳総統はじめ関係閣僚が出席し、会議で示されたコンセンサスに対し、それぞれの立場から意見を述べた。このなかで教育問題について陳総統は、「大学の高額な学費は、学生の大学離れを引き起こす恐れがある」として、その重要性への認識を示した。游錫堃・行政院長は「今後毎年青年国是会議を開催し、会議の結論をまとめた報告書の意見に対し関連機関が一カ月以内に書面で回答すること、それらの内容について青年轉導委員会が追跡を行う」ことを表明した。 

《台北『自由時報』9月20日ほか》

ニュース

パラリンピックに呉総統夫人同行
ViP待遇で開会式に出席

 毎回五輪と同じ年に、同じ場所で開催される障害者対象のスポーツの祭典「パラリンピック」が、九月十八日、ギリシャのアテネで盛大に開幕した。

 開幕式には、台湾選手団とともにアテネ入りした呉淑珍・陳水扁総統夫人が、団長の身分で出席し、選手らをみずから激励した。

 不慮の事故で車椅子の生活を余儀なくされながらも、かねてから障害者の活動に積極的に参加している呉夫人は、今回選手らの求めに応じて団長としての同行を引き受けた。現地到着後、中国側からパラリンピック委員会に対し、呉夫人の団長としての権限を取り消すよう不当な圧力がかけられ、国内で抗議の声が高まったが、開幕式では呉夫人の座席は貴賓席の最前列一番目に設けられ、特別待遇での出席となった。

 夫人の団長としての身分については、開会式前の九月十六日、選手団随行顧問の黄志芳・総統府副秘書長がパラリンピック委員会側と協議をおこなっており、それによれば、国際パラリンピック協会はすでに、「呉夫人の選手団団長としての身分を尊重し、パラリンピックにおけるすべての活動に自由に参加する権利がある」との立場を明確にした。この知らせを受けた陳総統も、団長の身分取り消しについて選手らがパラリンピック委員会側に強く抗議し、こうした結果を引き出せたことを高く評価し、「台湾の尊厳と使命を守った」と称えた。

 呉淑珍夫人が開幕式に参加した意義について、黄志芳秘書長は「台湾のファーストレディが団長として、貴賓席でパラリンピック開幕式に出席するのは初めてのことである」と述べ、「開催期間中は、台湾の選手が競技で激戦を繰り広げる一方で、ファーストレディの呉淑珍夫人も貴賓席で台湾を代表してパラリンピックに参加し、選手を激励する」と語った。

 一国のファーストレディみずからが選手に同行し応援する姿は、選手の士気を大いに高め、また各国の選手団からも注目を集めた。
《台北『自由時報』9月18日》 

中国の人事は政策に影響なし
両岸の平和安定が依然課題

 中国でさきごろ開かれた第十六期中央委員会第四回総会で、江沢民が中央軍事委員会主席を退任し、胡錦濤に引き継がれるなど、人事再編がおこなわれたことについて、総統府、行政院と大陸委員会は九月十九日、それぞれコメントを発表した。

 呉釗燮・大陸委員会主任委員は「誰が対台政策を担当するにせよ、双方が平和、善意、和解の立場でともに両岸関係の平和安定を維持することを期待する」と強調した。

 また蘇貞昌・総統府秘書長は「台湾に対する中国の態度が大きく変わることはないだろう。両岸の平和維持のため、中国が台湾の民主化と民意を正視し、両岸の対話が再開することを願う」と述べた。

 一方、陳其邁・行政院スポークスマンは「江沢民は今後も一定の影響力を持つと見られ、短期間内には、胡錦濤が対台政策の全主導権を握る可能性は低い」と述べ、過度の期待はすべきでないとの見方を明らかにした。
《台北『中国時報』9月20日》 

九・二一復興作業が九割完了
中部大地震発生から五年

 一九九九年九月二十一日に発生した中部大地震から丸五年が経過したことから、陳其邁・行政院スポークスマンは九月二十一日、復興活動の進捗状況について発表した。それによれば、二〇〇四年八月までに、再建予算の八三%が消化され、復興計画の対象となった一万七千八百九十四件のうち、一万六千九百七十五件がすでに完了し、復興率は九四・八六%に達した。

 陳スポークスマンは「中部大地震の復興活動は、被災者救援および緊急移転期、生活機能およびインフラ建設期など、五つの段階に分けて推進してきたが、その成果は衆目の認めるところである」と述べた。また、今後の再建活動について「地震の発生がもたらした地盤の緩みによって派生する山崩れ、地滑り、土石流などの災害に対応するため、大甲、大安、烏渓、濁水渓の四大流域の河岸整備、および仮設住宅の後処理などの問題に重点を置く」と報告した。
【行政院新聞局 9月21日】

「雪山トンネル」が貫通
世界最大の難工事に注目集まる

 九月十六日、北部を横断する北宜高速道路の主要部分である雪山トンネルが、十三年二カ月にわたる工事を経て、ついに貫通した。トンネルの最終工程である東行線(東側トンネル)坑内でおこなわれた貫通式典には、陳水扁総統をはじめ、游錫堃・行政院長、林陵三・交通部長、劉守成・宜蘭県長らが出席し、世界最大の難工事と言われた雪山トンネルの貫通を祝した。 

●世界レベルのトンネル貫通 

 陳総統は「雪山トンネルの貫通は、われわれが大きな挑戦を克服したことを示しており、各関係者の実行力が、今ここに証明された。十三年二カ月の苦労が、ついに通過時間僅か十三分のトンネルを完成させた」と祝辞を述べた。さらに「二〇〇五年末に北宜高速道路の全線が開通すれば、北部台湾の動脈となるだろう。さらに政府が推進中の『一日生活圏計画』とタイアップし、今後建設される新幹線と高速道路を利用することによって、朝は高雄へ、午後は宜蘭にというように、台湾国内を数時間で自由に行き来できるようになる」と語り、「雪山トンネルの建設は、すでに世界的レベルの工事として、大英百科全書に掲載されており、この貫通は世界の専門家の注目を集めることとなった」と、関係者の功績を称えた。 

 游行政院長も挨拶のなかで、「雪山トンネルの建設は、さきのアテネ五輪の金メダル同様、非常に難度の高いものであった」と述べ、「今日ここに貫通式典を執り行い、作業員や関係者の苦労を労い、激励するとともに、この偉業を台北市民に伝えることは、大きな意義がある」と強調した。 

●十三年二カ月の難工事 

 北宜高速道路は、当初、台北市南港と宜蘭を結ぶ道路として「南宜道路」と称され、高速道路よりもランクの低い「快速道路」の扱いとなっていたが、宜蘭市民の強い要求により、一九九〇年八月に名称変更され、正式に「北宜高速道路」と命名された。全長三十一キロ、総工費六百一億元(約千八百億円)、このうちもっとも難しい工程とされた雪山トンネルは全長十二・九キロで、資材や岩屑の運搬や通風などを兼ねる導坑と、主坑の東行線(主トンネル部分の東側)および西行線(同西側)の三カ所に分けて工事が進められた。 

 トンネル建設地はもともと複雑な地質であったため、導坑は一九九一年七月着工し二〇〇三年十月に貫通、主坑は一九九三年七月着工後、西行線が今年三月、東行線がこの九月に貫通し、十三年二カ月をかけて、トンネル全工程が貫通した。 

●行く手を阻む岩盤と水脈 

 かかった歳月が示す通り、これまでの道のりは、非常に険しいものだった。雪山トンネルの工事には、国内で初めてTBM(Tunnel Boring Machine、岩盤の掘削機械。硬く均質な岩盤掘削に適していると言われる)が導入されたが、導坑を掘り始めて一・三五キロ進んだところで硬い断層にぶつかり、約十億元(約三十億円)相当のTBMが破壊され、工事は二十カ月近くも中断した。 

 「二、三百メートル前進するたびに落盤や出水があり、どこの保険会社にかけあっても、工事の災害保険に加入させてくれるところはなかった」と、交通部国道新建工程局(以下、国工局)の曾大仁・副総工程司は、当時の苦労を振り返る。 

 トンネル工事のスピードアップを図るため、国工局は世界でも先例のない深さ約二、三十~六十七メートルの竪坑を三本掘って作業スペースを拡大したが、これも作業員にとっては危険な工事となった。この際、作業員には厳格なアルコール測定が課せられ、〇・一ミリリットルの酒気帯びで罰金千元(約三千円)、〇・二ミリリットルで現場に立ち入り禁止とされた。これは通常の酒気帯び運転を取り締まる基準(〇・二五ミリリットル)より厳しいものだった。

 トンネル全工程に、断層と亀裂帯が百四カ所、水脈が三十六カ所もあり、工事期間中、落盤六十四回、掘削機停止が二十六回、大出水にも見舞われ、十一人が命を落とした。

●台湾の偉業は世界から注目 

 今回雪山トンネルが貫通したことで、二〇〇五年末には北宜高速道路の全線開通が確実となった。これが完成すれば、地殻プレートの活動地帯と中央山脈を通過する台湾で初めての高速道路となる。景観のすばらしさはもちろんのこと、高度も国内最高となり、このうち烏塗渓橋下の高架橋の高さは六十五メートル、約二十二階建てビルに相当する高さだ。こうした数々の特長は、まさに費やされた多くの時間と、人々の汗と血の結晶と言えるだろう。 

 林陵三・交通部長は九月十三日、トンネル貫通式に先立ちコメントし、「雪山トンネルは各国から視察に来た専門家も認めた有数の難工事である。台湾の工事技術はついにこの難業を突破した」と述べた。林部長はまた「雪山トンネルは日本の青函海底トンネル、英仏海底鉄道トンネルなどに続く世界で五番目に長いトンネルである。当初これの開通には百年以上かかると予測した専門家もいたほどだが、関係者の努力のもと、この任務をここまで遂行することができた」と語った。 

●事故発生時の緊急避難路も完備 

 世界で五番目、アジア最長を誇る雪山トンネルの建設にあたっては、避難経路の確保が重要なポイントであった。これまでのトンネル事故には、一九七五年に、大阪の長さ約七キロにわたるトンネル内で二台の車が衝突、炎上し、消防車が入れず百七十台の車が犠牲となった事故や、二〇〇一年に、全長約十六キロのスイスのサン・ゴッタルドトンネルで、二日にわたり火災が発生し、十一人の死者を出した事故などがある。雪山トンネルの建設では、これらを教訓に事故発生時の避難システム構築に重点が置かれた。 

 国道新建工程局によれば、トンネル内には三百五十メートル毎に避難坑が、また一・四キロ毎に横に抜ける車輌専用坑が設けられた。トンネル内の避難経路は歩行者用二十八本、車輌用が八本ある。事故や火災発生時には、徒歩五分で避難路に到着し、すみやかにトンネルの外へ脱出できる。さらに、これらの避難坑はトンネルの下に平行に走る導坑に通じているが、ここは避難路のほかに、救急車の通行にも使える。導坑には独立した通風、電力システムが完備されているため、トンネル内で発生した事故の影響を受けることはない。 

 このほか、五十メートルごとに緊急通報ボタン、百メートルごとに消火栓と消火器が設置され、また百七十五メートルごとにテレビと放送システムが設置されている。一旦事故が発生すれば、中央制御センターが感知し、坑内放送で利用者に状況を通知する仕組みだ。トンネル内での携帯電話利用や自動消火システムの導入も検討中だという。 

 一方、四十数年にわたり台湾の道路建設に携わり、中華民国道路協会理事長も勤めた陳世圯・元交通部長代理は「長いトンネルは、建設後の維持と経営がきわめて難しい。トンネル内の空気を常に清浄に保つには、二十四時間体制で電力を使用するため、独自の発電システムも必要だ」と今後の課題を指摘している。
《台北『聯合報』9月13日ほか》

台湾観光年
九・二一地震教育園区がオープン

 一九九九年九月二十一日午前一時四十七分、マグニチュード7.3の大地震が台湾中部を襲い、二千四百人余りの尊い生命が奪われた。倒半壊した住宅は三万八千戸、住民の財産の損害額は三千六百億元(約一兆二千億円)にのぼった。 

 その大地震から五年目の今年、徐々に遠ざかる人びとの記憶を呼び起こし、あらためて犠牲者を偲ぶとともに、大自然への畏怖と理解を深め、防災知識と救助活動の強化につなげようと、大地震の発生した九月二十一日、震災地となった台中県霧峰郷の光復中学校運動場跡地に「九・二一地震教育園区」がオープンした。この日行われた記念式典には杜正勝・教育部長、黄仲生・台中県長をはじめ、日本から阪神・淡路大震災の被災者の代表も駆けつけ、オープンを祝った。 

 地震直後、教育部と行政院九・二一再建委員会は専門家とともに各地の震災地を視察し、その結果、断層や河床の隆起、校舎の倒壊状況が顕著に現われている場所として台中県霧峰郷の光復中学校跡地を選定し、地震の爪痕をそのまま保存し、生きた教材として公開する記念館をこの地に建設することを決めた。 

 こうして完成した「九・二一地震教育園区」は国立自然科学博物館の所属施設となり、「映像館」と「車籠埔断層保存館」からなっている。このうち「車籠埔断層保存館」は、地震で形成された断層の現場を保存、展示し、さまざまな角度から九・二一大地震を検証すると同時に、地震の起こる仕組みや台湾の地震対策の現状について解説している。以下に、その主な内容を紹介する。 

①断層現場:九・二一大地震によって全長百五キロメートルの断層が形成された。南は南投県竹山鎮桶頭から北は台中県豊原一帯に伸び、その後東に折れて台中県和平郷雙崎付近まで達した。断層の高さは数十センチから数メートルとまちまちで、鋸状に伸びた断層は、もとの車籠埔断層が複数回の振動でずれてできたものと見られている。光復中学校の運動場には二・五メートルの逆断層が形成され、東側に盛り上がった形になっている。 

②展示区:「地震の起こる仕組み」(地球の構造から陸地の形成まで詳しく解説)。「車籠埔断層の真実」(断層の地底までを再現し、九・二一大地震の真実を探る)。「地震研究の現状」(中央気象局が特別に設置した「台湾地震即表示システム」を紹介)。「地震を体験」(地震の伝わり方、震源地の確定方法、地震の規模、断層の種類などについて解説)。「光復中学校跡地の断層分析」(とくに断層活動が顕著に見られたこの地の特徴を分析)。「地震との共生」(台湾の地震速報システムや車籠埔断層の地底探索計画について紹介)。 

 また、「映像館」は光復中学校の体育館を再利用し、震災で亡くなった人びとへの追悼、復興、再生への希望を象徴する施設となっている。

 「九・二一地震教育園区」では今後光復中学校の北教室と西廊下、専門教室の保存工事を行い、南教室を防災教室に開放することを計画している。それらは来年に完成する予定だ。 

●地震教育園区:http://info.nmns.edu.tw/921emt

《『地震教育園区』ウェブサイト参照》

東京国際映画祭に台湾映画が三本上映
中堅と二人の新人監督の新作、話題作に注目

 日本映画の発信と、世界とくにアジアの優れた映画の紹介で定評のある東京国際映画祭。十七回目の今年は会場を渋谷のBunkamuraに新たに六本木ヒルズを加え、二つの会場で十月二十三日~三十一日催される。 

 同映画祭には、ほぼ毎年台湾の作品もノミネートされ、今年もメインの「コンペティション」部門に一本、「アジアの風」部門に二本の、合わせて三本が上映される。

 今年コンペティシヨン部門には三百本もの作品がエントリーされ、その中から選ばれた十五本のうちの一本が鄭文堂監督の『時の流れの中で』(原題:経過)だ。鄭監督は「夢幻部落」(2002年)で二〇〇二年台湾の金馬奨「最優秀台湾映画奨」と同年ベネチア映画祭「批評家週間最優秀新人賞」を受賞するなど、世界的に活躍の場を広げている実力派だ。今回の『時の流れの中で』はタイトルが示すように、人生の時の流れを静かに見つめた作品で、この作品をノミネートした同映画祭の吉田佳代ディレクターは「生きるということは、ひとつひとつのプロセスだということを、静謐な世界観で台湾の作家が語ってくれる。アジア人であることが誇りに思える映画」と絶賛している。実力派の二枚目俳優としていまや台湾映画界に欠かせない戴立忍(レオン・ダイ・リーレン)と、『藍色大門』で爽やかな青春像を演じた桂綸鎂(グイ・ルンメイ)が主演しているのも、この映画の見所だ。 

 一方、「アジアの風」部門で上映される二本の台湾映画は陳正道監督の『狂放』(原題:狂放)と徐輔軍監督の『夢遊ハワイ』(原題:夢遊夏威夷)。陳監督は今年弱冠二十三歳で、高校時代からシナリオを書き始め、二〇〇二年に初めての短編映画『距離』を制作し、いきなり台湾の金馬奨、台北電影奨にノミネートされた期待の新人監督だ。作品の『狂放』は十六ミリで撮影されており、今年のベネチア映画祭「批評家週間」部門で入選を果たした。

徐監督は、陳玉勲氏や徐小明氏のもとで助監督を務め、今回の『夢遊ハワイ』が監督デビュー作品。昨年書き下ろしたテレビドラマ「新芽」が金馬奨にノミネートされるなど、こちらも有望の新人監督だ。 

【作品と上映日時】

※注:会場は渋谷が★、六本木が◆

▼『時の流れの中で』(原題:経過)

内容:絵と書に情熱を傾ける若き研究者補佐のチン、ナショナルパレスミュージアムで働き史書の執筆を担当するタンハン、歴史的な書を求めて日本から渡ってきたタオ。台湾で出会ったこの三人が、誰もが抱える人生における「欠けた場所」を捜し求める。

上映日時:◆23日午後1時10分/◆24日午後6時40分/◆26日午後7時10分/◆29日午前9時40分 

▼『夢遊ハワイ』(原題:夢遊夏威夷)

内容:不意に休暇を与えられた兵役満了間近の青年が享受するはずだった「夢のような休日」。しかしそこには別の任務が待ち受けていた…。主演は台湾の超人気アイドル・楊祐寧(トニー・ヤン)、黄鴻升。

 上映日時:★26日午後4時/◆28日午後2時20分/◆29日午前1時(深夜) 

▼『狂放』(原題:狂放)

内容:若い男女三人が抱える孤独、愛、挫折を炙り出した作品。三角関係、同性愛、バイセクシャルなど、現代の性と愛を見つめる。主演は台湾のアイドルユニット「丸子」のメンバー・黄鴻升、許安安。

 上映日時:★28日午後1時40分/★29日午後7時10分 

●問合先:ハローダイヤル(03-5777-8600または東京国際映画祭HP:http://www.tiff-jp.net

台湾地名ものがたり 9

 昨年七月より今年一月まで、台北や台南、高雄、北港など、台湾の歴史に欠かせない都市の地名の由来を八回にわたって紹介し、一段落ついたところで中断していましたが、ここに再開し、今後はほぼ隔週の割で連載する予定です。前回は歴史の流れに沿って台南から紹介しましたが、今回は北から順に南へ下がって行く予定です。あらためてご愛読下されば幸いに存じます。

 ●カバランが宜蘭に

 台湾の歴史はまさに開発の歴史と言える。大陸から漢人移住民が渡ってきた概略については、この連載の1と2の「台湾」の地名由来で述べたが、北部に入植者が増えはじめたのは南部より遅く、さらに太平洋岸の東北部に漢人が入ったのはさらに後だった。

 宜蘭は現在では蘭陽平原の中心都市であるが、この平原の地形は背後に雪山山脈と中央山脈の山並みが迫り、前面には太平洋が広がり、二つの山脈の間から流れ出た川(蘭陽渓)が土砂を運んで出来上がった三角州である。したがって土地は肥沃とはいえ、周囲とは隔絶された地形であった。

 当然そこには、先住民である平埔族がいくつもの集落を形成し、漁労と狩猟の生活を送っていた。その種族をカバラン(Kavalan)族と言った。そこに漢人移住民が入植しはじめたのは清の嘉慶年間(一七九六~)で、日本では江戸時代の寛政年間、十一代将軍家斉の時代である。

 各地の多くがそうであるように、もちろん漢人の入植は先住民との土地争いとなり、血涙の歴史が展開された。漢人入植者たちはこの三角州の土地を、カバラン族の名に「◆(口+葛)瑪蘭」の漢字をあて、それが入植者たちにとっては、この土地を指す言葉となった。そこに清朝の台湾府が嘉慶十七年(一八一二)に◆(口+葛)瑪蘭庁を開設し、せめて名前だけは優雅にと「よろしい」との義(いみ)がある「宜」の字を冠し、◆(口+葛)瑪蘭の蘭だけを残して「宜蘭」と改名したのであった。その後カバラン族は山地に追いやられ、移住民の開拓地は周辺の頭城、礁渓へと拡大していった。

 ちなみに頭城の地名は漢人がカバラン族との土地争奪戦のなかで砦を築いたのが由来であり、礁渓の旧名は旱渓である。

 ●ニワトリの籠だった基隆

 基隆は台湾北部の良港で、雨の多いことから別名「雨の港」とも呼ばれている。

 この地の地名由来については数種類あり、まず良好な港湾を形成するように突き出た山(基隆山)がニワトリの籠に似ていることから、船乗りたちがこの港を「鶏籠」と呼ぶようになったというものである。第二は、山ではなく一方だけが海に面して港口を開き、それがニワトリの籠に似ているからだという説である。三つ目は、その地に住んでいた先住民がケタガラン(Ketagalan)族という部族名であったことから、それを縮めた「Ke-lan」というのが語源だとする説である。

 いずれの説が本当かは定かでないが、はっきりしているのは清朝の光緒元年(一八七五)、清朝官僚の沈葆禎が台湾海防事務に就任し、台湾の開発を積極的に進めはじめたとき、「鶏籠」の発音を勘案し「基地隆盛」を願い「基隆」と改名したことである。

 その他にも、十七世紀に南部に入植したオランダ人に対抗し、スペイン人が北部に入ったとき、かれらは港湾の出入り口に城砦を築いてサンサルバドル城と命名し、それが一時地名となった。その後にオランダ人が攻撃をかけ、スペイン人が撤退(一六四三年)してからはビクトリアと改名された。

 鄭成功が台湾に入ってからは、この地に守備兵を置いたが開発には至らず、鶏籠にも漢人入植者が増え、本格的に開発が始まるのは清の康煕二十二年(一六八三)、鄭氏政権が滅亡してからである。


展評「台湾当代墨彩画巨匠展」によせて
アートコンサルタント 森美根子

 今年の八月十一日、台湾の水墨画家の展覧会「台湾当代墨彩画巨匠展」が、京都文化博物館で開催された。(会期は十五日まで) 

 本展を主催した「長河雅集」は、国立台湾師範大学と国立台湾芸術大学の教授陣を含む十名の画家で組織されたグループで、九十六年に結成されて以来、米国、中南米、欧州、そして大陸で幅広い活動を展開し、今回、初の日本展を迎えることとなった。

 初日、会場において、展覧会の運営に携わった水墨画家・李鴻儒氏(台中草屯出身、大阪在住)の、みごとな筆さばきによる山水画の公開制作が披露された。出展された作品三十八点を展観すると、その作風はおおむね、伝統継承派、伝統的技法に洋画的表現を取り入れ新感覚を盛り込む折衷派、現代絵画の理論を応用し新たな造形に取り組む現代派、の三つに大別される。ここに、主な作品 を紹介してみる。

 山間の庵の庭で柿の木がたわわに実る、晩秋の風情を繊細な筆墨で詩情ゆたかに描く李義弘作「小園秋色」。実るぶどうを、艶やかな色彩とのびのある筆致で瑞々しく描く蘇峰男作「満架奇珍」。線香のけむりが立ちこめる台北・龍山寺の境内を描く江明賢作「進香」。

 いずれの作も墨彩画(墨を基調として彩色した絵画)の妙味が余すところなく発揮され、観るものの心を惹きつけてやまない。特に、江明賢の「進香」は、墨の濃淡と彩色、とりわけ朱色を巧みに使って台湾最古の廟をドラマチックに描き上げている。本殿と境内の隅々には、苦難の歴史に耐えて生きた台湾人の汗と涙と祈りが染みついているようで、その力強い描写力に圧倒された。

 さてここで、台湾の水墨画の歴史を一瞥してみると、水墨画が国画という名称で台湾美術界に位置づけられたのは、戦後の国民党政権時に「中国画壇の三傑」溥儒・黄君璧・張大千が大陸から渡ってきたことにはじまる。だがその歴程は順風満帆ではなく、戦後初期、日治時代に日本画を修めた画家との間で絵画の定義について意見が対立し「国画論争」を展開。だが、十年とも三十年とも言われたこの論争が、台湾の水墨画を産む起爆剤となる。米国で隆盛した抽象表現主義が美術界を席巻した五、六十年代になると水墨画の現代化が進み、郷土主義が台頭する七十年代には素朴で土着的な画面が出現。そして飛躍的な経済成長を遂げた八十年代から民主化の時代を迎える九十年代以降に、台湾の南国風土と多元的文化を吸収した独自な画風が現れ、世界で注目される現代水墨画へと進展をとげた。

 本展の作家のなかで、現代水墨に属する二人の作品を紹介してみよう。そのひとりは、蟻、てんとう虫、小魚の群れを描き、人間社会の実相をうつしだす袁金塔。今回は、蛙とカブトムシを図案にした台湾の切手と、その生物が登場する中国の古典書、古代エジプトの壁画を左右対称に描いた作「古今対話」を発表している。

 いまひとりは、中国の古典絵画の現代版にいどむ異色の作家、羅青。自ら詩人でもある彼は自己の観念を墨に託そうとする。今回、出展された作品は、山水画の伝統的理論を解体し、自らの絵画言語で作品の再構築を試みた彼の代表作「高呼范寛」シリーズの一作。羅青は、北宋の范寛作「渓山行旅図」を題材にし、一筆一画、岩山の輪郭を鮮明に描画する范寛の画風を自らの作品のなかに取り込み、画家自身を投影した山水画を創りだす。

 会場に出展された作品はいずれも生命力に満ち、画面には四百年来したたかに異文化を吸収し消化してきた台湾人の柔軟かつ強靭な精神が息づいているように思われた。墨という文字は、黒の下に土と書いてあり、土は風土、自然を意味するが、作品の中に台湾人の血脈が流れているのを強く感じ、戦後五十九年、試行錯誤を重ねて台湾の水墨画が確立されたことを改めて知らされたことであった。

 会期中、国立台湾芸術大学の書画芸術学部、造形芸術研究所に在籍する生徒の作品もあわせて発表されたが、その力作群に、台湾水墨画の未来に期待感がつのった。

 最後に、本展にまつわるトピックをここに紹介する。このたび台湾美術界の大御所、謝里法氏が出品作家に同行して来日された。謝里法氏といえば、台湾の近代美術史「日據時代台湾美術運動史」を著した人物で、八十年代の米国において民主化運動を展開し、帰国後は美術家・美術史家・評論家として活躍する、台湾では名高い存在だ。

 その彼が、近年、研究者を招集し、台湾の二十三県史および各地方の美術発展史の編纂作業を開始。昨年十月来、行政院文化建設委員会のもと、国立台湾美術館の協力をえて「台湾美術地方発展史全集」全19巻を刊行中。彼が編纂を試みようとしたそもそもの動機は、三十代に執筆した先の「台湾美術運動史」の偏狭な歴史観や誤った記述の修正にあったという。とはいえ、創作者の視点にたち画家の人間像に迫る謝里法氏の数多くの著作は、彼の作品同様にヒューマニティーに満ち、文献重視の研究者の学術論文とは一線を画してきた。

 近年、台湾の美術界では近代美術史の再検証が急速に進められている。日治時代の貴重な写真をおりまぜながら、各地方の歴史や文化を紹介し、当地で活躍した台湾人作家の活動の全貌を網羅した本書は、研究者はもとより台湾を知る人のための、必見の書となるに違いない。(国立台湾美術館発行)  

 今年の夏、日本列島は猛烈な暑さに見舞われた。とくに盆地の京都は暑かった。だがそれにもまして、日台の文化交流のために、自費で本展を開催した台湾人画家の心意気は夏の暑さよりも熱く、心身ともに夏ばてぎみの筆者を奮い立たせたのだった。

著者紹介
森美根子(アートコンサルタント)

 平成八年、台北県立文化中心主催「台湾民族風情・立石 臣展」の運営に携わったのを契機に台湾近代美術史の研究を開始。その間、台湾人画家の紹介に努め、東京の区立美術館併設画廊で展覧会を開催。現在、アジアレポートに「台湾を愛した画家たち」を連載中。


資料紹介

『台湾歴史辞典』

 これまで台湾史ならびに台湾を研究するものにとって、最大の難所となっていたのが、まとまった歴史辞典がないことだった。だからちょっとした項目を調べるだけでも、あちこちの資料を漁り、それだけでけっこう時間を費やしてしまっていた。ところが今回、そうした煩わしさを一挙に解決してくれる辞書が今年七月に発刊された。『台湾歴史辞典』がそれだ。サイズはB5版の大きさで千三百七十五頁、収録数一万二千項目という本格的なものだ。 

 ページを開いてみて驚いた。台湾史のすべてがこの一冊に網羅され、まとめられているといった感じだ。しかも台湾開発の草創期から現代の十大建設まで、項目は台湾のすべての時代にまたがり、かつ人名辞典としても完璧だ。しかもイデオロギーに偏ったものはなく、すべてが客観的に記されている。したがって日本統治時代についてもきわめて細部にわたる項目、人物が紹介されている。 

 これだけ大掛かりで専門的なものは、採算面を考えればまず出版されないだろう。なるほど本書の企画は行政院文化建設委員会が、中央研究院、台湾大学、台湾師範大学、政治大学、台湾文学館などの学術機関と共同で進めたもので、構想に八年、編集に三年の歳月を費やしている。編纂の中心となった中央研究院の許雪姫・研究員はこの辞典について「これまでは清朝、日本統治時代、戦後と、各時代の台湾の歴史は研究されてきたが、歴史全体を研究するための工具書となるものがなかった。この『台湾歴史辞典』は、研究者にとって調査と研究に便利な格好のツールとなるはずだ」と語っている。その通りの大辞典である。本書の中から珍しい一項目を拾ってみよう。

〔豊臣秀吉高山国招諭文書〕: 「十六世紀末、豊臣秀吉は日本内部の動乱を平定した後、国力の海外拡張を計画し、朝鮮に出兵し、琉球に従属を促し、同時に高山国(台湾)にも従属を促す使者を遣わした。一五九三年十二月二十七日、使者は高山国招諭計画の書簡を携えて台湾に向かった。内容は古代中国の聖王による討伐の文書に似ており、まず当人の出生から書き、『母親が瑞なる夢を見、室内に光が満ち、衆人は驚き、この者が四海を平定し、異邦を臣服せしめると覚った。現在、四方が来朝し、朝鮮が臣服しないため派兵して征伐した後、和を求めてきた。琉球も年々来貢している。今、高山国に使者を派遣し、もし来朝せざる場合、これを征伐する』と記されていた。豊臣秀吉が高山国を従属させようとしたことは、明朝とフィリピンに割拠しているスペインの東アジア情勢に緊張をもたらし、スペインは先に台湾を占拠して日本の南下を防ごうと準備を進め、明朝も澎湖の防備を固め、日本が台湾を経て大陸沿海を侵すのを防ごうとした。この後しばらくして豊臣秀吉は死去し、日本の武力対外拡張は一段落し、東アジアは平静を回復し、スペインは台湾占領を取りやめ、明朝も東南沿海部の防衛を緩和した」 

 このように、日本と台湾の関係については、日本で発刊されている研究書よりも詳しい。 

 また五百頁にわたる別冊の付録には鄭氏政権時代、オランダ時代、日本時代、清朝時代の各官僚、郡主、知事、軍司令の歴代名簿、行政区設置や鉄道敷設の沿革、古跡紹介などが掲載され、史料的価値もきわめて高い。 

 本辞典は台湾の遠流出版社から定価三千元(約九千円)で出されているが、日本では市販されていないのが残念だ。だが東京・三田の台湾資料センター(℡03・3444・8724)に一冊が置かれており、研究者の方々の閲覧を是非お勧めしたい。
(本誌編集部 10月)

新刊紹介
『暗黒大陸 中国の真実』
ラルフ・タウンゼント 著
田中秀雄、先田賢紀智 訳

 著者は満州事変、上海事変の頃、中国に駐在した米国の外交官である。本書の出版は一九三三年で、中国人の真実を描きすぎたために、当時の米国政府は彼を「反米活動」の罪で逮捕、投獄した。まず著者は序文で「本書で中国と中国人について述べるのだが、内容がいかに過激であろうが、そのことについて謝罪するつもりはない。世の中には、不愉快に思われるかもしれないことは遠慮して極力書かないことを美徳とする方がおられる。私はそういう美徳を持ち合わせていない」と述べる。まさに全編がその通りの内容で「本当の中国人」(第三章)が本書には赤裸々に描かれている。しかもこれによって、過去ではなく現在、未来の中国人を知ることにもなる。その書が田中、先田両氏によって現代に甦ったと言っても過言ではない。
〈芙蓉書房刊 ¥2300+税〉

お知らせ
第3回「産経李登輝学校」開催

台北に李登輝前総統を訪ね、意見交換や対話を行う「産経李登輝学校」が以下の日程で行われます。三回目の今回は日本人と関係の深い「高砂義勇兵英霊慰霊碑」のある烏来も訪問します。 

日 時 11月3日(水)~6日(土)
定 員 五十名
問合せ 産経新聞社事業局
(TEL:03-3275-8904)
 
春 夏 秋 冬

 本コラムで遠い欧州の情勢に触れるのはめったにないのだが、今回は触れたい。というよりも、触れざるを得ない。最近の欧州の動きが、アジア太平洋の平和と安定に悪影響を及ぼそうとしているのだ。

 EUが1989年の天安門事件によって定めた中国への武器禁輸措置を、いま解除する方向に向かいつつある。昨年12月にフランスのシラク大統領がEUサミットで中国への武器禁輸解除の意志を明らかにし、同月に中国を訪問したドイツのシュレーダー首相も北京でその意のあることを表明し、本年1月のEU外相会議でもそれを提議し、同月にフランスを訪問した中国国家主席の胡錦濤はシラク大統領に直接、中国への武器禁輸措置解除を訴えた。まだ解除はされていないものの、EUではすでにそれを検討課題に乗せているのだ。

 EUは「武器輸出行為に関する規則」の第4項に「地域の平和、安全、安定を確保するため、加盟国は武器を得て他国を攻撃あるいは武力によって領土を拡張しようとしている国に武器を輸出してはならない」と定めている。この「規則」を念頭に、今日の中国を見ていただきたい。中国は常に「一つの中国」を根拠に台湾への武力使用を公言し、すでに500基に近い短距離ミサイルを台湾に照準を合わせ、さらに2年後にはそれが800基に増え、しかも200基の中・長距離巡航ミサイルが加わると見られている。台湾海峡平和への脅威は、年々増しているのだ。

 まさかEUの定める武器禁輸規則にいう「地域」とはヨーロッパだけで、他はお構いなしというのではあるまい。だが、米軍を中心とする多国籍軍がイラクを攻撃するまで、独裁のフセイン政権にせっせと武器を輸出して利を得ていたEU加盟国もあったことから見れば、EUが中国への武器禁輸措置を解除するのもないことはないと言わざるを得ない。

 そこでシラクさんとシュレーダーさんに、世界に対する責任というものを十分に考えていただきたい。中国がロシアからだけでなく、欧州からも先進的武器を調達し、ますます軍事力を巨大化させ台湾海峡のミリタリーバランスを崩したならどうなるだろう。それだけ中国は台湾に武力を使いやすくなる。武器禁輸の発端となった天安門事件とは、民主化運動への武力鎮圧ではなかったのか。そのEUが、今では武力で民主主義国の台湾を押し潰そうとしていることに加担しようとするのであろうか。この危険性を、十分に考えてもらいたい。 (K)