台湾週報2175号(2005.1.27)
週間ニュースフラッシュ
◆ブッシュ米大統領の就任式に李遠哲氏らを派遣
陳水扁総統は一月八日、同二十日に行われるブッシュ米大統領の就任式に、台湾から李遠哲・中央研究院長、呉釗燮・行政院大陸委員会主任委員、各政党の代表を派遣することを決めた。一行は同十七日から七日間の予定で米国を訪問し、大統領の就任式に出席するほか、米国の行政、議会関係者と会見し、台米関係や台湾の立法委員選挙後の政治状況、両岸関係、防衛兵器購入問題などについて意見交換を行う予定だ。
《台北『中国時報』1月9日》
◆法輪功の信者が中国の迫害に抗議
法輪功の信者が一月八日、 台北市内で中国の迫害に対する大規模な抗議デモを行った。この日は冷たい雨模様にも関わらず、約二千人の信者が中正紀念堂から国父紀念館まで、およそ六キロの沿道を埋め尽くし、プラカードや旗を持って抗議した。法輪功によると、一九九九年から今年初めまで、明らかになっているだけでも合計千二百四十七人の信者が中国政府によって迫害死させられ、十万人以上が労働教育を受けさせられ、数千人が精神病院に入院させられた。
《台北『自由時報』1月9日》
◆五月に「二〇〇五年台湾―東南アジア産業サミットフォーラム」を開催
経済部は今年五月三十、三十一日に、台北で「二〇〇五年台湾―東南アジア産業サミットフォーラム」を開催する。これは中国が台湾を排除し東南アジアとの協力関係を築こうとする「東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス1」構想に対抗するために開かれるもので、ASEAN各国の上層部を招き、台湾とASEANとの産業協力について話し合う。現在、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、シンガポールの参加が決まっている。
《台北『経済日報』1月10日》
◆太平洋保険会議が十月に台湾で開催
世界の保険業関係者が一堂に会し、業界が直面する諸問題について話し合う太平洋保険会議が、今年は十月に台湾で開催される。同会議は毎年各国持ち回りで開催されており、台湾で行われるのは二回目。台湾の保険業界の国際的地位向上にプラスになると期待されている。
《台北『工商時報』1月10日》
◆今年の予測経済成長率は四%以上
経済部は一月十日、今年の予測経済成長率は四%以上を維持できるとの見通しを発表した。世界は今年、原油価格の再高騰、利率の大幅引き上げによる不動産の暴落と債務危機、世界主要経済のアンバランスによる為替レートの急激な変動、中国経済の軟着陸の可否、という四つの潜在的リスクを抱えており、これらが一度に表面化した場合、世界経済は全面的に衰退するが、それでも台湾は新十大建設の推進や高速鉄道の開通、など大型建設が目白押しで、四%以上の経済成長が期待できるとしている。
《台北『経済日報』1月11日》
◆台連主席に蘇進強・秘書長が決定
台湾団結連盟は一月十日、中央執行部会を開き、新しい主席に蘇進強・前秘書長を全会一致で選出した。羅志明氏と郭林勇氏がそれぞれ主席選挙への立候補を表明していたが、李登輝前総統が調整に入り、二人が辞退することで蘇氏の就任が決定した。
《台北『自由時報』1月11日》
◆民進党の台湾独立綱領は不変
張俊雄・民進党秘書長は一月十日、「党綱領は党の歩んだ歴史を反映し作られたものであり、たとえ親民党と政党協力しても、台湾独立綱領は変わらない」と述べた。
《台北『自由時報』1月11日》
「反国家分裂法」へのQ&A 中国は海峡の現状を無視し台湾を挑発
世界の目がスマトラ沖大地震と巨大津波の被災者救済に向けられている時、中国は間隙を縫うように「反国家分裂法」制定を進めている。この危険性を国際社会に知らせるため、行政院新聞局は1月7日に国際メディアとの記者会見を主催し、以下の質問回答集をまとめた。この会見には陳唐山・外交部長、呉釗燮・行政院大陸委員会主任委員、蔡明憲・国防部副部長らが出席し、広い範囲から質疑に答えた。
●「反国家分裂法」に関するQ&A
問:昨年末、呉釗燮・行政院大陸委員会主任委員は国際メディアとの記者会見をし、中国の「反国家分裂法」の制定を阻止すべきだと国際社会に呼びかけられたが、その後の反応はどうか。中国が強引に「反国家分裂法」を制定しようとしたなら、台湾はどう対処するか。また、春節(旧正月)両岸直行チャーター便は両岸の協議によって可能のようだが、中国は台湾と春節チャーター便を運行しようとの意思を示す一方において、「反国家分裂法」を制定しようとしている。中国の意図はどのようなものと解釈しているか。
答:昨年末の記者会見のあと、国際メディアはそれぞれ報道したものの、各国の政府においては、米国政府が部分的に反応したのみで、中国の同法の制定を阻止するには反応の強さが足りなかった。このためわれわれ大陸委員会は現在ある外交ルートを通じて国際社会に呼びかけ、中国が同法を制定するのを阻止しようとしている。
中国は春節チャーター便の運行に意思のあることを示しながら、一方において「反国家分裂法」を制定しようとしている。これは中国が常套手段としている硬軟両用作戦であり、片方で善意を示しその一方では逆にわが方に圧迫を加えようとする。両岸が春節チャーター便の協議に漕ぎ着けたとしても、それはわれわれが「反国家分裂法」を受け入れたことを意味するものではない。両岸の平和と安定を追求するというわれわれの立場は一貫しており、中国がいかに一方的に台湾海峡の現状を変更しようとしても、わが方は決して座視するものではない。
問:米国は中国が「反国家分裂法」を制定しようとしている問題に対して、どのような役割を演じるだろうか。もし中国が同法を制定してからでも、さらに多くの行動を示すだろうか。
答:米国政府は台湾海峡両岸問題について一貫した政策を持っている。それは「一つの中国」政策を堅持することだが、その政策の下に三つの共同コミュニケと「台湾関係法」が存在している。米国の両岸問題に対する立場は、中国の台湾に対する武力発動に反対し、両岸が対話を通じて対立を解決することを奨励し、両岸の一方が現状を変えようすることに反対するというものである。
中国国務院台湾事務弁公室の陳雲林・主任が訪米したおり、米国務省報道官は公式の場で、いかなる一方も両岸の現状を変えようとすることには反対すると明言していた。
中国の「反国家分裂法」の内容はまだ対外的に公表されていないが、現在得ている情報によれば「台湾は中華人民共和国の神聖な領土の不可分の一部分だ」と法で定め、「反国家分裂罪」を制定し、「特別法廷」まで設置するというもののようだ。中国がもしこれを立法化すれば、中国に駐在している百万人の台湾企業関係者らも含め、影響は大きなものとなる。馬英九・台北市長はただ婉曲に「反国家分裂法」を批判しただけで香港へのビザを拒否された。「反国家分裂法」が全人代を通過したなら、馬市長は同法によって起訴されることになってしまうだろう。
問:「台湾関係法」は米国の国内法だが、台湾は米国がこの法律によって中国の国内法に属する「反国家分裂法」に反対することをどのように期待するのか。
答:米国の「台湾関係法」と中国の「反国家分裂法」とでは立法の精神も内容も異なる。米国の「台湾関係法」の精神は、台湾の人権と自由を擁護し、さらに台湾が必要としている自主防衛を支援するというものであり、中国の「反国家分裂法」の要点は、台湾への武力使用と一方的に両岸の現状を変えることに法的根拠を与えるというものである。
先ほども表明した通り、台湾海峡問題に対する米国政府の立場は「一つの中国」政策の下に三つの共同コミュニケと「台湾関係法」を保持するという一貫性を持っている。米国は両岸問題において、中国が台湾に武力を発動することに反対し、両岸のいずれかが一方的に現状を変えようとすることに反対し、両岸に問題の話し合いによる平和的解決を促そうとしているのである。「反国家分裂法」が制定されたなら、中国が一方的に決定権を持ち、その結果に対する唯一の仲裁者、ならびに唯一の法執行者になるということであり、それは、両岸双方は一方的に現状を変えてはならないとする米国の期待に反するものとなる。
問:現在、春節チャーター便の交渉は順調に進んでいるか。
答:目下、政府は春節チャーター便実現に向け努力しているところであり、可能性はある。今回のチャーター便では、政府は「双方が航空機を飛ばし、中継地を経ない」ということで交渉することに同意している。もしこのチャーター便運航が実現したなら、両岸関係の発展にとって好ましい基礎となるだろう。
問:もし中国が「反国家分裂法」の制定準備を継続して進めたなら、政府は国内的にどのような具体的対応策をとるか。台湾の現行憲法は相手側が「統一」を主張する材料になっているか。今後、与党として憲法改正の計画はあるか。
答:政府の両岸政策での目標は、両岸双方が平和で安定した関係に進むところにある。かりに国内の民間から「反併呑法」の制定や「防衛的国民投票」実施の声が上がったとしても、政府の根本は両岸が平和で安定した方向に進むことを望むところにある。現在のところ、どのような対抗措置をとるか、まだ討論していない。もし中国が「反国家分裂法」の制定を中止したなら、台湾海峡の両岸双方は相互連動の機会を得ることになるだろう。
憲法改正については、陳総統が二〇〇四年の就任演説のなかですでに改正内容と順序について詳しく述べた通りである。
【行政院新聞局 1月7日】
●現実を歪曲する立法は危険
呉釗燮・行政院大陸委員会主任委員は一月十一日午後、訪台中の社会的地位のある米国籍中国人組織である「米国百人会」一行と会見し、中国が目下「反国家分裂法」を制定しようとしていることに言及し、要旨次のように述べた。
「台湾国民と政府から言えば、中国がいま制定しようとしている『反国家分裂法』は、従来の『統一法』よりもさらに重大な挑発である。なぜなら、『反国家分裂法』は、両岸はすでに統一されたものと定め、台湾海峡両岸を同一の国家と認定し、台湾を中国の一部分と見なし、一九四九年以来両岸がそれぞれ個別に統治され、互いに隷属していないという現状を無視しているからだ。国際社会は共同で中国のこうした立法措置への動きを阻止し、両岸情勢が一方的に変更され、台湾海峡の平和と安定が崩されるのを未然に防ぐべきだ。中国の今回の動きは両岸人民の距離をますます遠ざけるものであることを、皆様方があらゆる機会をとらえて広く伝え、中国当局にも明確に告げられるよう期待する。
台湾海峡両岸の平和は、両岸双方の共同責任であり、われわれは中国が台湾と話し合いを開始することを強く望んでいる。同時に汪道涵・海峡両岸関係協会会長が、辜振甫・海峡交流基金会理事長の葬儀に参列し、さらに陳水扁総統と胡錦濤主席の会見が実現することを望んでいる。両岸が一つ一つ善意を積み重ねて行けば、やがて双方の対立は氷解し、共に緊密な関係を結ぶことができるのだ。春節チャーター便の件については、両岸双方が委託した代表団によって最終決定がされるだろう。われわれは、双方が相互信頼と実務協議の原則下に交渉し、早急に話し合いのつくことを望んでいる。
【行政院大陸委員会 1月11日】
両岸の歴史的春節チャーター便就航へ 第三地に経由せず両岸双方の航空機を就航、発着地を拡大
●中国の航空機が台湾へ
両岸の春節(旧正月)チャーター便の就航について、台湾と中国の代表団が一月十五日、マカオで会議を行い、第三地に経由せず両岸を直行し、台中双方の民間航空機を飛行させるなどで合意した。これにより、両岸断絶後五十六年目にして初めて中国の航空機が台湾に乗り入れることになり、両岸平和に向けた歴史的契機となると期待されている。
会議には、台湾から楽大信・台北市航空運輸商業同業組合理事長、蘇賢栄・同組合総幹事、張国政・交通部民用航空局長、方志文・交通部専門委員、中国側は浦照洲・中国民航総局台港澳弁公室主任らが出席した。
会議は二時間足らずで終了し、以下の事項について合意した。①春節チャーター便の就航は一月二十九日~二月二十日までの二十三日間とする。②香港の飛行情報区を経由し、第三地への着陸は行わない。③発着地は台北、高雄、北京、上海、広州とする。④搭乗できるのは中国に進出している台湾企業のビジネスマンとその家族、台湾企業協会が認可した台湾関係者を対象とする。⑤就航便数は両岸ともにそれぞれ二十四便、計四十八便とする。⑥両岸とも民間航空会社六社に就航を認める。
合意内容について林陵三・交通部長は「結果は事前協議で合意していた内容通りだ。ただ就航便数について中国が要求していた七十二便を、われわれが四十八便までに押さえ決着した。これは二年前の春節チャーター便に比べて六倍の量に相当し、少なくとも十万席を確保できる」と語った。
●書面での協定は行わず
今回の合意事項について、両岸は正式に書面での協定を行わなかった。これは、双方が用いる語句の違いにより、後の実施段階になってトラブルが起きないようにとの配慮からだ。会議終了後、楽大信・台北市航空運輸商業同業組合理事長と浦照洲・中国民航総局台港澳弁公室主任はそれぞれ簡単な記者会見を行い、その後両者はふたたび会議室に戻り、合意事項について双方の記録内容をすり合わせ、一つひとつ確認した。
呉釗燮・行政院大陸委員会主任委員は「今回の春節チャーター便は『歴史的な成果』である」と述べ、高く評価した。また胡鎮埔・国防部次長は「軍の空中レーダーに対する監視は万全であり、両岸の航空機が直行しても国防上の安全に何ら影響はない。軍は政府の政策に全面的に従う」と語った。
●五千人の利用を予想
両岸のチャーター便は、二〇〇三年の春節に、台湾の民間航空機が台北―上海間を往復し初めて実現した。しかし、香港、マカオを経由(着陸)し、中国側の航空機は乗り入れを禁止するなど、多くの制限があった。今回香港、マカオに着陸しなくてもよいため、これにより飛行時間が三分の一短縮できるほか、発着地に新たに北京、広州が加わったことで、チャーター便を利用する台湾企業関係者は前回よりも四倍近い、五千人に上ると予想されている。
今年の春節チャーター便は、二〇〇三年と同じ方式により、交通部民用航空局が就航開始の十日前から各航空会社の申請を受付ける。台湾の航空会社六社は実施内容についてすでに初期計画をまとめており、具体的には、上海路線には六社とも乗り入れるが、北京路線と広州路線は三社ずつに止める方針だ。各社とも路線や時間などについて密接に協議し、乗客の取り合いや偏りを避けたい考えだ。しかし、中国の航空会社が台湾よりも安く航空運賃を設定した場合、乗客が奪われるとの危機感も指摘されている。
《台北『中国時報』1月16日》
ニュース
二十年以内にエネルギー危機 原発の稼動期間延長を建議
行政院の主席科学技術顧問でもある李遠哲・中央研究院長はさきごろ石油エネルギーの枯渇と地球の温暖化危機に対し、政府に原発の稼動期間を延長し、その間に省エネ技術とそれに関する製品の開発を積極的に行うことを提議した。また「政策として国民の省エネ習慣を徹底させなければ台湾は今後二十年以内に深刻なエネルギー危機に直面する」と指摘した。
民進党政権は二〇〇〇年の発足以来「非核国家」の理想を掲げ、一度は「第四原発」を建設中止に追い込み、二〇〇三年には「非核国家推進法草案」が行政院で可決された。李遠哲氏は「非核国家は理想であり、この方向で努力することにはもちろん賛成だ。しかし、原発に代わる適当なエネルギーが不足している現段階にあって、すぐにこの目標を達成することは困難だ。台湾の国民の二酸化炭素排出量はこの五年間毎年増え続けており、さまざまな状況を考慮すると、既存の原発の稼動期間は短縮ではなく延長し、第四原発の完成後も効率的にこれを使用していかなければならない」と述べた。
そのうえで李氏は「台湾はエネルギーの使用効率を高める力を持っている。現在の生活水準を維持したまま今後二十年間で現在のエネルギー消費を半分に抑えることができたら、新たに原発を建設する必要はない」と強調し、中国石油や台湾電力などに対する省エネ設備の研究開発に政府が積極的に投資するよう建議した。
●非核国家の目標は不変
台湾電力が行政院原子能発展委員会と共同で原発の稼動期間を四十年から六十年に延長する計画を進めていると外部で噂されていることについて、陳其邁・行政院スポークスマンは一月十日、「経済部と台湾電力に確かめたところ、そのような事実はなかった」と述べ、政府の非核国家の目標は変わらないことをあらためて強調した。
第四原発公民投票促進会の張国龍・召集人は李遠哲氏の建議に対し、「非核国家は人類の未来に対する公約であり、早く実現するに越したことはない。われわれが次世代に借りを作らないのは道徳レベルの問題であり、人類のエゴでこの問題を考えてはならない」と述べた。
《台北『自由時報』1月10日》
台日の防疫協力強化を決議 鳥インフルエンザ対策を協議
行政院農業委員会が主催する「台日鳥インフルエンザの予防とコントロールに関する技術シンポジウム」が一月十日、十一日の二日間、台北で開催され、今後台日の防疫協力をさらに強化していくことを決議した。
同シンポジウムには、台日双方から鳥インフルエンザ予防の専門家約百八十人が出席し、それぞれ予防の経験や心得などを披露し、意見交換を行った。この中で、台湾の専門家は鳥インフルエンザの抗体検査法と、台湾で昨年発生した低病原性鳥インフルエンザH5N2ウイルスの実情およびその処理に関して経験を報告し、さらに中興大学の教授らが開発した抗体試験剤も紹介された。この試験剤はH5とH7抗体を調べるもので、血清検体の検査にも応用できるという。鳥インフルエンザウイルスは将来さらに複雑になる可能性があるものの、出席者からは早急にこれを商品化し、鳥インフルエンザウイルスの監視に応用すべきだとの声が相次いだ。
シンポジウムでは、鳥インフルエンザウイルスの媒体と見なされる渡り鳥について台日が情報交換し、陸、水上生物の疾病に対する早期診断法の開発と、伝染病に関する研究、主要動物の疾病に対するワクチンの開発を強化し、防疫に関する国際協力体制を確立することを決議した。
《台北『中央社』1月11日》
新竹科学園区拡張計画決定 投資総額四千億元
行政院経済建設委員会は一月十日、新竹科学園区の拡張計画を決定した。進出企業の土地不足を解消し、周辺の環境を改善するのが目的で、約四千億元(約一兆二千億円)を投資し、同園区内の三十四ヘクタールと、竹南基地の十八ヘクタールを合わせた計五十二ヘクタールの土地を新たに開発する。
拡張後は台湾積体電路や光電事業公司などの進出が予定されている。
《台北『青年日報』1月11日》
2004年貿易統計(資料出典:財政部)
【貿易総額】(1~12月累計)単位:億米ドル/( )内は前年同期比
輸出総額:1,740.3(20.7%増)
輸入総額:1,678.9(31.9%増)
貿易黒字:61.4(63.7%減)
【貿易品目と貿易額】(1~12月累計)単位:億米ドル
[ ]内は全体に占める割合/( )内は前年同期比
(輸出)1、農産品[0.2%] : 3.8(0.7%増)
2、農産加工品[1.2%] : 20.8(17.7%増)
3、工業製品[98.6%] :1715.7(20.8%増)
①重化学工業製品[77.2%] :1342.7(23.6%増)
②非重化学工業製品[21.4%] : 373.0(11.5%増)
* 輸出品目については、農産品、農産加工品、工業製品ともに前年を上回った。このうち重化学工業製品は前年より23.6%増の256.8億ドル増加した。これはおもに電子製品、光学器材、鋼鉄および機械などの輸出が増えたためと見られる。また非重化学工業製品は前年より38.6億ドル増加し、おもにプラスチック、ゴム製品、化学品および金属製品などの輸出が増えた。
(輸入) 1、農工業原料[70.4%] :1,181.6(31.8%増)
2、資本設備[21.4%] :359.8(38.2%増)
3、消費性製品[8.2%] :137.5(19.1%増)
* 輸入品目については、資本設備、農工業原料、消費性製品ともに前年を上回った。このうち農耕業原料は前年より31.8%増の284.9億ドル増加した。これはおもに、電子製品(部品、ユニット)、鋼鉄、原油および化学品などの輸入が増えたためである。また資本設備は前年より99.5億ドルの増加で、おもに機械、精密機器、航空機およびその他の輸送設備などの輸入が増えたためと見られる。
【貿易相手国・地域】(1~12月累計)単位:億米ドル
[ ]内は全体に占める割合
(輸出) 1、香港、中国[36.7%]:638.5
2、米国[16.2%]:281.2
3、欧州[13.5%]:234.4
(輸入) 1、日本[26.0%]:436.3
2、米国[12.9%]216.3
3、欧州[12.7%]213.0
【国・地域別出入超額】(1~12月累計)単位:億米ドル
( )内は前年同期比
〈出超〉1、香港、中国:450.7(21.5%増)
〈入超〉1、日本:304.3(46.8%増)
2、米国:64.9(28.8%減)
3、欧州:21.4(49.3%減)
* 輸出、入累計額で見ると、米国、日本、欧州、香港および中国に対する輸入が大幅に輸出を上回り、米国、欧州に対する貿易黒字額はそれぞれ64.9億ドルおよび21.4億ドルで、前年比で同26.3億ドルおよび20.7億ドルの減少となった。一方、日本に対する貿易赤字は304.3億ドルで、前年より97.1億ドル増加した。香港、中国に対する貿易黒字額は450.7億ドルで前年比79.9億ドル増加した。このほか東欧諸国に対する貿易赤字は2.4億ドルで前年より23.3億ドル減少した。
中国の軍事拡張と台湾の防衛戦略②「二〇〇四年国防報告書」概要
第二章 アジア太平洋の軍事情勢
アジア太平洋では目下、中国の軍事拡張により地域内の各国が安全保障において米国への依存を高めるところとなっている。米国はイラク戦後復興、北朝鮮核疑惑、東南アジアテロ活動、南シナ海主権紛争、印パ紛争、中国の軍拡などの問題により、アジア太平洋での軍事トランスフォーメーションを進め、グアム島の対応能力を高めようとしている。また日本、韓国、オーストラリア等との安全保障構造、ならびに「台湾関係法」の運営などによって相互関係を強化し、西太平洋の安定を維持しようとしている。
一、アジア太平洋の戦略環境
アジア太平洋地域は大陸、島嶼、海洋と範囲が広く、民族、宗教などもそれぞれに異なり、各国政府は経済発展を第一としているが、安全保障の考え方は多元的である。
〔米国と西太平洋情勢〕
(一)アジア太平洋の安全戦略
米国は先制攻撃の戦略的理念を持ち、国際テロの拡大、地域紛争の激化などに対し、軍事的優勢を保ち、国家の安全と地域における戦略的利益を確保しようとしている。その措置は以下の通りである。
①域内各有力国間の安定と軍事的均衡を維持する。
②域内海上航路の安全を維持する。
③世界および地域の国際組織における指導的な地位を維持する。
④台湾海峡と朝鮮半島問題を平和的に解決する。
⑤大量破壊兵器の拡散を防止する。
⑥インドシナ半島と南アジアの安全を確保する。
⑦テロおよびテロ支援国家に打撃を与える。
(二)アジア太平洋の軍事情勢
中国の軍事拡張が顕著で域内の軍事均衡が崩れつつあり、それが米国のアジア太平洋地域における国家利益に直接影響を及ぼし、同地域は米国の関心の的となっている。この地域での主導的な地位を維持するため、米国は戦略的な重点を欧州から逐次アジアに移し、軍事配置も移転を進行中である。九・一一同時多発テロの教訓から、米国は国際テロを当面の安全に対する重大な危機と見なし、アフガニスタン、イラク戦争を発動し、その根源を絶とうとした。北朝鮮の核開発疑惑については、六カ国会議の推進によって暫時平穏を保っているが、米国が関心を持つ焦点の一つであることに変化はない。
(三)グアム島、ハワイ、ニュージーランド、オーストラリアの戦略的地位
グアム島は第二列島線(注)に位置し、米国にとってハワイと同様に太平洋における重要な軍事基地で、戦略的地位も高い。中国の軍事拡張を牽制し、米国のアジア太平洋における戦略的地位を確保するため、グアム基地の海空軍力を増強している。二〇〇三年十一月にはハワイの空母艦隊基地が完成し、この二地点の戦略的地位はますます高まっている。ニュージーランドとオーストラリアも積極的に国際問題に関与するようになり、米国および国連の要請に応じ、東チモール問題への関与、イラク再建支援、太平洋島嶼国への経済援助等を強化し、国際的影響力と地位を高めようとしている。
〔東アジア情勢〕
(一)軍事情勢
米国はアジア太平洋における軍事的負担を軽減するため、日本の軍備強化、憲法改正、国際平和維持活動への参加を支持し、ならびに日米同盟関係を強化しようとしている。朝鮮半島では南北の軍事バランスを維持する一方、韓国の装備を更新し、戦争の発生に備えようとしている。北朝鮮はミサイル試射を継続し核開発も放棄しておらず、地域の安全に対する潜在的脅威となっている。
(二)潜在的危機
日露間には北方領土問題があり、第二次大戦終結の平和条約もまだ締結していない。日本は北方領土の主権紛争を据え置き、共同開発を提唱しているがロシアは応じず、この問題に対する双方の立場には大きな隔たりがある。中国と南北朝鮮の間には東シナ海での漁業権問題があり、各漁船の越境が頻発し緊張を作り出しているが、それぞれの自主規制によりまだ重大な衝突は発生していない。日中間には東シナ海の天然資源の問題が浮上し、対立が高まっている。日韓間には竹島(独島)問題があり、解決法がない中に韓国はここに埠頭を築いて守備隊を置き、国際宣伝もおこなって実質支配をしている。釣魚列島(尖閣諸島)はわが国の固有の領土だが、日本と中国が主権を主張し、中国は海洋探査と大陸棚調査によって主権を示し、日本は民間に貸し出し、二百カイリ経済専管水域内に組み込み、同島の問題を複雑化させている。
〔東南アジア情勢〕
(一)軍事情勢
東南アジア各国は分離主義活動と国際テロへの打撃を中心課題としており、テロについてはASEANがマレーシアに「東南アジア対テロ・コントロールセンター」を開設し、国際テロ撲滅への決意を示している。二〇〇三年十月に開催されたASEAN第九回首脳会議では、中国とASEANが「東南アジア友好協力条約」を締結し、軍が参加する「安全政策会議」を開催することにも同意し、「中国ASEAN戦略パートナー宣言」を発表し、中国はこれをASEANの「中国脅威論」緩和の一環とした。インドと日本もASEANと友好協力条約の締結を急ぎ、東南アジアがいっそう世界から注目されるようになり、これが地域内の安全保障に有益となっている。
南シナ海の主権問題は複雑で、関係各国は各島嶼に軍隊を駐留させ、そのうちベトナムが二千人と最多で次が中国の六百人である。主権の争いには各国とも「南シナ海各国行動宣言」の精神に則り、相互信頼システムを確立して平和的に解決し、その中に有利な条件を引き出そうと画策している。
(二)潜在危機
地域内のほとんどの国の政情は安定し、ただちに衝突が発生する危険性はなく、一部の国家間においては、たとえばシンガポールとマレーシア間のように島嶼部の主権と給水問題があるものの、ASEAN体制の約束と相互自主規制によって武力に訴える状況は見られない。ベトナム政府は二〇〇四年四月に南沙諸島への観光目的を名義とした旅行団を組み、軍用飛行場の拡張を宣言したが、台湾、中国、フィリピンの抗議を受けている。この水域の問題の平和解決にはまだ変化があり得る。
二、アジア太平洋の軍事動向
アジア太平洋地域は世界で最も多くの紛争地点を抱えており、米国はイラク・フセイン政権崩壊後、アジア太平洋を中心とした兵力配備を積極的に進めるようになった。二〇〇四年八月十六日にブッシュ米大統領は、今後十年で軍のトランスフォーメーションを進め、戦略の中心を欧州からアジアに移し、同盟各国との調整を図り、地域内での衝突を未然防止すると表明した。だが、中国の軍事拡張と台湾への軍事的脅威は重大化しており、米国、日本、韓国の軍事的動向が台湾海峡の情勢に大きな影響を与えることになろう。
日本は航空自衛隊の司令部を、在日米軍が司令部を置く三沢基地に移し、米軍との連携を強化した。米太平洋艦隊も偵察大隊情報センターを二〇〇三年十一月に三沢基地に置いた。韓国でも段階的に駐留米軍の戦力が強化され、情報収集能力も高められている。
総合的には中国の軍事拡張はますます進展しており、地域各国の「中国脅威論」は深まりつつある。米国はイラクの戦後復興問題、北朝鮮の核開発疑惑、台湾海峡問題、中国の軍事拡張等々の問題を抱え、軍事的には「先制攻撃」の戦略理念によって軍のトランスフォーメーションを進め、同盟各国の防衛力を高め、アジア太平洋地域の平和と安定を維持しようとしている。
米軍の配備調整はアジア太平洋の軍事環境に大きな影響を与えるものとなる。中国の軍事拡張は逐次世界の注目を引くようになり、その中に米国と中国の利益は対立し、その行方は世界の動向にも大きな影響を及ぼすことになろう。
台湾は中国が西太平洋に進出しようとする第一列島線(注)に位置し、自国の安全と利益を護るためにも戦争防止、テロ対策に十分な役割を担わなければならない。
(注:第一列島線=日本列島・台湾・フィリピン。第二列島線=小笠原諸島・サイパン島・グアム島)
【国防部 04・12・14】
テイクアウト「年菜」市場が拡大 垣間見える食スタイルの多様化
大晦日は手作りの「年菜」(年越し料理)を囲んで家族団欒を楽しむ―そんな昔ながらの年越し風景が、台湾では最近、少しずつ変わってきているようだ。日本でもおせち料理を作る家庭は年々減る一方だが、台湾でもこの数年、テイクアウトの年越し料理を買う人が増えている。こうした客の需要に合わせ、今年の「年菜」市場は二十億元(約六十億円)に達すると見込まれており、旧正月元旦にあたる二月九日を前に、外食産業はこぞって独自の「年菜」を打ち出している。
量販店では、大手スーパーの「家楽福」が有名レストランと提携し、メニューの異なる九種類の「年菜」セットを販売する予定だ。料理五品にスープ付きで三千元(約九千円)からあり、デザートや買い物券が付いたタイプもある。百貨店では「太平洋SOGO」が市内のホテルと提携し、百食限定の伝統的「年菜」セットを発売しており、日本風やタイ風をはじめ、ベジタリアン用メニューまで揃う。また「新光三越」は五つ星クラスのホテルと提携し、フカヒレなど高級食材を使った「豪華年菜」セットを発売。こちらは五千八百元(約一万八千円)とお値段も豪華だ。このほか、各有名レストランでもさまざまな「年菜」商品を用意しており、食材の新鮮さ、味、ブランド力による競争は激化しそうだ。
一方、四年前に「年菜」のテイクアウトという概念をいち早く提案したコンビニ業界でも、今年はこの市場に五億元(約十五億円)の需要を見込んでいるが、こちらは家族団欒用セットのほか、一人用弁当タイプにも力を入れている。昨年百九十八元(約六百円)の弁当が好評だった「莱爾富」では、中華風と香港風の二種類を用意し、一人で年越しする人のニーズに応える。また「7-11」では、手作りおでんやエビフライを詰めた日本風「新春幕の内弁当」を打ち出し、年末のご馳走に飽きて趣向を変えたい人をターゲットにしている。こうした「年菜」市場の盛況振りは、年越しスタイルの多様化を示していると言えそうだ。
《台北『中国時報』1月10日》
●夜型学生の食生活「朝抜き、夜食」
インターネット普及やテレビ番組の充実などにより、最近台湾では学生の夜型化に拍車がかかっているようだ。『文化一周』紙が九つの大学を対象におこなった「健康習慣に関する調査」によれば、七六%の学生が「通常の就寝は十二時過ぎ」「よく徹夜をする」と答えていた。「徹夜して何をしているか」という問いには、三九・四%が「インターネット」、一五%が「レポート作成」、一三・三%が「読書」と回答した。
こうした夜型生活の影響は、食習慣にも表れており、「夜食を食べる習慣があるか」という問いには、四九・一%の学生が「よく食べる」と答えていた。男女別では男子四九%、女子二八・六%で男子のほうが夜食をとる人が多いことがわかった。朝遅く起きて食事は朝昼兼用という学生が多く、「朝食を食べないことが多い」と答えた学生は、全体の三五・八%に上った。一人暮らしの学生ではこうした食習慣はさらに顕著で、夜食の習慣は六三・七%、朝食抜きも四四・九%と多数だった。
同調査は台湾大学、政治大学、師範大学、輔仁大学、東呉大学、銘伝大学、淡江大学、世新大学、文化大学の学生を対象におこなったもので有効回答数は千百六十二人である。
《台北『青年日報』1月4日》
●「学食」の食品・飲料が規制へ
子供の肥満や若者の食生活の乱れが問題視されるなか、教育部では一月四日、栄養学の専門家や父母会代表などを招いて校内で販売する食品の規制に関し会議を開き、一定の基準に満たない食品や飲料を規制することで合意に達した。対象となるのは糖分、塩分、脂肪、カロリーの高い食品およびカフェイン飲料などで、次学期から小中高校の校内での販売を制限する予定だ。
現在台北市・県の学校ではすでにかなり厳しく制限をしており、例えば飲料は一商品につき二百五十カロリー以内、パンや菓子などは油と砂糖のカロリーを全体の四割に抑えるなど、細かく定められている。教育部によれば、今後は各県・市でも各衛生局が不定期に検査を行い、規定に違反した場合には罰則を設ける方針だ。
《台北『中国時報』1月5日》
文化ニュース
「全民英検」に十二万人が受験 受験率九六%で過去最高に
一月八日、「全民英語能力分級検定試験」の初級試験が、全国五十数カ所で実地され、過去最多の十二万人が受験した。同試験は(財)語言訓練試験センターが教育部の助成を受け、二〇〇〇年から実施している。
今回の試験は、中学卒業程度のレベルで、受験者は中高生が五六・二%を占めたが、このほか幼児、社会人や七十六歳のお年寄りまで、さまざまな年齢層がテスト用紙に向かった。
受験者が昨年の八万二百十三人を大幅に上回った理由に関し、語言訓練試験センターでは「受験した目的」について調査をおこなった。それによれば、「自分の実力をチェックするため」という回答が七六%、「進学のため」が一三・一%、「学校で成績の参考にされる」が五・四%、「会社の昇進試験や海外派遣の参考」が二・一%となった。また地域別の参加者率は北部が三七・二%で最多、以下中部三五・一%、南部二四・二%、東部二・九%となった。
《台北『中国時報』1月9日》
米「DANCE」誌表紙に許芳宜さん 「今年注目の舞踏家」のトップに
台湾の舞踏家・許芳宜さんが、国際的に有名な米国のダンス雑誌「Dance Magazine」一月号で「二〇〇五年に注目される二十五人の舞踊関係者」のトップに選ばれ、表紙を飾った。許さんは国立芸術学院(現台北芸術大学)舞踏科卒、一九九四年単身渡米し、数百倍の競争率を勝ち抜きマーサ・グラハム舞踏団に入団、三年で首席ダンサーとなった。一九九八年に雲門舞集に入団、《水月》、《年輕》、《白蛇傳》など多数作品に出演。二〇〇二年に「布拉芳宜舞團」を設立し、最近では演出も手がけるなど、活躍の幅を広げている。
《台北『中央社』1月10日》
老兵倪さんが全財産を孤児院に 未来ある子供たちに思い託す
今年七十五歳になる倪永釗さんは、二十歳のとき台湾へ渡ってきた。以来、台北郊外で一人暮らしをしていたが、近々養老院に入ることになり、その全財産を孤児院に寄付することを申し出たという。
昨年十一月、倪さんの住む台北県汐止市では一人暮らし高齢者への定期訪問サービスが始まり、市では倪さんに自費で介護付き養老院に入所するよう勧めていた。彼は七坪あまりの自宅から離れたくないと断ったが、ある日中風に罹り、自宅で倒れていたところをちょうど訪問員に発見され、ようやく転居を承諾した。
やがて車椅子生活となり、自分はもう長くないと感じた倪さんは、これまでこつこつ貯めた五百万元(約一千五百万円)余りと住まいの権利書を役所に託し、近所の養老院に入ることを決めた。
倪永釗さんは中国安徽省の出身で、当時、国民党軍の一兵士として台湾に移住した退役老兵だ。台湾に来て五十数年、結婚もせずただ一人で暮らしてきた。しかし長年節約して貯めた財産も手放し、養老院に入る際には、身に着けていた腕時計や指輪さえ持っていかなかったという。
「家にはテレビもなく、つましい生活ぶりが伺えた」。財産を託された市の担当者は語る。彼から託された古い鉄製の弁当箱には、印鑑と通帳のほかに、中国で撮った幾枚かの古びた写真と、友人からの手紙が入っていたという。「数回しか会っていないのに、財産だけでなく一生の思い出の品まで、縁もゆかりもない私に託すなんて。責任の重さを感じる」
倪さんの財産は銀行で管理され、毎月養老院に支払う費用以外は、すべて孤児院に寄付することが決まった。
先日彼は、役所の職員に付き添われ、その孤児院を訪問した。元気よく走りまわる、無邪気だが自分と同じく孤独な子供たちを、彼は目を細めて見ていたという。寄付の理由について倪さんは何も言わなかったが、「一生を一人で暮らした孤独感を考えると、未来ある子供たちに寄付した彼の思いが分かる気がする」と、市の職員は話している。
《台北『中国時報1月1日』》
文化ニュース
台湾の愛を南アジアへ チャリティーで四億元集まる
「明日に向け、一万人の孤児に希望を」
スマトラ沖大地震と巨大津波により親兄弟を失い孤児となった子どもたちを支援しようと、行政院新聞局が国内のメディアに呼びかけて行ったチャリティーイベントが一月十五日、台北の国父紀念館で行われた。
これは被災地の約一万人の孤児を対象に三年間分の養育費を寄付しようというもので、総額三億六千万元(約十一億円)を目標に募金活動が行われた。戸外に設置された舞台にはテレビ局のキャスターも大勢繰り出し、芸能人に混じって歌を歌ったり、チャリティーバザーを行い、募金を呼びかけた。
また会場ではチャリティー・オークションが行われ、中国画の大家・張大千直筆の作品が二千二百万元(約六千六百万円)で落札されたほか、呉淑珍・総統夫人も総統官邸にあったお気に入りの油絵を出品し、こちらは五百二十万元(約千五百万円)で落札された。
国内の全メディアを動員して行われたこの日のチャリティーイベントは、目標の三億六千万元(約十一億円)を上回り、四億元(約十二億円)近い募金が集まった。
《台北『工商時報』1月16日》
『台湾旅館史』が出版 日本時代の観光史浮き彫りに
「台北で最も早く建てられた高級旅館は?」。この問いに、大半の人は国賓飯店、ないし圓山飯店と答えるだろう。だが、歴史を紐解いてみると、日本統治時代の一九〇八年に建設された「鉄道大飯店」こそ、名実ともに台湾に初めて登場した一流ホテルと言える。当時日本の皇室や政治家、一流の名士は決まってこのホテルに宿泊した。しかし第二次大戦中の爆撃で焼失し、今はその痕跡を見ることはできない。現在台北駅前の新光三越デパートのある場所である。
台北市文献会がこのほど出版した『台湾旅館史』には、一八六〇年から終戦の一九四五年までの台湾の旅館の歴史が記されている。一九世紀、台北の大稲埕は貿易商で賑わい、多くの商人が往来し、洋風の旅館も建造されたが、旅館が観光業として発展したのは日本統治時代以降だと本書は指摘している。日本時代の観光の歴史を浮き彫りにする史料である。
《台北『民生報』’04・12・11》
『台湾現代美術体系』が出版 戦後の台湾美術史を総括
行政院文化建設委員会(以下、文建会)は一月六日、台湾の現代美術史を総括した『台湾現代美術体系』二十四冊を出版した。
戦後、中堅として活躍してきた美術家を対象に紹介しており、水墨、版画、陶芸、彫塑、油彩、映像、その他、七つの表現媒体に分類し、一冊に約八~十二人の美術家とその作品について記述している。
文建会はこれまでにも台湾美術の大御所と呼ばれる先輩画家や、現代美術家を対象にした書籍を出版している。陳其南・文建会主任委員は「今回のシリーズは、戦後の台湾美術史の総括と言える」と語っている。
《台北『民生報』1月7日》
李前総統の写真集が出版 台湾のリーダーの足跡を辿る
李登輝前総統のこれまでの歩みを記した写真集『李登輝総統照片集』が出版された。
国史館が二年前から計画し編集を進めていたもので、総統府から借り受けた三十万枚の写真と李前総統が個人で所蔵するものの中から約千三百枚を選び、四冊にまとめた。それぞれのタイトルは「家族のアルバム」「政治の道へ」「国政の舵取り」「台湾を導く」。
剣道に励んでいた頃の青年時代や、亡くした長男との家族写真、李氏の副総統就任を祝うため自宅を訪ねた蒋経国総統と談笑する姿などが納められている。李前総統が台湾のリーダーとして歩み築きあげた足跡を多面的に振り返る内容となっている。
《台北『中国時報』1月10日》
東京で地震被災者支援チャリティーが開催 呉乙峰監督の『生命』を上映、人の生きる意味を問う
一九九九年九月二十一日未明に台湾中部を襲ったマグニチュード7・3の大地震「九・二一大地震」は、二千四百人余りもの尊い生命を奪った。なかでも震源地に近かった南投県九份などの山間部では土石流が発生し、村ごと麓に押し流され、多くの住民が生き埋めになるという悲惨な状況に見舞われた。
呉乙峰監督は地震発生後、ただちに九份を訪れ、肉親や家族を失い絶望の淵に佇む人びとを、およそ三年間見つめ続け、かれらがふたたび生きる希望を取り戻し、歩んでいく過程をドキュメンタリーにまとめた。この作品『生命(いのち)』は二〇〇三年「山形国際ドキュメンタリー映画祭」で優秀作品賞に選ばれ、また「フランス・ナント三大陸映画祭」でも観客賞を受賞するなど、高く評価されている。
日本では昨年十月二十三日に新潟中越地震が発生し、被災地では現在懸命の復興活動が行われているが、地震の被災者支援の一環として一月十四日、東京でチャリティー試写会が行われ、呉乙峰監督の『生命(いのち)』が上映された。
呉監督は舞台挨拶で「台湾の大地震の際には日本から多くの支援をいただき、大変感謝している。今回自分の作品が同じ被災者のためのチャリティーという形で上映されることはとても意味があり、嬉しく思う」と語った。
この『生命(いのち)』の作品には親兄弟や子どもを失った四組の遺族が登場する。台湾の母親に幼い男の子二人を預け、日本へ働きに出ていた若い夫婦。山に残した幼い二歳の女の子を亡くした夫婦。両親と弟を失った中学生と高校生の姉妹。両親、兄、祖母、叔父、叔母、フィリピン籍の看護人をいっぺんに亡くした女子大生。緑溢れ人びとの活気に満ちていた村は一瞬にして土砂に埋まり、すっかり姿を変えてしまった。地震直後すぐに遺体が発見されたのは一組の二人の子どもと母親だけで、残りの三組の遺族は瓦礫の山に毎日通い、ブルドーザーが掘り起こしては出てくる遺品らしきものに一縷の望みを託し、懸命に遺体を捜す。だが三週間過ぎても見つからず、四十九日を過ぎて捜索が打ち切られ、遺体のないまま死者の葬式を迎える。
突然家族を失うという大きな喪失感と悲しみを抱えながら、人はどうやって日々を過ごしていけるのだろう? 人は何によってふたたび生きる力を取り戻せるのか? 映画は被災者の心の苦しみを描きながら、人が生きること、そのものの意味を投げかけている。
『生命(いのち)』は台湾では昨年九月、大地震五周年を記念して公開された。映画館には連日長蛇の列ができ、上映期間も延長された。一般にドキュメンタリー映画は商業映画に比べ観客動員数が少なく、興行成績も低いと見なされているが、この作品は昨年台湾で上映された映画の中でジャンルを問わずもっとも高い興行成績を収め、大ヒットとなった。
一月十七日、「阪神・淡路大震災」から十年目を迎える神戸でも『生命(いのち)』が上映され、呉乙峰監督と作品に登場する遺族が出席し、住民と交流した。また一月二十九日からは東京の「ポレポレ東中野」で、二月二十六日からは大阪の「第七藝術劇場」で『生命(いのち)』のロードショーが行われる。
今世界で頻発している大地震に対し、新聞やテレビでは伝えられない被災者の心の悲しみ、その悲惨な状況を理解し、人類の共通の問題として考えるうえでも、この映画はまさにタイムリーであり、最適の材料を提供してくれる映画であると自信を持ってお勧めしたい。
《取材:本誌編集部・山田》
お知らせ
春節関連行事
●横浜中華街
①大晦日カウントダウン
日 時 2月8日(火)深夜0時~会 場 横浜中華学院校庭
②春節パレード(龍舞、獅子舞、中国舞踊、京劇、古代衣裳などが繰り広げる中国時代絵巻を再現した祝舞パレード)
日 時 2月9日(水)午後4時~
会 場 中華街全域
コース 山下町公園→関帝廟通り→福建路→西門通り→中華街大通り→南門シルクロード→関帝廟→山下町公園
③獅子舞(三組の獅子舞が各店舗を回り、店頭に吊るされたご祝儀をとり、新年の喜びと商売繁盛を祈願する)
日 時 2月12日(土)午後4時~
2月19日(土)午後4時~
会 場 中華街全域
問合せ横浜中華街発展会協同組合
(TEL:045-662-1252)
http://www.chinatown.or.jp
春 夏 秋 冬
突然のスマトラ沖大地震と巨大津波は、世界中から正月気分を吹き飛ばすものとなった。年が明けるとすぐにインドネシアのジャカルタで支援国と被支援国の国際会議が開かれ、日本や米国、ドイツ、オーストラリアなど世界の国々が資金援助をはじめ艦船や航空機派遣を含む支援措置を発表し、すでに次々と実施に移されている。こうした迅速な措置は国境を越えて世界の人々が声援を送り、頼もしく思っていることだろう。もちろん台湾もいち早く政府が5,000万ドルの支援を発表し、200人規模の医療団を送り込み、民間においても各団体が募金活動を開始し、さらに各マスコミ機関が一丸となり被災し孤児となった子供たちの養育費を募ろうとする運動も始められた。対象孤児は1万人で募金予定額は3億6千万元(約11億円)というから規模は大きい。これらは各国の支援とともに現地で活動をしているNGOを通じ、被災民の一人ひとりに届けられることであろう。まさに人道に基づく国際社会の相互連動と言えよう。ジャカルタ会議はそれら支援の出発点となるものであった。
ところがこの国際会議の時、思わぬことがあった。地震と津波発生の第一報が入るなり支援を表明していた台湾が参加していなかったのだ。というよりも、参加できなかったのだ。理由はお分かりのことと思う。台湾が会議への参加意思をインドネシアに伝えた時、同国政府は「本会議はASEAN加盟国が中心でオブザーバー出席やNGO代表の参加は計画にない」との理由をつけ婉曲に断ってきた。米国が「台湾が参加できない理由はない」とインドネシア政府に迫ったが、答えは同じであった。台湾はこのあとすぐ、被災国支援は一対一の個別方式で実施することに決め、さっそく実行に移した。もちろんインドネシアもその対象であり、台湾の医療チームが同国で最も被害の大きかったアチェに入った時、インドネシアのユドヨノ大統領は現地で台湾チームに面談し、直接感謝の意を表明していた。国際会議について、同国政府は中国の圧力に遭遇し、苦渋の政治的判断をしなければならなかったのだ。中国は台湾中部大地震の時にも「支援物資は中国を通じなければならない」などと世界の人道支援を妨害した前科がある。15万人もの犠牲者を前にまたも政治主張を優先させる。このような政府が今、「平和統一」と称して台湾を侵略し、併呑しようとしている。今回の天災とともに、この人災にも世界は目を向けて欲しい。見逃せば、災厄は甚大となるのだ。(K)