第一節 国防
第一三七条 中華民国の国防は、国家の安全を防衛し、世界の平和を維持することを目的とする。 ②国防の組織は、法律を以て定める。
第一三八条 全国陸海空軍は、個人、地域、党派関係を超越して国家に忠節を尽し、人民を愛護しなければならない。
第一三九条 如何なる党派及び個人であるかを問わず、武装力量を以て政争の具としてはならない。
第一四〇条 現役軍人は、文官を兼任することができない。
第二節 外交
第一四一条 中華民国の外交は、独立自主の精神、平等互恵の原則に基づき、 親睦の厚い国交を行い、条約及び国連憲章を尊重し、以て海外居住国民の 権益を保護し、国際協力を促進し、国際正義を提唱して世界の平和を確保しなければならない。
第三節 国民経済
第一四二条 国民経済は、民生主義を基本原則とし、地権の平均化及び資本の 節制を実施して国家政策、国民生活の充足を図らなければならない。
第一四三条
中華民国領土内の土地は、国民全体に属する。人民が法により取得した土地の所有権は、 法律の保障と制限を受けなければならない。私有地は、地価に応じて納税しなければならず、 且つ政府は、地価額に従って買収することができる。
②土地に付着する鉱物及び経済上公衆の利用に供される天然のエネルギーは、 国家の所有に属し、人民が土地所有権を取得したことによって影響されない。
③土地の価値が労力、資本を施したことによって増加したものでないときは、 国家が地価増加税を徴収して人民の共同享受に帰させなければならない。
④国家は、土地の分配及び整理について、自作農及び自ら土地を使用する者を 扶助することを原則とし、且つその適当な経営面積を規定しなければならない。
第一四四条 公用事業及びその他独占的企業は、公営を原則とする。 法律により許可されたときは、国民が経営することができる。
第一四五条
国家は、私人の財富及び私営事業に対して、民生政策の安定発展を妨害すると 認めるときは、法律を以て制限しなければならない。
②合作事業は、国家の奨励と扶助を受けなければならない。
③国民の生産事業及び対外貿易は、国家の奨励、指導及び保護を受けなければならない。
第一四六条 国家は、科学技術を運用し、水利を治めて土地の生産力を増進し、 農業の環境を改善し、土地の利用を企画し、農業資源を開発して 農業の工業化を促進しなければならない。
第一四七条
中央は、省と省との間の経済の平衡的発展を図るため、 貧困な省に対して適当に補助を与えなければならない。
②省は、県と県との間の経済の平衡的発展を図るため、 貧困な県に対し適当に補助しなければならない。
第一四八条 中華民国領域内においては、一切の貨物の自由流通を認めなければならない。
第一四九条 金融機構は、法により国家の管理を受けなければならない。
第一五〇条 国家は、庶民のための金融機構を普く設立して失業を救済しなければならない。
第一五一条 国家は、国外に居留する国民に対して、その経済事業の発展を扶助し、且つ保護しなければならない。
第四節 社会安全
第一五二条 労働の能力を有する人民に対して、国家は、適当な労働の機会を与えなければならない。
第一五三条
国家は、労働者及び農民の生活を改善し、その生産技能を増進させるために、 労働者及び農民を保護する法律を制定し、労働者及び農民を保護する政策を実施しなければならない。
②女性、児童が労働に従事するときは、その年齢及び身体の状態に応じ特別の 保護を与えなければならない。
第一五四条 労使双方は、協調提携の原則に基づいて、生産事業を発展させなければならない。 労使紛争の調停と仲裁は、法律で定める。
第一五五条 国家は、社会の福利を図るために、社会保険制度を実施しなければならない。 老者、弱者、身体障害者、生活無能力者及び非常災害を受けた人民に対して、 国家は、適当な扶助と救済を与えなければならない。
第一五六条 国家は、民族の生存発展の基礎を確立するために、母性を保護し、 且つ女性、児童の福利政策を実施しなければならない。
第一五七条 国家は、民族の健康を増進させるために、普く衛生保健事業及び公医制度を推進しなければならない。
第五節 教育文化
第一五八条 教育文化は、国民の民族精神、自治精神、国民道徳、 健全な体格と科学及び生活知能を発展させなければならない。
第一五九条 国民の教育を受ける機会は、一律に平等である。
第一六〇条
六歳から十二歳の学齢児童は、一律に基本教育を受ける。 学費の納付を免除する。貧困者に対して、政府は、書籍を供給する。
②既に学齢を超え、未だに基本教育を受けていない国民は、 一律に補習教育を受け、学費の納付を免除し、書籍もまた政府が供給する。
第一六一条 各級政府は、広く奨学金受給者の定数を設け、以て学力、操行共に優秀で 進学する資力のない学生を扶助しなければならない。
第一六二条 全国の公私立の教育文化機関は、法律により国家の監督を受ける。
第一六三条 国家は、各地区の教育の均衡発展を重視すると共に、社会教育を推進し、 以て一般国民の文化水準を高めなければならない。辺境及び貧困地区の教育文化の経費は、 国庫が補助する。その重要な教育文化事業は、中央が行い、又は補助することができる。
第一六四条 教育、科学、文化の経費は、中央にあってはその予算総額の百分の十五以下、 省にあってはその予算総額の百分の二十五以下、市県にあってはその 予算総額の百分の三十五以下であってはならない。法によって設置した 教育文化基金及び財産は、保障されなければならない。
第一六五条 国家は、教育、科学、芸術に従事する者の生活を保障し、 且つ国民経済の発展に応じて随時その待遇を高めなけれならない。
第一六六条 国家は、科学の発明と創造を奨励し、且つ歴史、文化、芸術に関する古蹟、 古物を保護しなければならない。
第一六七条 国家は、次の事業又は個人に対し奨励又は補助をする。
一 国内の私人経営にかかる教育事業で成績優良なもの
二 外国に居留する国民の教育事業で成績優良なもの
三 学術又は技術の発明をした者
四 教育に従事し長くその職に留まり成績優良な者
第六節 辺境地区
第一六八条 国家は、辺境地区における各民族の地位に対して法的保障を与えなければならず、 且つその地方自治事業について特別の扶助を与えなければならない。
第一六九条 国家は、辺境地区における各民族の教育、文化、交通、水利、 衛生及びその他経済、社会事業に対して積極的に振興し、 且つその発展を扶助しなければならない。土地の使用に対しては、 その気候、土壌の性質及び人民の生活習慣に適する方法に従って保障し、 且つ発展させなければならない。