五輪での失敗を糧に、李智凱がユニバ体操男子あん馬で金
台湾のドキュメンタリー映画『翻滾吧!男孩(日本公開題名:ジャンプ!ボーイズ)』に登場した時は8歳の男の子で、「菜市仔凱(市場の凱ちゃん)」と呼ばれていた李智凱選手が23日、2017年夏季ユニバーシアード台北大会における体操男子種目別のあん馬種目で金メダルを獲得した。小さい頃から金メダルを夢見て、厳しい練習を日常生活の一部としてきた李選手はその夢をあきらめたことはなかった。
大きな反響を呼んだ、林育賢監督による『ジャンプ!ボーイズ』は、台湾北東部・宜蘭県羅東鎮の公正国民小学(小学校)体操チームの練習と試合の過程を記録したドキュメンタリーで、李智凱選手はそのチームの一員だった。李選手の母親は市場で野菜を売っており、市場は放課後の李選手にとっての運動場だった。このため李選手は「菜市仔凱」と呼ばれ、市場での客寄せの声が飛び交う中で前方倒立回転などを決めて拍手喝さいを浴びていた。
李智凱選手は中学卒業後、林育信コーチについて台湾北部の桃園市に移り、訓練を続けて徐々に実力をつけた。そして2014年の仁川アジア大会では個人総合6位、さらに2016年のリオデジャネイロオリンピックのテストマッチ及び選考大会で、体操では中華民国(台湾)にとって16年ぶりとなるオリンピック出場資格を得た。
李智凱選手が得意とするのはあん馬。華麗なトーマス旋回(開脚旋回)は彼ならではの特色を持つが難度も高い。リオデジャネイロオリンピックのあん馬種目では予選で最初に演技、G難度の動作でバランスを崩して落下し、14.266の得点で決勝に進めなかった。オリンピックでは失敗し、好成績をあげられなかったが、林育信コーチは、市場で練習していた子供がオリンピックに出場したというだけで人々を鼓舞する力があると評価、台湾に体操ブームがもたらされることを願っていた。
ユニバーシアードで見事金メダルを手にした李智凱選手は試合後の記者会見で、地元で試合をできたことは大変うれしく、みなのサポートがあったのでリラックスして演技に臨めたと話した。林育信コーチは感動した様子で、「ついにやってくれた。このメダルを15年間待ち望んでいたので、李智凱が着地したのを見て涙がこぼれそうだった」と語った。
ユニバーシアードの体操競技では、2005年のイズミル(トルコ)大会における跳馬種目で中華民国(台湾)の黄怡学選手が優勝している。李智凱選手はそれに次ぐ二人目の金メダリストとなった。李選手は、ウクライナや日本の強豪と争い、それらの選手を上回る成績を残せたことで「本当に気分がいい」と話した。
林育信コーチによると、李智凱選手のあん馬の演技は8割がトーマス旋回で非常に際立っている。これは李選手が小さい頃から李選手のために特別に考えたもので、今後さらに見栄えがよくなるだろうとのこと。李選手のトーマス旋回は床運動のものをあん馬に持ち込んだものだが、その動作は大変滑らかで、床でおこなっているのと変わらない。審査員たちは、李選手の動作が最も正確で、その難度と質も世界最高だと感じており、他の選手たちとの違いを認めているのだという。
今回のユニバーシアードにおいて、李智凱選手は15.300の高得点であん馬種目の金メダルを獲得した。「チャイニーズタイペイ(中華台北)」名義で参加している中華民国(台湾)の代表選手団にとって今大会8個目の金メダルとなった。
蔡英文総統は23日、自身のフェイスブックに、「倒立回転していた男の子が完ぺきな演技、完璧な着地を見せた。もう『菜市場凱』というより『金牌凱(金メダルの凱さん)』だ!」と投稿して健闘を称えた。蔡総統は、「昨年のリオデジャネイロオリンピックと比べて李智凱選手のコンディション、技術、自信のいずれもいっそう成熟した。あん馬種目で金メダルを獲得した他、男子団体でも5位となり、いずれも過去最高の成績を上げた」と喜び、「おめでとう、李智凱選手。これからも回転し続けて次の舞台を目指してほしい」、「ありがとう、林育信コーチ」と書き込んだ。
Taiwan Today:2017年8月24日
写真提供:ユニバーシアード台北大会公式ウェブサイトより
2005年のドキュメンタリー映画に登場した時は8歳の男の子で、市場で練習していた李智凱選手(右)が23日、台北ユニバーシアード体操男子種目別のあん馬で金メダルを獲得した。左は林育信コーチ。