中華民国政府、ドミニカ共和国と国交断絶
中華民国外交部(日本の外務省に相当)は5月1日、ドミニカ共和国との国交断絶に関する声明を発表した。以下は声明全文。
中国当局は2017年6月、中華民国(台湾)の国交樹立国であるパナマ共和国と国交関係を樹立したのに続き、再び巨額の金銭援助を条件に、わが国の国交樹立国であるドミニカ共和国に対し、わが国との77年間にわたる国交関係を一方的に断絶するよう迫った。その結果、ドミニカ共和国は本日(2018年5月1日)をもって、中国当局と国交樹立することを発表した。中華民国政府としては大変遺憾ながら、国家の主権独立と尊厳を守るため、ドミニカ共和国との国交を直ちに断絶することを決めた。あらゆる二国間協力や同国に対する支援を全面停止するとともに、同国に設置する中華民国大使館を閉鎖し、技術指導者らを帰国させる。
ドミニカ共和国のダニーロ・メディーナ政権は、中国当局から提示された巨額の投資や金銭援助の約束を信じ、わが国との友好関係、ドミニカ共和国の国民の期待、それに同国の発展に長年尽くしてきたわが国の恩情等を一切顧みず、2016年末から2度にわたり、中国当局と国交樹立に向けた話し合いを進めてきた。双方の動きが活発になっていたことから、わが国では同国を「国交関係が不安定な国」とみなし、その動向に注意していた。中華民国政府は、両国の友好関係重視の立場を示すため、外交部の李大維部長(=大臣。当時)を2017年7月、ドミニカ共和国に派遣して関係強化を図った。その後、劉徳立常務次長(=事務次官)が同年8月と10月にドミニカ共和国を訪問。今年2月には二国間協力に関する備忘録にも署名した。しかし、外交部では数週間前より、ドミニカ共和国との二国間関係が停滞していることを察し、警戒を高めていた。
中華民国(台湾)とドミニカ共和国は1941年に国交を樹立した。その後、ドミニカ共和国で誕生したいくつかの政権と協力プロジェクトを実施し、多くの成果を得てきた。例えば「ドミニカ共和国の稲作の父」と呼ばれるわが国の技術指導団の謝英鐸団長(故人)は、同国をコメの輸出国とするため、コメの増産計画に力を尽くした。また、カリブ海のシリコンバレーとの異名を持つ工業団地「Parque Cibernético de Santo Domingo (PCSD)」の建設、ドミニカ共和国の治安改善と観光振興を目的とした「911勤務センター」、貧困家庭のケアを行う特殊児童養護センターの設置など、わが国の支援によって実現した計画は、いずれも同国国民の高い支持と評価を得ている。
中国当局は、ことあるごとに巨額の金銭支援を持ちかける「金銭外交」により、わが国から国交樹立国を奪い取り、その他の手段で国際社会における台湾の活動に圧力を加えるといった粗暴なふるまいをしている。わが国はこれを受け入れることができず、こうした行為を強く譴責する。中国当局の外交上のこうした横柄な行動は、台湾海峡両岸の関係をいっそう疎遠にし、相互信頼の基礎をむしばみ、台湾住民の感情を深く傷つけるだけである。
中華民国政府は国際社会に対して訴える。中国当局は常々、不誠実な約束をちらつかせてわが国の国交樹立国を騙し、その後は約束を反故(ほご)にしている。例えばコスタリカ共和国には、製油所の建設に10億米ドル、道路建設に4億米ドルを投資する約束をしていたが、いまだにその約束が果たされていない。サントメ・プリンシペ民主共和国とは2016年12月に国交を樹立したが、約束されていた1億4,000万米ドルの無償資金協力は現在まで全く動きがない。また、空港拡張計画、港湾の浚渫(しゅんせつ)工事なども着工のめどがついていない。米国政府はこのように指摘している。中国当局は不透明な契約、搾取性の高い借款契約、賄賂などを奨励し、被援助国を債務負担の泥沼に突き落とし、その主権を弱体化し、長期にわたり持続的成長を妨げている。このため、発展途上国は中国当局と付き合う際、「借金の罠(debt trap)」に注意し、「得より損失が上回る」という事態を回避すべきである。
外交上は厳しい立場に立たされているものの、中華民国政府は決して中国当局の圧力に屈服しない。そして、より積極的に世界の友好国と手を取り、共に努力奮闘し、地域の平和と安定維持に努め、台湾のためにしかるべき国際的地位を確保したい。外交部は職員一丸となり、国家の尊厳と利益を守るために努力する所存である。
Taiwan Today:2018年5月1日
写真提供:中央社
中華民国外交部(日本の外務省に相当)の呉釗燮部長(=大臣)は1日午前9時、ドミニカ共和国との国交断絶を発表した。台湾は、あらゆる二国間協力や同国に対する支援を全面停止するとともに、同国に設置する大使館を閉鎖し、技術指導者らを帰国させる。