蔡英文総統、「新年の談話」を発表
蔡英文総統は1日、総統府にて「新年の談話」を発表した。蔡総統は、「政府の新措置の恩恵をより多くの人々が感じられるようにし、経済をより良くすること、台湾の民主主義、自由と主権をより強固で永続的なものにすることこそが、我々が台湾住民を一致団結させて前進させる際の目指す先にあるものだ」と述べた。談話の概要は以下のとおり。
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2020年元日(1月1日)より、さまざまな新たな措置がスタートする。
今年は再び最低賃金を引き上げる。特に時間給のアルバイトをしている人たちにとっては、連続4年で時給が引き上げられることになる。2~3歳の幼児がいる家庭で、幼児をベビーシッターに預け、幼稚園に行かせていない場合でも、今年から託児補助の対象となる。子育て世帯にとっては、支出の大きな削減につながるだろう。今年5月の確定申告からは「介護控除」も正式にスタートする。我々はまた、農家の人々を対象にした退職制度の確立についても検討しているところだ。
この1~2年、台湾は米中貿易摩擦など、国際経済・貿易方面で大きな変化に直面している。しかし、台湾住民の一致した努力の結果、我々はなんとか持ちこたえてきた。昨年、台湾経済は周辺諸国を上回る成長を見せた。経済成長率はアジア四小龍(香港、シンガポール、韓国、台湾)のトップとなり、株価1万ポイント超えもすでに常態となっている。
台湾では昨年、数十年ぶりと言える規模の、海外進出する台湾企業による「台湾回帰投資ブーム」が発生した。待っていたかのように海外資金の流入も始まり、台湾経済の発展に期待する外資系企業が対台湾投資を大幅に増やした。こうしたことは、我々の数年来の努力によって、産業と資金の海外流出が続いていた過去数十年間の状況が覆されたことを証明している。
我々は1兆台湾元(約3.6兆日本円)規模の投資を行い、台湾を「ハイエンド製造センター」、「ハイテクノロジーR&Dセンター」、「再生可能エネルギー発展センター」、「アジア太平洋地域の資金調達及びフィナンシャルセンター」、それにハイテクや産業の人材育成の拠点にしたいと考えている。経済の構造転換や産業のイノベーションの促進において我々は最大限の努力をし、グローバル経済が変化を迎える中、台湾を生まれ変わらせたい。
台湾が重要な理由は、なにも経済に限ったことではない。我々の民主主義と自由も、重要な要素の一部だ。ここ数年、中国による台湾への「文攻武嚇(言論による攻撃と武力による威嚇)」や干渉・影響はとどまるところを知らない。その目的は非常に明確で、主権問題について屈服し、譲歩するよう台湾に迫ることだ。2019年の年初、中国の国家主席である習近平氏は「一国二制度」による台湾統一を模索する考えを示した。台湾のすべての人々が当時、政府にとって強い後ろ盾となってくれたことを感謝したい。我々はこれに屈しなかったばかりか、台湾が断固として「一国二制度」を受け入れないことを全世界に向けてはっきりとアピールした。
中国の圧力に対して昨年、私は「4つのすべき」を提起し、中国政府に対して(1)中華民国が存在するという事実を直視すべきである、(2)2,300万人の住民の自由と民主主義に対するこだわりを尊重すべきである、(3)平和で対等な方法によって我々の間に存在する見解の違いを処理すべきである、(4)政府あるいは政府によって権利を授与された公権力を持った機関同士が腰を据えて話し合うべきである―と呼びかけた。
1年が過ぎ、私の考えはよりゆるぎないものとなった。数日前、私はさらに明確な「4つの認識」という考えを提起した。これは、全国民が一致団結し、外からの圧力に対応しようと呼びかけるものだ。それは(1)台湾海峡の現状を変えようとしているのは中国であり、台湾ではない。ゆえに中国が我々に対して圧力を加える際、我々は対外的に一致団結しなければならない。(2)中国は「92コンセンサス」を利用して中華民国の空洞化を図ろうとしている。ゆえに我々はより強い決意で、国家の主権を守らなければならない。(3)台湾の主権を短期的な経済的利益と引き換えてはならない。ゆえに我々は最後の一線を設定し、主権が侵害されないようにしなければならない。(4)中国による影響力の全面的浸透と、台湾社会の分裂を図ろうとする動きに警戒しなければならない。ゆえに我々は民主主義の防衛メカニズムを確立しなければならない―というものだ。もし、全国民及びすべての政党がこの「4つの認識」においてコンセンサスを形成することができれば、中華民国台湾は過去に類例のないほどの巨大な団結力を生み出し、世界の舞台に立つことができるだろう
台湾の国会では昨日(2019年12月31日)、中国による干渉を阻止する『反浸透法』が成立した。その内容はいずれも、国内法ですでに定められていたり、禁止されたりしているものに過ぎず、中国のよる指示、委託、資金援助を受けて違法な行為を働くのでなければ、この法律によって罰せられる心配はない。よって『反浸透法』の成立は、自由に影響を与えず、人権を侵犯することにはならず、ましてや正常な経済・貿易交流に影響を与えることもなく、台湾の自由と民主主義に対してより多くの保障を与えるものであることを私は保証する。
我々は中国による影響力の「浸透」に反対するものであって、「交流」に反対するのではない。台湾海峡両岸の正常な交流と往来が、この法律によって影響を受けることはない。ゆえに中国在住の台湾企業関係者、台湾人学生、台湾人医師、台湾人幹部などはいずれも、これまで通りの正常な生活を続けられ、その影響を受けることはない。あらゆる正常な宗教交流も、その影響を受けることはない。台湾・中国間の観光も、旅行業者の商売もこれまでと同じで、絶対にこの法律の影響を受けることはない。
「携手同心、台湾前進(=心を一つにし、手を取り合って台湾を前進させる)」という言葉は、我々が定めた今年元日のテーマである。政府の新措置の恩恵をより多くの人々が感じられるようにし、経済をより良くすること、台湾の民主主義、自由と主権をより強固で永続的なものにすること。これこそが、我々が台湾住民を一致団結させて前進させる際の目指す先にあるものだ。
Taiwan Today:2020年1月2日
写真提供:総統府
蔡英文総統は1日、総統府にて「新年の談話」を発表した。蔡総統は、「政府の新措置の恩恵をより多くの人々が感じられるようにし、経済をより良くすること、台湾の民主主義、自由と主権をより強固で永続的なものにすることこそが、我々が台湾住民を一致団結させて前進させる際の目指す先にあるものだ」と述べた。