台北駐日経済文化代表処が中華民国(台湾)111年双十国慶節祝賀式典を開催
一、駐日代表処は今年も十分な感染予防措置の下、中華民国(台湾)111年双十国慶節祝賀式典を開催
台北駐日経済文化代表処(以下、駐日代表処)は10月5日午後5時、「中華民国(台湾)111年双十国慶節祝賀レセプション」を謝長廷代表の主催により、都内のホテルで十分な感染対策の下、開催した。今年の同式典のテーマは「百年の友好、運命の共有」であり、会場には特別に「ヤマムスメ(台湾藍鵲)」の氷彫刻を飾った。ヤマムスメという鳥は、協力して他からの攻撃を防ぎ、自分たちの巣を守るという習性があり、今年、わが国の国慶節準備委員会が掲げた「一致団結し国を守る(守土衛国、你我同行)」のテーマに沿ったものである。
二、式典は簡素ながらも厳粛、各界から多くの要人が出席
今年の式典は簡素ながらも厳粛に執り行われ、「日本台湾交流協会」の大橋光夫会長、「日華議員懇談会」の古屋圭司会長、山東昭子・前参議院議長ら日本の衆参両院の国会議員約160人、福田富一・栃木県知事、大井川和彦・茨城県知事、達増拓也・岩手県知事ら多くの地方自治体の首長らが出席した。さらには、わが国と国交のあるバチカン、パラグアイ、ハイチ、マーシャル諸島およびわが国と理念の近い国々の駐日大使および大使館関係者、日本の主要メディア、各界の要人、日本在住の僑胞ら約1,000人が出席した。
三、謝代表はあいさつの冒頭で台湾の人々は現状維持を希望、これは蔡英文総統の基本政策でもあると強調
謝代表はあいさつの冒頭で、「今年は中華民国建国111年である。しかし、1949年に中華民国政府が台湾に撤退し、中華人民共和国が中国大陸で成立後には、台湾と中国大陸はそれぞれが異なる憲法秩序の下で発展してきた。これは、台湾海峡両岸がそれぞれ別々に統治されてきたという、事実としての台湾の現状だ。台湾は中華人民共和国に属していない。中華人民共和国は台湾を統治していない。
この73年間、台湾海峡の安定と平和により、台湾、日本、韓国など東アジア各国の経済は成長を遂げた。中国もその受益者である。台湾は政治の民主化、社会の進歩においても大きな発展を遂げ、国民一人一人が幸せに生きられる民主国家であり、これは我々の誇りである。台湾の人々が最も望んでいることは現状維持であり、蔡英文総統の基本政策も台湾海峡の現状を守ることである」と説明した。
四、中国が武力で現状を一方的に現状を変更することは、国際社会に挑戦する行為であり、断じて許すことはできないと指摘
謝代表は、「近年、中国の軍艦や軍機が台湾周辺に侵入し、長年にわたり守られてきた台湾海峡中間線の現状を変更しようとしている。今年8月には、ペロシ米国下院議長の台湾訪問を口実に、大規模な軍事演習も実施しており、これは、平和と国際ルールを破壊する行為である」と指摘した。さらに、平和こそが国際社会の核心的利益であり、武力による一方的な現状変更は、国際社会に挑戦する行為であり、断じて許すことはできないと強調した。
その上で、台湾は中国からの圧力に対して断固として抵抗するのは、台湾の人々の尊厳と自由のためのみならず、アジア・インド太平洋の安定と平和のためでもある。台湾が中国に武力統一されてしまえば、日本の沖縄、アメリカのグアムなども危険にさらされることになり、全世界の半導体サプライチェーンも寸断され、世界経済にも甚大なマイナス影響がもたらされることになる。台湾政府と国民は、台湾の民主主義を守る決意があるが、軍事大国による現状変更の問題は、一国だけで解決できる問題ではなく、理念の近い国々が結束し、共に向き合っていかなければならないとの考えを示した。
五、台日間には国交はないが、民間の100年来の友好に影響はない
謝代表は、「台湾と日本には国交はないが、双方の民間における絆は深い。この絆は、100年前に遡るものであり、断交によって台日間の友情に影響はない」と述べた。
この中で、台湾のいくつかの有名高校の創立100周年、100年前に台南の水道インフラを建設した浜野弥四郎氏、嘉南大圳を建設した八田與一氏、屏東の二峰圳を建設した鳥居信平氏、台湾製糖業の近代化を推進した山本悌二郎氏などを挙げて、台日百年の絆を紹介した。さらに、100年余りにわたる台日の人々の交流により確立されたこの絆は、近年台日が自然災害発生時などの相互支援で共に苦難を乗り越えているといった家族のような密接な関係へと発展している。これはすでに政治関係を超越し、友好関係の最高の境地に達していると説明した。
六、台日が「相互防衛」における具体的な協力強化を期待
中国の人民解放軍は今年8月、軍事演習を行った際に日本の排他的経済水域(EEZ)にミサイルを撃ち込んだ。これにより多くの人々に「台湾有事は日本有事」が一つの概念ではなく、すでに発生している事実だということを認識させたと指摘した。さらに、中国共産党から見れば、米軍基地がある日本は当事者であり、決して第三者ではない。台湾と日本は運命共同体であり、双方はより一層団結し、従来の災害発生時の「助け合い」精神を活かし、「相互防衛」の具体的協力を強化しなければならない。台湾、日本、米国が結束し強固な関係を構築すれば、軍事拡張者の野心に対する抑止力を高め、台湾海峡および地域の安定と平和をしっかりと守ることができるとの考えを示した。
最後に謝代表は、10月上旬に台湾と日本はいずれも水際対策が緩和されることから、日本の多くの方々が台湾観光に訪れるよう呼びかけた。
七、来賓あいさつ
「日本台湾交流協会」の大橋光夫会長は、あいさつの中で、「台日は普遍的価値を共有しており、双方の関係は世界の模範である。もし各国がこのような関係を発展させていくことができれば、世界平和が推進されることになる」と述べた。
「日華議員懇談会」(日華懇)の古屋圭司会長は、「台日間は国交がないため、議員外交はより一層重要となる。日華懇は双方の経済、文化など各方面の交流に尽力していく。今月は双十国慶節祝賀式典へ出席するため台湾を訪問するので、その際に宜蘭を訪れ、台湾から111キロ離れた日本の与那国島を見てみる予定だ」と述べた。
「東亜経済人会議 日本委員会」の飯島彰己・委員長は、台湾は日本が強固なサプライチェーン、脱炭素化、DXなど経済発展を推進する上で重要なパートナーであると説明し、双方による経済・貿易協力の強化に期待を寄せた。
「全日本台湾連合会」の趙中正会長は、故安倍晋三・元首相が「台湾有事は日本有事」という事実を述べ、日本の人々に台湾と日本はまさに運命共同体であると認識してもらえたことに感謝の意を示した。さらに、「台日各界が安倍・元首相の遺志を継いで、手を携えて台日関係を発展させていきたい」と述べた。
自民党政調会長の萩生田光一・衆議院議員は、台湾各界が安倍・元首相の逝去に哀悼の意を示したことに感謝すると共に、今後の台日関係のさらなる発展に期待を寄せた。
乾杯の音頭をとった「日本中華聯合総会」の朱恭亮会長は、この50年間、台日間は国交はないが、日本在住の華僑界および日本の支持者ら多くの人々の努力により、近年台日関係は最良の状態となっていることに感謝の意を示した。
八、謝代表が山本悌二郎氏の銅像里帰り実現に尽力した佐渡市長らに感謝状贈呈
新潟県佐渡市の渡辺竜五市長ならびに台湾出身の舞踊家、若林素子(張素貞)女史は、戦後台湾から運ばれ、佐渡市内の公園に設置されていた台湾の著名な彫塑家、黄土水氏制作による山本悌二郎氏の銅像の台湾里帰り(無償返還)実現に尽力された。駐日代表処はこれに感謝し、渡辺市長ならびに若林女史をこの日の式典に招き、謝代表から感謝状が贈られた。山本悌二郎氏は佐渡出身で、かつて「台湾製糖株式会社」の創設に参画すると共に、社長を務め、台湾の製糖業発展に貢献した。
また、式典では、日本時代に建設された地下ダム「二峰圳」を設計した土木技師の鳥居信平氏の子孫である鳥居徹氏、「嘉南大圳」を設計した土木技師の八田與一氏の子孫である八田修一氏、創立100周年を超えた台北市立成功高校の日本時代の初代校長である河瀬半四郎氏の子孫である吉浜直子女史らも出席した。会場の人々からはこれらの人たちに対し、大きな拍手が送られ、100年前に先人たちが蒔いた台日友好の種に感謝の意を示した。
感謝状贈呈の後、出席者たちは歓談したり、会場に用意された台湾の特色ある小皿料理などの軽食を味わったりした。
式典終了後、代表処は出席した人々に、台湾から取り寄せた大甲の「平安サツマイモケーキ」、台湾観光のパンフレット、駐日代表処が制作した双十国慶節記念動画のDVDなどの手土産品を贈った。コロナ禍が徐々に落ち着き、台日間もかつての活発な交流が近い将来再開されることが期待できる時期となったことから、今年の双十国慶節の祝賀式典は熱気に溢れ、和やかな雰囲気の中で行われ、午後7時に終了した。
謝代表(中央)から渡辺竜五・佐渡市長(右)、舞踊家の若林素子女史(左)へ感謝状が贈られた
【台北駐日経済文化代表処 2022年10月6日】