謝長廷・駐日代表 2022年双十国慶節祝辞
今年は中華民国の建国から111年にあたり、台湾に遷ってから73年になります。また、今年は中華民国(台湾)と日本が断交して50年です。
しかし、台湾と日本の友好関係は百年以上の悠久の歴史があります。例えば日本時代に建設された台南の烏山頭ダムや山上水道、屏東の二峰圳などのインフラや、成功高校、新竹高校といった学校も百周年を迎えました。また、台湾人彫塑家の黄土水氏が制作した山本悌二郎氏の銅像が今年佐渡から台湾高雄へ帰郷しました。この百年にわたる絆は台日のさまざまな分野の交流の強固な基礎となっています。
今年7月、台湾の良き友人であった安倍晋三・元首相が逝去されました。この場をお借りして改めて深い哀悼の意を捧げるとともに、長年にわたり常に台湾を支持していただいたことに感謝を申し上げます。今後も安倍元首相の遺志を受け継ぎ、台日友好関係を深めていく所存です。
ロシアによるウクライナへの侵攻が起こると、世界は台湾にも関心を寄せるようになりました。「台湾有事」は今年の国際メディアにおけるホットなキーワードとなりました。安倍元首相の「台湾有事は、すなわち日本有事。日米同盟の有事である」という発言は、台日米の連帯感と危機感の共有を促進させました。
特に今年8月には中国軍が台湾を取り囲むように連日軍事演習を実施し、台湾と日本のEEZ(排他的経済水域)に弾道ミサイルを発射しました。これはまさに「台湾有事は日本有事」であることと、台湾と日本は地域安全保障に関する協力の常態化が必要ではないかと実感することとなりました。
このように中国からの脅威がますます高まり、台湾海峡や地域における圧力が日々強まっています。しかし、中国が強圧的に出るほど、台湾はより一層世界に注目され、台湾への支持がますます強くなります。厳しい情勢に直面しても、台湾は決して自分から挑発はしませんが、決して屈服することもありません。
台湾は権威主義と対抗する民主主義陣営の最前線に立っています。我々は「天は自ら助くる者を助く」という言葉を信じており、自主防衛能力を構築していきます。同時に、台湾は日本をはじめとする共通の価値観を持つ国々と議員外交などを強化し、引き続き連携していきます。
台湾は今年初め、日本の福島周辺5県の食品輸入規制をほぼ撤廃し、国際貿易のルールに基づく責任ある態度を示しました。今後も台日のサプライチェーン再編や台湾のCPTPP加盟、台日の経済貿易交流の拡大、経済安保協力の強化などに向けて互いに協力し合っていくことを心から期待しています。
今後、ポスト・コロナ時代を迎え、台湾は段階的に海外との交流を再開していきます。日本からもいくつかの国会議員団や観光視察団などが訪台しています。これから台日双方の交流は徐々に回復に向かい、台日の市民社会、教育、文化などのさらなる交流が促進され、双方の人々が再会し、笑い合える日がもうすぐ来るでしょう。
台湾と日本の人々の「百年の絆」は、これまで困難なときも支え合い共に乗り越えてきました。台湾と日本はまさに「運命共同体」です。このような貴重な友好関係は世界の模範となるもので、これを次の百年につなげ、次の世代に継承し、手を携えて輝く未来を共に切り拓いていきましょう。
【台北駐日経済文化代表処 2022年10月10日】