八田與一氏生誕１２０周年 日台友好の絆深まる

八田與一氏生誕１２０周年　日台友好の絆深まる

嘉南の大平原に烏山頭ダムを築き、戦前の台湾で農業の近代化と水利事業に尽くしたことで知られる日本人技師・八田與一氏の墓前祭が、６２回目の命日である５月８日、台南市郊外の同ダムにおいて行われ、台湾と日本から多数の人々が出席し、互いに友好の絆を深めた。

八田氏は日本の金沢に生まれ、大学を卒業してまもなく日本統治下の１９１０年、台湾に渡り、台湾総督府の土木局に入った。当時台湾最大の荒野であった嘉南平原は洪水、旱魃、塩害の三重苦にあり、農民たちの苦難を目にした八田氏は、この灌漑を決意し、１９１０年に着工したダムの建設は、２０年の歳月をかけて１９３０年、ついに完成した。

このアジア随一、世界３番目の大きさを誇る烏山頭ダムと給排水路の完成によって、不毛の大地は台湾最大の穀倉地帯に変貌を遂げ、数え切れないほど多くの人びとが水の恵みにあずかるところとなった。八田氏は「嘉南平野の父」「烏山頭ダムの父」と呼ばれ、銅像も立てられた。

１９４２年５月８日、八田氏は南方開発派遣メンバーとしてフィリピンに招聘されるが、現地へ向かう途中乗っていた船がアメリカ潜水艦の魚雷攻撃に遭って沈没し、帰らぬ人となった。妻の外代樹さんはその三年後、烏山頭ダムの放水口に身を投じて夫の後を追った。夫妻は今もダムのそばに眠り、毎年命日には今も多くの人が訪れてその偉業を偲び、記念活動が行われている。

生誕１２０周年にあたる今年は、同ダムを管理する嘉南農田水利会の主催によるこの催しに、八田氏の長男である八田晃夫・綾子夫妻をはじめ、金沢市で設立された「八田技師夫妻を慕い台湾と友好の会」のメンバー、現地住民ら合わせて約２００人が駆けつけ、故人の台湾に対する功績と信念に思いを馳せた。

また、八田氏の功績をより多くの人に知ってもらおうと、このほど志ある人々の奔走のもと、その生涯を描いた舞台劇が制作されることが決まった。日本の「現代演劇協会」事務局長を務める杉本了三氏によれば、この劇は台湾と日本の役者が共同で出演し、来年２月に日本で初公演、同５月には台湾で公演する予定であり「台湾で現代化に尽くした八田氏の生き様をみてもらいたい」と意欲を語った。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　《２００６年５月１０日》

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